有村治子右翼女性活躍担当相が10月17日(2014年)閣議後に記者会見を開いて、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案」(女性活躍推進法案)を閣議決定したことを伝えた上で、国や民間企業等の女性登用の数値目標やら数値結果やらを上げて、それらがさも大きな成果であるかのように発言している。
と言うのも、女性の登用の人数を上げたに過ぎないからだ。人数が活躍を意味するためには女性本人の能力に基づいた、能力以外に誰の力も借りない自然な形の登用でなければならないはずだ。
数値を設定して、設定した数値に合わせた登用は必ずしも登用される女性本人の活躍を意味しない。数値目標に関係なしに女性の活躍に応じた登用が登用後の活躍を見通すことができることになる。
国にしても企業にしても数値目標に関係なしに女性の活躍に応じて幹部や役員に登用しなければならないはずだが、国が省庁や独立法人に対しては数値目標を掲げ、民間企業には各企業に数値目標の設定を任せて、それらの数値に従わせることにした。
当然、数値目標に応じて登用した女性の場合、登用後の活躍を必ずしも約束するものではないことになる。
どことなく矛盾するような気がする。
有村治子の記者会見発言は、《有村内閣府特命担当大臣記者会見要旨》(内閣府HP/2014年10月17日)に拠った。部分的に抜粋。文飾は当方。
有村治子「政府は、女性の活躍を成長戦略の中核として位置付けており、社会のあらゆる分野において、2020年までに指導的地位に女性が占める割合を、少なくとも30%程度とする目標の達成に向けて、様々な分野で取組を強化してきております。
その一環として、今年3月、特殊法人と認可法人を含む独立行政法人等について、平成27年度末までに、役員に占める女性の割合を全体として6%程度としたい、管理職に占める女性の割合を全体として13%程度としたい、という目標を設定するとともに、計142の法人に対して目標設定を要請いたしました。
お手元に配付してある資料のとおり、各法人の目標設定状況等が出そろいました。各法人が設定した目標値を集計しました結果、27年度の時点において、全体で、女性の占める役員の割合が11.3%、管理職で13.8%となる見込みであり、当初設定をしていた全体目標、すなわち役員で6%、管理職で13%を上回る見通しとなりました。それぞれの法人において御協力をいただいた方々、各府省の関係者の方々に敬意を表し、感謝したいと存じております」
独立行政法人等が「役員に占める女性の割合を全体として6%程度」、「管理職に占める女性の割合を全体として13%程度」と政府から尻を叩かれて、予算に影響するかもしれないと考えたかもしれない、27年度時点の登用目標を政府要請を上回って各法人合計で、「役員の割合が11.3%、管理職で13.8%」となった。
このことを以って有村治子は敬意と感謝を示して成果としている。
まさしく人数ありきである。
有村治子「女性公務員の登用状況についてです。
9月1日現在の指定職に占める女性職員の割合は、今年の夏の人事を踏まえまして、昨年10月から0.6ポイント増の2.8%で、過去最高になりました。安倍政権になってから、指定職に占める女性職員の登用は確実に前進していると数値が示しています。頑張ってこれからも右肩上がりにしていければと考えております」
ここでも人数だけのことを言っている。
「指定職」とは府省の審議官以上の幹部職員だと「NHK NEWS WEB」記事が伝えていた。
民間企業の女性登用については以下の発言をしている。
有村治子「経団連が今年4月に女性活躍アクションプランを策定され、7月には経団連の会員企業の女性の役員、管理職登用に関する実施行動計画をホームページに掲載開始されたことについて敬意を申し上げました。
また、自主行動計画の策定に当たっては、各企業がそれぞれの実態に即して可能な限り具体的な目標設定をしていただくことに御期待申し上げておりますとお願いしてまいりました」――
女性活躍推進法案は従業員301人以上の大企業に対して採用者や管理職に占める女性の割合等について各企業が独自に数値目標を設け、公表するよう義務付けているのみで、その時々の達成度の公表まで義務づけていない。
このような法案の性格が有村治子の発言に現れた。
