安倍晋三の「拉致問題を解決しなければ北朝鮮の将来はない」の圧力を金正恩は鼻にも引っ掛けていない

2014-10-31 09:54:02 | Weblog



      生活の党PR

       《非正規労働者の希望に応じた正規への転換推進法案骨子を取り纏め》    

      一昨日10月29日、政策審議会との雇用安定化対策本部の合同会議のを開催
      非正規労働者の現状と課題について有識者からのヒアリングを実施し、非正規労働者の希望に応じた正規労働者へ
      の転換の推進、労働者の職務に応じた待遇の確保に重点をおいた法案の骨子を取りまとめました。詳しくは生活の党HP
      をご覧ください。

 安倍政権は北朝鮮が拉致問題の調査を約束しながら報告が遅れていることに関して北朝鮮側に拉致解決が最重要課題であることを伝えるために10月28日・29日の両日、日本政府代表団を北朝鮮に派遣、ピョンヤンで日朝政府間協議を開催することになり、2日間の協議を終えた。

 協議内容は政府に報告、後日発表されることになった。

 北朝鮮が拉致問題の調査を約束して以後の経緯を日本の対北朝鮮外交の程度を見るために振り返ってみる。

 北朝鮮が「特別調査委員会」を立ち上げて、拉致被害者を始めとするすべての日本人に関する包括的かつ全面的な調査を約束したのは2014年5月26日から5月28日までスウェーデン・ストックホルムで開催の日朝政府間協議である。

 ところが安倍政権は北朝鮮が約束した調査の実効性を疑い出して、「特別調査委員会」の組織や権限等について説明を受けるための局長級による日朝政府間協議開催を北朝鮮側と協議、2014年7月1日に中国・北京で日朝政府間協議の開催に漕ぎつけた。

 つまりスウェーデン・ストックホルムでの日朝政府間協議では「特別調査委員会」の組織や権限等について細部まで詰めていなかった。

 安倍政権は中国・北京での日朝政府間協議で調査の実効性が確認できたとして経済制裁の一部解除に踏み切った。「あなたを信じて待つ」というわけである。

 7月1日北京日朝政府間協議の2日後の7月3日、菅義偉官房長官が記者会見で、最初の調査結果の通報時期について「夏の終わりから秋の初めごろ」との見通しを示した。

 要するに7月1日の協議で北朝鮮側からそう伝えられたのだろう。

 菅官房長官の記者会見の7月3日と同じ日、安倍晋三と同じ単細胞な古屋拉致問題担当相が夜のBS日テレの番組で次のように発言している。

 古屋圭司「拉致被害者はある程度中身は揃っているはず。日本人の遺骨問題、日本人配偶者は拉致と比べて時間がかかるかもしれない」(時事ドットコム

 拉致に関する調査・報告はそんなに時間はかからないだろうとの見通しである。拉致の場合、「中身は揃っている」ことと報告できるかどうかは別問題だとは考えていない。報告できる問題であり、中身が揃っているなら、とっくに報告して、援助という実利を得ていただろう。

 古屋の見通しに物の見事に反して、菅官房長官は9月18日記者会見で北朝鮮側から、「調査は全体で1年程度を目標としており、現在はまだ初期段階にある。現時点でこの段階を超えた説明を行うことはできない」(NHK NEWS WEB)という連絡があったことを明らかにした。

 あなたを信じて首を長くして待ったが、物の見事に裏切られた。美しい若い女に翻弄される男の姿が日本の対北朝鮮外交から見えてこないことはない。

 安倍政権は「夏の終わりから秋の初め」とした初回報告が遅れた理由の説明を受けるための日朝政府間協議を交渉、9月27日に中国・瀋陽で開くことにした。
 
 当日、日本側は拉致問題の調査を最も重視していること、調査を迅速化と迅速な結果報告を求めたのに対して北朝鮮側は再調査は初期段階であり、具体的な調査結果を報告できる段階にはない、進捗状況は日本側が平壌を訪れ、担当者から直接説明を受けるよう求めたという。

