歴史修正主義同志安倍晋三と稲田友美の吉田証言と朝日の誤報のみを根拠とした従軍慰安婦全体像否定の正当性

2014-10-06 10:20:29 | 政治


 「吉田証言」の従軍慰安婦強制連行が虚偽であること、そして朝日新聞の記事が誤報であることを根拠に他の強制連行とその結果としてのセックススレイブ全てに関わる数々の証言を虚偽とするはことできない――

 吉田清治なる人物がその著書の中で第2次世界大戦中、日本軍が朝鮮の女性を強制連行して従軍慰安婦とし、自身も軍令で韓国済州島で女性を強制連行し、慰安婦にしたと告白、日本側唯一の証言者とされていたが、歴史家等の識者によってフィクションとされ、本人もそれを認めたのに対して「吉田証言」に基いてそれを歴史的事実として報道してきた朝日新聞は、それを事実のまま放置、今年2014年8月5日の記事でその証言を虚偽と認めて、自らの記事を誤報とし、謝罪したものの、その謝罪が却って「日本のイメージは大きく傷つけた」、「日本を悪者にした」、「日本を貶めた」等々と非難の嵐を巻き起こし、それが収まる様子を見せていない。

 10月3日の衆院予算委員会でも、アドルフ・ヒトラーを崇拝し、ネオナチの思想を掲げる右翼活動家「国家社会主義日本労働者党」代表山田一成氏とのツーショット写真に収まった、右翼と親和性の高い稲田朋美自民党政調会長が朝日の誤報とその影響について自身の親分である安倍晋三に質問していた。

 稲田朋美「さて、私は弁護士時代から拘ってきたことがあって、それは日本の名誉を守るということであります。それは殊更日本が良いことをしたとか、日本は優れた国民であると言うのではなくて、謂れなき非難に対して断固反論するという当たり前のことを言ってきたわけであります。

 今年の8月5日、慰安婦問題について朝日新聞が32年経って誤りを認め、謝罪を致しました。慰安婦を奴隷狩りのように強制連行をしたという吉田清治氏の証言は虚偽であって、さらには慰安婦と挺身隊を混同したということは誤りだったということは認められたわけであります。

 勿論慰安婦制度は女性の人権に対する侵害であって、悲しい出来事だったと思っています。総理が国連演説で仰っていたように今も存在する紛争時の女性の侵害は絶対に認められませんし、21世紀を女性の人権侵害のない世界にするためには日本は国際社会でリーダー的な存在にならなければならないというふうに思っております。

 しかし現在国際的には慰安婦問題は非常に憂慮すべき事態になっております。国連勧告やらアメリカの非難決議、そして慰安婦の碑が建てられています。そして何が言われているのかと言いますと、戦時中の日本が20万人の若い女性を強制連行して性奴隷にして監禁したと。

 さらに挙句の果てに殺害したという、恰も日本がですね、誘拐、監禁、強姦致死の犯罪集団であるという汚名を広められているわけですが、それは全くの虚偽であるということであります。

  この吉田証言の虚偽を根拠として日本の名誉は地に堕ちていると言ってもいいと思います。国連から性奴隷国家と名指しで批判されて、アメリカの下院では平成19年に日本に対して謝罪をしろと、そして教科書で未来の子どもたちへ教えろと。いわばそれと同じ内容の決議が台湾、オランダでもされております。

 アメリカの各地で非難決議がされて、慰安婦の碑、慰安婦の像が設立されて、恰も日本が性犯罪国家のように見做されている現状があります。
 
 このように世界中で広まっている日本に対する謂れ無き不名誉な汚名を不作為によってそのままにしておくことに私は将来に禍根を残すいうふうに思っております。総理は若手議員の頃から、教科書から慰安婦の記載を削除して、日本の名誉を回復するために尽力を遂げていたわけですけども、今回の慰安婦の問題を巡る状況、そして世界中で地に堕ちている日本の名誉を回復するために政府としてどのように取り組まれるのか、お伺いを致します」

 安倍晋三「ま、本来、個別の報道についてはコメントすべきではないと思っておりますが、しかし慰安婦問題についてはですね、ま、その誤報によって多くの人々が傷つき、悲しみ、苦しみ、そして怒りを覚えたのは事実であります。

