安倍晋三の汚染水対策「政府対応、国内外にしっかり発信していく」は小賢しいばかりのゴマ化し

2013-08-30 04:54:21 | 政治



 安倍晋三が訪問先のカタール・ドーハで記者会見。東電の汚染水漏出について記者の質問を受け、次のように答えている。

 安倍晋三カタール・ドーハ内外記者会見(首相官邸/2013年8月28日)   

 峯産経新聞記者「この度クウェートやカタールとの間で、原子力安全での協力に合意しましたが、一方で、福島第一原発でタンクから汚染水が漏れ出し、海への流出について国内外の懸念が高まっています。この問題についてどのように対処されるおつもりでしょうか」

 安倍晋三「福島の事故は、東京電力任せにせず、汚染水対策を含めて、国として緊張感を持って、しっかりと対応していく必要があります。

 私から、経済産業大臣及び原子力規制委員長に対し、原因の究明と対応の対策を指示し、経済産業大臣が新たな対策に着手しています。タンク漏水への対応については、政府を挙げて、全力で取り組んでいく所存であります。政府が責任を持って対応し、国内外にしっかりと発信をして参ります」――

 テーブルに目を落としながら話していたから、記者たちが前以て質問を渡しておいて、政府側が答を用意していて原稿に認(したた)めていたのかもしれない。

 最後の「国内外にしっかりと発信をして参ります」のところではしっかりと顔を上げて宣言するように言い切ったが、自分の思いだぞというところを見せたのかもしれない。

 しかし政府は東電の汚染水対策に関しては重大な問題が発生しないように常に情報の共有を図る監視体制を取り、政府と東電共々に問題発生を抑えていくことを以って“国内外への発信”としなければならなかったはずだ。

 だが、そういった監視体制を取らずに東電任せの汚染水対策とし、重大な問題が発生してから、その解決のプロセスとプロセスの到達点としての最終解決そのものを政府は「国内外にしっかりと発信」していくと言う。

 履行すべき責任を履行せず、そのことは問題視せずに今後責任を履行しますと宣言しているようなものである。

 と言うことは、今後の責任履行をすべてとし、これまでの責任不履行はなかったことになる。

 このよう構造の後手の責任履行では前以て備えるという危機管理自体を危うくする。

 今年の4月に福島第1原発の放射能汚染水を貯め込んでおく地下の貯水槽から高濃度の放射性物質を含む汚染水の水漏れが見つかり、5月に2号機海側の放射能濃度観測用井戸地下水から高濃度の放射性物質を検出、連動するように港の海水でも放射性物質の濃度が上昇しても、東電自体が汚染水の海への流出を認めなかったからなのか、政府は何ら危機意識を持たなかった。

 ところが7月22日になって東電は汚染水の海への流出が続いていたことを初めて認めた。

 8月21日、東電は放射性物質に汚染された地下水が今年5月から海洋に流出していたと仮定した場合、港湾内へ流れ出た汚染水に含まれるストロンチウム90が推計で最大約10兆ベクレル、セシウム137は20兆ベクレルに上るとの試算を公表したと「MSN産経」記事が伝えている。

 別のMSN産経記事――《福島第1原発汚染水 排水溝から外洋流出か 東電「可能性否定できない」》MSN産経/2013.8.22 01:12)

 東電は同じ8月21日、汚染水約300トン漏出の地上タンク近くの外洋につながっている排水溝壁面で毎時6ミリシーベルトの高い放射線量を計測したと発表。

 東京電力「汚染した土砂が排水溝に流れた可能性があるが、汚染水が海に流出した可能性も否定できない」――

 記事解説。〈直接外洋に流れれば深刻な事態になるが、すでに海水に混ざっており確認は困難とみられる。〉

 こういったことが既に「国内外にしっかりと発信」されているのである。

 このような“発信”を受けて、福島県いわき市沖の試験的な漁が延期されることとなった。

 東北沖産の魚介類に対する売上減少は風評被害と言うことはできなくなり、消費者の実体性を備えた不安からの売上減少と見なければならないことになる。 

 以上のような汚染水の漏出を受けて、8月28日、原子力規制委員会は「レベル7」から「レベル0」までの8段階に設定してある国際的な原子力事故評価基準をこれまで評価していた「レベル1」から「レベル3」に引き上げた。

 「レベル3」は「重大な異常事象」とされ、平成9年に茨城県東海村で当時の動燃=動力炉核燃料開発事業団の再処理工場で火災と爆発が起きて放射能が漏れ、作業員37人が被曝した事故が該当すると「NHK NEWS WEB」記事が伝えている。

 勿論、こういった危機管理上の失態に関わる情報は“内”ばかりではなく、“外”にも発信されることになる。

 《汚染水漏れ 欧米メディアでも関心高く》NHK NEWS WEB/2013年8月22日 5時6分)

 以下は原子力規制委員会が「レベル3」に引き上げる前の検討中の動きである。

 〈イギリス・BBCは、東京にいる特派員と中継をつなぎ、原子力規制委員会が原子力事故の深刻さを表す評価を引き上げることを検討していると伝えたうえで、この状況は、おととし福島第一原発の原子炉でメルトダウンが起きて以来の深刻な状況だと報告し〉た。

 〈アメリカのCNNテレビは、原発の元技術者をゲストに招いて、「汚染水漏れはどれだけ危険なのか」と題して、現在の福島第一原発の状況について詳しく解説し〉た。

 〈現場は高濃度の放射性物質のため、なかなか近づくことができず、事態を収拾するためにどれだけの時間がかかるか分からないなどと、事態の深刻さを伝え〉た。

 〈ロイター通信は、福島第一原発がおととしの事故以降、最大の危機に陥っていると伝え〉た。

 政府が汚染水対策に関して東電と共に重大な問題が発生しないように情報の共有を図る監視体制を構築せず、東電任せにした責任不履行が招いた重大な結果が“外”への情報発信となって現れた。

 もし情報の共有を図る監視体制を構築していた上での汚染水の漏出だと言うなら、その危機管理の失態はより大きくなる。予備費の活用を含めた財政措置にしても、この期に及んで検討されるのではなく、もっと前に検討、実施されていただろう。

 安倍政権は東電の汚染水対策に関して政府としてやるべきことをやっていなかった。果たすべき責任履行を責任不履行としていた。やるべきことをやらずに、あるいは任履行を責任不履行としていたにも関わらず、重大な問題が発生してから、いわば後始末となる危機管理を「政府が責任を持って対応し、国内外にしっかりと発信をして参ります」と言う。

 小賢しいばかりのゴマ化しではないか。

コメント (1)
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