籾井NHK会長は放送を「政府のスタンス」に合わせる意思欲求を疼かせた国家の下僕的精神の持ち主

2015-02-08 06:36:33 | 政治


 籾井勝人NHK会長が2月5日の定例記者会見質疑で戦後70年に当り従軍慰安婦問題について番組で取り上げるかを問われたという。その発言を次の記事から見てみる。


 《NHK会長「挑発的な質問やめて」 会見主なやりとり》asahi.com/2015年2月5日21時16分)
  
 NHKの籾井勝人会長の2月5日の定例会見の主なやりとりは次の通り。

 【戦後70年の番組について】

 記者「今年は戦後70年の節目。夏に特集番組や戦争に関するものをやると思うが、基本方針は」

 籾井勝人NHK会長「現場で検討してもらっている最中。そういう意味で私が基本方針がどういったものか承知しているわけではございません。戦後70年、前回は60年だったんですが、だんだん戦後が遠くなっている中で、戦争というものの悲惨さと同時に、やはり我々が戦争の廃墟(はいきょ)からどうやって立ち上がってきたのかという、こういう元気が出る番組も入れていただきたいと個人的には思っております。ただ全体としての方針は、まだ聞いておりません」

 記者「去年、朝日新聞の誤報問題で従軍慰安婦が脚光を浴びたが、従軍慰安婦問題を戦後70年の節目で取り上げる可能性は」

 籾井勝人NHK会長「なかなか難しい質問ですが、やはり従軍慰安婦の問題というのは正式に政府のスタンスというのがよくまだ見えませんよね。そういう意味において、やはり今これを取り上げてですね、我々が放送するということが本当に妥当かどうかということは本当に慎重に考えなければいけないと思っております。そういう意味で本当に夏にかけてどういう政府のきちっとした方針が分かるのか、この辺がポイントだろうと思います」

(別の質問のやりとりを挟んで)

 記者「先ほどの従軍慰安婦問題で、正式に政府のスタンスがよく見えないとおっしゃった。現時点では河野談話があり、現政府も踏襲すると言っている。それでも政府のスタンスがよく見えないというのは、河野談話について変わるべきだとか変わりうるとか言うことでおっしゃってるんでしょうか}

 籾井勝人NHK会長「その手の質問にはお答えを控えさせていただきます」

 記者「よく見えない」という認識は……」

 籾井勝人NHK会長「あの、どんな質問もお答えできかねます」

 記者「それはどうしてですか」

 籾井勝人NHK会長「しゃべったら、書いて大騒動になるじゃないですか」

 記者「大騒動になるようなお考えをお持ちなのですか」

 籾井勝人NHK会長「ありません。そんな挑発的な質問はやめてくださいよ」

 籾井勝人は戦後70年に関わる戦争番組は「現場で検討してもらっている最中」と言って、現場に主体性を持たせているが、事歴史認識に関わる放送は「政府のスタンス」に合わせる意向を示して現場の主体性を無視する矛盾した認識を示している。

 放送の編集権は会長にあると言っても、編集内容に関わる対外的な責任主体という意味で与えられた編集権であって、編集に関わるすべての権利を単独に与えられているわけではあるまい。

 後者なら、独裁となる。対内的には編集に関しては合議制であることによって放送に関わる番組編集は民主国家にふさわしい民主体制を取ることができる。

 また、NHKが公共放送であっても、対外的責任は履行対象を国家とするのではなく、国民としなければならないのは断るまでもない。いわばNHKは、他の民放も同じだが、国家の知る権利に応えるために存在するのではなく、国民の知る権利に応えるために存在する。

 国家の知る権利に応えるために存在するようになったら、国家の下僕(しもべ)に化したも同然となる。

 にも関わらず、放送内容を「政府のスタンス」に合わせて、国家の知る権利にマッチングさせようとする欲求を疼かせている。編集そのものの主体性、あるいは自律性を放棄して、国家に売り渡そうとすることに他ならない。

 自らを国家の下僕(しもべ)に位置させているかのようなこの精神からは会長としての人格、あるいは適格性を窺うことはできない。即刻退任すべきだろう。

 「政府のスタンス」に合わせようとする欲求はまた、国家の考えを正しいと規定して、それに無条件・無考えに追従しようとする欲求をイコールとしていることになる。

 例えば従軍慰安婦に関して言うと、安倍晋三や高市早苗、稲田朋美等のその一派は朝日新聞が事実に基づかない「吉田証言」に依拠した誤報記事によって日本の名誉を傷つけ、世界に広めたと非難、さも従軍慰安婦の強制性の事実が日本の歴史上、存在しないかのように触れ回っているが、「吉田証言」の従軍慰安婦強制連行が虚偽物語であったとしても、日本の軍隊が各占領地で未成年を含む若い女性を暴力的に拉致して軍慰安所に監禁、自由を奪い強制的に売春に従事させた事実は多くの国籍の元従軍慰安婦の多くが証言で伝えていて、その強制性を日本の歴史上存在しないとすることはできない。

 国家の考えを正しいと規定して、それに無条件・無考えに追従することは籾井勝人自身が国家権力無誤謬説、あるいは国家権力性善説に立っていることを意味する。戦前の日本ではこのことが一個人にとどまらずに国民に全体的に行き渡って、国家権力と一般国民が同じ関係性を取って国家を破滅させたことと照らし合わせると、従軍慰安婦の問題にとどまらず、そういった関係性を良としていること自体に非常に危険な思想を感じざるを得ない。

 どう見ても、籾井勝人からはNHKという公共放送の会長を務める資質を窺い知ることはできない。

 安倍晋三は情けない男を会長にすべく仕組んだものである。先ずは百田尚樹といった程度の低いお友達を会長選出に必要人数分を議席多数の力でどうにでもなる国会同意人事を経てNHK経営委員に送り込み、そのお友達の数で籾井勝人を会長に担ぎ上げた。

 同質の人間同士だから、お互い相手に情けなさを嗅ぎ合うこともなく、立派な人格者だと尊敬し合っているのかもしれない。

 いずれにしても「天下のNHK」と言われているが、籾井勝人のような国家の下僕(しもべ)的精神の持ち主をいつまでもその資格がないままに会長に頂いているようでは「天下」の名が泣く。

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安倍晋三と岸田が言っている中東訪問時2邦人拘束グループが「イスラム国」の確定情報なしは犯罪的なウソ

2015-02-07 10:41:28 | 政治
 


 これは情況証拠からの糾弾である。情況証拠であっても、それを積み重ねれば、裁判は犯罪確定の判決要件としている。

 鈴木貴子民主党衆議院議員が提出した質問主意書に対する政府答弁書で、安倍晋三が中東訪問に出発した先月16日の時点で湯川さんと後藤さんの2人がイスラム過激派組織「イスラム国」に拘束されていた可能性は否定できないものの、「確定的な情報には接していなかった」とし、「安倍晋三の中東訪問はこうした状況も踏まえたうえで行った」と、そう答えたと、昨日2月6日 13時18分発信の「NHK NEWS WEB」記事が伝えていた。

 薄汚い真っ赤なウソである。

 岸田外相の2月2日衆院予算委での細野豪志民主党議員に対する答弁。

 岸田外相「先ず、あのー、湯川さんに対しましてはえー、昨年の8月16日、何者かに拘束をされた疑いがあるという情報がもたらされました。そしてそのとき、その直後、併せて映像が公開されたということもありました。

 この時点で、えー、何者かに拘束されたという、この情報を得ています。えー、そして、えー、その直後に外務省として対策室及び現地対策本部を立ち上げました。

 そして後藤さんですが、11月1日(ついたち)に後藤さんが行方不明になったという情報を得ています。ただこの段階では、何者によって拘束されたのか、これについては、あのーえー、十分に情報を得ておりませんでした。

 えー、そしてその後、今年に入りまして1月20日(はつか)湯川さん及び後藤さんの映像が公開されるということになりまして、その時点でISIL(アイシル)関係者の犯行による可能性が高いということを把握しました」

 犯行グループが「イスラム国」の可能性が高いことを知ったのは安倍晋三の1月16日(2015年)の中東訪問の4日後の1月20日だと言っている。

 こうした方が都合がよいからに過ぎない。

 岸田はこの日の答弁で、湯川さんの場合は昨年2014年8月16日に拘束情報を得て、後藤さんの場合は11月1日だとしていたが、多くのマスコミ記事が11月に「イスラム国」から後藤さんの妻に身代金要求のメールが届いたと報道しているにも関わらず、この点について明確な答弁は避けた。

 細野豪志「(後藤さん拘束後)身代金の要求があったのは事実なのか」

 岸田「奥さんとは緊密に連絡を取ってきた。できる限り(奥さんの)気持に添って対応してきた。そういう遣り取りは1月20日映像が公開されて広く事実が公になるまでは後藤さんの安全の問題もあるので、非公開とした。その間の具体的な遣り取りについては(公表を)控えさせて貰いたい」
 
 細野豪志「この事案の検証を考えるとき、事前に身代金を要求されていたかどうかは重要なポイントだから、政府には説明責任がある」

 岸田「メールで犯人側から何らかの要求があったかは後藤さんの奥様に対する様々なメッセージがあったわけだから、政府としては明らかにするのは控えさせて頂きたい」

 犯行グループが身代金の要求以外に何を伝えると言うのだろうか。時候の挨拶か。元気でやっていることを伝えろと言われて、そのとおりにメールを打ったということか。

 もしそれが単に拘束されていることを伝える後藤さん自身のメールなら、拘束グループの名前は記したはずだし、身代金の要求なら、中東にはテロ集団があまたあるのだから、尚更に犯行グループの名前を記さなければならないだろう。

 政府は11月1日に後藤さんの拘束情報を得た。マスコミが後藤さんの妻に身代金要求のメールが届いたと報道していることからすると、政府は後藤さんの妻への身代金要求のメールによって知ったとするのが常識的判断であろう。

 このように情況証拠が揃っているにも関わらず、メールが身代金要求であったかどうかを隠す。これも明らかにしたら都合が悪いからだろうが、このことは後で述べる。

 別の情況証拠を提示してみる。

 アメリカではこれまでに「イスラム国」に拘束されたアメリカ人の男性3人が殺害され、現在人道支援活動家の当時26歳のアメリカ人の女性が一昨年8月に拘束されたまま安否不明だという。「イスラム国」は彼女の解放と引き換えに660万ドル(日本円で約7億7500万円)の身代金とアメリカで服役しているパキスタン人の女、アーフィア・シディキ受刑者の釈放を要求していると、2月4日発信の「NHK NEWS WEB」が伝えていた。

 但し身代金要求が母親やその他の近親者に対するメールによって行われたのか、あるいは動画配信によって行われたのか、そこまでは伝えていない。

 ところが、昨日2月6日だったと思うが、NHKテレビの「おはよう日本」が殺害された米国男性3人のうちの1人の母親が「イスラム国」からメールで身代金要求を受け、政府に相談したところ、米政府は身代金要求に応じない姿勢であることを伝え、身代金を払わないよう警告したといった趣旨のニュースを母親のインタビューを交えて伝えていた。

 そこで記事になるのを待っていたが、今以て記事にはなっていない。安倍晋三の周辺が記事にするのを抑えたのではないかと疑った。何しろNHK会長は安倍晋三のお友達の籾井勝人である。アメリカの母親がメールで身代金要求を受け取った事実から後藤さんの妻のメールの事実を推定されたら、後藤さんの妻がメールを受け取った時点で犯行グループが「イスラム国」であることを把握していたという疑いとなって一人歩きした場合、政府が公表している事実に反することになって都合が悪いからだ。

 勿論、このことは情況証拠にはならない。単なる疑惑である。ゲスの勘繰りと言われるかもしれない。だが、推定は可能である。

 より詳しい事実を知るべくネット上を探してみた。

 《 「イスラム国」が息子殺害…母が米政府批判》日テレNEWS24/2015年2月5日 15:34)   

 記事は冒頭、〈後藤健二さんらジャーナリストがイスラム過激派組織「イスラム国」に相次いで殺害されたことを受け、アメリカ・ワシントンで4日、政府の対応のあり方を考えるシンポジウムが行われた。息子を殺害された母親も参加し、政府の対応を批判した。〉と紹介している。

 去年8月に「イスラム国」に殺害されたアメリカ人ジャーナリストのジェームズ・フォーリーさんの母親も参加した。

 記事の母親の発言個所を記事通りに拾ってみる。

 〈フォーリーさんの母親は「政府が情報を共有してくれず、私たちには何も知らされなかった」
 母親は、「イスラム国」から身代金を要求するメールが届いた際、政府が動いてくれなかったことなどを明らかにした。母親はまた、「アメリカには国民を失った日本やイギリスと連携し、お互いから学んで欲しい」と強調した。〉

 これを会話体に直すと、次のようになるはずだ。

 母親「『イスラム国』から身代金を要求するメールが届いた際、政府は動いてくれなかった。以後も政府は情報を共有してくれず、私たちには何も知らされなかった。

 アメリカには国民を失った日本やイギリスと連携し、お互いから学んで欲しい」・・・・・

 NHKの「おはよう日本」が母親に身代金を払わないよう警告したと伝えていたことは、《[岩田太郎]【米国式自己責任論に陥るな】~イスラム国人質事件・ 迷惑はお互い様の精神を~》Japan In-depth/2015/1/27)によると、 〈米国家安全保障会議(NSC)の高官が、「もしフォーリー氏の100万ドルの身代金を支払えば、テロリストに資金提供をしたテロ幇助の罪に問う」と3回も脅迫した〉となっている。
 
 「日テレNEWS24」の記事も母親に「イスラム国」から身代金要求のメールがいつ届いたのかは書いてない。だが、少なくとも「イスラム国」が男性を殺害する以前でなければならない。

 フォーリー氏が行方不明となったのは2012年11月。「イスラム国」が殺害の動画を公開したのが2014年8月19日。米国防省は翌日の8月20日、「イスラム国」によってシリアで拘束されていた複数のアメリカ人の救出作戦を行い、失敗していたことを明らかにしている。

 救出対象者にこの男性が含まれていたかどかは明らかにしていなかったそうだが、救出が行われたこと、身代金支払いが成功していなかったことなどを考えると、殺害はこの二つの事実を受けた残酷な報復と見るしかない。

 日本政府は昨年の8月16日の湯川さん拘束状況を受けた早い時点でヨルダンに現地歳作本部を立ち上げているのだから、ヨルダンやトルコ、その他の中東諸国から情報を得るべく情報収集の動きに出ていたはずだ。そしてアメリカに対しては遅くても後藤さん拘束情報を得た11月1日以降の早い段階でアメリカ側が握っている情報を得るべく、連絡を取り合ったはずだ。

 日本政府はこのことを決して否定することはできない。もしアメリカ側が握っている情報を収集する努力を怠っていたなら、日本政府の情報収集のあり方が根本から問われることになる。

 いわばメールを手段とした身代金要求の存在を知ることができ、メールを送った犯行ブループが「イスラム国」だと把握しすることができた。当然、この事実と後藤さんの妻へのメールを照合しなければならない。

 もし妻のメールに身代金要求がなかったとしたら、アメリカの事実は照合対象とはならない。

 だが、なければ、なかったと正直に明きらかにしても、嘘をついたわけでも何でもなから、何の不都合も生じないし、その場限りで身代金要求があったかどうかの問題は片付く。だが、あったにも関わらず、なかったと言うと嘘になって、後で露見した場合不都合が生じる。どちらとも明かさなければ、後で露見したとしても、プライバシーの関係で差し障りがあったからだと理由をデッチ上げて言い逃れすることができる。

 但しなぜこのような曖昧な態度を選択してまで身代金問題に関わる疑惑の尾を長引かせるようなことまでするのかという疑問が残る。推定するにメールで身代金の要求があったと明かしたら、不都合が生じるからとする以外に答を見つけることはできない。

 要求があれば、要求が誰か、明記していることになって、自ずと犯行グループが明らかになる。

 どのような不都合かと言うと、安倍晋三が中東訪問に出発した先月16日以前の早い時期に犯行グループを「イスラム国」と特定していたという事実が明らかになることであり、なお且つ身代金要求があったことを知っていたという事実にしても明らかになることである。そのような事実を把握していながら、1月17日にエジプトで「イスラム国」に対して宣戦布告となる挑発的な文言を含んスピーチをしたという事実こそが最悪の不都合事実の仲間入りをすることになる。

 以上、情況証拠を積み重ねてみた。 

 大体が「イスラム国」に拘束されていた可能性は否定できないものの、「確定的な情報には接していなかった」としていること自体、真っ赤なウソになる。可能性の程度によって情報の確度(確実さの程度)が決まってくる。確度が高ければ、危機管理上、「イスラム国」を犯行グループと想定した対応策を講じなければならない。

 確度は低かった見ていたとすると、やはり政府の情報収集のあり方に関わってくる。マスコミが後藤さんの妻へのメールを「イスラム国」からだとしているのに政府はそのことを把握していなかったことになる。

 例え確度を低く見ていたとしても、後藤さんがシリア入りしたことと(外務省は3回シリア入りを止めている)「イスラム国」がシリア北部を中心的な支配地域としていて、最悪・最強のテロ集団であることを前提とすると、尚更に「イスラム国」の場合を想定した行動を採らなければならなかったはずだ。

 それを可能性は否定できないものの、「確定的な情報には接していなかった」として、安倍晋三は自らの中東スピーチを正当化し、政府の2邦人解放努力を正当化している。

 この薄汚い矛盾の数々こそが何よりの政府対応の真っ赤なウソを証明して余りあるし、これらのウソは犯罪的ですらある。

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安倍晋三は2月2日参院予算委で戦前の日本の戦争を間接的表現だが、初めて侵略戦争だと認めた

2015-02-06 06:03:29 | 政治



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       《2月3日(火)小沢一郎代表・山本太郎代表共同記者会見要旨と党HP掲載ご案内》

       【記者会見質疑要旨】
       ・ISIL事件の受けとめと日本の中東外交について
       ・NHK『日曜討論』から『生活の党と山本太郎となかまたち』が排除されたことについて 

       《『生活の党と山本太郎となかまたち』機関誌第20号 2月5日版》 

       《認知症対策の現状と課題・YMF経済研究会(森ゆうこ全国後援会)事務局》    

 民主党の那谷屋正義(なたにや まさよし)議員との遣り取りの中での出来事である。集団的自衛権が行使されるとどうなるかという趣旨での質疑であった。

 那谷屋議員「アフガニスタンやパキスタンで、いわゆる地元国民の診療などを行っていらっしゃるNGO、ペシャワール会ですね、中村哲さんの話は有名なんですがね。この方がですね、人道支援、人道復興支援をずっとしていたけれども、これが近隣諸国の敵意を増すのではないかと。そして緊張状態をつくり出すと。

 そうなっていくと、まあ、戦争ができた昔に戻す国に見えて、大変危険だというそういうウオーニング(警告)を発しているわけですけども、戦争ができた時代に戻すというのも、それも総理もよく、『そんなことはない』とおっしゃてるんですけども、別にそれについて国民のみなさんにお話し頂ければと思うんですけども」

 安倍晋三「戦争ができた時代という言葉を当時の意味で使っておられるだろう、これは推測するしかないわけでございますが、例えば戦前という言葉で表現されるのであれば、例えば日本が海外で権益を獲得するために軍隊を出してその地域を占領する、まさに国際問題を解決するための手段として日本が海外に派兵をして武力行使をすることも含めた、戦争ということではないかと思うわけでございます

 勿論、安倍晋三は例の如くに武力行使を伴わないPKO活動や武力行使も限定的であること持ち出して集団的自衛権行使によって戦前の戦争をする国にはなることは否定する。

 那谷屋議員が「これが近隣諸国の敵意を増すのではないかと」と言っている「これが」は「人道支援、人道復興支援」のことでは勿論なく、集団的自衛権を指す「これが」である。
 
 《集団的自衛権を考える 「ペシャワール会」現地代表・中村哲さん》中日新聞/2014年5月3日)なる記事に次の一文が挿入されている。  
 
 〈集団的自衛権を使えるようにすることは、ひと言で言えば「危険」です。近隣国の敵意が増して緊張状態をつくり出すだけで、防衛になっていない。戦争以外の手段で国を守るのが戦後の理想だったのに、戦争ができた昔に戻す動きに見えてしまいます。〉・・・・・

 安倍晋三は答弁で、「戦争ができた時代」の戦争を「例えば戦前という言葉で表現されるのであれば、例えば日本が海外で権益を獲得するために軍隊を出してその地域を占領する、まさに国際問題を解決するための手段として日本が海外に派兵をして武力行使をすることも含めた、戦争ということではないかと思うわけでございます」と表現した。

 戦前「日本が海外で権益を獲得するために軍隊を出してその地域を占領する」とは、侵略戦争以外の何ものをも意味しない。間接的表現だが、日本の戦前の戦争を侵略戦争だと認めたことになる。

 当然、「国際問題を解決するための手段」「国際問題」とは日本の権益だけを考えた「国際問題」ということになる。

 だから、「占領」という強行手段に出なければならないことになる。

 那谷屋議員は少し後で「村山談話」と「小泉談話」を持ち出して、安倍晋三が考えている「戦後70年談話」について問い質しているが、安倍晋三が掲げている「積極的平和主義」と絡めた追及で、「村山談話」と「小泉談話」の戦前の戦争を「国策の誤り」とし、「植民地支配と侵略」だとした歴史認識を引く継ぐかどうかまでは追及しなかった。
 
 安倍晋三がその両方共に引き継ぐ意思のないことが分かっているからなのかどうかは判断できない。

 安倍晋三は2012年5月11日の産経新聞インタビューで、「政権復帰したら、もう村山談話や河野談話に縛られることもない」と断言していて、アンチ「村山談話」、アンチ「河野談話」とも言うべき安倍晋三の歴史認識は既に露わになっている。
 
 このことと2015年1月25日のNHK「日曜討論」で、「今まで重ねてきた文言を使うかどうかということではなくて、安倍政権は安倍政権としてこの70年を迎えて、どう考えているんだ、という観点から談話を出したい」と言い、その他でも類似のことを言っている、「今まで重ねてきた文言を使うかどうか」は問題しないという意思表示を重ね合わせると、「村山談話」と「小泉談話」が戦前の戦争を「国策の誤り」とし、「植民地支配と侵略」とした歴史認識を踏襲しないという、安倍晋三の歴史認識の披露と見なければならない。

 だが、この歴史認識は那谷屋議員の質問に答えて答弁した、戦前の日本の戦争が「日本が海外で権益を獲得するために軍隊を出してその地域を占領する」侵略であったとする安倍晋三の歴史認識に矛盾する。

 安倍晋三はこう答弁している。

 安倍晋三「戦後50年の『村山談話』、戦後60年の『小泉談話』を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいく。『70年談話』はこれを前提として作成する。談話の内容は先の大戦への反省、、戦後の平和国家としての歩み、日本として今後アジア・太平洋地域や世界のためにどのような貢献を果たしていくか、戦後89年、90年100年に向けて日本はどのような国になっていくのか、世界に向けて発信できるようなものを英知を結集して考える。

 未来志向の話があったが、未来志向の土台は過去と断絶したものではないわけで、先の大戦への反省、70年の歩みの上にこれからの80年、90年100年がある」

 戦前の日本の戦争は「日本が海外で権益を獲得するために軍隊を出してその地域を占領する」侵略であったとした安倍晋三の歴史認識認と上記発言の歴史認識に矛盾を排して整合性を持たせるためには、「全体として引き継いでいく」という歴史認識は「村山談話」と「小泉談話」が戦前の戦争を「国策の誤り」とし、「植民地支配と侵略」とした歴史認識までふくめた「全体」でなければならない。

 そのような「全体」であって初めて、過去と断絶なき「未来志向」となる。

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安倍晋三はテロ集団に拘束された場合の邦人解放は米英型、あるいは仏独型で臨むのか国民に明らかにせよ

2015-02-05 11:23:31 | 政治



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       《2月3日 「生活」番組出演排除は国民の「知る権利」を侵害、NHKに抗議全文》    

 米英は自国民がテロ集団に拘束されて身代金を要求された場合、自国民の犠牲を代償としても身代金の支払いを拒否する姿勢を公表していて、仏独、その他の欧州の国は政府自身は否定していても、身代金を支払って解放の道を選択していると言われている。

 2015年2月4日の衆院予算委は経済・外交をテーマとした集中審議が行われた。細野豪志民主党議員が、2月2日参院予算委の民主党の大塚耕平同様に、「イスラム国」による2邦人拘束中の安倍晋三のエジプトでの「中東政策スピーチ」が、その拘束への影響を前以て考慮して作り上げた内容だったのかを追及した。

 安倍晋三は影響を考えてスピーチの言葉を推敲したと口では言ってはいるが、テロ集団に屈しないとする意思表明と日本の国際貢献に重点を置いた抽象的な答弁に終始して、どう考慮して、どう推敲した結果、「ISILと戦う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します」といった文言となったかの具体的な説明は一切ない。

 果たして安倍晋三は2邦人の命をどう考えていたのだろうか。どう考えたかによって、邦人がテロ集団に拘束された場合の解放に向けた姿勢が決まってくる。

 ここに一つの参考となる「NHK NEWS WEB」記事がある。  

 去年8月、アメリカのNBCテレビが当時26歳のアメリカ人女性が人道支援活動中の一昨年8月に「イスラム国」に拘束されたことと、女性の解放として660万ドル(約7億7500万円)の身代金の要求とアフガニスタンでアメリカ兵を銃殺しようとした容疑で2010年にニューヨークの連邦地方裁判所で殺人未遂罪で有罪判決を受けたパキスタン人の女、アーフィア・シディキ受刑者の釈放を要求していることを伝えていて、記事解説はそれを念頭に置いた発言との推測で、アーネスト・ホワイトハウス報道官の2月3日の、オバマ大統領が拘束されているすべての人質の解放に向けて全力で取り組むよう指示したことを明らかにしたとする発言を紹介している。

 しかしアメリカはテロ集団からの身代金要求の支払いには拒否の姿勢を示している。支払わずに何人かの犠牲者を出している。今回の2邦人人質と身代金要求に対しても、1月22日の定例会見で米国務省のサキ報道官が次のように発言して、身代金の支払いに反対している。

 サキ報道官「身代金の支払いは人々を危機に陥れる。米国は実施も支持もしない。(その方針は)長年のものだ。

 支払った場合、他の人々も身代金目的の誘拐の危険にさらされ、テロ組織に資金を与えることになる」(毎日jp

 同じ内容を扱った「asahi.com」記事。

 サキ報道官「身代金の支払いはかえって人々を危険にさらすというのが米国の考えだ。我々の立場は非公式に日本政府に伝えてある」

 1月27日定例会見。

 カービー米国務省報道官「日本がどのような決断を出すとしても、日本が決めることだ。米国防総省が判断することはない」(毎日jp

 要するにアメリカは身代金支払いによる解放には反対だが、軍事作戦、その他の方法による人質解放には全力を挙げるということことなのだろう。上記「NHK NEWS WEB」記事はアーネスト・ホワイトハウス報道官が、オバマ大統領が人質解放に身代金の支払いもあり得ると方針転換したと明かしたとは一言も伝えていない。

 安倍晋三もこれに倣った。この証拠となる記事がある。

 《世耕官房副長官「後藤さん守れなかったのは政府責任」 渡航見合わせ3回要請…身代金交渉「やってない」》産経ニュース/2015.2.2 23:43)    

 2月2日夜のBSフジの番組。

 世耕官房副長官「(解放に向けたイスラム国側との接触に関して)身代金の交渉は水面下も含めて一切やっていない。

 (直接の接触はせず、関係国などを介した間接的なルートで働きかけて)今回の支援が人道支援だということを伝えたり、人質解放を要求し続けた。ISIL(イスラム国)は期限は守るといわれていた。何回か出てきた期限が延びたということは、我々の働きかけやヨルダンによる交渉も(イスラム国と)何らかの接点はあったのではないか」

 最後の言葉はいい気なものである。最後には何の予告もなく殺害されたのである。相手側が交渉で何らかの接点を見い出していたなら、最後通告ぐらいはあったはずだ。

 相手が身代金を要求しているのに対して安倍晋三のエジプトでのスピーチが「イスラム国」に対する宣戦布告となっていたことを棚に上げて、身代金の交渉は一切持ち出さず、日本の支援は人道的なものだから、解放して貰いたいというのは「イスラム国」にしたら直接的利益は一切ないのだから、虫のいい話となる。

 世耕の話の構図自体が身代金支払い拒否・他の方法による人質解放となっている。今回の2法人の場合は何の見返りもなく、単にお願いしたに過ぎない。

 日本はアメリカのように人質解放のための軍事的手段を持っているわけではないし、人質交換を解放の条件とする機会を有しているわけでもない。勢い、表面を取り繕うだけの交渉にならざるを得ない。結果的に解放に一生懸命努力していますという姿勢を国民に見せるアリバイ作り、あるいはポーズにしかならない。

 情報収集だ、各国との連携だと動き回っていた安倍政権の動きからは最初からそういった雰囲気しかなかった。

 だからだろう、細野豪志との遣り取りでもそうだが、これまでの政府側答弁は安倍晋三の強がりだけは目立つが、明確に検証しようとする熱意とは正反対の曖昧にしよとする意思、あるいは誤魔化そうとする意思しか見えてこなかった。

 一連の答弁が身代金支払いによる解放拒否を反映させた構図を取っていると見ると、よく理解できる。

 改めてこの構図を細野との遣り取りから見てみる。

  細野豪志「犯行グループがISIL(アイシル)であろうということは推定していたのか」

 岸田「ISILである可能性は否定できないが、確たる情報は得ていなかった」

 細野豪志「シリアの北部で拘束されたということだから、これはISILの支配地域だから、そういう推定が働いたのだろう。

 (後藤さん拘束後)身代金の要求がったのは事実なのか」

 岸田「奥さんとは緊密に連絡を取ってきた。できる限り(奥さんの)気持に添って対応してきた。そういう遣り取りは1月20日映像が公開されtて広く事実が公になるまでは後藤さんの安全の問題もあるので、非公開とした。その間の具体的な遣り取りについては(公表を)控えさせて貰いたい」
 
 細野豪志「この事案の検証を考えるとき、事前に身代金を要求されていたかどうかは重要なポイントだから、政府には説明責任がある」

 岸田「メールで犯人側から何らかの要求があったかは後藤さんの奥様に対する様々なメッセージがあったわけだから、政府としては明らかにするのは控えさせて頂きたい」

 「様々なメッセージ」が後藤さんと奥さんのプライバシーに触れる内容を含んでいたとしても、夫を過激派集団に拘束されたこと自体はプライバシーとすることはできないし、だから、政府にそのことを伝えたのだろうし、身代金を要求されていることを政府に伝えている以上、そのこと自体もプライバシーから離れていることになるはずだ。

 例えばある人妻が不倫をしていて、夫にバラされたくなかったら、いくらいくら支払えという恐喝は極めて高度なプライバシーであって、恐喝されていることは余程のことがない限り秘密にしておかなければならないが、こういった事例とは明らかに異なる。

 大体が身代金要求はあった・なかったの答で済むはずのことをどこがプライバシーだと言うのだろうか。だが、それさえ拒否する。

 推測するに一旦身代金の要求を認めると、その要求に対してどのような対応をしたのかの質問が次に待ち構えることになって、身代金の要求には何も対応しなかったことが明らかになった場合の不都合からの答弁拒否なのだろう。

 勿論、犯行グループがどこか分からなかったから、交渉しようがないと一旦は逃げることができるが、1月20日に犯行主体が「イスラム国」と分かってから、どのような身代金交渉をしたのかと追及される恐れが出てくる。

 百歩譲って身代金交渉はしなかったと明らかにすることができたとしても、では、それ以外の解放のためのどのような交渉をしたのかと追及された場合、それが形式的な取り繕いであったなら、いわば解放に一生懸命努力していますという姿勢を国民に見せるアリバイ作り、あるいはポーズであったなら、具体的なことは何も言えないし、下手をすると自分で自分を追い詰めることになる。から、下手に答えることができない。

 細野は2人がテロ集団に拘束され、命が危機に晒されている状況下ではエジプトでのスピーチでテロ集団について触れる場合は言葉を選ぶ必要があり、どのくらいの認識を持ってスピーチを考えたのか追及した。

 安倍晋三の答弁が如何に無責任なものか、少し詳しく文字にしてみる。

 安倍晋三「まさにISIL、残虐の行為、恐怖の支配を拡大しようとしている、この過激主義の流れを止めなければならない。日本もその責任から逃れるわけにはいかない。同時に日本はこの2人が拘束されていた、ISILかどうかは定かではなかったが、それも排除されないという分析はしていた。

 同時に世界中で多くの邦人が仕事をしている。海外旅行に出かける人もいる。そうした人たちの安全を確保しなければならない。常にそういうことを勘案しながら、我々は判断している。

 事の本質は何かと言えば、最初に言ったように今世界各国がテロの恐怖に屈せずに、このテロの恐怖を排除して、その努力をそれぞれが積み重ねている。特に多くの難民を受け入れている国々を孤立化させ、困窮化させるということはISILの思う壺になってしまう。

 そこで日本のできる支援をする、日本は連帯を表明する。その場所で連帯を表明することは、極めて大切だと考えた。2人がこのような結果になったのは大変残念だ。日本人の生命、すべからく国の最高責任者である私に責任はある。その責任を受けることは当然のことだと思う。

 同時に国際社会の中に於いて日本もその責任を果たしていかなければならない。その責任を果たしていかなければ、結果として海外で仕事をしている人々、海外へ出かける日本人の生命が危うくなる可能性もあると考えている」

 細野「私の質問に答えていない。2人の命が危機に曝されているリスクについて外務省の説明がされている中で言葉を選ぶ必要があったのではないか。メールで身代金要求があったと思うが、このことを把握していたのか」

 安倍晋三「外務省とは情報を共有している。特に中東地域への訪問については外務省と官邸と一体となって訪問先を決め、そこで行うスピーチも推敲の段階から一緒に作業を行う。

 そこでどういう発言をするか。これも我々は言葉を推敲している。そこでISILの気持を忖度することは、彼らの意向に添うスピーチをするつもりは、(ヤジ)少し静かにしてくださいよ。(ほんのしばらく待ってから)よろしいですか。答弁拒否ではなく、妨害はやめてもらいたい。(ざわめき、また待つ)

 よろしいでしょうか。そこでスピーチの盛り込む言葉を様々な観点から選んでいる。その中で私たちが選んだ言葉が不適切であったとは考えていないということを申し上げておきたい。

 大切なことはこの過激主義、ISILを中心とする過激主義と多くお国々が戦っているのだから、彼らに対して明確にその支援をしていく。そして日本は人道支援をしていく。そのメッセージを発していくのは、当然日本の役割だと考えている」

 細野「テロリストの思いを忖度するなど論外。そんなことは一言も言っていない。目の前に拘束されている2人がいて、その生命がどうなるかというのは、国民の命を守る政治の役割だから、それを考えた上でスピーチをするのは当然」

 安倍晋三「今、細野委員は私が2人の命、海外で活躍している日本人の命を考えていないか如くの発言をしたが、全く間違いだ。先程の答弁の中で明確に申し上げた。

 (ヤジ、委員長に)すみません。もう少しヤジを抑えて頂きませんか。静かにしてくださいよ。

 先程申し上げたように2人の命について考えるのは当然のことであり、更に海外で仕事をしている多くの人たちの命を考えるのは当然のことであり、そして結果に対してもその責任を負っている。このように申し仕上げた。

 そこに全く思いを致していないかの如くの批判は当たらないと申し上げておきたい」(以上)

 安倍晋三は自分が質問に添った答弁をしなかったり、勘違いの発言をしてヤジを受けると、ヤジを批判することでヤジ自体を悪者とし、自身の答弁をさも正しく見せる狡猾さを巧まずして備えている。

 安倍晋三は国家の最高責任者としてテロ集団に拘束された2人の命を考えることと海外で仕事をしている多くの日本人たちの命を考えることを同列に置いている。

 前者は切羽詰まった危機的状況に立たされていて、解放という具体的な行動を一刻も早く必要としている命であり、後者は自国民であるという立場上、一般論として安全を確保しなければならない命であって、一刻も早い解放を必要とする危機的状況に立たされているわけではない。いわば前者に対する国家の危機管理と後者に対する国家の危機管理は切迫感の点に於いてもそれぞれが置かれた状況、あるいは境遇に於いても明らかに異なる。

 それを同列に扱う。当然、実際には2人への影響を考えてスピーチを推敲したは真っ赤なウソとなる。逆であるなら、決して同列に置くこともないし、答弁に海外で働いていたり海外に旅行する邦人を持ち出すことはない。事の問題自体が違う。

 如何に前者の命に対して酷薄であるかが理解できる。

 この酷薄さは2人の解放に身代金の支払いを手段とする考えが最初からなく、その場を取り繕う交渉に終始したことの反映としてある姿勢の現れであろう。

 当然、エジプトでの「中東政策スピーチ」にしても、日本人が拘束されても身代金を支払わない強硬姿勢で対峙する予定行動でいたから、拘束への影響を前以て考慮もせず、大塚耕平の言葉を借りると、ケーススタディすることもなく、「ISILと戦う周辺各国に総額で2億ドル程度、支援をお約束します」といった宣戦布告ともなる挑戦的な言葉となったのだろう。

 それはそれでいい。安倍政権としてテロ集団に拘束された場合の邦人解放は米英型とするのか、仏独型とするのか、国民の前に明らかにして、拘束された場合の交渉に当たるべきである。

 そうしてこそ、安倍政権は国民の前に正直な姿を曝すことができる。

 明らかにしていないから、「今、細野委員は私が2人の命、海外で活躍している日本人の命を考えていないか如くの発言をした」といった、ヤジを受けることになる理解違いの発言をしたり、言抜けやゴマカシを蔓延らせることになる。

 あるいはテロに屈したり、テロの気持を忖度したりしているわけではないにも関わらず、テロに屈するのはいけないとか、忖度してはいけないといった関係のない発言を延々と続けることになる。

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安倍晋三の「中東スピーチ」を震源とした日本のテロの夜明けの開始と想定されるテロの種類とその方法

2015-02-04 07:25:45 | 政治


 安倍晋三や岸田、菅官房長官が安倍晋三のエジプトでの中東スピーチを悪用しただけ、捻じ曲げただけ、曲解しただけと何と言おうと、「イスラム国」は湯川さん・後藤さん2人を拘束してから、後藤さんの身代金をメールで妻に求めていたのを、安倍晋三が2015年1月17日のエジプトスピーチで、例えそれが非軍事分野限定の支援だとしていても、 「ISILと戦う周辺各国」を対象として「ISILがもたらす脅威を少しでも食い止める」と、わざわざ言わなくてもいい余分なこと言っている以上、「イスラム国」への宣戦布告を陰の意味としていることになって、あるいは最低限挑戦状の体をなしていることになって、スピーチ3日後の1月20日に身代金要求対象を妻から日本政府に変えたのだから、宣戦布告、もしくは挑戦状を受けて立った「イスラム国」の、安倍晋三の「中東スピーチ」を震源とした内外の日本国民対象の無差別テロ予告(=「日本の悪夢」)という経緯を取ったことは誰も否定できまい。
 
 「日本政府はおろかな同盟国や、邪悪な有志連合と同じように『イスラム国』の力と権威を理解できなかった。我々の軍はお前たちの血に飢えている。安倍総理大臣よ、勝てない戦争に参加した向こう見ずな決断によってこのナイフは後藤健二を殺すだけでなく今後もあなたの国民はどこにいても殺されることになる。日本の悪夢が始まる」

 当然、「安倍総理大臣よ」と安倍晋三を名指しした意味は「中東スピーチ」に始まった、それを震源とした無差別テロ予告であることを知らしめているということであるはずだ。

 無差別テロ予告を受けて、日本政府内は慌ただしくなった。安倍晋三の政府の情報収集能力向上指示に始まって、海外の日本人学校の警備態勢の点検、必要に応じた地元警察当局への警備強化要請、文科省内への日本人学校側の相談に24時間体制で応じるホットライン開設、国交省内に国際テロ対策本部の設置、あるいは防衛駐在官のヨルダン等への派遣、外務省の在外邦人に対する注意呼びかけの渡航情報及び一部中東地域での「退避勧告」のサイト上での発信など、次々と対策に乗り出している。

 国交省内の国際テロ対策本部の設置に関しては、2001年7月設立の「国際組織犯罪等対策推進本部」を2004年8月に改組した「国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部」が本部長を菅官房長官として内閣官房に既に存在する。例の如く二元性によるタテ割り・縄張り争いをお得意とすることにならないだろうか。

 日本国内に関して言うと、どのような場所・どのような種類・どのような方法の無差別テロが想定されるのだろうか。

 これまでのイスラム圏やアフリカ諸国での過激派集団によるテロは個人や複数の人間を拘束して身代金を要求することから始まって、モスクや教会、市場、結婚式を挙げている結婚式場等、効率的な犠牲者生産の意図からだろう、多人数が集まっているところで日本の特攻もどきに身に着けた爆弾を自爆させて一度に多数を殺傷する方法を取っている。

 当然、文科相の下村博文や菅官房長官が国内テロ対策として2020年東京五輪・パラリンピックに向けて臨戦態勢を敷くのは当然であろう。観衆で埋まった競技場観覧席程、テロ集団に効率的な犠牲者生産を許す場所はない。

 一般の国家がモノの生産に効率性を重視するようにテロ集団は犠牲者生産の効率性を重視する。

 その他ではモスクや教会、市場、結婚式場からの連想で、東京五輪・パラリンピックの2020年まで5年を待たずとも、プロ野球観客席やJリーグサッカー場観客席、大相撲本場所観客席、人気歌手のコンサート会場などを、モスクや教会、市場、結婚式場よりも効率的に犠牲者を生産できる場所として想定しなければならない。

 あるいは朝夕のラッシュアワー時の満員電車の中。地下鉄サリンの再来である。

 何も危険を煽ろうという気持はない。常に最悪の事態を想定して備えることが危機管理である。油断していたら、9・11のショックを日本に招かない保証はない。「イスラム国」にしても、遠い地にある日本にまで出掛けて、一人二人の犠牲を出す効率の悪さを求めはしないだろう。一度に多くの犠牲者を出す効率性の良い悲惨なテロを敢行してこそ、無差別テロ予告(=「日本の悪夢」は予告通りの姿を取り、見せしめとなって、予告したことの自尊心を満足させることができる。

 でなければ、自尊心を自ら裏切る犬の遠吠えとしかならない。何だ、口程にもないなという不名誉、あるいは恥を彼らは選択するだろうか。

 そもそもからして「イスラム国」へ宣戦布告、あるいは挑戦状を叩きつけた安倍晋三の「中東スピーチ」を震源としているのだから、それ相応の規模のテロを想定し、備えなければならない。

 では、効率性から言って自爆テロ、あるいはその類いを想定するとしたら、どのような方法で敢行するだろうか。

 犯行主体は何もアラブ人だとは限らない。「イスラム国」にはその政治思想に共鳴して参加している白人やアジア人も相当存在しているそうだし、日本の若者の間にも共鳴者がいて、既に数人が現地入りしているという。彼らが直接中東の地域から飛行機で日本に入国してくるとは限らない。

 本国、あるいは別の国に空路移動して、そこから日本に入国する手もある。いわば日本としたら、国外便のある全ての空港の日本人を含めた全ての国籍の入国者を警戒対象としなければならない。

 無差別テロを目的として日本に入国する不特定国籍のテロリストは自爆用の爆弾を所有して通関するだろうか。そんな馬鹿なことはしないだろう。日本に少し長く滞在すれば、インターネットから様々な部品と薬品を手に入れて、自爆用爆弾を作ることも不可能ではない。

 特に洗剤や農薬などを混ぜたかなり殺傷力の高い硫化水素ガスは簡単に作れる。硫化水素ガスの比重は空気1に対して1.1905だそうだから、空気よりも重く、換気装置のある地下鉄車両や山手線車両であっても、床にガスが暫くの間漂うこととなって、満員空間で使用させたら、効率的な犠牲を許すことになる。

 日本入国の不特定国籍のテロリストたちが自分で自爆したり、他の方法を実行したりするとは限らない。日本の虐げられ、閉塞状況に追い込まれた、社会に対して不満を持つ若者を時間を掛けて洗脳して実行者に仕立てることも可能である。

 では、どのように実行するのだろうか。アフリカのテロ集団や反政府軍は少年を兵士に仕立てると、麻薬で恐怖心を麻痺させる手を使うそうだが、いざ実行という段階では覚醒剤か、あるいはより簡単に手に入る危険ドラッグを僅か使用して、恐怖心と罪悪感をなくさせて無表情となった大人しい一人の若者として多くの日本人が観客として集まっているプロ野球場や国技観や武道館、あるいはコンサート会場、あるいは多くの乗客で埋まっている首都圏の電車の中に特に強い印象を持たれることもなく紛れ込む。

 どこでどのような大量殺戮が起きても不思議ではない、安倍晋三の中東スピーチを震源とした日本のテロの夜明けが既に始まったと見て、どこにいても、何をしていても警戒を怠ってはならない。

 安倍晋三は「中東スピーチ」でも、「先の大戦後、日本は、自由と民主主義、人権と法の支配を重んじる国をつくり、ひたすら平和国家としての道を歩み、今日に至ります」と言い、二言目には戦後日本の平和国家の歩みを口にするが、日本のテロの夜明けが仕向けることとなる常に怠ってはならないテロへの過度の警戒心と大量殺戮のテロを想像した場合の恐怖心が日本の平和国家という輪郭を危うくし、ときには大量殺戮のテロが発生した場合は、平和国家という装いそのものを剥ぎ取られることになるかもしれない。

 これも安倍晋三の「中東スピーチ」を震源とした情景だと見なければならない。

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2月2日参院予算委「邦人人質問題」、安倍・岸田のウソが罷り通り、コロッと騙された民主大塚耕平のマヌケ

2015-02-03 10:59:27 | Weblog



      『生活の党と山本太郎となかまたち』PR

       《2月2日《シリアにおける邦人殺害事件について》「生活の党と山本太郎となかまたち」共同代表談話》  

 大塚耕平「湯川さん、後藤さんが拘束された事実を改めて伺いますが、政府としてはいつ把握をしていたのでしょうか」

 岸田外相「先ず、あのー、湯川さんに対しましては、えー、昨年の8月16日、何者かに拘束をされた疑いがあるという情報がもたらされました。そしてそのとき、その直後、併せて映像が公開されたということもありました。

 この時点で、えー、何者かに拘束されたという、この情報を得ています。えー、そして、えー、その直後に外務省として対策室及び現地対策本部を立ち上げました。

 そして後藤さんですが、11月1日(ついたち)に後藤さんが行方不明になったという情報を得ています。ただこの段階では、何者によって拘束されたのか、これについては、あのーえー、十分に情報を得ておりませんでした。

 えー、そしてその後、今年に入りまして1月20日(はつか)湯川さん及び後藤さんの映像が公開されるということになりまして、その時点でISIL(アイシル)関係者の犯行による可能性が高いということを把握した。

 大塚耕平「一連の経緯については国民の最大の関心事項でございますので、委員会に資料を提出して頂くことを委員長にお願い申し上げます」

 委員長「理事会において協議を致します」

 大塚耕平「その上で1ヶ月間私共も知ることとなるまでの間に政府としてはどのような様々の対策をされたのか伺いたいと思います」

 岸田外相「政府の対応としましては先程一部申し上げましたが、8月に湯川さんが拘束された疑いがあるというこの情報を得まして、直ちに外務省対策室、現地対策本部を立ち上げました。
 
 そして11月、この後藤さんが行方不明になったという情報を得ましたので、この後藤さんの件につきましても、この対策室及び対策本部に於いて対応をしたということであります。

 あのー、えー、こうした対策室、現地対策本部につきまして、情報収集を行い、そして関係国との連絡・連携を取りながら、えー、先ずは事実をしっかりと確認すべく努力をしてきた、まあ、こうした対応を続けてまいりました」

 大塚耕平「外務大臣にもう一問だけお願いします。現地対策本部はいつお作りになりましたか」

 岸田外相「えーと、現地対策本部につきましては、えーと、あの、湯川さんの情報がもたらされた直後、昨年の8月17日に立ち上げております」


 大塚耕平「と言うことは後藤さんの対応はその対策本部を引き継いだという理解で宜しいでしょうか」

 岸田外相「あの、後藤さんのこの件につきましては、あの、その時点で既に立ち上がっておりました外務省対策室及び現地対策本部、こちらで担当を致しました」

 大塚耕平「重ねて強い憤りを私もテロ組織に対して感じております。そうした中で今ご説明頂いたような時間軸の中で総理は、積極的平和主義実践のために、そして日本が世界に貢献するために各国歴訪をされたわけであります。

 その趣旨はよく理解できます。しかし今、外務大臣がお話して頂いたような状況の中でございますので、色んな、あの、影響についてのご検討を、ケーススタディをされたかどうかについてお伺いしたいと思います」

 安倍晋三「先ず、今回の事案でございますが、先ず明確に申し上げたいことは、今やすべての国がテロの脅威に曝されているわけでありまして、テロのリスクはすべての国にあると言ってもいいんだろうと思います。
 
 それは今回のシリアにおける邦人テロ事件やパリの新聞社襲撃事件などで浮き彫りにされたところでございます。従って、事の本質はテロのリスクを如何に低くするかに尽きるわけでございまして、テロの脅威に恐れてそのリスクを強調すること自体が既にテロリストの思惑にはまっていることにもなるわけであります。

 テロを恐れる余り、その威かしに屈するような態度を取れば、テロには効果があるとテロリストが考え、日本人が更に巻き込まれていく可能性を高めていくことになるわけでございます。

 今年は日本は戦後70年を迎える節目の年になるわけでありますが。日本はこの70年間、ひたすら平和国家としての道を歩んできたわけでございます。平和への歩みを世界へ通じていくために戦後70年の初めにその意思を国際社会に発信するために、まさに今国際社会が、地域そして世界全体の平和のためにも、中東地域の平和と安定を取り戻していこうという努力を重ねている中に於いて中東地域こそ訪問地として最適であろうと、そして中東から世界に発信すべきであろうと、このように考えたわけでございます。

 そしてそれは西欧対イスラムの決して戦いではなくて、まさにイスラムの中にある、あるいは国際社会の中にある過激主義を止めると言うことを主張すべきだろうと、えー、ということに於いて、私のテーマは『中庸こそ最善』。

 これはそもそもイスラムの考え方であり、これを共有しながら、この過激主義を止めていこうと、そん中に於いて日本が、えー、その責任を果たしていく支援をしっかりしていくということを表明するということはですね、国際社会がこのテロに対して戦っていく、あるいはその拡大を防いでいくことに資すると考えたところでございます」

 大塚耕平「と言うことは、その訪問のケーススタディをしたということで宜しいでしょうか」

 安倍晋三「ケーススタディということはどのような観点で仰っているのか私は定かではございませんが、つまり邦人が囚われているというケースの中に於いて、どういう影響になるかということ等についての意味だろうと思うわけでございますが、そういう観点からもですね、様々な観点を総合的に判断して中東訪問を決め、そしてそこから世界に発信していこうと言うことを決断したわけでございます。

 そもそも繰返しになりますが、事の本質はテロの過激主義を如何に世界と協力してそれを止めていくことにあるわけでございまして、テロリストの思いを一々忖度して、それに気を配る、あるいはそれに屈するようなことは決してあってはならないということを重ねて申し上げておきたいと思います」

 大塚耕平「官房長官にお伺いします。ま、色々とご検討された結果だということは十分理解しましたので、ま、ご検討された選択肢の中にヨルダンの支援やどういう趣旨で支援をしたのかということについてステートメントを出すと言うことを非公式に水面下でやるということも選択肢の中であったのでしょうか」

 菅官房長官「我が国の中東支援というのはまさに人道支援の中でですね、今日まで積み重ねてきたものであって、高く評価されておりました。そういう意味で水面下ということは考えておりませんでした」

 大塚耕平「今のご答弁でよく理解できました」

 有志連合に対する自衛隊の後方支援の有無について安倍晋三に尋ねる。

 なぜ外相の岸田はもう少しテキパキと発言できないのだろうか。責任回避のためにウソを情報操作の手段としているから、簡略した物言いをどこかに忘れてしまったということなのだろうか。

 岸田が話した2邦人拘束に関わる各事態の推移を時系列で列挙してみる。

 2014年8月16日 湯川さん行方不明情報
 2014年8月17日 外務省対策室 ヨルダン現地対策本部設置。
 2014年11月1日 後藤さんが行方不明情報 外務省対策室 ヨルダン現地対策本部を引き継ぐ
 
 2015年1月20日 湯川さん及び後藤さんの拘束と身代金要求映像公開。

 1月20日の拘束及び身代金要求映像で初めて外務省は犯行主体が「イスラム国」の可能性を把握した。

 岸田は発言している。「こうした対策室、現地対策本部につきまして、情報収集を行い、そして関係国との連絡・連携を取りながら、えー、先ずは事実をしっかりと確認すべく努力をしてきた、まあ、こうした対応を続けてまいりました」

 以上の発言に大塚耕平は岸田の言葉にウソを見抜くことができなかったのだろうか。また、昨年11月に後藤さんの妻に「イスラム国」から身代金要求のメールが届いていたことを把握せずに、この質問を行うというマヌケな失態を演じていたのだろうか。

 政府関係者への取材で判明したこととして、妻宛に昨年11月~今年1月まで後藤さんの拘束を伝え、身代金を要求するメールがイスラム国関係者から送られていたと「asahi.com」記事は伝えている。妻は相手側と約10通のメールを遣り取りをしたという。身代金の要求額は20億円余。

 他の記事も妻がメールを受け取ったのは11月以降となっている。

 と言うことは、妻が「イスラム国」から最初にメールを受け取ったのは2014年11月1日で、直ちに外務省なりに報告したために日本政府は同じ日の11月1日に後藤さんの行方不明情報を把握し得たと言うことになる。

 「asahi.com」記事はメールの発信者を「『イスラム国』関係者」と記述している。今年の1月20日の動画で犯行主体が「イスラム国」と判明して、遡って不明であった犯行主体を「イスラム国」に特定したということもあるが、イスラムテロ集団は様々にあるのだから、どの組織か名乗らないことには拘束が確たる情報とはなり得ず、詐欺と疑われる危険性も出てくる。

 メールの発信元から「『イスラム国』関係者」であることは把握できたと見るべきだろう。

 もし妻のメールでも確かな犯行主体の情報を手に入れることができす、2015年の1月20日まで待たなければならなかったというなら、岸田が「こうした対策室、現地対策本部につきまして、情報収集を行い、そして関係国との連絡・連携を取りながら、えー、先ずは事実をしっかりと確認すべく努力をしてきた、まあ、こうした対応を続けてまいりました」と、事実確認の努力をしっかりと果たしてきたかのように言っているが、湯川さん拘束の2014年8月16日から2015年1月20日までの5ヶ月間、後藤さんの2014年11月1日からでも2015年1月20日までの2ヶ月半以上の間も関係国との連絡・連携にも関わらず犯行主体を特定できなかったということは、岸田の責任履行発言に反して外務省の情報収集能力を疑わざるを得ない。


 それ程にも外務省はマヌケなのだろうか。
 
 大塚耕平が妻のメールに触れなかったのはマヌケだから仕方がないとしても、岸田が触れなかった理由を考えなければならない。妻がメールを受け取りながら、外務省にも他の関係部署にも届けなかったということも考えられる。だが、20億の身代金要求である。一人で手に負うことのできる金額なら、誰にも知らせずに支払って夫を解放させることができたなら、世間に知られることのない秘密として隠し通すこともできるが、夫は拘束されたままで、身代金も支払われなかった。

 外務省に知らせるしかなかったはずだ。だが、岸田は妻に届いた身代金要求のメールに一言も触れなかった。

 もう一つ、後藤さんが10月2日に取材でシリア入りした目的は7月28日に同じくシリアに入りした湯川さんの行方探しだという。その後一旦帰国、同10月22日に再び出国した。妻に目的を言わずに出かけたということは考えにくい。

 なぜなら、後藤さんは「何が起こっても、責任は私自身にあります。どうか、日本の皆さんもシリアの人たちに何も責任を負わせないでください」という例のメッセージをビデオ映像に残している。

 万が一の死をも覚悟している以上、目的と目的地を妻に残しているはずだ。外務省は妻からメールだけではなく、夫が出かけた目的と目的地の情報も得ていなかったことになる。

 いわば後藤さん行方不明の情報を得ていながら、外務省は妻に事情を尋ねる聴取さえ行っていなかったことになる。

 このようなおかしな事実は岸田がウソをついているとしか理由をつけることはできない。
 
 ウソをついている理由として考えられることは、もしメールに触れたなら、その時点で(実際にはそれ以前かも知れないが)2邦人拘束の犯行主体が「イスラム国」だと把握していたことになって、都合が悪くなるからだろう。

 つまり犯行主体を把握した時点を2015年1月20日とした方が好都合だった。その理由は多くが承知しているように、安倍晋三が2015年1月16日にエジプトを訪問、翌1月17日に「中東政策スピーチ」を行い、このときの発言を「イスラム国」は犯行の動機づけとした。

 当然発言の適・不適が議論の対象にされることになり、実際にも議論されることになったし、今回も大塚耕平が追及に及んだ。

 発言が不適切ではなかったとするためには安倍晋三が犯行主体が「イスラム国」と知らないままにエジプトに出掛けてスピーチを行ったとした方が都合がいい。

 岸田はその都合を優先するためにウソをつき、結果的に気づかずに外務省の情報収集能力をマヌケだとする不都合をつくり出してしまった。いくら何でも湯川さんに関して5ヶ月間、後藤さんに関して2ヶ月半の間も犯行主体を特定できなかったというのでは自国民保護の名を有名無実化する。

 大塚耕平は岸田のウソまみれの答弁を素直に受け入れて岸田に対する追及を切り上げ、安倍晋三のエジプトでの発言の適・不適に追及の矛先を切り替えた。

 大塚耕平は犯行主体が判明していなくてもという前提であっても、2邦人が拘束されている状況下で安倍晋三がエジプトであのような発言をしたことの影響を前以て「ケーススタディ」したのかと尋ねた。

 対して安倍晋三は「ケーススタディ」したのかしなかったのか直接答えずに、「今やすべての国がテロの脅威に曝されているわけでありまして、テロのリスクはすべての国にあると言ってもいいんだろうと思います」と言って、「イスラム国」の2邦人拘束事件をすべての国にあるテロ問題だと相対化することで、自身の責任回避を巧妙に謀っている。

 この自己責任回避をすること自体が「ケーススタディ」しなかったことの何よりの証明であろう。

 安倍晋三は以後も自身の発言が「ケーススタディ」したものかどうかに触れずに原稿を読み読み、例の如く散々繰返し発言している能書きを再び取り上げて延々と続けたに過ぎない。

 その発言はご覧のように、例え「イスラム国」が2邦人拘束の犯行主体と特定できていなかったしても、テロ集団に拘束されていることに変わりはなく、「イスラム国」もその一つに想定していなければなかったのだから、その事実を踏まえてエジプトでのスピーチがどのような影響を与えるか前以て「ケーススタディ」したと証明するに足る文言で成り立たせているとは決して言えない。

 大塚耕平はマヌケだから、この発言を以って「と言うことは、その訪問のケーススタディをしたということで宜しいでしょうか」などとマヌケなことを聞いている。

 ここで安倍晋三は大塚耕平の質問の意をやっとのことで飲み込むことができた。大塚耕平と同程度のマヌケのようだ。

 だが、安倍晋三は口が腐っても、あるいは口が裂けても、「ケーススタディ」していなかったと答弁するはずはない。自身の無能力を自分から公表するようなものである。言葉巧みに誤魔化すことは承知していなければならないはずだが、やはりマヌケだから答弁を予測できずに時間のムダとなる質問を続けた。

 安倍晋三は「事の本質はテロの過激主義を如何に世界と協力してそれを止めていくことにあるわけでございまして、テロリストの思いを一々忖度して、それに気を配る、あるいはそれに屈するようなことは決してあってはならないということを重ねて申し上げておきたいと思います」と抽象的なテロ阻止論を述べて、「ケーススタディ」したかどうかについては直接答えずに逃げた。

 大塚耕平はここで安倍晋三が中東スピーチで述べた「ISILがもたらす脅威を少しでも食い止めるためです。地道な人材開発、インフラ整備を含め、ISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します」という発言が2邦人拘束に対してどのような影響を与えるか「ケーススタディ」した発言だったかどうか、直接追及すべきだった。

 2邦人拘束の犯行主体が不明であったが事実であったとしても、「イスラム国」である可能性を想定していなければならなかった以上、「ISIL」と「イスラム国」を名指しした発言は果して「ケーススタディ」した適切な発言だったのかと。

 だが、我が大塚耕平先生は時間のムダ=税金のムダを垂れ流したに過ぎない。

 大塚耕平は追及先を菅官房長官に変えて、更に時間のムダ=税金のムダを垂れ流すことになった。

 要するに「イスラム国」に対する宣戦布告となるようなエジプトでのスピーチに代えて、非公式に、つまり水面下で、スピーチで表明したことの意思表示を行うべきではなかったかと尋ねた。安倍晋三が「ケーススタディ」を否定しないことは最初から分かっていたように菅官房長官も、「大塚耕平先生、あなたの言うとおりです、あそこでスピーチしたことは間違っていた」と答弁しないことは最初から分かっていなければならなかったはずだが、マヌケだから、時間のムダ=税金のムダを費やし続けることになった。

 大塚耕平は極く普通の常識でも納得がいかない答弁でありながら、最後に「今のご答弁でよく理解できました」と全てに納得するマヌケを最後に見事に演じて幕を降ろすことになった。

 岸田のウソに始まって、安倍晋三の何ら「ケーススタディ」していなかったにも関わらず「ケーススタディ」していたと誤魔化すウソだけが罷り通った、と言うよりも大塚耕平のマヌケさ加減がウソを罷り取らせた国会質疑であった。

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菅官房長官2月1日午前記者会見発言は、人質2邦人救出に最初から真剣ではなかったことの傍証

2015-02-02 08:52:40 | 政治
 


 菅官房長官2月1日(2015年)午前記者会見発言は次の記事を参考にする。《【イスラム国後藤さん殺害映像】菅義偉官房長官の午前の記者会見全文》産経ニュース/22015.2.1 14:21) 

 全文は直接アクセスして頂くとして、大体の遣り取りを言うと、既に多くの記事が報道しているように「イスラム国」が後藤さんを殺害したとする2月1日に配信した動画は、信憑性が高いと判断したということ、政府の今後の対応は海外邦人への注意喚起等による安全確保、日本人学校との連携強化と各国治安当局に対して日本人学校への警備強化の要請を取るよう在外公館への指示の徹底、トルコ国境地域の危険情報を一番高い『避難勧告』に引き上げたこと、改めて全在外公館に邦人社会の安全に万全を期すよう改めて指示したことなどとなっている。

 では、関係個所の発言だけ拾って、人質2邦人救出に最初から真剣ではなかったことの傍証となる発言を見てみる。



 記者「殺人事件としての警察当局の対応は」

 菅官房長官「この事案が発生してから、内閣危機管理監、内閣情報官、国家安全保障局長、警察庁、外務省で情報収集会議を連日開いて対策を講じてきている」

 記者「湯川遥菜(はるな)さん、後藤さんの殺害予告動画が最初に公開されて以降、イスラム国から日本政府への直接的な接触は」

 菅官房長官「ありませんでした」

 記者「(イスラム国は)交渉にもともと応じる考えはなかったように見える。政府としてどう見ているか」

 菅官房長官「まだそこまで分析は至っていないが、一方的なプロパガンダという色彩があったことは事実だろう」

 記者「一連の事件対応で、政府の情報収集、対外交渉力など課題を感じたことは」

 菅官房長官「この事案発生以来、これまで『人命第一』で、可能な限り、ありとあらゆる手段を行使しながら、全力で取り組んできた。そういう中で、湯川さんに続いて後藤さんが殺害されたとみられる映像が配信された。ご親族のご心痛を思えば、言葉もない。誠に残念で、無念だ」

 記者「ヨルダン人パイロットの安否確認は」

 菅官房長官「わが国は承知していない。この事案が発生してから、ヨルダン国はわが国に対して、非常に連携を進めてきた。ご協力に感謝したい」

 記者「ヨルダン政府とイスラム国側の人質交換に向けた交渉が決裂したという認識か」

 菅官房長官「よく分かりません。ただ、ヨルダン政府は誠意をもって日本のために取り組んでいただいた」

(人質交換の1人に加えずに、日本人の釈放に関しては抽象的な表現にとどまっていた。)

 記者「日本政府からイスラム国への接触は。試みていないとすれば、なぜか」

 菅官房長官「今度の事案について、何が最も効果的であるか、そういう観点から対応してきた。関係諸国、あるいは部族長とか、宗教の指導者とか、ありとあらゆる方の中で、日本としては協力を要請してきた」

 記者「日本から接触していないという理解でいいか」

 菅官房長官「接触もなかったし、接触することはどうかということも含め、一番効果的なことを政府としては考えて対応してきた」

 記者「得られた教訓や再発防止策は」

 菅官房長官「この事案が発生してから、わが国としてはできる限りの最大限の努力をしてきた。しかし、残念ながら湯川さんに引き続いて後藤さんが殺害されたとみられる映像が配信され、特に家族のご心痛を思うときに政府としても誠に残念、無念だ。対応については、これから部内の中で、どういうことが必要だったのか、どうすればよかったかも含め、検証していきたい」



 日本時間1月20日午後の2邦人拘束と72時間以内の身代金2億ドル支払要求、要求に応じない場合の殺害警告の動画がネット上に公表されて以来、「イスラム国」から日本政府に接触もなかったし、日本政府も「イスラム国」に接触していなかった。

 だが、「何が最も効果的であるか、そういう観点から」、「関係諸国、あるいは部族長とか、宗教の指導者」等に協力要請してきた。

 菅官房長官は言っていることの矛盾に気づいていない。

 これらの協力要請はいずれかの協力要請対象者に「イスラム国」と接触を図って貰い、その接触を成功させて、日本政府の代理人として間接的に交渉に当たらせることにあるはずだ。

 当然、「イスラム国」から接触がなければ、上記の接触を日本政府としての人質救出のための第一義的に必要な責任事項としなければならなかったことになる。

 湯川さん殺害の動画と後藤さん解放の条件にヨルダンで収監中の女死刑囚の釈放を要求した日本時間1月24日深夜に「イスラム国」の交渉相手は日本政府からヨルダン政府に移ったとしても、日本政府として「イスラム国」に対して何らかの方法で何らかの接触を試み続けなければならなかったはずだ。

 当たり前のことをわざわざ言うが、このような事案で「接触する」ということは、女性の体にこっそりと触れることではなく、話を通じさせることを言う。話を通じさせて初めて交渉や取引が可能となる。

 もし人質解放を言うなら、何が何でも第一義的な必要責任事項として接触から始めなければならなかったはずで、そういったことぐらい自国民保護の責任を最高責任者の立場で担う安倍晋三にしてもナンバー2の菅官房長官にしても承知しているはずだし、承知していなければならなかったはずだが、「日本から接触していないという理解でいいか」という記者の問いに「接触もなかった」と、いともあっさりと簡単に答えている。

 人質解放に心底から真剣な気持でいたなら、このような場合に第一番に必要とする自国民保護の責任事項を履行することができなかったのだから、いともあっさりと答えることはできないだろう。

 先ずは自分たちの無能を恥じるところから入るべきだった。「関係諸国、あるいは部族長とか、宗教の指導者等を通して色々と接触を試みたが、実現させることができなかった。遺憾の極みです」と自らの無能力を正直に告白すべきだった。

 「接触もなかった」という言い方は、接触できなかったのだから、仕方がないといったニュアンスを含む。

 要するに「イスラム国」に対する接触の成功を第一義的な必要責任事項としていなかった。

 到底、人質2邦人救出に最初から真剣であったとすることはできない。

 何らかのパイプを通して接触を実現させ、交渉する機会を手にすることができなかったにも関わらず、あるいは2邦人とも殺害という最悪の結果を受けていながら、「この事案が発生してから、わが国としてはできる限りの最大限の努力をしてきた」と政府対応の正当化を言い切る。「接触することはどうかということも含め、一番効果的なことを政府としては考えて対応してきた」と、同じく政府対応の正当化を訴える。

 最後に「対応については、これから部内の中で、どういうことが必要だったのか、どうすればよかったかも含め、検証していきたい」とは言っているものの、政府対応の正当化を最初に持ってきているのだから、どれ程の検証ができるか甚だ疑わしい。

 少なくとも結果に対する政府対応の正当化というこの矛盾は如何ともし難い。責任回避は真剣ではなかった対応から往々にして発する。真剣であった場合は、自分の力の至らなさを恥じたり、詫びたりするところから入る。

 この何ら恥じることもなく日本政府の対応の正当化に終始している点にも最初から救出が真剣であったとはとても考えることはできない。

 このことは、記者が「殺人事件としての警察当局の対応は」と問われて、「この事案が発生してから、内閣危機管理監、内閣情報官、国家安全保障局長、警察庁、外務省で情報収集会議を連日開いて対策を講じてきている」と正当化しているところにも現れている。

 どのような御大層な面々を集めて連日会議を開いて対策を講じようとも、「イスラム国」に対して接触を実現させることもできずに2邦人共殺害を結果としている以上、雁首を揃えるだけで終わっていたのであり、これからも終わることになるはずだ。

 対応を正当化する前に無策で終わった責任不履行を先ずは恥じるべきだろう。安倍晋三は関係閣僚会議で「政府として全力をあげて対応してきたが、誠に無念、痛恨の極みだ。このような結果になり、本当に残念でならない」と発言しているが、政府対応の個々の反省点を述べたわけではなく、やはり「政府として全力をあげて対応してきた」ことに重点を置いて政府対応を正当化するニュアンスを漂わせている。

 只々、政府対応の正当化だけで終わらせている。もし最初から2邦人救出に真剣であったなら、救出の第一義的必要責任事項としなければならない「イスラム国」との接触を、例え果たせなかったとしても、何が何でも実現させようと真剣に行動していただろうから、真剣であった分、そのことを実現させることができなかった責任と、2邦人救出失敗の結果を受けた以後は、全面的な不履行で終わった自国民保護の責任を恥じていいはずだ。

 救出に真剣ではなかったからこそ、失敗の意識も無能力の反省も持たずに済むために何ら恥じることなく政府対応の自己正当化に走ることができる。

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2月1日朝投稿された後藤健二さん殺害の動画が事実なら、安倍政権は後藤さんを見殺しにしたことになる

2015-02-01 10:24:55 | 政治
 


 今朝のNHKニュースがイスラム過激派集団「イスラム国」が日本時間の2月1日午前5時過ぎ、人質としていた後藤健二さんを殺害したとする動画をインターネット上に投稿したと伝えていた。

 そのネット記事が動画の声明文を紹介している。

 「日本政府はおろかな同盟国や、邪悪な有志連合と同じように『イスラム国』の力と権威を理解できなかった。我々の軍はお前たちの血に飢えている。安倍総理大臣よ、勝てない戦争に参加した向こう見ずな決断によってこのナイフは後藤健二を殺すだけでなく、今後もあなたの国民はどこにいても殺されることになる。日本の悪夢が始まる」

 この声明の後に後藤さんが殺害されたと見られる画像が映し出されていたという。

 もし日本政府のヨルダン政府に対する後藤さん救出が形式的なものだったとしたら、日本政府は後藤さんを見殺しにしたことになる。いや、最初から見殺しにする予定だった疑いが出てくる。 

 日本政府が事実後藤さん解放をヨルダン政府に協力要請していたのか、改めて振返ってみる。

 イスラム過激派集団「イスラム国」が日本人人質の後藤健二さんの解放と引き換えに要求した女性死刑囚の釈放期限日本時間29日午後11時頃前後から2日が過ぎた。この間のマスコミ報道が伝えているヨルダン政府の動きをどう読んでも、日本政府がヨルダン政府に後藤さん解放を実際に呼びかけている事実は見えてこない。


 ヨルダンのモマニ・メディア担当相が1月29日午後4時(日本時間1月29日午後11時)前に記者会見を開いている。

 モマニ・メディア担当相「ヨルダン政府は、パイロットと引き換えにリシャウィ死刑囚を釈放する用意があるが、パイロットの生存が確認できず、次の段階に進むことができない。
 
 日本人の人質を取り戻すためにあらゆる努力を続けている」(NHK NEWS WEB
 
 「NHK NEWS WEB」記事は、〈その上で〉と注釈を入れて、後段の発言を紹介している。

 上記発言は、「パイロットの生存が確認できさえすれば、パイロットに日本人の人質を加えた2対1でならリシャウィ死刑囚を釈放する用意がある」といった趣旨を決して取っていないし、そういった趣旨はどこからも見えてもこない。

 人質の1人に加えないで、いわば「イスラム国」の要求に乗らない形での取り戻すための「あらゆる努力」とはどんな努力なのだろうか。

 どのような努力なのか、ヨルダン政府も説明していないし、日本政府も説明していない。説明していないどころか、日本政府はヨルダン政府の交渉の事態の推移を見守るという姿勢を終始保っていた。

 いわばヨルダン政府に交渉を丸投げしていた。

 「イスラム国」が後藤さん解放の条件に2億ドルの要求からヨルダン収監のシャウィ死刑囚と後藤さんとの1対1の人質交換に変え、要求に応じなければ「イスラム国」が拘束しているヨルダン空軍のパイロットを殺害するとした脅迫を持ち出したのは、あくまでも1対1の人質交換を押し通してパイロットを人質交換の対象から外すことでヨルダン国民の間にパイロット解放の声を高めさせて、パイロットとの交換に持っていくことのできないヨルダン政府批判の声に変えて政府体制を揺さぶり、弱体化させるのが狙いだといった趣旨の幾つかの記事を見受けた。

 もしそのような狙いがあるとしたら、ヨルダン政府のパイロット生存確認の要請に対して「イスラム国」は生存の動画を、それもパイロットの首に縄を付け、両手首も縛って長い縄を付けて、その二本の縄を市中引き回しの形で群衆が歓声を上げる中を車で引っ張って歩かせて晒し物とする動画を流して生存を確認させた上で(イスラム圏の国々では罪を犯した者をムチ打ちに始まって石投げ、手首を斬り落として罰を与える慣習まであるのだから、縄で縛って引き回すことぐらいできるだろう)、あくまでも人質交換は日本人とシャウィ死刑囚の1対1だと伝えたなら、パイロットを取り戻すことに無力なヨルダン政府を窮地に陥れることができて弱体化の狙いはある程度成功するだろうし、例え1対1の人質交換で後藤さんが解放されたとしても、ヨルダンのパイロット救出断念を代償とした日本人人質解放ということになって、ヨルダン国民の怒りは日本にも向けられかねず、日本政府を困らせることもできる。

 だが、ヨルダン政府のパイロット生存確認に対して「イスラム国」はヨルダン弱体化に利用できるにも関わらず、それを最大化することもせず、沈黙を守ったまま4日が過ぎた。

 そして「イスラム国」は後藤さんを人質として最大限に利用してヨルダン弱体化を最大化しない内に後藤さん殺害の動画を配信した。

 勿論、「イスラム国」は当分の間パイロットが生存しているとも生存していないとも一切沈黙を守ることで、ヨルダン国民の多くをパイロットの生存が不確かなままの宙ぶらりんな疑心暗鬼に陥れた怒りに駆られやすい精神状態に落として、パイロット救出に動くことのできないヨルダン政府にその怒りを向けさせて体制の弱体化を誘導できないことはない。

 殺害予告はパイロットが生存していてこそ、有効化するが、ヨルダン国民を疑心暗鬼の感情に陥れて不安定な怒りの精神状態に持っていくには、生存が限りなく疑わしいが、僅かでも生存に望みを持たせることのできる状況づくりであっても、有効な方法となる。

 このような方法は例え生存していなくても、巧みなマジック一つで可能となる。

 果たしてパイロットは生存しているのだろうか。

 確認する方法がある。「イスラム国」がパイロットとシャウィ死刑囚との人質交換という形で新たな取引きに出たなら、確実に生存していることになる。だが、そのような取引はヨルダンの弱体化とは正反対の方向の体制強化の方向に向かう可能性の方が高い。

 新たな取り引きがなければ、疑心暗鬼の精神状態は体制弱体化の爆弾となって尾を引くことにもなる。

 後藤さん殺害が事実とすると、日本政府の後藤さん解放は終止符を打つことになる。ヨルダン政府が人質交換の要員に加えていないにも関わらず、ヨルダン政府交渉の事態の推移を見守るという丸投げの姿勢にしても、終止符を打つことになって、そのような矛盾した姿勢から解放されることになる。

 丸投げとは自身は手を加えないということを意味する。
 
 もし真に日本政府がヨルダン政府に後藤さん救出を要請していたなら、その要請を有効化させるだけの立場と力(この力にはカネの力も含む)を備えていたはずだから、1対1に手を加えて、後藤さんを人質交換の一人に加え、2対1とすることも決して不可能ではなかったはずだ。

 だが、ヨルダン政府は後藤さんを加えずにパイロットとシャウィ死刑囚との1対1の人質交換に終始し、そのような人質交換の事態の推移を見守るという丸投げの姿勢でいた。

 どう見ても、日本政府がヨルダン政府に後藤さん救出を確実な形とする要請を行っていたとは見えない。 

 もしそうであるなら、日本政府は疑い通りに最初から後藤さんを見殺しにしていたことになる。

 後藤さん殺害の動画を受けて午前7時過ぎから首相官邸で開催の関係閣僚会議で、安倍晋三が挨拶している。

 安倍晋三「湯川さんに続いて、後藤さんを殺害したとみられる映像が公開された。ご家族のご心痛を思えばことばもない。政府として全力をあげて対応してきたが、誠に無念、痛恨の極みだ。このような結果になり、本当に残念でならない。非道、卑劣極まりないテロ行為に強い怒りを覚える。許しがたい行為を断固非難する。

 テロリストたちを絶対に許さない。その罪を償わせるため、国際社会と連携していく。日本がテロに屈することは決してない」(NHK NEWS WEB)    

 日本政府は後藤さんを見殺しにしていたは私の見方だが、ヨルダン政府の交渉に丸投げの姿勢でいたことは人質の交換要員に後藤さんを加えることさえできなかったことからして確実で、そのような姿勢から言うと、安倍晋三の「イスラム国」に向けた強い怒り、強い言葉は虚しい響きにしか感じない。

 後藤さんの生命は殺害によって終止符を打ち、日本政府の後藤さん解放の矛盾した姿勢と後藤さん解放に関わるリスクにも終止符を打つことになる。

 だが、「イスラム国」は「我々の軍はお前たちの血に飢えている。安倍総理大臣よ、勝てない戦争に参加した向こう見ずな決断によってこのナイフは後藤健二を殺すだけでなく、今後もあなたの国民はどこにいても殺されることになる。日本の悪夢が始まる」と宣言した。

 この言葉がウソではないことを証明して自らの権威を誇示するためにも、実行される可能性は高い。

 エジプトでの中東政策スピーチでの「イスラム国」に対する愚かしい宣戦布告に端を発した事態の展開によって安倍晋三は新たなリスクを負ったことになる。考えて発したわけではない自らの言葉が招いたリスクである。

 新たに日本人が拘束された場合、特に安倍晋三は自身の内閣を瓦解のリスクから守るために邦人が殺害されることを以って終止符を打たないとも限らない。「あらゆる努力をしたがこのような無残な結果になってしまった」と言い、そして「非道、卑劣極まりないテロ行為に強い怒りを覚える。許しがたい行為を断固非難する」と怒りの声を上げる。

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