 ただ今委員が指摘をされたように日本のイメージは大きく傷ついたわけであります。日本が国ぐるみで性奴隷にした、謂れなき、えー、中傷がですね、今世界で行われているのも事実です。
 
 ま、この誤報によって、そういう状況が作り出された、生み出されたのも事実であると、このように言えますし、かつてはこうした報道に疑義を差し挟むことで大変なバッシングを受けました。

 かつてこの、まさに日本が性奴隷にしたということの判決をクローズアップした番組をNHKがつくったわけでありますが、私が事前に介入して番組を変えさせたという朝日の報道があったわけでありますが、これもですね、中川昭一さんが事前に会っていないということがその後明らかとなり、朝日新聞が認めております。

 私が(NHKの番組制作者を)呼び出したということもですね、そうではないということが明らかになっているわけでございます。

 ま、しかし今日、これが(朝日の吉田証言に基づいた報道が)誤報であったということが明らかになったわけでございます。政府としては客観的な事実に基づく正しい歴史認識が形成され、日本の取り組みに対して国際社会から正当な評価を受けることを求めていく考えでありますし、そのため、これまで以上に戦略的な対外発信を強化していかなければならないと思っております」・・・・・・

 国家主義的兄妹(あにいもうと)の血縁関係を築いている安倍晋三と稲田友美が言わんとしたことは、日本軍が若い女性を奴隷狩りのように強制連行し、従軍慰安婦に仕立てたとする「吉田証言」は虚偽であったにも関わらず、その虚偽に基づいて記事にした朝日新聞の報道によって世界から非難され、まるで日本が性奴隷国家、性犯罪国家であるかのように汚名を着せられることとなり、日本の名誉は傷つけられ、地に堕ちた。朝日がそに報道の誤りを認めた以上、日本の名誉回復に務めなければならないということである。

 このことの裏を返すと、若い女性を強制連行し従軍慰安婦にしたという「吉田証言」が虚偽の証言であることと、その虚偽の証言に基いて記事を書いた朝日新聞が誤報と認めたことの二つの事実のみを以って、日本軍によって若い女性を強制連行し、性奴隷としたとする歴史的事実は一切存在しないとしていることになる。

 だから、性奴隷国家だ、性犯罪国家だと一旦地に堕ちていた日本の名誉を回復しなければならない。

 と言うことは、日本軍によって強制連行されて性奴隷とされたと口々に訴えているインドネシアの元従軍慰安婦やオランダ人元従軍慰安婦、フィリピンや台湾、その他の元従軍慰安婦の証言にしても、全て虚偽の証言ということになる。

 でなければ、「吉田証言」と朝日の誤報のみを根拠に日本軍によって若い女性を強制連行し、性奴隷としたとする歴史的事実は一切存在しないとすることはできない。

 だが、安倍晋三や稲田朋美、その他の国家主義的立場からの歴史修正主義者の口から、その他の証言が虚偽であるとする、合理的な根拠に基づく正当性を与え得る証明を耳にしたことは一度もない。

 「吉田証言」と朝日の誤報のみを根拠とした従軍慰安婦の全体像の否定のみとなっている。

 これらのことに合理性を認めることはできない。

 安倍晋三は朝日の「誤報によって多くの人々が傷つき、悲しみ、苦しみ、そして怒りを覚えたの事実であります」と日本人の精神的被害だけのことを言っているが、『日本軍に棄てられた少女たち ――インドネシアの慰安婦悲話――』プラムディヤ・アナンタ・トゥール著・コモンズ)に記述されている著者の調査には日本への留学話という甘い約束で誘い出されて慰安所と知らないまま、その場所に連れ出されて意に反して強制的に性の生贄にされた少女たちの、年老いてもなお忘れることのできない「傷つき、悲しみ、苦しみ、そして怒り」を訴える証言に触れることができるし、この著書に挿入されている鈴木隆史氏の「私は決してあの苦しみを忘れらない、そして伝えたい」と題した元従軍慰安婦に対する2013年3月と8月の聞き取り調査には、日本の軍人が10人近くトラックに乗って現れて力尽くでトラックに乗せられて連行され、強制的に従軍慰安婦にされた、当時14、5歳の元少女たちの証言にも、「傷つき、悲しみ、苦しみ、そして怒り」の忘れることのできない感情をいくらでも汲むことができ、彼女たちこそ真の精神的被害者であることが理解できる。

