明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



それはいかにもつげ義春が立ち寄りそうな湯治場の風呂であった。ちなみに私はたまたま目にした、確か『カムイ外伝』だったかのくの一のエロティックなシーンを見てしまい、その『ハレンチ学園』とはレベルの違うエロに打たれたのがきっかけで、小学生から中学にかけて、『ガロ』誌上で『ゲンセン館主人』はもとより、一連のつげの名作を読んでいる。佐々木マキも好きだった。それはともかく。夢の話である。 私が入っていくと、湯気越しに、老人達が湯に胸まで浸かり、ブラウン管型のテレビを見上げていた。それは木でできた簡素な台に乗っていたが、台はいかにも湯気でぬるぬるして湯船の上に突き出しており、地震でも起きたらテレビは転がり落ちて、ザンブリと老人達の目の前に落ちるのは間違いがない。一応は私も湯船に入ったが落ち着かない。しかも長く延長された電源コードを眼で追うと、ところどころ赤いビニールテープで補修されていたが、めくれ上がってしまっている。TVなんか観てないで、年寄りらしく囲碁か将棋でもやってりゃいいじゃないか。 私の見る夢の特徴は、どんなシチュエーションであろうと、登場する私は私がしそうなことや、いいそうなことしかしない。たとえば宝物の隠し場所や、犯した犯罪の言い訳など、いかにも私らしいのである。夢というのは短時間に見ているものらしい。シナリオやキャスティングなど、当然自分が創作しているのであろうが、短時間に、よくあんな突飛な創作をするものである。 午前中に、007『ゴールドフィンガー』のシャーリー・イートンのサイン入り写真が届いた。顔なんか覚えていないが、ベットで金粉を塗られてうつ伏せに死んでいるお馴染みのシーンにサインがされ、ご丁寧に、それにサインする老婆の写真も付いていた。私があのシナリオの発想の元に気が付いたのは夕方である。007には他にも様々な殺人方法が登場したが、確か湯船にヘアードライヤーだかを投げ込んで感電死させるシーンがあった。つまり金粉まみれの美女が出発点となり、湯治場でTVを見上げる老人とともに、湯船に浸かって感電に怯える、という夢に至ったわけである。

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