明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



ジャズ、ブルースシーズ時代の作品を2体、納品するために、色の塗り直しをする。架空のジャズマンである。この当時は裸電球の真下で制作していた。バーやジャズクラブのスポット光が当たっているつもりで制作していた。彫の深い眉下に陰ができ、その奥に光る無表情な眼。仕事で撮影して貰う場合は、その点を強調してもらった。 ポーの場合は久しぶりに彫の深い陰影を生かした撮影が可能であろう。光の当たり具合による表情の変化を見ながら、たとえば『落とし穴と振り子』。上から左右に振れながら、徐々に降りて来る刃の付いた大きな振り子。恐怖の表情で脱出を試みるポー。ポーの陰鬱な表情は、まるで私の作品に出演するためであるかのようである。表情に出来る陰影を、角度を変えて塩梅することにより、恐怖の度合いを演出することができそうである。 そろそろ振り子のデザインを考えたい。実際は30センチ程度の物ということであるが、効果を考えると映画その他で誰しもそうしたように、もっと大きい方が良いだろう。人形サイズに対すれば20センチ弱といったところか。 いずれにしてもこんな楽しいことは慌てて決める必用はない。制作は友人に依頼するので適当にスケッチを送れば済むが、どうせなら数十年振りにコンパスを買って来てちゃんと設計しよう。彼のことであるから、焼きを入れ、刃を研ぎ出すところまでやるだろうが、未遂に終わるとはいえ、ポーを切り刻むための凶器である。私だって研ぎたい。砥石も用意しよう。ただ閉じこもり苦しいだけの頭部の制作が終わり、ようやく。

世田谷文学館』展示中

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