安倍晋三の相変わらず自分に都合のいい統計を並べただけの2015年2月16日衆院本会議代表質問答弁

2015-02-17 11:09:03 | 政治




  『生活の党と山本太郎となかまたち』PR

  《谷亮子・主濱了両副代表、高等教育負担軽減法案を参議院へ提出・高等教育負担軽減法案関係資料 》    

  生活の党と山本太郎となかまたちは1月30日、日本を元気にする会、新党改革・無所属の会の野党3会派共
  同提案で「高等教育に係る家計の負担を軽減するための税制上その他の必要な施策の推進に関する法律案
  (高等教育負担軽減法案)」を参議院へ提出しました。

  本法案は、大学や高等専門学校、専修学校といった高等教育を受ける際にかかる費用について、家計への
  負担を軽減するため、税制措置や制度の拡充等に関する基本理念を定め、学ぶ意欲のある人が高等教育を
  受ける機会を確保することを目的とした内容となっています。

 ――現状の格差自体が既に拡大化していて許容できない危機的な飽和状態にある――

 2月16日の衆院本会議代表質問での岡田民主党代表に対する答弁で安倍晋三は相変わらずゴマカシ名人の才能を遺憾なく発揮していた。

 岡田代表の質問は《衆議院本会議代表質問》民主党・無所属クラブ岡田克也/平成27年2月16日)に載っている。 

 岡田代表は最も重要な課題として、「経済成長と格差是正の両立」を訴え、その具体例を挙げた。

 岡田代表「給与所得者の内、年収200万円以下の人は1120万人で、全体の4分の1を占めています。相対的貧困率は近年急上昇し、今や過去最悪の16%にも達しています。特に深刻なのは子どもの貧困であり、ひとり親家庭の子どもの貧困率は実に50%を超え、OECD諸国の中で最低で国家として恥ずべきことです。不安定雇用が多い非正規労働者は増え続けて2016万人となり、雇用者全体に占める割合は38%になっています。いずれも深刻な事態です。

 これをしっかり変えていく。経済成長と格差是正を両立させることで、先進国の中でも格差の小さい希望の持てる国にする。そのモデルに日本がなる。そのための新しい経済政策を民主党が打ち出していく決意です」――

 そしてこのことに関わる質問を放った。

 岡田代表「総理は予算委員会で、『格差が人々にとって許容の範囲を超えているものなのかどうかということが重要』と答弁されていますが、総理自身、今の格差が人々の許容範囲を超えていると判断しているのでしょうか。それともそうではないのか。すべての議論の前提ですから、それぞれについて、イエスかノーか、はっきりお答えください」

 岡田代表は東日本大震災からの復興についての質問で、「耳触りのいい数字を強調するだけでなく、本当に被災者に寄り添う気持ちが大切です。総理の答弁を求めます」と言い、最後に、「聞かれてもいないことを長々と答弁したりすることは是非やめていただきたい」と釘を差している。

 両方共質問者の追及を巧みにかわすときの安倍晋三お得意中のお得意のゴマカシのテクニックである。

 では、今の格差が人々の許容範囲を超えていると判断しているのかどうかに限って、超えていると認めるわけはないから、どうゴマカスか、その答弁を見てみる。

 安倍晋三「格差の現状についてお尋ねがありました。格差についての指標は様々であり、格差が拡大しているかどうかについては一概に申し上げられませんが、例えば我が国の場合、当初の所得に比較して税や社会保障による再分配での所得の格差は概ね6倍で推移しています。

 また最近の世論調査によると、国民の中流意識は根強く続いており、個人の生活実感に於いて格差が許容できない程拡大しているという意識変化は確認されていません。

 いずれにしても安倍内閣は経済再生に取り組み、世界に冠たる社会保障を次世代に引き渡していく責任を果たすと共に子どもたちの誰もが家庭の経済事情に左右されずに希望通りの教育を受けられるようにしてまいります。