 このような感情の斟酌は日本軍占領下のインドネシアでオランダ民間人収容所から日本軍のトラックに強制的に乗せられて慰安所に送り込まれ、強制売春を強いられた未成年を含むオランダ人女性の解放されてからの証言からも十分に可能である。

 強制連行される寸前のオランダ民間人収容所の様子を2007年6月17日当ブログ記事――《広告/従軍慰安婦の〝事実〟の薄汚いゴマカシ - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》から引用していみる。

 オランダ人女性の日記。

 「モドー

1944年2月23日

今日の午後3時一杯の日本兵を乗せて二台の車がやって来た。全バラックリーダー達が歩哨の所に来させられ、そこで18歳から28歳までの全女子と女性は即申し出なければならいと聞いた。この人達に質問されたのは、何歳か、そして結婚しているか子供達は居るかという事だった。その間彼女達は大変きわどく見られた。今又それはどういう意味を持つのだろう?又17歳の二人の女子達が紳士達のリストの中に18歳として記述されていた為率いられた。私達は忌まわしい憶測をしている」――

 安倍晋三は日本の名誉回復のために「政府としては客観的な事実に基づく正しい歴史認識が形成され、日本の取り組みに対して国際社会から正当な評価を受けることを求めていく考えでありますし、そのため、これまで以上に戦略的な対外発信を強化していかなければならない」と自らの取るべき姿勢を述べている。

 その最初の間接的な反応がオランダから発信されている。

 《オランダ外相「河野談話の継承、日本の意向支持する」》asahi.com/2014年10月4日17時55分)  

 オランダ・ハーグの同国外務省での日本メディアを対象とした10月3日の記者会見――

 ティマーマンス・オランダ外相(第2次世界大戦中に日本軍が占領した旧オランダ領東インド(現インドネシア)での慰安婦問題について)、「強制売春そのものであることには何の疑いもない、というのが我々の立場だ。

 河野談話は、この問題に関する両国間の対話の良い前提となってきた。我々は、日本政府が河野談話を継承する意向であることを完全に支持する」――

 「河野談話」が従軍慰安婦の強制連行を認めていることによってオランダ人女性に対する強制連行が歴史的事実として承認され得るとしている。

 いわば河野談話の日本政府継承がなくなれば、オランダ人女性の強制連行の歴史的事実までが失われる恐れが出てくるという意味の発言であるはずである。

 だが、現実には安倍晋三以下の国家主義的歴史修正主義者たちにとって、「河野談話」に関係せずに「吉田証言」の虚偽と朝日の誤報のみを根拠に従軍慰安婦の強制連行と強制売春を全否定している。

 ここに客観的合理性を一切窺うことができない。

 安倍晋三は自身と中川昭一がNHKの番組に介入、内容を変えさせたとする朝日の報道を誤報としているが、薄汚いゴマカシ以外の何ものでもない。

 この件についても2013年11月9日当ブログ記事――《右翼の軍国主義者安倍晋三に近いNH経営委員人事から見る安倍晋三の正体の一つ - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》に取り上げているが、一部を引用してみる。

 《NHK番組改変問題》

 2000年12月8日~10日の3日間、VAWW-NETJapan(以下「バウネット」)が主催して日本軍の性奴隷制を裁くとした民衆法廷(=模擬法廷)「女性国際戦犯法廷」を開廷する。

 2000年12月12日、法廷は「天皇裕仁及び日本国を強姦及び性奴隷制度について人道に対する罪で有罪」の判決を言い渡す。

 2001年1月30日、NHKがこの裁判を取り上げ、ETV特集シリーズ『戦争をどう裁くか』の第2夜『問われる戦時性暴力』として放送。

 2001年7月24日、バウネットは当初の企画通りの放送ではなく、改変されたとして、NHK、NHKエンタープライズ21、ドキュメンタリージャパンの3者を相手取り、「信頼(期待)利益の侵害」「説明義務違反」を問う訴訟を東京地裁に提訴。

