次に制作すべき人物が決まったのなら、さっさと始めれば良い、という話であるが、そうはいかない事情がある。依頼された作品の場合、私はウケることばかり考えている。ウケるというのは依頼者に喜んでもらう、ということである。私に依頼して良かった、と思ってもらうためには、どんな手でも使うタイプである。一方自発的に己が作品として制作しようと考えた場合、創作の快楽を最大限味わいたい。妻や子供達のためにがんばる、などということは最もやってはいけないことである。両方ともいないけど。 私は自分の扱い方は心得ている。すぐ作り始めることなど、けっしてしない。著作を読み進めながら、人物の背景を調べる所から始める。粘土など手にせず、読書である。そうこうすると、もういい加減作らせてくれ、という気分になってくる。いやまだだ。お前はこの人物の何が解かったというのだ。そうして散々弓を引き絞っておいて、よだれを垂らさんばかりの状態で、ようやく御馳走に齧り付くわけである。その時には迷うことはない。 閉じこもって制作に没頭するような人々には多かれ少なかれ、その体質中にマゾヒズムが潜んでいるものである。ここで詳しく述べるつもりはないが、私は快感を高め、長引かせることに努力を惜しまない人間である。なにしろ本日は、ようやく制作する人物が決まったというのに読書すらせず、アマゾンで資料を注文するに留め、そして明日は読書をしないどころか、ギターの制作工房を見学に出かけようというのである。この先制作を開始したら、どれだけの快楽が待っていることであろう。ワクワクしてしまう。 いやここでもう一工夫。作るの止める。というのはどうだろうか?究極の快楽に悶絶したりして。
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