第7回日本翻訳大賞において、以下のすばらしい推薦文をいただきました。
みなさん、ありがとうございました。
おかげで、『最後のダ・ヴィンチの真実 510億円の「傑作」に群がった欲望』は忘れがたい1冊になりました。編集者の松川えみさまにも深く感謝いたします。松川さんのお力がなければ、とても出版できませんでした。
今後もみなさんに喜んでいただける翻訳書を全力で出版しつづけたいと思います。
どうか今後ともよろしくお願いします。
2021/3/24 上杉隼人
【推薦者】松下 昌弘
【推薦作品】『最後のダ・ヴィンチの真実 510億円の「傑作」に群がった欲望』
【作者/訳者】ベン・ルイス/上杉隼人
【推薦文】
ダ・ヴィンチは作品数こそ少ないものの、同一画題の別作品が多く美術関係書の翻訳では神経をつかう。本書を推薦するのは、その困難を乗り越えた見事な訳業であるからに他ならない。
著者のベン・ルイスはドキュメンタリー作家で、美術史のメインストリームに対して批判的なスタンスを崩さない。しかし批判する側の記載に間違いがあれば、それは悲惨なことになる。そこで訳者の上杉氏は綿密に調べ原註以上に適切な訳註を補っている。大きなミスは見つけられなかった。
何よりも讃嘆したいのは、批判精神を含んだルイスの原文を、禁欲的に中道を保ちつつ訳していること。この文体の抑制により、終盤のルイスの追加取材にミステリーのような味わいが生まれた。
上杉氏の訳書はおそらく20冊以上読んでいるが、今回の翻訳はまさに最良のもの。フィクションを訳す際のスピード感あふれる文章が特徴的だった彼が、ここまで成長したのかと目を見張る思い。柴田元幸氏を目標に努力し続けた彼が到達した今回の成果に対しては、何かしら報われても良いのではないかとの思いから、推薦させて頂く次第である。
【推薦者】近江 富美代
【推薦作品】『最後のダ・ヴィンチの真実 510億円の「傑作」に群がった欲望』
【作者/訳者】ベン・ルイス/上杉 隼人
【推薦文】
訳者あとがきを読んだだけで、この翻訳家の仕事がどれだけすごいかわかる。
著者と相談して「日本語オリジナル版」を作ることにした。割愛できるところは割愛し、訳者が解説をつけた。
原書のハードカバー版を訳し終えたところで、著者からペーパーバック版刊行に向けた膨大な修正が届く。訳稿を最初から見直し、原書の削除部分を削り、新たな書き足し部分を訳して、全体を調整。
レトリックも比喩表現も美術用語も、非常に分かりやすい、流麗な日本語になっている。
英語だけでなく、イタリア語、フランス語、ロシア語の記述もすべて訳出。
特殊な法律関係の表現も含めて注はすべて訳し、日本人の読者に必要なものは訳者注をつけた。
著者に英語でインタビューして、日本語版オリジナル記事をまとめた。
ノンフィクションなのに上質のミステリーのように楽しめる。
これだけのことを短期間で一人の訳者がこなした。新時代の翻訳として評価されるべきだ。
【推薦者】OK Computer
【推薦作品】『最後のダ・ヴィンチの真実』
【作者/訳者】ベン・ルイス / 上杉隼人
【推薦文】
ダ・ヴィンチを巡る膨大な翻訳書に、極上のミステリー小説のごとく一気読みしてしまう新たなノンフィクションが登場した。偶然目にしたキリストの絵がレオナルドの作であると確信したギャラリスト、明らかになる驚異的な絵の来歴、やがて繰り広げられる空前のオークション-果たしてこの絵の本当の作者は?筆者ベン・ルイスはBBCでドキュメンタリーを製作していた手腕を生かし、この格好の素材を膨大なリサーチで以て、サスペンス風に追い詰める。訳書の読みやすさからは想像し難いが、原書はイタリア語、ロシア語も含む美術、歴史、経済用語に溢れ、シニカルな難しい文体だ。上杉隼人さんは見事にこれを訳出、500ページ近い大作を一息に読ませる。作品についての新事実をフォローした筆者が初稿とはほぼ別物の改定版を出版、一からそれを訳し直し、筆者の信頼を得て日本の読者用に編集もやり直したという。訳者の誠実な仕事の賜物、多くの方に読んで欲しい。
