7月29日(2013年)、古屋拉致問題担当相がベトナムを訪問して、グエン・タン・ズン首相と会談、拉致問題協力の要請をしたと次の記事が伝えている。
《拉致問題で協力=越首相、古屋担当相に表明》(時事ドットコム/2013/07/29-21:00)
ズン首相「2006年の日越首脳会談でも協力で合意しており、引き続きしっかり支援していきたい」――
この訪問自体とズン首相の発言内容から、拉致解決に懸命に取り組んでいるというアリバイ作りであることを窺わせることになる。
古屋拉致担当相の7月29日ベトナム訪問前日の7月28日午後、飯島勲内閣官房参与が平壌空港に降り立った途端に秘密でなくなった、いわば出発から飛行に乗っている間までは秘密であった5月14日からの5月18日までの訪朝“秘密”外交の“成果”報告を長野県辰野町の講演で行なっている。
飯島勲が7月13日から16日まで北京を訪問、中国側関係者と接触して得た日中首脳会談の見通しを話した後に自身の訪朝“秘密”外交についても、ついでなのか、自身の外交能力を誇示するためなのか、後者なのは古屋拉致担当相のベトナム訪問自体が証明しているが、発言している。
飯島勲「圧力をかければ解決するという考えはとんでもない。対話が必要だ。
私(の訪朝)が第1幕。1、2カ月の間に必ず第2幕の反応が出てくる」(別時事ドットコム)――
自身が見立てたとおりの解決に向けた見通しがそれ程にも立っているなら、古屋拉致担当相の翌日7月29日のベトナム訪問、拉致問題解決の協力要請は矛盾することになる。
だが、協力要請が偽装であるはずはないから、飯島の“成果”報告自体を外交能力誇示のガセネタと断定しなければならない。
古屋拉致担当相は北朝鮮の労働党とパイプを持つベトナム共産党のレ・ホン・アイン書記局常務とも面会し、支援を働き掛けたということだが、北朝鮮に対して直接打つ手がないから、仕方なく周囲に協力を求めたという経緯を取っているはずだ。
だが、そのような経緯を拉致解決に向けた取り組みの一つとしていること自体、アリバイ作りとならないだろうか。
古屋拉致担当相は拉致被害者が拉致された現場を視察して関係者から話を聞くといったことをしているが、北朝鮮に対して打つべき手に直接的に役立っていくわけではないにも関わらず視察を行って拉致解決に向けた取り組みの一つとしているということは拉致解決に懸命に取り組んでいるというアリバイ作りそのものに過ぎないが、勿論、ベトナム協力要請が有効であるなら、アリバイ作りの疑いは晴れる。
協力要請が有効でないことは、ズン首相の「2006年の日越首脳会談でも協力で合意しており」という発言が証明することになる。
この日越首脳会談は2006年10月、現在と同じグェン・タン・ズン首相が訪日して安倍晋三との間で、さらに11月に安倍晋三がハノイを訪問して同じくグェン・タン・ズン首相との間で計2度行なっている。
どちらの首脳会談か分からないが、2006年後半に日越両国が拉致解決の協力で合意して以降、2013年までの約7年間、ベトナムは拉致解決に何ら役に立っていないことを証明するズン首相の発言ということになる。
にも関わらず、古屋拉致問題担当相はハノイを訪問、北朝鮮の労働党とのパイプに期待し、拉致解決に向けた取り組みの一つとして協力を要請した。
アリバイ作りでなくて、何であろう。
問題は安倍晋三までがこのアリバイ作りの一人となったことである。
《拉致問題で協力確認=日・ベトナム首相が電話会談》(時事ドットコム/2013/08/01-16:07)
記事は発言の内容は伝えていない。7月29日古屋圭司拉致担当相のベトナム訪問に触れながら、8月1日に安倍晋三がベトナムのグエン・タン・ズン首相と電話で会談し、北朝鮮による日本人拉致問題の進展に向けベトナムに協力を求め、ズン首相は理解を示したと解説しているのみである。
但し電話会談は参院選での自民党勝利に祝意を伝達するため、ベトナム側の申し入れで行われたと伝えていて、10月の東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議などに向け連携していくことを確認したという。
安倍晋三は電話会談の相手であるズン首相に2006年の首脳会談時、拉致解決に向けた協力を要請、協力一致で合意しているのである。
だが、ベトナム共産党の北朝鮮労働党に対する太いパイプを以てしても、ベトナムの協力は今日に至るまで、拉致解決に向けた実質的進展という意味では何一つ役に立っていなかった。
日朝の外務当局者クラスの会談開催の仲介程度は役に立っていたかもしれないが、問題は日本政府がどういった政策で北朝鮮に対して臨み、北朝鮮をして拉致問題討議のテーブルに着席させるかであって、第三国に対する協力要請云々ではないはずだ。
やはり北朝鮮に対して打つ手を見い出すことができないために拉致解決に懸命に取り組んでいると見せかけるアリバイ作りということになるはずだ。