明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



ヤフオクで落札して読む。昭和初年に出た明治の始め頃に関しての各方面の聞き書きで、語られた語調そのままのところが楽しい。絞首台を作った大工の話とか、明治初年の殿様など、目次を見ているだけで面白い。当然劇界、演芸界にも触れられていて、円朝、九代目團十郎に関して、批判的な意見もあり、両者ともに名人だ劇聖だ、という話ばかり読まされていたので、それはそれで面白い。「九代目は河原崎権十郎時代は名代の舞台下手で、眼ばかり光らしてゐたんだが、福地櫻痴(東京日日新聞主筆)なんかが持ち上げてエラクしてしまつた。」その福地櫻痴に対しても、金払いが悪いので芸者その他に評判が悪かった、と書かれている。芸者に待たされ腹を立て、火鉢に大便をして灰をかぶせておいて騒ぎになり出禁になり。円朝に関しては当時の柳家小さんが、「狂言作者を抱えて飼い殺しにしていて芸は拙いし採る所はないが、作者がついているので常に新しい物を出した、」という。やっかみも入っているのかもしれないが、それはそれで貴重な証言として興味深く読んだ。当分酒の肴にはなりそうである。
HP

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