今日の終業間近。
いつもなら元気に挨拶して帰る兄ちゃん(草刈り契約業者の1人)が、駐車場からなかなか車を発進させない。 「ん!?」
監視モニターを見ていた同僚が、「バッテリーでもあがったんじゃないか?」と言ってるので「ブースター必要だろうか?」とばかりに様子を見に行ったら、
ぶっ倒れている??? じゃん!! 、というか、正確には車に乗ろうとして足が攣って立てなくなり、そのまましゃがみ込んで半分アスファルトに寝てしまっていた状態なんです。
大丈夫か?と声をかけると、「足が攣りました」の一言。
手の震えもあり、すぐに熱中症と判断した僕。 手足に血の気が無いし・・・・
体内からミネラル分と塩分が大量に流出して、体温調整が出来なくなるとすぐに立てなくなるのですけど、これが熱中症の初期症状。
足から始まって手や腕の震え(痙攣含む)が始まり、やがて脈が弱くなり乱れ始め、さらに血圧低下が起きて意識混濁になる。
慌てて同僚と若い衆を呼びにいくと、冷蔵庫に常に作り置きしてある鍋氷をバケツに移し、ハンマーでたたき割って、手当たり次第のタオルをぶち込んで駐車場に。
すでに半分意識を失い始めていて、 声をかけるとまだ答えるので、冷たいタオルを頭、首、両脇にずぶ状態のまま挟んで様子をみる。
脈を取ろうと手首を掴むがパルスが弱くて、首のところから再度脈を取るもやはり弱い。
このままでは、まずい事になる。
その場を他の人に任せると、建物内に戻ってコット(担架になるタイプです)を出しきて展開。
いくらタオルで冷やしても、焼けた路面からの熱は背中から全身に伝わるので、涼しい建物内に急ぎ運び込むためだ。
どうして良いか判らずに、ぼ~っと立ってみていた若い衆に手伝わせて、4~5人で彼を室内に運ぶと、次々にタオルを交換して、やはり冷蔵庫に保管して置いたポカリスエットを持ってきて飲ませる。
床ビショビショ
一時は混濁状態になり始めていた意識ですが、まともな会話のできる状態にまで戻ったので一安心。 よかった・・・・
1時間ほど休ませて家に帰そうか?、と考えていたら、彼の雇い先の社長が連絡を受け、救急搬送の要請を願い出てきたので、同僚が消防に連絡。
僕はずっと兄ちゃんの側を離れず、氷で冷やしたタオルを交換しつつ、適当に会話することで意識状態の確認しつづけていたのですけど、程なくして救急車が到着。
付き添いとして同じ草刈りをしていた、もう1人の年輩の男性が病院までついていった。
*後に連絡有りで、点滴打って今日は入院だそうです。
各方面への連絡はもう1人の同僚が全部やってくれたので助かったけど、本当に熱中症は恐ろしいものだと思う。
常々「ワンマンワークは 止めてくれ!」と業者に要請していて、 これがもし炎天下のしかも敷地の片隅で倒れて誰も気づかずに30分も経過していたら命に差し障りが有った可能性は高い。
いくら仕事で慣れていると言い張ったところで、台風一過のピーカン+今日の気温は38度。
昨晩から朝に架けて降った雨が蒸発して猛烈な湿気となり、まるでサウナ状態の作業だったからこそ起きた一件。
職業柄、訓練項目の一つとしての救急対処法(衛生兵レベル)をクリアしている僕ですけど、今回の事からリフレッシュトレーニング受けないといかんな・・・・
なんて思ったりもしています。
目玉飛び出してしまった、 骨が折れて外に出た、 手足が吹っ飛ばされた、肺に穴開いた、 大量出血 、火傷、凍傷(低体温)等々、初期の対処で、後に人の命の品質そのものも大きく変ってくる。
対処は良いけど、なんせ一番難しいのはショック症状の見極めと判断及び対応でして、同じ状態が出ていて、真反対の処置を取らねばならないことも普通に有る。
残念なことに僕がクオリファイしている某国正規資格は、この国では全く認められていない物でして、なんせ人工呼吸して助からなかったからと措置施した人間を医師法違反で有罪者にした歴史(裁判判決)を出すこの日本。
それで世界中の笑いものになって数十年、最近やっと改まってきたけど、万が一目の前で胸に穴が開いて苦しむ人間見ても、何もしてはならないのが現実。
対処して間に合わず、間に合っても医師法違反だと遺族から訴えられれば有罪判決は平気で出る。 この国は・・・・・
人のために何かして、犯罪者にされて仕事も生活も全て失い壊れ、なぜなんだ?という忸怩たる思いを胸に生きていかねばならないのなら、いざ目の前にそれが起きたとしたら、僕はどうするべきであろうか?と思うんです。