民主党代表選世論調査を《「首相は菅氏」65%、小沢氏17% 朝日新聞世論調査》(asahi.com/2010年9月5日22時31分)とその《世論調査―質問と回答〈9月4、5日実施〉》、さらにの《民主代表には…菅氏66%、小沢氏18%》(YOMIURI ONLINE2010年9月5日22時14分)とその質問と回答を記載した《「内閣・政党支持と民主党代表選」 2010年9月電話全国世論調査》から、国民から民主党の次の代表として菅首相が圧倒的支持を得ていながら、逆に小沢候補が圧倒的に拒絶反応を以って扱われていながら、にも関わらず、指導力と言うと、誰と言っているのか見てみる。
尤も答は既にいくつかのマスコミが出しているから分かっていることだが、世論調査の具体的な数値から改めて検証してみる。
「asahi.com」は(調査日:2010年9月4、5日)、(前回調査8月7、8日)――赤文字
YOMIURI ONLINEは(調査日:2010年9月3-5日)――緑文字
両調査とも部分的抜粋引用
●菅内閣支持・不支持
支持する 49(37)
支持しない 30(43)――
支持する 59
支持しない 28
●支持理由(択一)
首相が菅さん 29〈14〉
民主党中心の内閣 27〈13〉
政策の面 20〈10〉
実行力の面 13〈6〉
●不支持理由(択一)
首相が菅さん 4〈1〉
民主党中心の内閣 15〈5〉
政策の面 27〈8〉
実行力の面 51〈16〉
●次の首相に誰がふさわしいか
菅 さん 65 小沢さん 17
菅首相 66 小沢氏 18
●政策・資質に関する期待度
■景気・雇用対策の面
菅さん 44 小沢さん 34
菅首相 37 小沢氏 36
■米軍普天間飛行場の移設問題
菅さん 37 小沢さん 30
菅首相 47 2.小沢氏 36
■実行力の面
菅さん 34 小沢さん 49
■政治の進め方の面
菅さん 50 小沢さん 29
■官僚主導から政治主導への転換
菅さん 56 小沢さん 23
菅首相 39 小沢氏 43
■ねじれ国会対応能力
菅首相 37 小沢氏 32
●衆院選マニフェスト修正派の菅、マニフェストどおり実行の小沢、いずれを支持するか
菅さん 63 小沢さん 24
菅首相 71 小沢氏 17
●小沢氏の子ども手当、2011年度月額2万円引き上げ、2012年度から満額2万6000円支給への評価
評価する 24 .評価しない 68
●政治資金の問題で今年6月に民主党の幹事長を辞任小沢氏の今回の代表選立候補は納得できるか
納得できる 18 納得できない 75
●菅首相のこれまでの仕事ぶりに対する評価(択一)
大いに評価する 2
ある程度評価する 45
あまり評価しない 42
まったく評価しない 8
●消費税の引き上げへの賛否
賛成 48(41) 反対 44(47)
●消費税引き上げの議論について、菅さんは「社会保障と一体で議論する必要がある」と述べ、積極的な姿勢を示しました。この菅さんの姿勢を評価しますか。評価しませんか。
評価する 65 評価しない 22
●小沢さんは「行政のムダを省くことに全力を挙げる。消費税はその後だ」と述べました。この小沢さんの姿勢を評価しますか。評価しませんか。
評価する 55 評価しない 34
●消費税率の引き上げについて、菅首相は社会保障制度改革の中で、消費税を含む税制の抜本改革を議論するとし、小沢氏は当面は引き上げない考えを示しています。どちらの主張を支持しますか。
.菅首相 52 小沢氏 38
国民の圧倒的多数が次の首相に菅候補を推している。この点では積極的評価と見ることができる。だが、この場合、1年で何回も代えるべきではないという意見があるにしても、代表選たけなわとなった現在では小沢氏を対局に置いた圧倒的性格の評価と見るべきではないだろうか。
「朝日」は、「菅 65」対「小沢 17」、「読売」は、「菅 66」対「小沢 17」。
「政治とカネ」の問題で説明責任を果たしていないと見ている国民が70%~80%もいる、その拒絶感、アレルギーからすると、小沢氏に持つ印象の反動、小沢アレルギーが向かわせた次の首相菅評価と見た場合、その圧倒的な積極的評価はかなり相殺されることになる。
