山尾志桜里不倫疑惑:前原誠司の「ご本人しか分からないところがある」と本人の釈明は不祥事への免罪符化

2017-09-09 11:12:12 | Weblog

 どのような形の不倫をしようと、露見した場合の火の粉は自身の身にのみに降り掛かってくるわけではない。

 前原誠司民進党新執行部発足当初、党ナンバー2の幹事長に内定していた東大法学部卒、43歳、検事出身の、世間一般では才媛と看做されているのだろう、山尾志桜里が当選2回に過ぎないということからなのか、政治経験が不十分ということで内定から外されることになったといったことがマスコミによって報道された。

 ところが、そこに2017年年9月7日発売の週刊文春記事、既婚男性との不倫報道が加わって、9月5日の党本部での両院議員総会で幹事長は他の人物にあてられることになった。

 双方共に子どもありの既婚同士。相手は8歳年下35歳の弁護士事務所の代表弁護士、一方は野党第一党新体制の幹事長内定。週刊誌としたら、一大スクープ、格好の餌食だったに違いない。売れに売れて、週刊文春編集部内で祝杯を上げる姿が目に浮かぶ。

 山尾志桜里は9月7日の夜、説明のための記者会見を開いたが、記者団の前で文書を読み上げたのみで、記者の質問を受け付けなかったという。このことは他党議員や閣僚の不倫に関しての説明責任が文書朗読だけで終えても、それ以上は追及できない前例となりかねない。

 少なくともそうした場合、民進党は説明責任を十分に果たしていないと非難することはできなくなる。

 自分たちが十分に説明責任を果たしてこそ、他者に対しても十分に説明責任を求める資格が出てくる。

 以下、文飾は当方。

 「文書全文」(asahi.com/2017年9月7日22時44分)
  
 本日発売の週刊誌報道に端を発し、国民の皆様、愛知7区地元有権者の皆様、ともに闘ってきた同士でもある子育てに奮闘するお母さんをはじめ応援いただいてきた皆様、同僚議員、自治体議員、民進党の党員・サポーターの皆様に、大変なご迷惑をおかけする事態になってしまいました。

 本当に申し訳ありません。

 今回の事態を受けて、本日離党届を幹事長に提出してまいりました。

 この週刊誌に記載のある○○(原文は実名)弁護士には、憲法問題や共謀罪、雇用問題など極めて幅広い政策分野において、政策ブレーンとして、具体的な政策の立案・起案作業や質問・スピーチ・原稿などの作成作業をお手伝いいただいてきました。こうした政策立案や質問作成などの打ち合わせと具体的な作業のため、○○弁護士とは頻繁にコミュニケーションをとってまいりましたし、こうした打ち合わせや作業は、二人の場合もそれ以上の複数人である場合もありました。打ち合わせ場所については、双方の事務所や会食の席上である場合が相当多数回ありますが、同弁護士のご自宅の場合もありました。

 また、本件記事記載のホテルについては、私一人で宿泊をいたしました。

 ○○弁護士と男女の関係はありません。

 しかし、誤解を生じさせるような行動で様々な方々にご迷惑をおかけしたこと、深く反省しおわび申し上げます。

 そのうえで、このたび、民進党を離れる決断をいたしました。

 まずは、冒頭に記載しましたとおり、国民の皆様、地元有権者の皆様、支援者の皆様、民進党同僚議員、自治体議員、党員・サポーターの皆様に改めておわびを申し上げます。

 また、とりわけ前原・民進党新代表には、新しい執行部を立ち上げるタイミングで、多大なご迷惑をおかけすることになったこと、先日の党大会で、党再生のために結束を誓いあった仲間の皆様の思いに、水を差す形になってしまったことに、心からおわび申し上げます。

 私は、民主党・民進党に育てられ、職責を果たすためのたくさんのチャンスをいただき、落選中を含めて支え続けていただきました。私自身、約10年前に政治の世界に挑戦を決めたときから現在にいたるまで、この国に必要な二大政党制の一翼を担う使命を負っているのは民主党・民進党であると確信し、離党を考えたことはこれまで一度もありません。感謝の気持ちで一杯であるのと同じだけ、苦しく、悲しい思いがあふれます。

