安倍晋三、岸田外相、石破茂、オバマ大統領、ノーベル平和賞受賞者への談話等四者四様の言葉の質

2014-10-12 08:21:36 | Weblog

 
 2014年のノーベル平和賞17歳のパキスタンのマララ・ユスフザイさんとインドのカイラシュ・サトヤルティさん60歳に決まった。

 2012年、パキスタンで女性が教育を受ける権利を訴えていたマララさんは11歳のとき、「パキスタンのタリバン運動」が女子教育を禁止していることをブログで告発、15歳のとき、中学校から帰宅途中のスクールバスの中でイスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動」に頭部を銃撃されたが一命を取りとめ、襲撃と威しにめげず、女性が教育を受ける権利を訴えつづけてきた。

 受賞について、イギリスで記者会見し、「私にとって新たな挑戦の始まりだ。世界のすべての子どもが教育を受けられるようにしたい」(NHK NEWS WEB)と述べて、活動への意欲を燃やしている。

 もう一人の平和賞受賞者〈カイラシュ・サトヤルティさん(60)は大学院で電気工学を学び、大学講師を務めていた1980年、社会活動家に転身。児童労働や人身売買から子どもを守る運動「子ども時代を救え」を立ち上げ、地方の町からデリー、ムンバイなどの大都市に送られる子どもたちを救出、教育や社会復帰を支援する場を提供してきた。〉と「東京新聞」が伝えている。

 救出した子供は8万人にも上ると同記事は伝えている。

 安倍晋三、岸田外相、石破茂、オバマ大統領がマララさんに対してそれぞれ談話やコメントを出している。

 《安倍首相「世界に勇気与えた」マララさんノーベル賞》スポーツ報知/2014年10月10日23時16分)

 10月10日夜。

 安倍晋三「(マララさんについて)武装勢力から命を奪うぞと脅迫を受けたにもかかわらず、女性が教育を受ける権利を訴え続けたことは世界中の人々に勇気を与えた。

 (カイラシュ・サトヤルティさんについて)人生をささげ、強制労働に苦しむ多くの子どもたちを救い出してきたことは人々に生きる希望を与えた。

 (2人の活動によって)明日の世界がより良い世界となることを信じてやまない」

 岸田外相「(マララさんについて)テロに屈することなく女性が教育を受ける権利を訴え続けてきた。勇気ある行動に敬意を表する」

 石破茂「彼女の活動は物理学や化学と違い、はっきりと目に見える業績ではないが、尊く意義深い。若いがノーベル賞に値する」(共同通信の取材に対する発言)
 
 安倍晋三と岸田外相のコメントは活動の表面をなぞっただけの、誰もが言いそうな紋切り型の言葉の質となっている。平板で月並みな表現の域を出ない。

 石破茂は「彼女の活動は物理学や化学と違い、はっきりと目に見える業績ではない」と言っているが、マララさんは16歳の若さに関わらずに命を危険に曝した襲撃に屈服せずに立ち上がって女性が教育を受ける権利を訴える言葉を発し続けているし、サトヤルティ氏は児童労働や人身売買から多くの子供を救出、なおその活動を広げている。

 女性が満足に教育を受けることができない、あるいは全然受けることができない問題も児童の労働も児童の人身売買も、搾取を基本的構造とした世界の問題であって(児童をタダ同然で働かせてつくらせた製品が回りまわって先進国に出回っていることもあるはずである)、当然、その解決は世界が果たすべき目標であり、二人がそれらの目標を世界に提示した象徴的人物となっているという点に於いて既に「はっきりと目に見える業績」を成し遂げていると言うことができるはずである。

 このことを考慮して平和賞は与えられたのではないだろうか。

 勿論、解決までの道のりは遠く、至難の技であるが、二人は世界が果たすべき目標を提示し続ける象徴的人物で在り続けるはずである。

 オバマ大統領の声明。《尊厳守る人々の勝利=マララさん「世界動かす」-オバマ米大統領》時事ドットコム/2014/10/11-06:45) 

 オバマ大統領「(マララさんについて)人間一人ひとりの尊厳の擁護に力を尽くす全ての人々の勝利だ。わずか17歳にして、情熱と意思によって、あらゆる土地の少女たちに確実に教育の機会を与えるべく取り組むよう世界中の人々を突き動かした。

 (カイラシュ・サトヤルティさんについて)児童労働を終わらせ、奴隷労働という汚点を世界から一掃することに人生を捧げてきた」――

 いわばマララさんの受賞は人間一人ひとりの尊厳の擁護に力を尽くしてきた世界の人々に力を与え、その尽力を確かなものとすると言い、教育の機会付与を世界に提示したとする言葉の質が意味するところは月並みを脱している。

 17歳のマララさんも、60歳のサトヤルティ氏も、搾取の犠牲となって“人間の尊厳”を持ち得るに至っていない女性や子どもたちの、その尊厳を持ち得ている世界の人々と等し並にする(差別をせずに同じようにする)尊厳擁護の闘いに果敢に挑んでいる。

 女性は女性であるべきだと。子どもは子どもであるべきだと。

 世界の指導者たちが二人の受賞に与えるそれぞれの言葉も、その言葉の質によっては彼らの闘いに力を与えることになるはずだ。

 以上、ノーベル平和賞賞受賞者に対する4人の談話・声明から、ない頭を絞って言葉の質を考えてみた。

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