制作中の人物は誰か。当てていただいた方に小さなプリントをお送りすることを何度かやった。フリーペーパーの『中央公論Adagio』の表紙を担当している頃だった。配布するまで、誰を特集しているかいえないので、例えば現在世田谷文学館に展示中の『円谷英二と勝どきを歩く』であれば、勝鬨橋を大ダコが襲っている場面を作るにあたり、ある海産物を入手。などとブログに書いては、想像していただいていたわけである。しかし今度の新作は、自主的に作る訳だから内緒にする必用はなく、ブログで奥歯に物がはさまったようないい方をせず、誰を作ってます。といいながら作ればいいわけである。しかし正直、なかなか決心がつかなかった。いえばやらない訳にはいかなくなるだろう。もっとも、作るといいながら止めていることはある。ブログを以前から読んでいただいている方はご存知だと思うが、例えば内田百間の『ノラや』を本物の猫を使って制作しようと考えたが、この構想が、昨年の写真絵本ともいうべき『貝の穴に河童の居る事』(風濤社)に取って代わった。その返す刀で室生犀星の『密のあはれ』を本物の金魚を使って制作しようと考え、金魚の人間バージョンの娘に当たりをつけていたが、あまりにも具体的にイメージが浮かび過ぎて、かえって何か足りない物を感じてしまい、今の所棚の上に置いている。やはり結果が見えない物にチャレンジしたほうが歯ごたえがある。それにもうひとつ。私はどうも、マイナーな作品ばかりやりたがる、と思われている節がある。決してそういう訳ではない。 あまり奥歯に物を挟みながらのブログは面倒である。早々に制作中の人物についてああだこうだいいながら作りたいものである。おそらく明日から着手することになるだろう。
『世田谷文学館』展示中
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