2月1日朝投稿された後藤健二さん殺害の動画が事実なら、安倍政権は後藤さんを見殺しにしたことになる

2015-02-01 10:24:55 | 政治
 


 今朝のNHKニュースがイスラム過激派集団「イスラム国」が日本時間の2月1日午前5時過ぎ、人質としていた後藤健二さんを殺害したとする動画をインターネット上に投稿したと伝えていた。

 そのネット記事が動画の声明文を紹介している。

 「日本政府はおろかな同盟国や、邪悪な有志連合と同じように『イスラム国』の力と権威を理解できなかった。我々の軍はお前たちの血に飢えている。安倍総理大臣よ、勝てない戦争に参加した向こう見ずな決断によってこのナイフは後藤健二を殺すだけでなく、今後もあなたの国民はどこにいても殺されることになる。日本の悪夢が始まる」

 この声明の後に後藤さんが殺害されたと見られる画像が映し出されていたという。

 もし日本政府のヨルダン政府に対する後藤さん救出が形式的なものだったとしたら、日本政府は後藤さんを見殺しにしたことになる。いや、最初から見殺しにする予定だった疑いが出てくる。 

 日本政府が事実後藤さん解放をヨルダン政府に協力要請していたのか、改めて振返ってみる。

 イスラム過激派集団「イスラム国」が日本人人質の後藤健二さんの解放と引き換えに要求した女性死刑囚の釈放期限日本時間29日午後11時頃前後から2日が過ぎた。この間のマスコミ報道が伝えているヨルダン政府の動きをどう読んでも、日本政府がヨルダン政府に後藤さん解放を実際に呼びかけている事実は見えてこない。


 ヨルダンのモマニ・メディア担当相が1月29日午後4時(日本時間1月29日午後11時)前に記者会見を開いている。

 モマニ・メディア担当相「ヨルダン政府は、パイロットと引き換えにリシャウィ死刑囚を釈放する用意があるが、パイロットの生存が確認できず、次の段階に進むことができない。
 
 日本人の人質を取り戻すためにあらゆる努力を続けている」(NHK NEWS WEB
 
 「NHK NEWS WEB」記事は、〈その上で〉と注釈を入れて、後段の発言を紹介している。

 上記発言は、「パイロットの生存が確認できさえすれば、パイロットに日本人の人質を加えた2対1でならリシャウィ死刑囚を釈放する用意がある」といった趣旨を決して取っていないし、そういった趣旨はどこからも見えてもこない。

 人質の1人に加えないで、いわば「イスラム国」の要求に乗らない形での取り戻すための「あらゆる努力」とはどんな努力なのだろうか。

 どのような努力なのか、ヨルダン政府も説明していないし、日本政府も説明していない。説明していないどころか、日本政府はヨルダン政府の交渉の事態の推移を見守るという姿勢を終始保っていた。

 いわばヨルダン政府に交渉を丸投げしていた。

 「イスラム国」が後藤さん解放の条件に2億ドルの要求からヨルダン収監のシャウィ死刑囚と後藤さんとの1対1の人質交換に変え、要求に応じなければ「イスラム国」が拘束しているヨルダン空軍のパイロットを殺害するとした脅迫を持ち出したのは、あくまでも1対1の人質交換を押し通してパイロットを人質交換の対象から外すことでヨルダン国民の間にパイロット解放の声を高めさせて、パイロットとの交換に持っていくことのできないヨルダン政府批判の声に変えて政府体制を揺さぶり、弱体化させるのが狙いだといった趣旨の幾つかの記事を見受けた。

 もしそのような狙いがあるとしたら、ヨルダン政府のパイロット生存確認の要請に対して「イスラム国」は生存の動画を、それもパイロットの首に縄を付け、両手首も縛って長い縄を付けて、その二本の縄を市中引き回しの形で群衆が歓声を上げる中を車で引っ張って歩かせて晒し物とする動画を流して生存を確認させた上で(イスラム圏の国々では罪を犯した者をムチ打ちに始まって石投げ、手首を斬り落として罰を与える慣習まであるのだから、縄で縛って引き回すことぐらいできるだろう)、あくまでも人質交換は日本人とシャウィ死刑囚の1対1だと伝えたなら、パイロットを取り戻すことに無力なヨルダン政府を窮地に陥れることができて弱体化の狙いはある程度成功するだろうし、例え1対1の人質交換で後藤さんが解放されたとしても、ヨルダンのパイロット救出断念を代償とした日本人人質解放ということになって、ヨルダン国民の怒りは日本にも向けられかねず、日本政府を困らせることもできる。

 だが、ヨルダン政府のパイロット生存確認に対して「イスラム国」はヨルダン弱体化に利用できるにも関わらず、それを最大化することもせず、沈黙を守ったまま4日が過ぎた。

 そして「イスラム国」は後藤さんを人質として最大限に利用してヨルダン弱体化を最大化しない内に後藤さん殺害の動画を配信した。

 勿論、「イスラム国」は当分の間パイロットが生存しているとも生存していないとも一切沈黙を守ることで、ヨルダン国民の多くをパイロットの生存が不確かなままの宙ぶらりんな疑心暗鬼に陥れた怒りに駆られやすい精神状態に落として、パイロット救出に動くことのできないヨルダン政府にその怒りを向けさせて体制の弱体化を誘導できないことはない。

 殺害予告はパイロットが生存していてこそ、有効化するが、ヨルダン国民を疑心暗鬼の感情に陥れて不安定な怒りの精神状態に持っていくには、生存が限りなく疑わしいが、僅かでも生存に望みを持たせることのできる状況づくりであっても、有効な方法となる。

 このような方法は例え生存していなくても、巧みなマジック一つで可能となる。

 果たしてパイロットは生存しているのだろうか。

 確認する方法がある。「イスラム国」がパイロットとシャウィ死刑囚との人質交換という形で新たな取引きに出たなら、確実に生存していることになる。だが、そのような取引はヨルダンの弱体化とは正反対の方向の体制強化の方向に向かう可能性の方が高い。

 新たな取り引きがなければ、疑心暗鬼の精神状態は体制弱体化の爆弾となって尾を引くことにもなる。

 後藤さん殺害が事実とすると、日本政府の後藤さん解放は終止符を打つことになる。ヨルダン政府が人質交換の要員に加えていないにも関わらず、ヨルダン政府交渉の事態の推移を見守るという丸投げの姿勢にしても、終止符を打つことになって、そのような矛盾した姿勢から解放されることになる。

 丸投げとは自身は手を加えないということを意味する。
 
 もし真に日本政府がヨルダン政府に後藤さん救出を要請していたなら、その要請を有効化させるだけの立場と力(この力にはカネの力も含む)を備えていたはずだから、1対1に手を加えて、後藤さんを人質交換の一人に加え、2対1とすることも決して不可能ではなかったはずだ。

 だが、ヨルダン政府は後藤さんを加えずにパイロットとシャウィ死刑囚との1対1の人質交換に終始し、そのような人質交換の事態の推移を見守るという丸投げの姿勢でいた。

 どう見ても、日本政府がヨルダン政府に後藤さん救出を確実な形とする要請を行っていたとは見えない。 

 もしそうであるなら、日本政府は疑い通りに最初から後藤さんを見殺しにしていたことになる。

 後藤さん殺害の動画を受けて午前7時過ぎから首相官邸で開催の関係閣僚会議で、安倍晋三が挨拶している。

 安倍晋三「湯川さんに続いて、後藤さんを殺害したとみられる映像が公開された。ご家族のご心痛を思えばことばもない。政府として全力をあげて対応してきたが、誠に無念、痛恨の極みだ。このような結果になり、本当に残念でならない。非道、卑劣極まりないテロ行為に強い怒りを覚える。許しがたい行為を断固非難する。

 テロリストたちを絶対に許さない。その罪を償わせるため、国際社会と連携していく。日本がテロに屈することは決してない」(NHK NEWS WEB)    

 日本政府は後藤さんを見殺しにしていたは私の見方だが、ヨルダン政府の交渉に丸投げの姿勢でいたことは人質の交換要員に後藤さんを加えることさえできなかったことからして確実で、そのような姿勢から言うと、安倍晋三の「イスラム国」に向けた強い怒り、強い言葉は虚しい響きにしか感じない。

 後藤さんの生命は殺害によって終止符を打ち、日本政府の後藤さん解放の矛盾した姿勢と後藤さん解放に関わるリスクにも終止符を打つことになる。

 だが、「イスラム国」は「我々の軍はお前たちの血に飢えている。安倍総理大臣よ、勝てない戦争に参加した向こう見ずな決断によってこのナイフは後藤健二を殺すだけでなく、今後もあなたの国民はどこにいても殺されることになる。日本の悪夢が始まる」と宣言した。

 この言葉がウソではないことを証明して自らの権威を誇示するためにも、実行される可能性は高い。

 エジプトでの中東政策スピーチでの「イスラム国」に対する愚かしい宣戦布告に端を発した事態の展開によって安倍晋三は新たなリスクを負ったことになる。考えて発したわけではない自らの言葉が招いたリスクである。

 新たに日本人が拘束された場合、特に安倍晋三は自身の内閣を瓦解のリスクから守るために邦人が殺害されることを以って終止符を打たないとも限らない。「あらゆる努力をしたがこのような無残な結果になってしまった」と言い、そして「非道、卑劣極まりないテロ行為に強い怒りを覚える。許しがたい行為を断固非難する」と怒りの声を上げる。

コメント (3)
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