 こうした取り組みを通じ、誰にでもチャンスがある、そして頑張れば報われるという社会の実現に向け尽力して参ります。

 なお格差の状況について引き続き検証してまいります」(以上)

 「当初の所得に比較して税や社会保障による再分配での所得の格差は概ね6倍で推移しています」と言って、推移状況が変わらないから格差は拡大していないと逆説的に答弁しているが、平均で6倍だろうから、上下両極端同士の格差は相当なものがあるはずである。 

 《税・社会保障の所得再分配効果~JSTARによる検証~》中田大悟〈RIETI 独立行政法人経済産業研究所〉/2012年8月)に次のような記述がある。    

 〈日本の税・社会保障の再分配機能は、65歳以上の年金受給世代の世帯でしか機能しておらず、現役世代においては、ほとんど機能していないか、もしくは、指標によっては格差が悪化している可能性があることが確認された。また、年金の給付は相当程度の防貧機能を果たしているものの、中高齢者の自助(労働)よりも効果は若干弱いこと、手段的日常動作能力の悪化が貧困転落の要因になっているということも示された。〉――

 2012年8月発表の文章である。非正規雇用が年々増加傾向にあることから、「税や社会保障による再分配での所得格差」が急激に改善しているということはないはずである。もし改善しているなら、低賃金の非正規雇用を増やしていけば、「税や社会保障による再分配での所得格差」が是正されていくことになる。この倒錯は誰も認めまい。

 もう一つ、「税や社会保障による再分配での所得の格差は概ね6倍で推移して」いることが格差拡大を示すものではない指標足り得るなら、消費税増税分の値上がり感を再分配に対する期待感が吸収することになって、個人消費が冷え込むことはなかったはずである。

 だが、「概ね6倍で推移」が消費税増税前と増税後も変わらないにも関わらず、個人消費が停滞した。多くの消費者にとって「税や社会保障による再分配」が独立行政法人経済産業研究所の中田大悟氏が書いているように「現役世代においては、ほとんど機能していない」からこその消費税増税を受けた個人消費の低迷ということであろう。

 いわばいくら「概ね6倍で推移」しようとも、多くの消費者には「税や社会保障による再分配」は力強い味方とはなっていないということである。

 にも関わらず、安倍晋三は格差が拡大していない証明として「概ね6倍で推移」を持ち出した。自分に都合いい統計を示して、得意としているゴマカシのテクニックをさらっと発揮したに過ぎない。

 岡田代表が言っている「給与所得者の内、年収200万円以下の人は1120万人で、全体の4分の1」、「相対的貧困率は近年急上昇し、今や過去最悪の16%」、「ひとり親家庭の子どもの貧困率は実に50%超」で、「OECD諸国の中で最低で国家」であり、「不安定雇用が多い非正規労働者は増え続けて2016万人」で「雇用者全体に占める割合は38%」という事実は長年放置してきたがゆえの負の状況であり、一つ二つの政策では手直しが簡単には効かない格差拡大傾向の要素として直視しなければならないはずだ。

 特に最後の非正規雇用の増加は例え全体の賃金が上昇傾向にあっても、その主たる原因の一つが人手不足からの囲い込みによる上昇だが、賃金抑圧の力が非正規側により強く働いていることからの増加と見なければならず、世紀と比較した収入格差、あるいは生涯賃金格差の問題は依然として残る。

 安倍晋三はまた格差が拡大していないことの根拠として「最近の世論調査によると、国民の中流意識は根強く続いており、個人の生活実感に於いて格差が許容できない程拡大しているという意識変化は確認されていません」と言っている。

 中流とはどのくらいの年収を言うのだろうか。《男女を問わず下流は結婚相手として見なされにくい-「上流vs中流vs下流」の習慣と財布の中身》PRESIDENT Online/2010年7月5日号)からみてみる。 

