一時に有楽町。世田谷文学館の方とラボで待ち合わせ、プリント4点『夏目漱石』『円谷英二』『横溝正史』『柳田國男』にサインを入れる。ラボの受付が円谷英二を指し「これはなんですか?」私はこうやってずっと作品の解説をしなければならないのであろうか。まず好きか嫌いかをいいなさい。好きだ、というなら解説してあげよう。今日は好きだといわないのに解説してしまったが。 K本の常連のTさんがブログをプリントアウトしたものをくれた。K本には私が永井荷風を店内で撮影した写真が飾ってある。背景の女将さんは割烹着を着て頭も黒々とし、まだ50代である。それを荷風本人がK本を訪れた時の実写だと思い込んでいる客が複数居ることが判り可笑しかった。以前、江戸東京たてもの園で、たてもの園を背景に撮影した写真を展示した時のこと。撮影に使った人形も目の前に展示し、これを撮影した、と書いてあるのに信じない人がいた。こうなると私はただ写真を撮った人になってしまう。 先日、昭和32年に亡くなった父上のモノクロ写真をカラー化させてもらったMさんは、定年前、冷房もない真夏のK本の常連席で、汗をだらだらかきながらも、絶対上着を脱ごうとしなかった。それは傍から見て異様なくらいで、私は海軍の将校ですか?と冗談をいったものである。それがやはり海軍の将校であった父上の写真を修整しながら思い出した。聞くと息子さんにも学生服の詰め襟を外すのは許さなかったという。そしてそれがどうやら、知らないうちに母上に擦り込まれた亡き父上の精神だったらしい。Mさんは自分のこだわりの由来も判らずそうしていたというから、教育とはそうしたものなのであろう。いずれ遺品の儀礼刀を見せてもらうことになっている。
過去の雑記
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