――同一労働・同一賃金が必要なのは女性非正規雇用者の多くが企業に好都合な賃下げ圧力となっているからである――
世界に冠たる安倍晋三のアベノミクスを以てしても、非正規労働者の増加を止めることができない。逆に格差拡大を増長している。
《非正規労働者、過去最多の1881万人》(MSN産経/2013.8.13 19:20)
8月13日発表の総務省労働力調査詳細集計。
正規と非正規を合わせた雇用労働者(役員除く)の総数は過去4番目の水準の5198万人に対してパートや派遣社員等非正規労働者数は2013年4~6月期平均で前年同期比106万人増1881万人となり、統計を取り始めた2002年以降、過去最多を更新。
対して正規雇用は53万人減。非正規の割合は1.7ポイント増の36.2%。
アベノミクスによって非正規雇用は少しは歯止めがかかってもよさそうなものだが、却って増加に力を貸していることが分かる。
安倍晋三アベノミクス格差拡大は次の統計が証明している。
正規と非正規を合わせた雇用労働者(役員除く)の総数は過去4番目の水準に達する5198万人。いわばアベノミクスによって雇用は確かに増えているが、同時に非正規雇用を増加させている。当然、そこには格差拡大が生じていることになる。
問題は非正規の男女別内訳である。
非正規男性603万人。
非正規女性1278万人。
女性が男性の倍も存在する。
非正規の仕事に就いた理由――
男性。
「正規の職員・従業員の仕事がない」168万人。
「自分の都合のよい時間に働きたい」111万人。
女性。
「家計の補助・学費等を得たい」331万人。
「自分の都合のよい時間に働きたい」301万人。
「正規の職員・従業員の仕事がない」175万人。
具体的に知ろうと、総務省の>《労働力調査(詳細集計)平成25年(2013年)4~6月期平均(速報)》にアクセスしてみた。
男女計 % 男 % 女 %
非正規の職員・従業員 1881万人 - 603万人 - 1278万人 -
自分の都合のよい時間に働きたいから 412万人 23.5% 111万人 20.3% 301万人 25.0%
家計の補助・学費等を得たいから 396万人 22.6% 65万人 11.9% 331万人 27.5%
家事・育児・介護等と両立しやすいから196万人 11.2% 5万人 0.9% 191万人 15.9%
通勤時間が短いから 60万人 3.4% 15万人 2.7% 44万人 3.7%
専門的な技能等をいかせるから 132万人 7.5% 68万人 12.4% 64万人 5.3%
正規の職員・従業員の仕事がないから 342万人 19.5% 168万人 30.7% 175万人 14.5%
その他 214万人 2.2% 115万人 21.0% 99万人 8.2%
男性の「自分の都合のよい時間に働きたい」111万人と「家計の補助・学費等を得たいから」の65万人、「家事・育児・介護等と両立しやすいから」の5万人、「通勤時間が短いから」の15万人の合計196万人、女性の「家計の補助・学費等を得たい」331万人、「自分の都合のよい時間に働きたい」301万人、「家事・育児・介護等と両立しやすいから」の191万人、「通勤時間が短いから」の44万人の合計867万人、男女合計では1063万人、非正規全体に占める56%、全体の半数以上が、自分の都合を優先させて望みを叶えようとする関係上、賃金は二の次、後回しになって、程々のところで手を打つ就職傾向を取るはずだ。
当然、ただでさえ企業が同一労働・同一賃金が厳格に法律で定められているわけではない現状を利用して非正規を増やすことで全体の人件費を抑える傾向にある中で、非正規雇用の半数以上を占める彼らの存在は非正規雇用自体の賃金を下げる圧力となる。
また、非正規の中でそのような合計1063万人の存在の内、男性の196万人に対して女性の867万人という圧倒的多数から判断して、男性よりも女性の方が賃下げの圧力として活躍していることになり、正規雇用に対する非正規雇用の賃金格差の拡大ばかりか、男女賃金格差の拡大に力を貸す構造を取っていることになる。
こういった雇用形態はそれを望む男女、特に女性にとって好都合な雇用形態であるばかりか、企業にとっても人件費抑制の面から、好都合な非正規の男女、特に女性の存在ということになっているはずだ。
これが雇用が増えていると言っていることの実態であるばかりか、安倍晋三がアベノミクスの第3の矢と位置づけている「成長戦略」で普及・促進を打ち出している、正社員と同様に雇用期限はないとしているものの、勤務地や職種、労働時間などについて予め限定された形で働くことを勤務資格とした「限定正社員」は、合計1063万人の勤務形態をそのまま延長させた形を取ることになって、当然、合計1063万人と同様に賃下げの圧力団体となり得る。
そして、やはり男性よりも女性の方がより強い圧力を発揮する集団となる可能性は高いと言うことができる。
当然、企業にとっても「限定正社員」という存在は非正規雇用と同様に人件費抑制の点から便利な雇用形態となる。
こういった便利さは安倍晋三が「成長戦略」の中核として打ち出している「女性が活躍する社会」と称する女性の活用についても反映されることになるはずだ。
安倍晋三は2013年4月19日の日本記者クラブ講演「成長戦略スピーチ」で、女性の活用について次のように発言している。
安倍晋三「現在、最も活かしきれていない人材とは何か。それは、『女性』です。
女性の活躍は、しばしば、社会政策の文脈で語られがちです。しかし、私は、違います。『成長戦略』の中核をなすものであると考えています。
女性の中に眠る高い能力を、十二分に開花させていただくことが、閉塞感の漂う日本を、再び成長軌道に乗せる原動力だ、と確信しています」――
一見、女性の能力を高く買って、男女平等の理想社会の実現を訴えているように見えるが、アベノミクスが女性の雇用増加に力を発揮したとしても、現時点の正規対非正規の割合で言うと、36.2%が非正規に回り、そのうち男性に対して女性が2.1倍を占め、2.1倍の多くが男性以上の賃下げの圧力となることを無視した、そのことに矛盾する、見せかけの女性の能力評価ということになる。
「女性が活躍する社会」の実態は結果的に賃金の安い女性の雇用をも生み出し、彼女たちは賃下げ圧力としても存在するということである。
「『成長戦略』の中核をなす」としても、安価な人材提供の面から成長を担う「中核」となりかねない。安倍晋三が「女性が活躍する社会」を言い、女性に「『成長戦略』の中核」を担わせるがホンモノなら、同一労働・同一賃金を厳格に法律づけるべきだろう。
法律づけて、初めてその言葉はホンモノとなる。法律づけていない以上、ニセモノの言葉を出ない。
尤も企業の見方安倍晋三にはできない相談だろう。