 いわば更に待たせる手に出た。しかも日本側がノコノコとピョンヤンに出掛けざるを得ない状況をつくり出しまでして。調査して報告しなければならないのは北朝鮮でありながら、こちらに出掛けてこいとしたのである。

 安倍政権は現段階での調査の現状について詳細な説明を受けるため、北京の「大使館」ルートを通じて調整を行い、今回の10月28日・29日両日の北朝鮮・ピョンヤンでの日朝政府間協議開催ということに相なったというわけである。

 以上見てきた日朝政府間協議の経緯から窺うことのできる安倍対北朝鮮外交で分かったことがある。

 北朝鮮当局が10月29日午前の日朝協議の冒頭取材をTBS記者に限って拒否した「47NEWS」記事が伝えている。報道陣が宿泊先のホテルから協議が行われる特別調査委員会庁舎へ移動する際、北朝鮮側がTBS記者の車への乗り込みを認めない形で取材拒否が行われたという。

 北朝鮮関係者「10月28日夜に放送された番組の一部に、北朝鮮の体制を批判するような不適切な表現が含まれていた」(同47NEWS)   

 この出来事から窺うことのできる事実は、北朝鮮は日本のありとあらゆる動向を逐一監視しているということであろう。そしてありとあらゆる動向の中から北朝鮮に関わる動きや情報を抽出、利害損得に応じてそれら動きや情報を分析・蓄積して、日本に対して自分たちの取るべき行動の主たる決定要件としている。

 その一つがTBSの北朝鮮批判報道に対して取材拒否という行動となって現れた。

 と言うことは、このことの裏を返すと、北朝鮮側の事情――経済困窮とか日本の経済援助の必要性等は自分たちにとっての利害損得上の取るべき行動の主たる決定要件となっていないことを示す。

 もしなっていたなら、一報道機関に過ぎないTBSの北朝鮮批判報道など無視するはずだ。

 いや、こういった問題が起こるよりも前に、既に触れたように拉致問題を解決して、経済の実利を手に入れていただろう。

 安倍晋三の対北朝鮮外交の基本は「圧力と対話」であるが、圧力により重点を置いている。その主な柱は経済制裁であるが、安倍晋三は日本の圧力に北朝鮮国家の命運を左右する決定的な意味を持たせている。

 10月22日の首相官邸でのぶら下がり対記者団発言。

 安倍晋三「今回の派遣は、特別調査委員会の責任ある立場の人に対して、われわれは拉致問題を最重要課題として考える、拉致問題の解決が最優先であるということをしっかりと伝えるために派遣すること、それが目的です。まさに調査をする責任者に私たちの一番大切な目的は何かということをしっかりと伝えなければならないということです。そして、この調査に直接関わる方々、責任者から進捗状況について話をしっかり聞く。そして先方に対して、正直に誠実に対応しなければならないということを先方に、責任者に伝えることが今回の派遣の目的です。 

 そして、我々はこの(派遣の)決断をするに際して、私は基本的に拉致問題を解決するためにはしっかりと北朝鮮に圧力をかけて、この問題を解決しなければ北朝鮮の将来はないと、そう考えるようにしなければならないと、ずっと主張し、それを主導してきました。その上において対話を行っていく。まさにその上において今対話がスタートしたわけです。北朝鮮が『拉致問題は解決済み』と、こう言ってきた主張を変えさせ、その重い扉をやっと開けることができました」(産経ニュース

 「(拉致の)問題を解決しなければ北朝鮮の将来はない」
 
 安倍晋三のこの発言が金正恩にとっての取るべき行動の決定要件になる程の圧力とならなければ、意味を有しないことになる。しかも「(拉致の)問題を解決しなければ北朝鮮の将来はない」とする安倍晋三のこの発言は、本人自身が「ずっと主張し」と言っているように今回が初めてではない。機会あるごとに発信している。その都度、北朝鮮側はその情報を把握、自分たちの取るべき行動の主たる決定要件となり得るかどうか考慮・検討して、いざというときのための抽き出ししまい込んでいたはずだ。