【推薦者】重森 美子
【推薦作品】『最後のダ・ヴィンチの真実510億円の「傑作」に群がった欲望』
【作者/訳者】ベン・ルイス/上杉 隼人
【推薦文】
2017年11月に「サルバドール・ムンディ」が世界最高額510億円で落札されたことはよく覚えています。1枚の絵がそんな途方もない額で取引されるのかと驚きました。それから3年後、本書が発売されたと知ってすぐに買って読んだ。予想をはるかに上回る面白さだった。「サルバドール・ムンディ」がどんな人たちの手に渡り、どんな歴史を歩んできたか?本当にダ・ヴィンチの作品か?本書が一つ一つ解き明かしていく。
大学で美術を専攻しましたが、美術書を含めて翻訳書は日本語が硬いし、美術を知らない人が訳していたりするのであまり読まない。だがこの翻訳書のよみやすさはどうだろう。美術や絵の技法も見事な日本語に移されている。
2019年のルーブル美術館のダ・ヴィンチ没後500周年大回顧展に出展されるはずだった「サルバドール・ムンディ」。結局展示されることはなかったが、理由が本書にくわしく書かれている。
最高の翻訳書に出会えて嬉しい。
【推薦者】中井 陽子
【推薦作品】『最後のダ・ヴィンチの真実 510億円の「傑作」に群がった欲望』
【作者/訳者】ベン・ルイス/上杉 隼人
【推薦文】
2011年ロンドン・ナショナル・ギャラリーのダ・ヴィンチ展で「サルバトール・ムンディ」を見た。新たに真作と認められた「最後のダ・ヴィンチ」が初めて一般公開されたのだ。その後、史上最高の510億円で落札され脚光を浴びた絵は、19年ルーブルの「ダ・ヴィンチ没後500年展」にはなかった。一体どうして。
本書がその秘密を教えてくれた。美術界、絵画修復、投機、政治。この絵を取り巻く世界の闇と複雑さ、一枚の絵画が歴史と思惑に翻弄される様子があまりにドラマティックで驚愕した。果たして本当にダ・ヴィンチの作品なのか。膨大な情報が秀逸な翻訳で活き活きと立ち上がりミステリー小説を読むように没頭した。
訳者上杉氏の尽力による日本読者向けの最終章が余韻に残る。この素晴らしい翻訳書を読んで、当時ロンドンで購入した図録を改めて手に取った。図録番号91番、ラストを飾る「最後のダ・ヴィンチ」。もう一度この目で見たくなった。
【推薦者】宮原 將
【推薦作品】『最後のダ・ヴィンチの真実』
【作者/訳者】ベン・ルイス・著/上杉隼人・訳
【推薦文】
原田マハさんの「文藝春秋」の書評を読み、この本を知った。「男性版モナ・リザ」サルバトール・ムンディの存在は衝撃的だ。さまざま人たちの手から手にわたり、500年近くの時を経て、2017年に破格の値段で取引される。その後この絵は一般公開されていない。ものすごく読み応えがあるノンフィクションだが、翻訳のすばらしさでページをめくる手が止まらない。口絵のほか、冒頭につけられた「本書に登場する人物表」「絵がたどった年表」も理解の強力な助けになる。訳者のインタビューによる日本語版オリジナル記事もありがたい。原書よりも翻訳書のほうが価値がある。
アートをとりまく桁違いの華々しさと、深い闇。アートの価値は誰がどのように決めるのか? 本書を読みながら、腰巻にあるコピーの文句を何度も考えた。
驚愕の事実がぎっしり詰まった『最後のダ・ヴィンチの真実』。興奮の1冊を秀逸な翻訳で読ませてくれる本書こそ、日本翻訳大賞にふさわしい。
【推薦者】松本 征子
【推薦作品】『最後のダ・ヴィンチの真実 510億円の「傑作」に群がった欲望』
【作者/訳者】ベン・ルイス/上杉 隼人
【推薦文】
上杉隼人氏のブログGet Up Englishを毎日チェックしているが、この人の仕事は質、量ともに驚異的だ。
