大畠民主党幹事長が8月11日、豪雨被害視察先の盛岡市で、夏休み入り8月10日初日早々にゴルフを楽しんだ安倍晋三を批判している。《大畠氏、首相のゴルフを批判 豪雨被害視察で》(TOKYO Web/2013年8月11日 17時21分)
大畠民主党幹事長「大規模水害で犠牲者が出ている中、笑顔でゴルフに興ずる首相の神経は全く理解できない。
(安倍晋三が約10日間の夏休みに入っていることに)被災された人々は休みどころでない。首相も国民と共にあってほしい」――
続いて海江田民主党代表が安倍晋三のゴルフを批判した。
《政府 秋田と岩手に調査団派遣》(NHK NEWS WEB/2013年8月12日 23時38分)
記事は秋田県と岩手県を襲った8月9日の豪雨雨量は平年の1カ月分を上回る記録的な大雨となり、秋田県仙北市で発生した土石流では4人が死亡、1人行方不明の被害を出していることを受けて、政府は被害状況把握のために8月13日に調査団を派遣することを決めたと伝えている。
8月9日の豪雨被害から3日目の8月12日調査団派遣決定であり、4日目8月13日の現地入りということになる。
同記事は記事末尾で海江田民主党代表の安倍晋三ゴルフ批判の党本部での8月12日の発言を伝えている。
海江田民主党代表「被害が出た自治体では、亡くなったり、行方が分からない人がいる。安倍総理大臣には、ゴルフをするなとは言わないが、タイミングがあると思う。政府が現地に調査団を派遣するのが明日になるというのは遅すぎるし、危機意識が全くない」――
8月11日大畠民主党幹事長、8月12日海江田民主党代表というふうに安倍ゴルフ批判で両者揃い踏みしたことになる。
「安倍総理大臣には、ゴルフをするなとは言わないが」と半ば譲歩しているようなことを言っているが、なぜ、「ゴルフをしている場合だろうか」と糾弾する語調になれなかったのだろうか。糾弾語調になって初めて、最後の「危機意識が全くない」という批判をより強めることができる。
「ゴルフをしている場合だろうか。タイミングがあったはずだ。タイミングを見ることができなかったとしか言い様がない」・・・・・
考え方、話し方がまとも過ぎるから、面白みが出てこない。
記事が紹介している8月雨量で平年の1カ月分を上回る記録的な大雨とは、秋田県の場合、局地的に100ミリを超える猛烈な雨が降り、半日の雨量が平年の8月1カ月分の2倍近い大雨だったというから、気象庁の「秋田県ではこれまでに経験したことのないような大雨になっている」(NHK NEWS WEB)という情報発信が実況中継でも聞くような危機的な現実味を持つことになる。
安倍晋三は山口県で1人死亡、2人行方不明、島根県で1人行方不明の7月28日の局地的豪雨に見舞われた両県の被害状況を視察するために、1週間後の8月4日午前島根県の被災地を、8月4日午後山口県の被災地を訪れている。
島根県では小林淳一島根県副知事らと会い、災害復旧事業で国の補助率を引き上げる激甚災害の指定に関し「作業を加速化させるよう指示した」と発言している(スポーツ報知)。
この3日前の8月1日の記者会見で菅義偉官房長官は激甚災害指定を検討する考えを示したという(同スポーツ報知)。
山口・島根両県に対する被害把握のための政府調査団派遣は7月28日豪雨翌日の7月29日という素早い対応で、同夜、山口県入りしている(FNN)。
すべてが抜け落ちのない、素早い危機管理で回っている。
そして安倍晋三自身は8月10日から夏休みに入り、8月10日夏休み入りの初日に山梨県鳴沢村の別荘近くのゴルフ場でゴルフに打ち興じている。
山口が選挙の地元ということもあるだろうが、個人的な意味合いよりも一国のリーダとしての立場からの真に県民の生命・財産及び県の被害を考えての視察であったなら、山口・島根の被害を遥かに上回る秋田・岩手豪雨被害に対しても(豪雨は山形県や福島県にも及んで、かなりの被害を出しているが)、同じ対応を取らなければ、国民の生命・財産及び国土を守る危機管理の点からも、一国のリーダーとしての公平性を欠くことになるはずだ。
だが、8月9日には気象庁が秋田や岩手、山形、その他の県の河川氾濫の警戒、土砂災害の危険を呼びかけ、テレビ・新聞が河川の刻々と増水していく情景や住民避難の様子、土砂災害発生の状況を順次伝え、翌日の8月10日も引き続いて公民館や学校体育館に避難した住民の様子や、濁流に流された樹木や乗用車の無残な姿、道路寸断の状況等を伝えているにも関わらず、同じ日の8月10日から夏休みを取り、その初日早々の8月10日に「ゴルフをしている場合」ではないにも関わらず、待ってましたとばかりにゴルフのプレーに取りかかった。
東北の豪雨被害が目に入らないかのような、この緊張感のない、緩み切った危機管理の姿は何を意味するのだろう。
目に入っていなかったのは山口・島根の被害状況把握の政府調査団派遣が7月28日豪雨翌日の7月29日という素早い対応と比較した、岩手・秋田両県に対する政府調査団派遣が8月9日の豪雨被害から3日目の8月12日調査団派遣決定であり、現地入り自体は4日目の翌日8月13日という日数の開きが証明している。
この間の8月11日に大畠民主党幹事長が被害地の盛岡市を視察、安倍晋三の東北の被害を脇に置いた他愛(たわい)のないゴルフ三昧を批判し、翌日の8月12日には海江田民主党代表が同じように安倍晋三のゴルフを批判している。
批判されて、慌てて対応したと見られても仕方がないだろう。
安倍晋三のこの山口・島根の被害に対する危機管理と比較した岩手・秋田等の被害に対する危機管理の公平性を欠いた差別を読み解くとしたら、山口・島根の被害に対する危機管理が一国のリーダーとしての本心から出た、ホンモノの危機管理ではなかったという答しか見い出すことができない。
もしホンモノであったなら、ホンモノに他を異なる扱いとする差別は存在しないはずだから、岩手・秋田等の被害に対する危機管理は山口・島根の被害に対する危機管理と同様の抜け落ちのない、素早い対応となって現れていたはずだ。
ホンモノであったなら、少なくとも8月9日の岩手・秋田等の豪雨被害の甚大な進行を情報把握し、進行に応じて8月9日のうちに政府調査団の派遣の必要か否かの検討を菅官房長官に指示していなければならなかった。
指示していたなら、テレビが伝える豪雨情報や官邸からの連絡に時間を取られることになり、「ゴルフをしている場合」ではない状況に見舞われていかもしれないし、山口・島根の被害状況把握のための政府調査団派遣を豪雨翌日可能とすることができたように岩手・秋田の場合も同様の素早い対応を可能とすることができたはずだ。
安倍晋三の8月4日の島根県・山口県被災地視察がホンモノでないとしたら、視察しないまま被害を他処に8月10日から夏休み入りし、ゴルフに耽ることが国民の生命・財産を預かる身として格好がつかないことから、夏休みとゴルフを正当化するための通過儀礼だった視察の疑いが生じる。
豪雨被害が出たために、誰からも批判を受けずに、ああ、これで安心して夏休みに入り、ゴルフに耽ることができるという状況に持っていくにはその前に片付けておかなければならない障害として立ちはだかったことからの、その程度の視察だったというわけである。
後はゴルフに専念するだけとなったために秋田・岩手等の東北の豪雨被害に目を向けることができなかった。
このように経緯を考えなければ、全ての辻褄が合わなくなる。