要するに民間企業の女性登用の数値目標は国の機関に対する一種の上からの指示とは反対に企業の自主性に任せるとした二重基準となっているために国の機関の努力を成果としていた発言と違ってトーンダウンさせざるを得なかった。
政府は経済界に対して一律の数値目標の設定を求めたが、反対されている
10月6日の記者会見。
榊原定征経団連会長「数値目標の形式や項目については、企業の自由度が確保されることが望ましい」
有村治子の民間企業の数値目標に関わるトーンダウンが質疑で釈明に近い発言となって現れている。
中村日本テレビ記者「本日閣議決定された法案について、女性登用の実現については、実質企業にお任せする形になるかと思いますが、本当に女性活躍推進に効果があるとお考えでしょうか」
有村治子「今回の新法案に関しましては、数値目標を301人以上でやっていただける企業にということになります。
今ご指摘がありましたように、企業任せという向きもあることは承知しておりますが、そもそもどのような情報を、どのような目標数値で挙げられるかということも含めて、確かにこれは、それぞれの民間企業の御判断になります。
しかし、どの数値をどのように発表されるかも含めての経営判断でございますし、強制的に、一律この数値で、ということではなく、経団連を始め民間企業もそれを競争力にしたい、あるいは特色を打ち出したい、あるいはそれを新商品の開発につなげたいという思いでやってくださっている方々、その今までの取組に敬意を表して、これからも加速をするとおっしゃっていただいています。
その主体性を尊重して、気持ちよくこの大きな理念に向かって賛同していただけるための、非常に妥当なラインで合意ができたと思っております」――
数値目標設定に関しては、「それぞれの民間企業の御判断」、「どの数値をどのように発表されるかも含めての経営判断」と、同じ趣旨の言葉を二度繰返して、企業の主体性尊重を言っているが、だったら国の機関や地方公共団体に対してもそれぞれの主体性を尊重してそれぞれの運営判断に任せるべきを、上からの指示という一種の強制を柱としている二重基準となっていることが否定し難いために上記のような釈明に近い発言となったはずだ。
確かに日本という国に於ける女性の登用の少なさは日本の伝統としている男尊女卑の精神文化の影響を受けているだろうが、そのことと相俟って結局、人数ありきとしているから、コスト最優先の企業から反対されて、二重基準を内容としなければならなくなる。
このことを裏返すと、予算という名の税金で賄っている国の機関や独立行政法人等はコスト最優先に走る必要がないために、政府の指示に従って早々に数値目標を掲げることができるし、その目標に従って、女性の登用もできることになる。
安倍内閣策定の女性活躍推進法案はそういった性格の法案だということである。
多くの女性が指導的地位に就くのは結構なことである。反対する筋合いはない。但し指導的地位に就いた女性の下で働く者が指導的地位に就いていた男性の下で働いていた者の労働生産性と比較して同等か、それ以上でないと、最初から最後まで人数ありきとなって、そこに女性の真の活躍を見い出すことができなくなる。
〈2012年の日本の労働生産性は、購買力平価で換算して71,619ドル(759万円)であった。これは、OECD加盟34カ国の中でみると第21位にあたる(図3-3参照)。日本の労働生産性をOECD加盟諸国と比較すると、イスラエル(64,430ドル/683万円)や ニュージーランド(63,611ドル/674万円)、韓国(62,403ドル/661万円)といった国を上回るものの、米国(112,917ドル/1,197万円)の約3分の2の水準にとどまっている。〉(《労働生産性の国際比較》)(日本生産性本部)
特に製造業に於ける労働生産性は世界と比較して遜色ないが、ホワイトカラー、特に公務員の労働生産性が国際的に低いと言われていて、そのことが足を引っ張っている全体的な労働生産性の低さであろう。
公務員のムダ意識の希薄性がそのまま反映したコスト意識の低さから見て当然の労働生産性と言えるが、すべての分野に於ける広範囲な女性の活躍によって日本の労働生産性が高まることを期待するしかない。
以下ムダな余談――
もし若かったら、逞しい女性上司の元で働く機会を得て、見えないムチで働け、働けと尻を叩かれたいマゾヒズムは十分に備えている。
宮沢洋一はSなのだろうか、Mなのだろうか。顔からだけ判断すると、どうしてもMに見える。