最後のダ・ヴィンチの作品として世界最高額で競り落とされたサルバトール・ムンディ。イギリス国王、妃、美術収集家と美術商、ロシアの大富豪、サウジアラビアの皇太子まで、あらゆる人たちがこの1枚の絵を巡って光と闇の世界で蠢く。英語以外の言語も出てくる本書を訳すのはとてもむずかしかったと思われるが、上杉氏はすっとわかる日本語にしてくれている。著者ルイス氏に英語でインタビューしてしまうのだから相当な言語力だ。
昨年は「最後のダ・ヴィンチの真実」以外にも、「MARVEL 倒産から逆転No.1となった映画会社の知られざる秘密」や「ザ・ギャンブラー ハリウッドとラスベガスを作った伝説の大富豪」のビジネス書も「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」も訳している。超人的仕事量だ。
今回は上杉さんの「最後のダ・ヴィンチの真実」を推薦したい。
Star Warsファン垂涎の1冊が発売された。
Star Wars: The Lightsaber Collection: Lightsabers from the Skywalker Saga, The Clone Wars, Star Wars Rebels and more | (Star Wars gift, Lightsaber book) by Daniel Wallace (Author), Lukasz Liszko (Illustrator), Ryan Valle (Illustrator)がそれだ。
2020年10月20日に発売されるや、たちまちファンの間で評判が広がり、オンライン書店のランキングも急上昇、レビューもすでに1500近くついている。
この大冊をすでに訳了、ゲラ校正も終えて、8月にグラフィック社から刊行の予定だ(特殊な印刷が必要となり、中国印刷で進めることになり、少し時間がかかる)。
オリジナル3部作(エピソード4~6)、新3部作(エピソード1~3)、『フォースの覚醒』『最後のジェダイ』『スカイウォーカーの夜明け』の本編映画と『ローグ・ワン』『ハン・ソロ』のスピンオフ映画はもちろん、テレビ・アニメ・シリーズ『反乱者たち』や『クローン・ウォーズ』、実写ドラマ『マンダロリアン』、さらにはアクション・ゲームやウォルト・ディズニー・ワールドのアトラクション、コミックや小説まで、スター・ウォーズ・ユニバースを彩るライトセーバーを、驚くほど精巧なイラストと詳細な解説で紹介。
ファン必携の1冊になることは間違いありません。ぜひご期待ください。例によって、日本人の読者に必要な注もたっぷり付けました!
今日のGetUpEnglishはこの本の一節から紹介します。
Forged a thousand years ago by Tarre Vizsla, the first Mandalorian to become a Jedi Knight, the Darksaber is a one-of-a-kind artifact that serves as a symbol of authority. According to tradition, whoever wields the Darksaber is the rightful ruler of the Mandalorian people.
1000年前、ター・ヴィズラがマンダロリアンとして初めてのジェダイ騎士(ナイト士になり、彼が作り出したダークセーバーがほかでもなくジェダイの象徴となる。伝説によれば、誰であれダークセーバーを手にする者がマンダロリアンの人々の統治者となる。
forgeはこの場合「(鉄を)鍛えて造る」。
「〈関係などを〉築く, 確立する」(リーダーズ)などの意味でもよく使われる。
○Practical Example
Mr. K forged a new career in the culinary business.
「K先生は食品関係の仕事で新しいキャリアを築いた」