 30歳~39歳の対年収中流意識は300万~800万未満
 40歳~49歳のそれは400万~1000万円未満
 50歳~59歳のそれは500万~1200万円

 年齢層によって年収で判断する中流の把え方に違いがある。   
 
 ネット上に次の区分を見つけた。

 「中流の下」300万円~500万円未満
 「中流の中」500万円以上~1,000万円未満
 「中流の上」1,000万円以上~5,000万円未満

 因みに「富裕層」は5,000万円以上としている。

 中流と言っても、300万円から5000万円まで相当な格差がある。それを一言で「中流」と言って、「国民の中流意識は根強く続いており」と問題なしとしていることも自分に都合のいい統計を持ち出して自らの政策を正当化する一種のゴマカシのテクニックであろう。。

 年収が300万円程度で停滞している中流世帯も多く存在するはずである。

 どちらの区分も300万円以上からが中流となっているが、300万円で果して中流と言えるのだろうか。月収25万円である。
 
 平成25年6月調査の《国民生活に関する世論調査》内閣府/2013年8月12日)は自身の生活程度がどの階層に所属しているか、その意識を尋ねている。  

 「上」1.0%

 「中の上」12.6%
 「中の中」56.7%
 「中の下」22.7%

 「下」4.7%

 翌平成26年6月調査の《国民生活に関する世論調査》内閣府/2014年8月25日)は次のようになっている。   

 「上」1.2%,

 「中の上」12.4%
 「中の中」56.6%
 「中の下」24.1%

 「下」4.6%

 「上」が0.2増え、「中の上」が0.2%減り、「中の中」が0.1%減り、「中の下」が1.4%減っている。

 300万円以下の世帯と中流の上中下それぞれの世帯がどのくらいか、平成24年1月1日から12月31日までの1年間の所得を調べた、《平成25年度調査 国民生活基礎調査の概況 各種世帯の所得等の状況》厚労省)の世帯別の「所得の分布状況」から当てはめてみる。

 300万円以下の世帯が32.7%(うち100万円以下が6.2%)と、全世帯の3分の1強を占める。

 「中流の下」300万円~500万円未満が24.2%
 「中流の中」500万円以上~1,000万円未満が31.8%
 「中流の上」1,000万円以上~5,000万円未満が8.5%

 合計で全世帯の64.5%を占める。

 5000万円以上の富裕層が残る2.8%。

 《平成24年度調査 国民生活基礎調査の概況 各種世帯の所得等の状況》厚労省)は300万円以下の世帯が32.3%(うち100万円以下が6.9%)となっている。   
 
 100万円以下の世帯が6.9%から6.2%に僅かに減っているものの、300万円以下世帯が32.3%から32.7%へと逆に増加している。

 以上見てきたことを繰り返すと、日本の税・社会保障の再分配機能は、65歳以上の年金受給世代の世帯でしか機能しておらず、現役世代に於いては殆ど機能していない現実、安倍晋三は「子どもたちの誰もが家庭の経済事情に左右されずに希望通りの教育を受けられるようにしてまいります」と言ってはいるが、既に経済格差が教育格差となっている頑固に膠着化した相互反映状況、岡田代表が「年収200万円以下の人は1120万人で、全体の4分の1を占めている」貧困状況、中流から外れた300万円以下の世帯が依然として全世帯の3分の1強を占めていること、さらに例え給与が僅かながら上がっているとしても、非正規雇用が年々増加していること、上記「PRESIDENT Online」も触れているが、年収の低さと未婚率の相関関係が統計として現れていることは非正規雇用と無関係ではない事実、男性の場合年収が300万円以上あれば、結婚率が30%程度になるが、300万円未満の場合は結婚率が一桁台まで大きく減少するという状況等々まで併せ考えていくと、一見すると、格差が目に見えて拡大しているようには見えないものの、現状の格差自体が既に拡大化していて許容できない危機的な飽和状態にあるということではないだろうか。

 だから安倍晋三は、「なお格差の状況について引き続き検証してまいります」と、最後の最後になってまでゴマカシた。本会議で検証した結果を用意したのではゴマカシが効かなくなるから、自分に都合のいい統計を並べだけで終わらせたというわけである。

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