 民進党が掲げてきた理念、取り組んできた政策への思いは今も変わりません。

 しかし、まもなく始まる臨時国会、国会論戦の場に、今回の混乱を持ち込むことは、民進党、そしてご支援いただいた皆様にさらなるご迷惑をおかけすることになると判断し、離党する決断をいたしました。

 平成29年9月7日 衆議院議員 山尾志桜里

 厳しいことを言うなら、「週刊誌報道に端を発し」たわけではあるまい。自身の行動が端緒となったはずだ。その行動が週刊誌にスクープされ、世間に曝されることとなった。

 「本件記事記載のホテルについては、私一人で宿泊をいたしました」と言っていることは、週刊誌が伝えているホテルには二人で部屋を取ったが、山尾志桜里一人が宿泊し、相手の弁護士は宿泊しませんでしたという意味になる。 

 「○○弁護士と男女の関係はありません」と言っていることは二人でホテルに入ったが、性行為はなく、相手の男性は宿泊せずにホテルをチェックアウトしたという事実関係を取ることになる。

 だが、何のために二人でホテルに入ったのかの説明はない。性行為が目的ではない、誰に対しても納得の行く他の用事が目的のホテル入室であることを挙げない限り、男女の関係を否定したとしても、俄には信じ難いことになる。

 もし事実男女の関係がなかったなら、不倫報道自体がプライバシーの侵害となる名誉毀損の虚偽事実の不法な社会的暴露に当たる。どこに離党しなければならない理由があるというのだろうか。

 離党どころか、事実無根の報道で名誉を傷つけられたと訴訟に持ち込んで週刊誌と戦わなければならない。極めてプライバシーに関係することで名誉を傷つけられて戦わない国会議員など意味を失う。

 国会議員は国民の精神的・経済的生活向上のために戦っている。個人の権利に関わるプライバシーは生活の本質そのものに影響してゆくゆえにそれを保護する戦いを自ら手本として示さなければならないはずだ。

 だが、自身は男女の関係はないとしている不倫報道を重大な名誉毀損、重大なプライバシーの侵害だと戦わずして、週刊誌報道に対して一種負けを認めることになる離党を選択する。

 この矛盾に対して唯一納得のいく説明は不倫は事実としなければならない。

 山尾志桜里は離党の理由を「誤解を生じさせるような行動」によって周囲に迷惑をかけたことに置いている。

 このことは報道=不倫の否定を前提としている。“誤解を生じさせたに過ぎない行動”だと。

 だが、もし報道=不倫が事実であった場合、それを「誤解」だと自身に対して自らを免罪して自己擁護に走り、民進党全体がその免罪を認めた場合、あるいはその自己擁護を認めた場合、他党の議員、あるいは異なる政党の閣僚が不適切発言をしたり、不倫等不祥事を起こして、それを「誤解」だと自らを免罪して自己擁護に走ったとしても、それ以上は追及することができなくなる。

 自党のことは許して、他党のことは許さないということはあり得ないからだ。

 前防衛相の稲田朋美が6月27日(2017年)夕方の東京都板橋区で自民党都議選公認候補の応援演説で、「防衛省、自衛隊、防衛大臣、自民党としてもお願いしたい」と応援演説をしたことは自衛隊の政治利用、選挙の私物化、自衛隊法違反、公職選挙法違反、憲法違反との批判を受けたが、6月30日の記者会見で、「誤解を招きかねない発言があったため、直後に趣旨を説明し、同日中に会見し、撤回・お詫び申し上げた次第でございますが、この場において、改めて『防衛省・自衛隊、防衛大臣』の部分は撤回し、お詫び申し上げます」と謝罪・撤回している。

 いわば発言は自衛隊の政治利用でもない、選挙の私物化でもない、自衛隊法違反、公職選挙法違反、憲法違反でもない、単なる「誤解を招きかねない発言」だったと自分で自分を免罪する自己擁護に努めている。