 《朝日新聞による政治家介入報道》

 2005年1月12日、朝日新聞は、「NHK『慰安婦』番組改変 中川昭・安倍氏『内容偏り』前日、幹部呼び指摘」との見出しで、経済産業相・中川昭一と内閣官房副長官・安倍晋三からこの番組の編集についてNHK上層部に圧力があったとする報道を行った。

 当時の安倍晋三は教科書から「従軍慰安婦」の記述をなくすことを課題に掲げた国会議員の議連「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」事務局長であった。

 2005年1月13日、長井暁NHK番組制作局チーフプロデューサー(当時)がNHKのコンプライアンス推進委員会へ「政治介入を受けた」と内部告発。

 告発内容。〈安倍・中川が番組内容を知り、「公正中立な立場でするべきだ」と求め、やりとりの中で「出来ないならやめてしまえ」という発言もあった。〉

 NHK調査「NHKの幹部が中川氏に面会したのは放送前ではなく放送の3日後であることが確認され、さらに安倍氏についても放送の前日ごろに面会していたが、それによって番組の内容が変更されたことはなかった。この番組については内容を公平で公正なものにするために安倍氏に面会する数日前からすでに追加のインタビュー取材をするなど自主的な判断で編集を行なった」

 《女性国際戦犯法廷の報道をめぐるNHK裁判》の経緯「Wikipedia」

 2004年3月24日東京地裁判決

 〈「番組内容は当初の企画と相当乖離しており取材される側の信頼を侵害した」として、制作会社のドキュメンタリージャパンの責任を認容し、100万円の支払いを命じたが、「放送事業者には、取材素材を自由に編集して番組制作することが保障される」として、NHK・NHKエンタープライズ21への請求は退けたことから、判決を不服としたバウネットが控訴。〉

 2007年1月29日東京高裁判決

 〈「憲法で保障された編集の権限を濫用し、又は逸脱したもの」「放送番組編集の自由の範囲内のものであると主張することは到底できない」と認定。バウネット「期待権」に対する侵害・「説明義務」違反を認め、NHK、NHKエンタープライズ21、ドキュメンタリージャパンの共同不法行為として3者に200万円の賠償を命じた。NHKは、判決を不服として上告した。

 政治家の介入に関しては、「制作に携わる者の方針を離れて、国会議員などの発言を必要以上に重く受け止め、その意図を忖度し、当たり障りのないよう番組を改変した」(2007年1月30日朝日新聞朝刊記事から)として政治家の介入を認める。〉―― 

 2008年6月12日最高裁判決

 〈上告審では、最高裁判所第1小法廷(横尾和子裁判長)において高裁判決を破棄し、原告の請求を退ける逆転判決を言い渡した。最高裁は本判決においてバウネットの当番組に対する「期待権」は保護されないとの見解を示し、原告敗訴が確定した。

 高裁判決が「NHK幹部が政治家の意図を忖度した」と指摘した政治家の介入について、「最高裁がこの問題をどう判断するかも焦点だったが、争点の判断に必要なかったために判決ではまったく触れられなかった」(産経新聞)としている。〉(以上引用)――

 安倍晋三は以上の経緯を以って政治介入しなかったことが最高裁で認められて朝日は誤報を犯したとしているが、最高裁は政治家の介入問題に判斷を示さなかったのであり、政治家の介入を否定したわけではない。

 また、高裁が政治家の「意図を忖度」したと判断している以上、本人ではなくても、秘書等の本人以外の関係者の、それが面会や呼びつけではなくても電話等の何らかの接触が存在しなかったなら、「忖度」という行為も発生しないのだから、相手が「忖度」しなければならない程の圧力と感じる何らかの接触を政治家側が行ったと見なければならない。

 何の接触も受けずにNHK側が政治家の「意図を忖度」して番組の内容を変える程に安倍晋三等の歴史修正主義者に好都合な公共報道機関というわけではあるまい。

 安倍晋三や稲田朋美といった国家主義に則った歴史修正主義者たちの、従軍慰安婦の強制連行とその強制売春に関しては自分たちの歴史認識に都合のいい情報(虚偽証言や誤報)のみを取り上げて、都合の悪い情報(フィリピンや台湾、その他の元従軍慰安婦の証言)は無視するご都合主義、その非合理性には目に余るものがある。

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