 ブログに何度か利用したが、2012年8月30日、フジテレビ「知りたがり」

 安倍晋三「ご両親が自身の手でめぐみさんを抱きしめるまで、私達の使命は終わらない。だが、10年経ってしまった。その使命を果たしていないというのは、申し訳ないと思う。

 (拉致解決対策として)金正恩氏にリーダーが代わりましたね。ですから、一つの可能性は生まれてきたと思います」

 伊藤利尋メインキャスター「体制が変わった。やはり圧力というのがキーワードになるでしょうか」

 安倍晋三「金正恩氏はですね、金正日と何が違うか。それは5人生存、8人死亡と、こういう判断ですね、こういう判断をしたのは金正日ですが、金正恩氏の判断ではないですね。

 あれは間違いです、ウソをついていましたと言っても、その判断をしたのは本人ではない。あるいは拉致作戦には金正恩氏は関わっていませんでした。

 しかしそうは言っても、お父さんがやっていたことを否定しなければいけない。普通であればですね、(日朝が)普通に対話していたって、これは(父親の拉致犯罪を)否定しない。

 ですから、今の現状を守ることはできません。こうやって日本が要求している拉致の問題について答を出さなければ、あなたの政権、あなたの国は崩壊しますよ。

 そこで思い切って大きな決断をしようという方向に促していく必要がありますね。そのためにはやっぱり圧力しかないんですね」――

 安倍晋三自身が認識していようがいまいが、拉致問題解決か、金正恩政権の、あるいは北朝鮮国家の崩壊か、二者択一を迫る情報を北朝鮮に向けて発信した。

 自民党総裁選への2012年9月12日の出馬表明後の2012年9月17日の「MSN産経」のインタビュー。

 安倍晋三「金総書記は『5人生存』と共に『8人死亡』という判断も同時にした。この決定を覆すには相当の決断が必要となる。日本側の要求を受け入れなければ、やっていけないとの判断をするように持っていかなければいけない。だから、圧力以外にとる道はない。

 金正恩第1書記はこの問題に関わっていない。そこは前政権とは違う。自分の父親がやったことを覆さないとならないので、簡単ではないが、現状維持はできないというメッセージを発し圧力をかけ、彼に思い切った判断をさせることだ。

 つまり、北朝鮮を崩壊に導くリーダーになるのか。それとも北朝鮮を救う偉大な指導者になるのか。彼に迫っていくことが求められている。前政権よりハードルは低くなっている。チャンスが回ってくる可能性はあると思っている」――

 北朝鮮の崩壊か、北朝鮮の救出か、生殺与奪の権を握っているのは安倍政権だと言わんばかりの情報を発信している。

 2013年9月16日の『すべての拉致被害者を救出するぞ!国民大集会』での発言。

 安倍晋三「私達の使命はすべての拉致被害者のご家族の皆様が、自分のお子さん達を、そしてご親族を、自らの手で抱きしめる。その日を目指して、そしてそのことが可能になるまで、安倍政権の使命は終わらない。こう決意を致している次第です。

 何としても安倍政権の間にこの問題は何とか解決をしていく決意であります。安倍政権におきましてはこの問題に精通をしている古屋圭司議員に担当大臣を務めてもらっております。そして古屋大臣の下で、まさに今日も出席をしておられる松原仁さんや多くの各党の皆さんにも参加をしていただいて党派を超えて、オールジャパンでこの問題を何とか解決をしていきたいと思います。まさに知見を集めて、情報を集めていかなければこの問題は解決をしません。

 私は総理に就任をいたしまして、すでに20カ国訪問をしているわけですが、必ず拉致問題について説明をし、各国首脳の理解と支持を訴えているところです。幸い、国連にも新たな調査委員会ができて、カービーさんがこの前、日本へやって来られました。

 しかしまだまだ、世界各国のこの問題に対する理解は十分と言えないわけですから、我々もさらに、しっかりと、国際社会と私達の認識を、共通の認識を持てるように努力を重ねながら、北朝鮮に対する圧力を強めていかなければならないと思います。