 免罪に対して免罪でいく相互擁護でいかなければならなくなるだろう。

 麻生太郎は2017年8月29日の派閥研修会で「政治家になろうとした動機は、私は問わないが、結果が大事だ。いくら動機が正しくとも、何百万人も殺したヒトラーは、だめだ。きちんとした結果を国民に残して初めて、名政治家だったと言われる」と発言、結果は悪いがヒトラーが政治家を志した動機を正しいうちに入れた考え方が批判されたが、翌30日にコメントを発表、「私の真意と異なり誤解を招いたことは遺憾だ。政治家にとって結果を出すことが、すべてであるということを申し上げたかったもので、この点を強調する趣旨で、悪しき政治家の例としてヒトラーを挙げた。ヒトラーは動機においても誤っていたことは明らかだ」(NHK NEWS WEB)と釈明、「誤解を招いた」だけのことだと自らを免罪し、自己擁護しているが、誤解だとすることによって自らを免罪とする自己擁護をお互いに認め合わなければならなくなるだろう。

 一度は民進党ナンバー2の幹事長職に山尾志桜里を内定した新代表の前原誠司が9月8日、この不倫騒動に関してぶら下がり記者会見を開いている。

 「産経ニュース」  

 --党常任幹事会で山尾氏の離党届受理を決めた。こういう事態になったことを率直にどう受け止めているか
 「山尾志桜里さんは今まで、元検事として犯罪者が社会に絶望して罪を犯し、それが被害者の希望を奪うと、こういう社会の悪循環を正さなければいけないという高い使命感の中で議員になられた。今までさまざまな分野で活動されてきた優秀な議員だと思っていただけに極めて残念な思いがする」

 --民進党は政府に説明責任を求めてきたが、山尾氏は昨夜、記者団の質問を受け付けなかった

 「ご本人の判断をわれわれは尊重したいと考えている」

 --交際相手と報じられた弁護士との男女関係を否定した上で離党届を出した。慰留する考えはなかったのか

 「ご本人しか分からないところがあるし、例えば今まで旧民主党、民進党で議席をおかれて活動してきた方が党を離れるという決断をすることは極めて重い判断だと思っている。その意味においては、ご本人の判断、ご本人にしか分からないところの中で判断したということなので、尊重したいと考えている」

--山尾氏本人とは話したのか

 「私自身も含めて党としていろんなお話を聞かせていただき、最終的にはご本人が判断された。常に申し上げているが、議員の出処進退は自ら決めることなので、ご本人のそういった決断をわれわれは尊重したいと考えている」

 --山尾氏は男女関係を否定しながら離党した。離党届受理は山尾氏の意思を尊重するということか

 「事実関係についてはご本人にしか分からないことだ。そしてご本人が前原体制のスタート時点で党に迷惑をかけたということをおっしゃった上で、総合的に判断されてご自身の離党を決められたと思っているので、そのことを尊重したいと考えている」

 --党として事実関係の確認はしていないということか。事実だったかどうかの評価は今後どうするのか

 「事実関係は本人にしか分からないことだ。本人がそれを踏まえていろんな政治家としての出処進退をご判断いただいたということで、それをわれわれは尊重したいということを申し上げている」

 --山尾氏の選挙区である衆院愛知7区に党として対立候補を立てるか

 「先ほど離党を常任幹事会で承認した(ばかりな)ので、今そういうことをただちに考えるということではない」

 --民進党は国会論戦でも週刊誌報道などをもとに「疑惑は報じられた側に立証責任がある」という前提で追及してきた。追及の先頭に立っていた山尾氏が報じられた内容について説明しないままほおかむりしていることを代表としてどう考えるか
 「ご本人はいろんなことをお考えになられて党を離れた。そういう決断をされた。これからのことについては、ご本人がさまざまなことで政治家として自らのご判断で行動されるべきだと思っている」

 --党運営に与える影響は

 「とにかく(新執行部は)出発したばかりだ。私が臨時党大会で申し上げたのは『自民党しか選ぶ状況がないという今の政治状況は、民進党のためではなくて国民にとって不幸である』と。われわれがしっかりとした選択肢を示すことが、日本の民主主義を機能させることになるんだという高い責任感のもとで、われわれは今後どんな状況がこれから起きようとも、われわれの歴史的な役割を果たしていく。その思いに全く変わりはないので、仲間と一緒に力を会わせて取り組んでいきたい、頑張っていきたいと思う」

 前原誠司は「事実関係は本人にしか分からないことがある」という趣旨のことを三度発言して、山尾志桜里を擁護している。

 民進党自身が前原誠司が代表として先頭に立って国民を裏切る行為があったのかなかったのかを究明して国民の前に明らかにせずに、あるいは本人に誰もが納得のできる明確な説明責任を求めずに、「事実関係は本人にしか分からないことがある」と本人任せの事実として擁護した場合、他者の議員や閣僚の自らの資質にそぐわない不適切な発言や行動があったとしても、“本人にしか分からない事実”を認めて擁護しなければならなくなって、結果的に不適切な発言や行動に対して説明責任を果たさなくても免罪しなければならなくなる恐れが出てくる。

 山尾志桜里の不倫報道に関する党代表としての前原誠司の発言には山尾志桜里本人に対する免罪を含んでいるだけではなく、山尾志桜里本人の釈明にしても、自身に対する免罪を含んでいるだけではなく、その免罪は同様の行動をした者の免罪符としても機能する恐れが出てくるのみならず、免罪符として利用したとしても、その免罪を認めなければならない立場に立たされることになるだろうということである。

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安倍晋三の加計疑惑「言った言わないの水掛け論」のペテンでなしに今治市の黒塗りの記録開示が疑惑解明の元

2017-09-08 11:19:04 | 政治

 文飾は当方。

 国家戦略特別区域諮問会議首相官邸/2017年9月5日) (一部抜粋)     

 安倍晋三「岩盤規制改革をスピード感を持って進めていく。これは、安倍内閣の揺るぎない方針であります。国家戦略特区はその強力な突破口で、特区に係る決定は民間議員の皆さんが一点の曇りもないとおっしゃっておられるとおり、いずれもオープンで適切なプロセスを経たものであります。他方、今般、第三者が加わらない省庁間の直接の調整をめぐって、当事者間で言った言わないの水掛け論に陥り、国民的な疑念を招く結果となりました

 加計学園の獣医学部新設に関して政治的関与があったのではないのか、行政を歪めたのではないのかと安倍晋三がその首謀者に目されてあれやこれや様々に噴出した「国民的な疑念」「当事者間で言った言わないの水掛け論」だといとも簡単に片付けてしまうペテンは流石である。

 大体が今回の疑惑での「言った言わない」の証言の食い違いはどちらかが事実を述べていないということであって、単なる「水掛け論」のレベルに収めてしまうことはできない。

 収めようとしているところに疑惑の首謀者と目されている安倍晋三自身の疑惑隠蔽の意図を嗅ぎ取らない訳にはいかない。

 2017年7月10日 加計学園参議院閉会中審査

 森ゆうこ自由党議員「萩生田官房副長官、平成27年4月2日、今治市の担当者は首相官邸で誰と協議を行いましたか」

 萩生田光一「平成27年4月2日に今治市の職員が総理大臣官邸を訪問したかは、訪問者の記録が保存されていないため確認できませんでした。

 先日も先生から御質問を受けまして、総理に直接聞くようにということでありましたのでお答えしておりますが、改めて総理に直接確認したところ、平成27年4月2日に今治市の職員と官邸で面会したとの記憶は全くないとのことでありました。

 なお、一般的に市の職員が安倍総理などと面会することは考えにくいと思っておりまして、どなたとお会いしたかは確認ができておりません」

 森ゆうこ「首相官邸ですね、平成27年4月2日です。(資料提示)パネルにも示しておりますし、皆様に今治市の行政文書、情報開示によって提供された行政文書であります。合計で7800以上あります。7800枚ですよ。これが行政です。

 そのうちの一部です。きちんと書いてあるじゃないですか、平成27年4月2日、15時から16時30分まで、首相官邸。議題はそこに書いてあるとおりです、獣医学部の設置について。残念ながら、相手方、首相官邸でどなたと会ったのか、ここは黒塗りで開示されておりません。今まではその答弁でよかったでしょう。

 じゃ、菅官房長官に伺います、首相官邸のことですから。一体、4月2日に、一地方都市の課長、そして課長補佐が訪れるということはほとんどないわけですよ。何で分かんないんですか、なぜ記録がないんですか、なぜ誰も確認できないんですか、誰も覚えていないんですか、お答えください」

 山本幸三「今治市に確認したところ、官邸には行ったが、今後の今治市の業務に支障が生じるおそれがあるため、情報公開条例の趣旨にのっとり、相手方、内容についてはお答えできないとのことでありました。

 一方、内閣官房に確認したところ、平成27年4月2日に今治市の職員が総理大臣官邸を訪問したかは、訪問者の記録が保存されていないために確認できなかったとのことであります」

 森ゆうこ「山本さんに聞いていませんよ。首相官邸の話ですよ。菅官房長官、分からないんですか。何で記録がすぐ廃棄されちゃうんですか。2年前のことですよ。平成27年4月2日、今治市の課長、そして課長補佐、官邸を訪れているんです。なぜ分からないんですか。一体誰と会ったんですか」

 菅義偉君「まず、総理大臣官邸への入邸については、通行証を貸与し、厳格に管理を行っております。通行証の貸与に当たり、訪問予定者に対し、訪問先への訪問予約届、その事前提出を求めて、入邸時にこれに記載されている内容と訪問予定者の身分証明書、これを照合し、本人確認を行っています。これによって安全性、これを十分確保しているということです。

 その上で、訪問予定者の入邸確認後に訪問予約届はその使用目的を終えることに加え、外部からの入邸者数というものは一日に三百人から四百人いるということです。これを全て保存すれば個人情報を含んだ膨大な量の文書を適切に管理する必要が生じることもあり、公文書管理法や関
係規則等に基づいて遅滞なく破棄すると、こういう取扱いになっているということであります。

 森ゆうこ「遅滞なく破棄する、そこが分かりませんね。参議院でも、会館への訪問者、その記録、3年間取ってある、文書管理規則に基づいて3年間取ってあります。なぜすぐ廃棄するんですか。なぜ官邸に誰が訪れたのか全く確認できないんですか。それはもう全然おかしいですよ。

 その時間帯、御覧ください、資料にありますとおり、首相動静を見てみますと、平成27年4月2日15時から16時30の間、河村建夫衆議院議員も訪問されていますけれども、総理が会われているのは、この間、加計学園問題で裏金疑惑が報じられました元文部科学大臣の下村博文さんです。ピンポイントじゃないんですか。これ、でも、国家戦略特区で、今治市が獣医学部を提案を国家戦略特区で行う前の話なんですよ。二か月も前の話なんですよ。なぜ官邸に行く必要があるんですか。一体誰と会ったんですか。答えてください、菅さん」

 菅義偉「それは今治市に聞かれたらいかがでしょう。官邸で、先ほど申し上げましたけれども、毎日三百人から四百人の方が訪れて、そして、それは公文書管理法や関係規則等に基づいて遅滞なく破棄する取扱いになっている、これは事実であります」

 森ゆうこ「国民をばかにするのもいいかげんにしてくださいよ。今治市は、七千八百枚、加計学園問題に関しての行政文書を管理、保管し、市民の情報開示請求にのっとって全部出したんですよ。私のところに全部ありますよ。

 じゃ、なぜ官邸はこんなことも確認できないんですか。なぜ誰も覚えていないんですか。おかしいでしょう。内閣府も分からないんだよね、何にもね、何にも文書がないんでしょう。どうかしていますよ。(発言する者あり)総理補佐官、静かにしてください」

 森ゆうこは情報開示によって提供された今治市の行政文書には今治市役所の課長と課長補佐が平成27年4月2日の15時から16時30の間に獣医学部の設置に関して首相官邸を訪問したと記されている、誰と会ったかは黒塗りで開示されていない、会ったのは誰なのか明らかにして欲しいと求めた。

