明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



参考にする写真がモノクロの場合、間違いが起こりやすいのが陰である。カラーであれば、陰の中に色が含まれているので判別がつくのだが。制作中の人物の場合は鼻の下の髭が紛らわしい。上から覆いかぶさるような鼻が作る陰を、案の定、これをすべて髭だと勘違いしているイラストが多い。夢野久作といえば良く目にするのが、細い煙管状のパイプをくわえた写真である。いかにもドグラマグラ的怪人物に見えるが、意識して写真的効果を取り除いて眺めれば、私にはただノホホンとした穏やかな人物にしか見えない。大判のカメラで、妙なことが起こりやすい古典レンズで、光と陰を観察したことが役に立っている。

本来休みの日は飲まないK2さんがK本で、ホッピーの瓶を並べている。ここのホッピーや酎ハイは、そこらの居酒屋とは大違いのアルコールの含有量である。聞くと奥さんが留守だから。という答えであった。先日、山帰りの重い荷物を背負いながら家に帰ろうとしないと書いたが、今日はそういう訳でどこへも寄らずに帰るという。私の友人で、奥さんや娘が留守の日は、まず全裸になる、という男がいるが、それがどれだけ自由で清々しいことであるか、残念ながら私には想像がつかない。そこで総勢4人で留守宅にお邪魔することになった。“鬼の居ぬ間の洗濯”の洗濯とは命の洗濯をさすらしい。川沿いをヨロヨロ歩くK2さんの後ろをついて歩く。以前私の個展に、前日に川に落ちた、といって痛そうにして来たが、家に帰るくらいなら川に落ちた方がマシ。とでも思わないかぎり、どうやったら落ちるのか、という人工的に整備された場所であった。お宅では美味しいワインとウイスキーを御馳走になる。K2さんの清々しさが我々に伝わるせいか、楽しく過ごしたのであった。

『世田谷文学館』展示中

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