このことは、「読売」の調査の場合は支持・不支持理由の調査がないから分からないが、「朝日」の調査で見ると、内閣支持調査の中での各回答のうち小沢氏を直接的に対局に置いて判断したであろう項目と間接的にしか置いていないだろう項目をそれぞれ見ることによって証明できる。
いずれであっても、民主党代表選の菅首相の対立候補として小沢氏を対局に置いた意識を全体に反映させて、それぞれを判断していたことは間違いないはずである。
小沢氏立候補の動きがマスコミに取り沙汰されてから立候補表明、そしてそれ以降というもの、菅首相が選挙の支持獲得を意識した各企業や各種施設への視察、関係閣僚への指示等によってさも有能であるかを演ずるパフォーマンスをマスコミに露出させていたことも支持率上昇に貢献しただろうが、この場合でも小沢氏を対局に置いた、小沢氏対する反動が貢献した相対的上昇の要素も多分に入っていると見るべきだろう。
改めて「朝日」の支持・不支持理由を掲載してみる。
●支持理由(択一)
首相が菅さん 29〈14〉
民主党中心の内閣 27〈13〉
政策の面 20〈10〉
実行力の面 13〈6〉
●不支持理由(択一)
首相が菅さん 4〈1〉
民主党中心の内閣 15〈5〉
政策の面 27〈8〉
実行力の面 51〈16〉
「政策の面」と「実行力の面」は小沢氏を対局に置いた判断であると同時に当事者の政治的資質、政治的能力の判断を求める項目であって、“次の首相は誰がふさわしいか”と同傾向の圧倒的数値を見せてもよさそうなものだが、支持理由の中で2倍程度上昇したものの、相変わらず下位を占めていて、“次の首相は誰がふさわしいか”とは逆の傾向を示していることから、“次の首相は誰がふさわしいか”に於ける積極的評価は相対的低下を免れ得ない。
逆に不支持理由では、 「実行力の面」が前回16ポイントから4倍強の51ポイント、「政策の面」では前回8ポイントから3倍強の27ポイントで、合わせて78ポイントの圧倒的多数で、それぞれ不支持理由の第1位と第2位を占めている。このことも“次の首相は誰がふさわしいか”の圧倒的支持を相殺することになるマイナスの能力評価、資質評価となっている。
その一方で、直接的には小沢氏を対局に置いていない、置いていたとしても意識の面でのみ置いた、それゆえの上昇要素が含まれていると見ることができるものの、当事者の政治的資質、政治的能力を直接的に問うものではない、「首相が菅さん」が前回の14ポイントから29ポイント、次が菅首相の資質・能力も、小沢氏の影響も直接的には関係しない、「民主党中心の内閣」が前回13ポイントから27ポイントで、支持理由の第1位と第2位を占め、名指しで支持を問う“次の首相は誰がふさわしいか”の結果と整合しない傾向を見せている。
この不整合こそが、“次の首相は誰がふさわしいか”で菅首相が指導力や政策遂行能力(=実行力)等の政治的能力、政治的資質で支持を得ているのではなく、1年で何回も代えるべきではないという意見を基本としていながらも、あくまでも小沢氏を対局に置いた候補者だからということの現れではないだろうか。
この構図は当事者本人の指導力や政策遂行能力(=実行力)を直接的に問う項目の結果値に表れている。
〈官僚主導から政治主導への転換〉では、
菅さん 56 小沢さん 23
菅首相 39 小沢氏 43
となっていて、「朝日」と「読売」では逆の結果となっているが、〈実行力の面〉では、
菅さん 34 小沢さん 49
さらに〈菅首相のこれまでの仕事ぶりに対する評価(択一)〉では、
大いに評価する 2
ある程度評価する 45
あまり評価しない 42
まったく評価しない 8
と“次の首相は誰がふさわしいか”に真っ向から反する評価しないが合わせて50ポイントを占め、評価も「ある程度評価する」の消極的評価が45ポイントを占めていることからすると、やはり1年で何回も首相を変えるべきではないとする多数意見があるとしても、小沢氏を対局に置いた、小沢氏に対する拒絶反応、アレルギーが仕向けている“次の首相は誰がふさわしいか”であろう。
これらの調査の結果から見て取ることができるのは、例え菅首相が“次の首相は誰がふさわしいか”で圧倒的支持を受けていたとしても、国民世論は指導力なら小沢と言っていることになるはずである。