会計検査院から復興遅れの原因の一つを指摘される政治の倒錯性

2012-10-29 08:00:45 | Weblog

 東日本大震災復興予算のうち、被害が大きかった7県の58市町村平成23年度交付インフラ復旧費等執行率が全体で48パーセント余りにとどまっていたことと、その原因を、調査した会計検査院が指摘したと、次の記事が書いている。

 《震災復興予算 執行率は48%余》NHK NEWS WEB/2012年10月25日 19時0分)

 平成23年度交付復興予算は6900億円余り。

 執行率は58市町村全体で48.8パーセント程度。千葉県浦安市や福島県双葉町など6市町は20パーセント以下。

 原因として会計検査院は公共事業急増に対する自治体職員不足を指摘しているという。

 復興予算のうちの道路等のインフラ復旧や高台移転等の公共事業費を震災前の公共事業費と比較、宮城県山元町や石巻市など東北3県の10市町村では震災前の10倍超、37市町村で震災前より増加。

 対して公共事業関係等の技術系専門職員は全体で2968人から3176人と+208人の7%の増加のみ。

 さらに専門門職員1人当たりの業務量の震災前と震災後の予算額比較では、岩手県釜石市が約20倍、宮城県山元町と石巻市が約15倍の急増。27市町で2倍超。

 こういった状況にあることから、被災自治体から被災地外の自治体からの中長期的な応援職員の派遣を求める声が出ているという。

 このような声が国に情報として入っていないのだろうか。入っていながら、適切に対応し切れていないということなのだろうか。

 調査した会計検査院は職員不足が復興を遅らせている原因だと見做して、国に対して自治体での復興事業の実施状況や事業に携わる職員の体制などを適切に把握し、必要な支援を行うよう求めているという。

 政府は被災地に寄り添うと言いながら、あるいは被災住民に寄り添うと言いながら、寄り添われる側は寄り添いを裏切られる状況に曝されている。

 だが、何よりも問題なのは国が自ら手当をしなければならない復興遅れの原因の一つを会計検査院から指摘を受ける政治の倒錯性であろう。

 野田首相の「福島の復興なくして日本補再生なし」の名言を虚ろにする倒錯性である。

 前々から除染作業に自衛隊員をなぜ活用しないのかと思っていたが、活用したなら、彼らの社会勉強にもなるはずだ。自衛隊という一つの世界にばかり閉じ込もっていると、視野が固定化し、思考の硬直化を招きかねない。

 また自衛隊はPKO活動等で道路工事や橋梁設置工事等に従事している。土木工事関係の技術系専門兵士を相当数抱えているはずだ。なぜ派遣しないのだろうか。

 軍隊が強いだけでは、総合的な国力となる経済や社会が強くないと、国を守る継続的な力を発揮することはできない。戦前の日本はアメリカの工業力・経済力を侮り、自らの国力を過大評価して戦争を仕掛け、痩せ馬の先っ走りよろしく緒戦は戦勝につぐ戦勝を演じたが、アメリカよりも遥かに劣る国力が戦争の継続を許さず、軍事力をたちまち失速させていった。

 自衛隊にしても復旧・復興に直接関わることによって国力増強に貢献できる。

 また、除染も一般住民の雇用を脅かさない範囲で一般自衛官を活用すべきではないだろうか。

 10月18日の参院決算委員会で復興予算の流用を問われて、枝野詭弁家経産相は次のように答えていることも、検査院の上記指摘を踏まえると、政治の倒錯性そのものの自治体に対する責任転嫁となる。

 枝野経済産業相「地域の(復興)計画が立たないなどさまざまな事情から被災地で予算を執行できていないことと、被災地以外に予算が使われていることは、理由も原因も別の話だ」――

 多くが問題としていることは復興予算の被災地外流用であって、流用せずに被災地に集中投資して復興を促進すべきだという文脈の批判でありながら、自治体の復興計画が立っていないから、予算が執行できていないを以って復興遅れの原因とする詭弁を用いている。

 だが、予算未執行が自治体の復興計画遅れを原因としていて、それが復興遅れを招いていたとしても、会計検査院が指摘しているように自治体の復興計画遅れ自体が技術系専門職員の不足から来ているとすると、そのような実態を把握して国が支援すべきを支援できていない状況は国が負うべき責任であって、それを自治体の復興計画遅れのみを狙い撃つのは自治体に対する責任転嫁となる政治の倒錯性以外の何もでもない発言となる。

 野田首相にしても、政治の倒錯性を演じて何も感じていない。10月27日、被災地岩手県を視察、130世帯300人が暮らす山田町織笠地区仮設住宅を訪問。

 住民代表「住宅の高台移転の早期実現をお願いしたい」

 野田首相「1日も早く恒久的な住宅に住めるようにするため、どのような対応ができるか、重要課題として受け止めたい」(NHK NEWS WEB

 高台移転の早期実現は前々からの要望である。早期実現が早期実現となっていない。色々な難しい問題もあるだろうが、先ずは予算執行率を高めることができるように自治体の職員不足に手を打ち、事業自体を前へ進めることから始めないことには、高台移転の計画も、計画の実施も満足に進まないことになって、政治の倒錯性が続くことになる。

 政治の倒錯性とは政治主導足り得ていない状況を意味するのは勿論のことである。

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