 この問題を解決をするためには、何と言っても北朝鮮側にこの問題を解決をしなければならないと、この問題を解決をしなければ国家として今後繁栄をしていくことはできない、と認識させなければならない。まさに圧力をかけながらなんとか対話に持ち込みたいと思っている次第です」(首相官邸HP

 果して北朝鮮国家の崩壊か、北朝鮮国家の将来の繁栄か、全ては日本との関係にかかっているとする、あるいはその命運を日本が握っているとする言葉の圧力が金正恩にとっての取るべき行動の主たる決定要件となり得ていたのかどうかは10月28日・29日両日の日朝政府間協議の結果が教えてくれる。

 《徹底した調査と誠実な報告 粘り強く求める》(NHK NEWS WEB/2014年10月31日 4時17分)

 記事によると、安倍晋三は10月30日夜、岸田外相らと共に首相公邸で北朝鮮による拉致被害者らの調査を巡ってピョンヤンで北朝鮮の特別調査委員会との協議を行った外務省の伊原アジア大洋州局長から協議の内容の報告を受けた。その後、記者団に発言している。

 安倍晋三「拉致問題解決に向けた日本の強い決意を北朝鮮の最高指導部に伝え、迅速な調査と一刻も早い結果の通報を要求した。北朝鮮側からは、過去の調査結果にこだわらず新しい角度からくまなく調査を深めていくとの方針が示された。特殊機関に対しても徹底的に調査を行うとの説明もあった」 

 要するに北朝鮮は調査を約束してから5カ月も経っていながら、報告の約束の時期を違えて何一つ結果を出さずに新たな調査方針を示し、当初からそういう姿勢でなければならないはずだが、今更ながらに徹底的な調査を約束したというのは異常である。

 記事が1回目の調査結果の報告の時期なども示さなかったと伝えているが、このことも異常である。最初の報告の時期、「夏の終わりから秋の初めごろ」は適当に口にしただけのことだったことになる。カラ約束は一度は通用しても、二度目は通用しなくなる。そのための時期提示の回避と見ることもできる。

 どれもこれ異常に見えるが、安倍政権は異常とは見ていないようだ。

 政府「北朝鮮側から『過去の調査にこだわらない』という言質を引き出せたことは半歩前進だ」――

 5月末から10月末まで時間だけが経過した状況にありながら、「半歩前進だ」と言うことができる。自分たちの無力をカモフラージュして、これまでの経緯を正当化する騙しのテクニックに過ぎない。

 古屋圭司が「拉致被害者はある程度中身は揃っているはず」と言っていたが、拉致犯罪が金正日の国家犯罪であることを拉致被害者自身の口から直接的に世界に知れないよう、監視下に置いておかなければならないはずだから、報告する気があるなら、既に報告済みとなっていただろう。

 いわば父親の金正日から父子継承する形で独裁権力を受け継いた金正恩は継承権力の正統性を父親金正日の正義を根拠としなければならないから、その正義を一片足りとも暴くことはできない。

 金正日の正義が崩れたなら、金正恩の正義も崩れる。

 もし金正恩自らが父親の金正日の正義を暴くとしたら、北朝鮮国家の崩壊を選ぶか、それとも北朝鮮国家の将来の繁栄を選ぶか、その選択の全ては日本との関係にかかっているとする安倍晋三の言葉の圧力が金正恩にとって取るべき行動の主たる決定要件となり得たときであろう。

 当然、その徴候は拉致解決の進捗度に応じて現れることになる。現実には先延ばしの上に先延ばしということは、何ら決定要件足り得ていない無力の証明としかなっていないことになる。

 言葉を替えて言うと、安倍晋三の北朝鮮の命運をさも左右するかのように見せかけた言葉の圧力を金正恩は鼻にも引っ掛けていないということに他ならない。

 その程度の北朝鮮外交に過ぎない。「私は総理に就任をいたしまして、既に20カ国訪問をしているわけですが、必ず拉致問題について説明をし、各国首脳の理解と支持を訴えているところです」と言っている「理解と支持」にしても、無力の証明としかならないことになる。

 安倍晋三の外交は対北朝鮮外交も含めて、言葉の先行で成り立っている。国内政治に於いても、その兆候にある。

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