オスプレイ安全性米側調査に見る機長の役目上の無効性と副操縦士の操縦の無効性の間に横たわる疑惑

2012-10-03 05:18:10 | Weblog

 オスプレイの沖縄配備が進められた。

 アメリカ海兵隊は今年(2012年)4月、モロッコで米軍とモロッコ軍との合同訓練中に発生し、米兵2人死亡、2人重傷のオスプレー墜落事故は副操縦士の操縦ミス――人為的ミスだと結論づける調査報告を纏め、8月17日公表した。

 《オスプレイ 海兵隊“操縦誤る”強調》NHK NEWS WEB/2012年8月18日 7時37分)

 シュミドル海兵隊航空部門副司令官「最も重要なことは、機体に欠陥は全くなく安全性に問題がないことがはっきりしたという点だ。

 (副操縦士が)十分な速度も出ておらず、後ろから強い風が吹く状況の下で、規定の角度以上にプロペラを前に傾けたため、尾翼部分が風に押し上げられ、前のめりになる形で墜落した」

 〈海兵隊ではオスプレイのすべての操縦士にモロッコでの事故当時の状況を詳しく説明したうえで、フライトシミュレーターに状況を再現した訓練を導入するほか、操縦のマニュアルや訓練学校の教科書の一部を変更するなど事故の再発防止に向けた取り組みを強化していくことに〉したという。

 他の多くの記事が、「経験の浅い」といった形容詞をつけて、副操縦士の操縦ミスだとするアメリカ側の調査報告を伝えている。

 この副操縦士単独犯説は調査報告書を纏める前からアメリカ側は頻繁に情報発信していたが、その一つを捉えて、2012年7月29日当ブログ記事――《オスプレーのモロッコ墜落事故は人為的ミスとする米側発表の不自然過ぎる疑惑 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》に、主操縦士(機長)の姿が見えないと書いた。

 この「NHK NEWS WEB」記事が伝える海兵隊関係者の発言からも、見えてこなければならない主操縦士(機長)の姿が見えてこない。

 副操縦士が一人で操縦していたということなら理解できるが、通常のヘリコプターと同様に機長(主操縦士)と副操縦士の2人態勢の操縦となっているという。

 当然、副操縦士の操縦に自らは操縦に熟練しているであろう機長が補佐しなければならないはずだ。

 機長の姿が見えてこないということは機体の不具合を隠す必要上、そのことに替えて副操縦士を墜落事故の単独犯に仕立てる企みではないかとさえ疑うことができる。

 アメリカ側のこの調査報告書を受けてかどうか分からないが、沖縄県はオスプレイの安全性を巡って防衛省に質問状を提出、防衛省は9月21日、沖縄県側に回答を提出している。《オスプレイ:操縦士経験も非公表 県の質問へ回答》沖縄タイムズ/2012年9月22日 09時39分)

 副操縦士の熟練性に関する言及のみを取り上げる。

 沖縄配属操縦士の配属前の飛行訓練時間についての質問に対して――

 防衛省回答「部隊の能力にかかわるため公表できない。

 飛行時間を含め、米の規則に従い、必要な資格を得て、米本土で経験を積むと米側から説明を受けている。

 通常どの部隊でも副操縦士の中に経験の浅い者が含まれる。その副操縦士が飛行する場合、経験を積んだ機長が指揮・監督する

 以上の回答はアメリカ側の見解をそのまま追認した内容でなければならない。オスプレイーに関わる日本側の具体的な知識は皆目所有していないはずだからだ。

 また、モロッコの墜落事故が経験の浅い副操縦士の不慣れな操縦という人為的ミスを受けて、「副操縦士が飛行する場合、経験を積んだ機長が指揮・監督する」という規則を操縦マニュアルに新たに付け加えたというわけでもあるまい。

 戦闘時の不可抗力といった特殊事例を除いた機体安全運行の最終責任者はあくまでも機長である。当然、「副操縦士が飛行する場合、経験を積んだ機長が指揮・監督する」役目は一般的慣行としていなければならないはずだからだ。

 当然、モロッコでの米・モロッコ軍合同訓練に於いても、「副操縦士が飛行する場合、経験を積んだ機長が指揮・監督」していたはずだ。

 だが、墜落は機体上の欠陥ではなく、経験の浅い副操縦士単独の人為的ミスだとするアメリカ側の主張やその線に添った報告書を取り上げた記事からは、「副操縦士が飛行する場合」は、経験の浅いその操縦を補って役立たなければならない「経験を積んだ機長」「指揮・監督」がどういった理由で生かされなかったのか、どういった理由で機能しなかったのか、そのイキサツは一切見えてこない。

 もし「経験を積んだ機長」「指揮・監督」の技術が経験の浅い副操縦士の操縦に何ら影響を与えることができなかったということなら、いわば、「十分な速度も出ておらず、後ろから強い風が吹く状況の下で、規定の角度以上にプロペラを前に傾けた」副操縦士の未熟な操縦を機長は自らの「指揮・監督」を無為にして見逃したことになり、機長と副操縦士の共犯説を採るべきで、副操縦士単独犯説は副操縦士一人に罪を着せる冤罪の疑いが出てくる。

 6月のフロリダ州でのオスプレイ墜落事故は操縦士(機長)と副操縦士二人の操縦ミスとなっていて、共犯説を採っているが、特に操縦が難しいとされているオスプレイの機長は高度の操縦技術を備えていなければならないことに反して機長の経験が操縦に役立たず、副操縦士並みだったことの暴露にしかならないことも疑いを抱かせる。

 いずれにしても、モロッコ墜落に於ける操縦経験が浅いことからの副操縦士単独犯説に見えるその操縦の無効性のみを浮き立たせて、その無効性を補って有効であるべき「副操縦士が飛行する場合、経験を積んだ機長が指揮・監督」の一般的慣行が補うことのできなかった矛盾した、経験を積んでいるはずの機長の無効性を見えなくしている情報発信の数々が、米側調査に否応もなしに疑惑を与えることだけは確かである。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする