安倍晋三様々のお通りだとばかりに昨日2月14日(2015年)、岩手県と宮城県を視察した。
昨日のツイッターに次のように投稿した。
〈復興が軌道に乗った陽の当たる場所にだけ出かけていって、自分の成果のように誇り、マスコミに目を向けさせて、復興全体が軌道に乗っているかの如くに国民に印象づけの(情報)操作をする。〉
「情報」という言葉を丸括弧にしてあるのは、今朝付け加えたから。
上記言葉が如何にそうであるか証明しなければならない。
先ずは岩手県を視察後、宮城県に入り、視察を終えてからの記者会見での発言を「首相官邸HP」から採録する。文飾は当方。
安倍晋三「22年ぶりに大船渡市、そして、気仙沼市を訪問しました。
そして、発災前よりも生産性、効率性を向上させた水産加工業者の方にもお目にかかり、日本では最も高い水準の衛生管理設備を整えた魚市場を視察しました。
また、新たにニット事業を立ち上げた女性の皆さんともお話をさせていただきまして、復興の担い手として頑張っている皆さんの活力を感じ取ることができました。
そしてまた、気仙沼においては初めての災害公営住宅を視察をさせていただき、住民の皆さんのお話を伺いました。復興もいよいよ新たなステージに移りつつあるということを実感することができました。
その中において、我々政府としても、見守りや心のケアに対して、しっかりと予算面において、あるいは税制面において、金融面において、そうした支援に力を入れていきたい。
改めて、安倍内閣においては全員が復興担当大臣であるという意識を持って、取り組んでいくように指示をしていきたいと思います。
また、国連世界防災会議が3月に開催されます。日本が震災の経験を活かした知見、減災、防災に対する考え方を発信し直していきたいと思っていますし、そしてまた、復興状況も世界に示していきたい。さらには、被災地の復興に資する会議としていきたいと思っています」(以上)
水産加工業者にしても、ニット事業者にしても、災害公営住宅入居者にしても、言ってみれば再建の軌道に乗った成功者の部類に入る。このような成功者が6割7割と占めるなら、「復興もいよいよ新たなステージに移りつつある」と確実に言うことができる。
だが、そうはなっていないのは今以て視察しなければならないことと、再建の軌道に乗った視察事業を選ばなければならないこと、そして災害公営住宅に入ることができずに仮設住宅とその類似住宅に取り残されている被災者が災害公営住宅入居者よりも遥かに多いことが何よりも証明している。
災害公営住宅建設の進捗率について宮城県は纏めたデータを見つける事ができなかったから、岩手県のデータを用いる。
《災害公営住宅の進捗率について》(岩手県 平成27年1月末)
県・市町村整備 建設予定戸数5,933戸数 工事中2,415戸数 完成1,049戸数 進捗率17.7%
県整備 建設予定戸数2,872戸数 工事中1,615戸数 完成 363戸数 進捗率12.6%
市町村整備 建設予定戸数3,061戸数 工事中 800戸数 完成 686戸数 進捗率22.4%
見て分かるとおりに、まだ工事にかかっていない場所が相当に残っている。
岩手県の災害公営住宅家賃を一部紹介する。
月収入が0円の場合 1DKで5,100円
月収入104,001円~123,000円で1DKが19,100円、2DKが23,600円 3DKが27,000円
月収が0円でも、5,100円取る。低年金の高齢者にとっては辛い金額に違いない。
2015年1月30日復興庁発表の《全国の避難者等の数》を見てみる。
2015/1/15現在の避難・転居者数 22万9897人(前回より3,615人減)
前回より3,615人減ったと言っても、未だに 22万9897人が避難・転居している。岩手県の災害復興住宅完成進捗率の一例から見ても、災害復興住宅入居者が成功者の部類に入っているとすることはできるはずである。
避難・転居者数の内訳を見てみる。
〈<内訳>
住宅等(公営、仮設、民間賃貸等) 213,098人
親族・知人宅等 16,296人*
病院等 503人
*復興庁注「福島県の”親族・知人宅等”には親戚・知人宅のほか、施設・病院、県の借上げでない住宅、社宅等への避難者数が含まれている。」〉――
ここにある「公営」とは災害復興住宅のことでは勿論なく、元々からある県市町村営住宅のことである。
如何に安倍晋三が陽の当たる場所に出かけて、さも復興が進んでいるかのように振る舞ったことは明らかであろう。
安倍晋三は、(「復興もいよいよ新たなステージに移りつつある」)「中において、我々政府としても、見守りや心のケアに対して、しっかりと予算面において、あるいは税制面において、金融面において、そうした支援に力を入れていきたい」と言っている。
この「見守りと心のケア」は災害復興住宅入居者に向けていった言葉で、仮設住宅等に取り残されている被災者向けの言葉ではない。
災害公営住宅入居と言う陽の当たる場所を迎えてはいると言っても、震災前とは激変の環境に置かれているだろうから、勿論「見守りや心のケア」は欠かすことはできない。肉親を失って、心の空虚と戦っている入居者も数多く存在するに違いない。
だが、それは今以て仮設住宅等で避難している被災者についても言えることで、そのような被災者にはなおのこと「見守りや心のケア」は欠かすことはできない。
安倍晋三は東日本大震災3年目を迎えるに当って、その前日の2014年3月10日に首相官邸で記者会見している。
安倍晋三「インフラや住宅の復興が幾ら進んでも、被災者が心に受けた傷が癒されるわけではありません。震災から3年、長期にわたる避難生活が大きな精神的な負担ともなっています。人と人のつながりを守り、被災者が孤立することのないよう、地域の見守り体制をつくります。仮設住宅への保健師などの定期巡回を進め、被災者の心に寄り添った支援に重点を置いてまいります。
特に子供たちへのケアは欠かせません。従来から、カウンセラーの学校への派遣を行ってきましたが、仮設住宅への巡回訪問も実施することとし、子育て世帯も含めてバックアップしてまいります。さらに、仮設住宅の空き部屋を遊び場や、学習スペースとすることで、子供たちが安心して過ごせる場所をつくってまいります。これからは、ハード面の復興のみならず、心の復興に一層力を入れていきます」――
「見守りと心のケア」は本来自治体の問題であり、地域の問題であるはずである。にも関わらず、国のトップが2013年3月10日に被災者に対する「見守りと心のケア」を言い、2年近く経過した2015年2月14日になお「見守りと心のケア」を言わなければならない。
如何に機能していないか、様々な問題点を抱えているかを物語って余りある。
その一例としてネット上で見つけたのだが、青森県八戸市が今年3月8日の「被災者のメンタルヘルス講演会」の開催を市のHPで知らせている。
〈震災直後から現在まで、被害の大きかった岩手県沿岸地域に出向き、多くの被災者の「思い」を傾聴された方からお話をうかがい、地域全体で取り組むこころのケアのあり方について、皆さんで一緒に考えてみませんか。〉云々と書いている。
現在もなお「心のケア」について考えなければならない問題点が存在する。
このことは安倍晋三の「安倍内閣においては全員が復興担当大臣であるという意識を持って、取り組んでいくように指示をしていきたいと思います」という言葉をウソにする。
2014年9月3日の第2次安倍改造内閣で「閣僚全員が復興担当」という意識を共有し、スピード感を持って取り組む方針を確認し、9月16日の改造内閣発足後初の復興推進会議でも安倍晋三は「全員が復興大臣であるとの意識を共有し、全力で尽くすよう」指示を出している。
何度同じ指示を出せば、気が済むのだろう。何度も同じ指示を出さなければならないところに「見守りと心のケア」についても、さらに復興全体についても進捗がないことを証明して余りある。
そう、安倍晋三は陽の当たる場所を選んで視察し、取り残された被災者を他処にさも復興が全体的に進んでいて、「新たなステージに移りつつある」かのように国民向けの情報操作を行ったに過ぎない。