原子力規制委員会及び原子力規制庁の東電汚染水対策に対する指導と首相官邸との情報共有の有効性

2013-08-31 03:24:34 | Weblog



 2012年9月に環境省の外局として設置された原子力規制委員会の事務局である原子力規制庁(同年同月発足)が東電に対して放射能汚染水貯蔵タンクの監視体制を強化するよう約1年前から再三指導していたと次の記事が伝えている。

 《汚染水漏れ:タンク監視ずさん対応 東京電力再三の指導に》毎日jp/2013年08月29日 16時37分)

 東電は放射能汚染水貯蔵タンク約930基の監視巡回に要員9人のうち2人体制で1日1回のパトロールを実施、1人が2~3時間で450基以上をチェックしていた。
 
 規制庁の話として、現地常駐の規制庁保安検査官の東電に対する指導――

▽パトロール体制の強化
▽監視カメラの増設
▽全タンクに水位計の設置

 ――等を2012年7月から今年6月にかけて10回前後、文書や口頭で指示や指導した。

 指導に対して東電はパトロールの回数を当初の1日1回から2回に増やしただけで、人数は増やさず、カメラを増設したものの死角が残っていたという。

 この対策を以って東電は「改善策を実施した」と規制庁に回答。

 だが、東電は貯蔵タンクから300トンの汚染水漏出事故等を起こし、汚染水問題では後手の対応となっている。

 そして原子力規制委員会が今月8月になって、規制庁と同様の指示を出し、東電はパトロールの要員を50人増やし、回数を1日4回にして、タンクに水位計を設置するなどの改善案を示したという。

 あくまでも改善案であって、改善案通りの実施となるかどうかは今後の問題である。

 記事は、〈東電が適切に改善していれば漏えいの拡大を防げた可能性があり、ずさんな対応が浮かび上がった。〉と解説しているが、規制庁保安検査官が現地に常駐し、約1年前から再三指導していていながら、指導内容の徹底履行をなぜ実現させることができなかったのだろうか。

 指導は履行させてこそ、指導として生きる。だが、生かすことはできなかった。

 要するに「指導」を有効化・効力化させるだけの能力を持ち合わせていなかった。

 規制庁「指導の形が明確にできなかった部分もあり、今後は徹底したい」――

 監督官庁の指導は最初から徹底させなければならないにも関わらず、海への流出も疑われる汚染水の漏出という重大な事態を招いてから、指導を「今後は徹底したい」と言う。

 汚染水問題に限らない、その他多くのケースで、「今後は」、「今後は」と責任履行の後回しが繰返されてきた。

 監督官庁としての責任の形を成していないことの反省も自戒もない。

 東電「規制庁の指導内容を確認できていないのでコメントできない」――

 原子力規制庁は約1年前から再三指導していたと言っているのだから、東電の発言は意味不明となる。今月8月になって規制庁と同様の指示を出した原子力規制委員会と間違えて、その「指導内容を確認できていない」と言うことなら、原子力規制庁の指導に対する東電の杜撰な対応の責任逃れを働かせていることになる。

 いずれにしても原子力規制委員会にして、その事務局である原子力規制庁にしても、東電に対する監督官庁としての役目――監視体制を機能させることができていなかった。このことが何よりの重要な問題であるはずだ。

 監視体制の機能不全が東電の杜撰な対応となって現れた。

 だが、第一番の問題は原子力規制庁の情報を原子力規制委員会が共有する体制となっていたかどうか、共有していたなら、原子力規制委員会の情報を首相官邸と共有する体制になっていたかどうかである。

 原子力規制庁は東電に対して約1年前から再三指導していたにも関わらず、その指導を機能させることができなかった。

 つまり指導だけで終わらせていた。

 対して今月8月になって規制庁と同様の指示を出した原子力規制委員会の対応は、7月22日に既に東電が汚染水の海への流出が続いていたことを認めているのだから、原子力規制庁の情報を共有する体制になっていたとは思えない。

 もし共有していたなら、原子力規制委員会は原子力規制庁が東電に対して指導を機能させているかどうか常に確認し、機能させていないことに気づく原子力規制庁に対する監視体制を取っていなければならなかったことになる。

 だが、原子力規制庁は東電に対する指導を1年間、満足に機能させることができないでいた。そして原子力規制委員会は今月8月になって原子力規制庁と同じような指示を出した。

 最早指示を出すことではなく、東電に対して指示に従わせることが問題になっていたはずだ。

 最後に原子力規制委員会が原子力規制庁と情報を常に共有する体制にあり、共有した情報を原子力規制委員会が首相官邸と共有していたかどうかである。

 だが、安倍晋三は8月7日の原子力災害対策本部会合で汚染水対策は「東京電力に任せるのではなく」と言い、茂木経産相は8月26日に現場を視察して、「汚染水の対策は東電任せで」あったと言っているところを見ると、東電の汚染水対策状況、あるいは原子力規制庁の東電に対する約1年前からの再三の指導を原子力規制庁が満足に機能させることができず、結果的に1年間も東電任せにしてきたことの情報を把握も共有もしていなかったことになる。

 もし首相官邸が原子力規制委員会や原子力規制庁と情報を共有する有効な監視体制となっていたなら、東電が汚染水対策に関わるコストのカット――なるべきカネをかけまいとした姿勢が結果的に人員の面でも設備の面でも脆弱で杜撰な態勢を築くことになっていたのだから、政府予算の予備費の活用を含めた財政措置といった言葉は今更ながらに出てくることはなかったはずだ。

 要するに東電の汚染水対策に首相官邸も原子力規制委員会も原子力規制庁も情報を共有し合って有効足らしめる体制を相互に築いていたようには見えず、それぞれに監督組織としての、あるいは監視組織としての役目を機能させることができていなかった。

 首相官邸も原子力規制委員会も原子力規制庁も責任を果たしていなかったということである。  

 これが東電任せの実態と言ったところではないだろうか。

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