明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



九代目が市川團十郎を襲名したのが37歳のときであるが、私の制作しているのは40代半ば、というところであろうか。使用している粘土は紙の繊維が入っているせいで、若者や、女性の肌を表現するには向いておらず、男、特に老人を制作するのに向いている。私が男ばかり作るのに、かなり貢献しているといえよう。なのに九代目は皺もなく、年齢を表しているのは髪の後退だけである。残された肖像は、ほとんどヅラ姿なので、この年齢でどの程度のハゲ具合かは想像でしかないが、まあ良いところであろう。 あえて壮中年期の九代目にしたのは、残された九代目像がすべて晩年の姿だということもある。 あちらの作者は偉い人達ばかりで、違う方向から一矢報いたい。 歌舞伎座の九代目は、舞台の姿ではないのに、口を思い切りへの字に曲げ、血管が切れそうに力が入りゴツゴツしている。私の場合、彼らと違って実際の舞台を眼にしたことがないので力の入っていない、残された写真を素直に受け取ることができた。これも高村光太郎の一文のおかげである。  いつもより大きい分、仕上げに少々手間取っている。
HP

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