政策が一致するというみんなの党との合流も否定して、独立独歩の姿を見せていた橋下徹「日本維新の会」代表が急にみんなの党に対して連携を主張し出した。
あれあれと思った。魂胆は見え透いている。ここ最近の各新聞社世論調査で日本維新の会への政党支持率が低迷しているのを見て、総選挙での議席への反映を考えざるを得なくなり、早速方向転換に出た変わり身の早さであるのは誰が見ても明らかである。
勿論、政治は自分たちの政策実現の合従連衡駆引きを当たり前の行動としているが、一旦冷たく肘鉄砲を食らわしたみんなの党を改めて招き寄せようというのは変わり身の早さの証明でしかなく、余りに打算的に過ぎる。
《橋下氏 みんなの党含め選挙で連携を》(NHK NEWS WEB/2012年10月4日 20時31分)
10月4日(2012年)の記者会見。
橋下市長「みんなの党とは政策が一緒なので、第3極が1つの固まりとして有権者に選択肢を提示するのが、本来の在り方だ。みんなの党と日本維新の会が、2つの別個独立のグループのままで選挙を迎えるのは国のためにならない。
1つの固まりがどういうことかは、幹事長を務める大阪府の松井知事が、今やっている」
「2つの別個独立のグループのままで選挙を迎えるのは国のためにならない」とは、合流を念頭に置いているのだろうか。「2つの別個独立のグループのまま」であっても、選挙協力にしても政治的連携にしても可能な方法はあるからだ。
合流とまで念頭になくても、「第3極が1つの固まりとして有権者に選択肢を提示する」ことが「本来の在り方」と言う以上は、なぜみんなの党との間の合流話を双方が納得のいく形で纏め上げることができなかったのだろうか。
この場合の「本来」とは、「最初から」という意味であるはずだ。最初からの「在り方」であるなら、時間をかけて「本来の在り方」を達成すべきだったが、主導権争いで終わらせた。
大体が日本維新の会では国会議員団との間に於いて主導権は党執行部にありとする政治決定構造とは矛盾する「本来の在り方」となる。
《日本維新の会 主導権巡る争いが表面化》(NHK NEWS WEB/2011年10月2日 6時10分)
維新の会所属の松浪衆議院議員が自身のHPに「国政での決定は国会議員団ですべきことを橋下代表も認めた」などと書き込んだ。橋下市長の反応。10月1日の記者会見。
橋下市長「国政で、国会議員が中心的な役割を果たすことは間違いない。大きな方針や戦略は国会議員団より私の方が長けているので、私が方針を出す」
「大きな方針や戦略は国会議員団より私の方が長けているので、私が方針を出す」と、自身を優越的且つ独裁的高みに位置づけている橋下大阪市長である、他の党と「本来の在り方」である「1つの固まり」にどうなし得るというのだろうか。
自身を優越的且つ独裁的高みに位置づけているからこそ、みんなの党を解党の上維新の会に吸収させて、自らが主導権を握ろうとしたのだが、渡辺喜美みんなの党代表の主導権とかち合って交渉決裂となったということなのだろう。
だが、鼻息の荒さに反した最近の支持率から、そんなことは言っていられなくなったということか。
また、橋下市長は例え維新の会が衆議院選挙で過半数を超える議席を獲得したとしても、自身は首相に就任しない意向を示しているが、首相には自分はならない、だが、「大きな方針や戦略は国会議員団より私の方が長けているので、私が方針を出す」では、首相を傀儡とすることになり、これまた矛盾することになる。
政治はチーム作業である。例え代表が打ち出した政策であっても、党というチーム全体で議論し、一つの政策意思に纏め上げて正式の政策とするのが民主主義のルールであるはずだ。
みんなの党と維新の会との合流に関わる会談が大阪開かれたのは8月20日夜。この会談で渡辺代表からみんなの党と維新の会が対等な形で合流することの提案があったそうだが、会談は決裂。
8月21日の記者会見。
松井大阪府知事「みんなの党は我々と同じような政策を掲げているが、国会ではみんなの党と一緒に政策を実現する動きがほかの党に広がっていない。みんなの党と組むことは、今のわれわれの考え方にはない」(NHK NEWS WEB)
ここでは連携の条件として政策の一致ではなく、なぜか分からないが、国会に於けるみんなの党の政策の賛同の広がりを基準としている。
橋下大阪市長の8月30日ツイッター。
〈渡辺さんに、僕と知事は、みんなの党をいったんなくして新しいものを作らないと、既成政党に対する第3極にならないのでは?と問いましたが、渡辺さんは、みんなの党の拡大路線でした。みんなの党に、大阪維新の会も全て吸収するような話でした。 〉――
ここでの「第3極」は合流そのものとなっている。
要するに橋下市長は渡辺みんなの党代表にみんなの党の解党を求め、例え党の名称を新しく変えたとしても、実質的には大阪維新の会への合流を求めた。対して渡辺代表はその逆を行って、大阪維新の会のみんなの党への合流を求めたということになる。
対して渡辺代表の反応。9月6日のBSフジの番組。
渡辺代表「みんなの党は2回の国政選挙、地方選を経験し、全国に根っこが生えている。全部解党して(維新側に)来いというのは無理だ。
連携は新党以外にいろいろある。みんなと維新はよきライバル、よき友であればよい。交渉は継続している」(時事ドットコム)
普段の言動からも分かるように自身を優越的且つ独裁的高みに位置づけている橋下大阪市長が自身を渡辺代表の下に置くことはプライドが許さなかったに違いない。何と言っても、「私が方針を出す」意志でいる。
だが、最近のどの世論調査でも、維新の会への期待度が低迷状態にある。特にショックな事態は朝日新聞と読売新聞の世論調査での政党支持率、次期衆院比例投票先共に政権を失うと予想されている民主党を遥かに下回っている人気しか橋下氏を以てしても獲得できていないことだろう。
朝日新聞
政党支持率
自民21(前回15)
民主14(前回16)
日本維新の会2
比例投票先
自民30(前回23)
民主17(前回15)
日本維新の会4(前回-)
読売新聞
政党支持率
自民28(前回21)
民主18%(前回15)
維新2%(前回2)
比例投票先
自民36(前回31)
民主18(前回14)
維新13%(前回16)
決定的なのは政党支持率で少数野党並みの2%しか獲得できていないことだろう。読売新聞の比例投票先では維新は13%獲得しているが、前回の16%から3ポイント下落している。政党支持率との兼ね合いで比例投票先が下落傾向にあるということは今後共下落が予想されることを意味する。
いわば自身を優越的且つ独裁的高みに位置づけた独立独歩周囲に振り撒きながらも、そのことに反してみんなの党との連携を打ち出したのは世論調査が走らせた目敏い、機を見るに敏な変わり身の早さといったところに違いない。
と言うことは、ご都合主義の独裁者の姿を現したと言うこともできる。