 対して安倍晋三の腰巾着萩生田光一は「訪問者の記録が保存されていないため確認できない」、安倍晋三に聞いたところ、「今治市の職員と官邸で面会したとの記憶は全くない」と答えたと答弁、結局、分からずじまいで片付けている。

 山本幸三は今治市に確認したが、総理官邸での応対者、応対内容は今治市の業務支障の関係で明らかにできないということだったで済ませている。

 官房長官の菅義偉は通行証や訪問予約届、身分証明書等で本人確認するが、訪問予定者の入邸記録自体は「公文書管理法や関係規則等に基づいて遅滞なく破棄すると、こういう取扱いになっている」として、萩生田光一と同様、記録が残っていないことを理由に応対者が誰なのか分からないとした。

 ここで問題になるのは萩生田光一、山本幸三、菅義偉の言っていることが事実証言なのか、虚偽証言なのか、本人たちは事実証言だと言い張るのは分かりきっているが、いずれなのかという疑惑が生じることになる。

 例え本人たちが事実証言だと言い張ったとしても、今治市役所の課長と課長補佐が平成27年4月2日の15時から16時30の間に獣医学部の設置に関して首相官邸を訪問したという今治市の記録に残っている事実と、その記録では首相官邸側の応対者が黒塗りとなっている以上、応対者が存在していたという事実を以ってすると、「言った言わないの水掛け論」の類いで収めることはできない疑惑であって、そのような疑惑であることからすると、安倍晋三が「言った言わないの水掛け論」程度の疑惑だとするのは、まさにその程度の疑惑に貶めるペテンそのものを働かせていることになる。

 加計学園衆議院予算委員会閉会中審査(2017年7月24日)

 今井雅人「先ほど大串さんがちょっと触れましたけれども、これが今治市が提出している公開の資料です。中身は真っ黒なのでまだわからない部分もありますけれども、4月の2日に官邸の方に、今治市の企画課長と課長補佐が首相官邸を訪れています。

 課長クラスが首相官邸を訪問するというのは私は本当に余り聞いたことがないんですけれども、普通は内閣府の担当者に会わせてもらう程度で、わざわざ官邸に行くというのは本当にあり得ないと思うんですけれども、そのときの関係者が証言をしています。

 このとき面会をしたのは経産省出身の柳瀬唯夫首相秘書官、当時。柳瀬氏は今治市の担当者に、希望に沿えるような方向で進んでいますという趣旨の話をしています。おととしの四月ですね、この話をしているのは。面会の後、今治市では、ついにやったとお祝いムード、普通、陳情など、担当者レベルに会えればいい方、それが官邸に来てくれと言われ、安倍首相の名代である秘書官に会えた、びっくりですよ、絶対に誘致できる、さすが加計さんだ、総理にも話ができるんだと盛り上がったというふうに証言をしておられます。

 これは、黒塗りのものが取られればどなたに会ったかというのもはっきりするわけですけれども、もう一度お伺いします。

 この4月2日、柳瀬当時の首相秘書官は、今治市の課長と課長補佐にお会いになられましたか、そしてどんな話をされましたか」

 柳瀬唯夫「お会いした記憶はございません」

 今井雅人「では、会った可能性はあるということでよろしいですか」

 柳瀬唯夫「お会いした記憶はございません」

 今井雅人「もう一度確認します。私の質問に答えてください。 記憶にないということは、会ったか会っていないか断定ができないということですね}

 柳瀬唯夫「記憶に本当にございません」

 今井雅人「では、もう一回お伺いします」

 記憶にないということは、会ったか会っていないかが定かではないということでよろしいですか。だから、会っている可能性は否定できないということですね。それでよろしいですか」

 柳瀬唯夫「覚えておりませんので、ちょっとこれ以上のことは申し上げようがございません」

 今井雅人「これは大事な部分なんですね。

 ちょっと後で紹介しようと思っていましたけれども、今回は、いろいろな証言とか文書とか、いろいろ出てきているんですね。私がさっと数えただけで十幾つあります。十個以上ありますよ。それに対して政府側は、記憶にないとか、そういう事実はないと。では、それに対してどういう文書があるんですか、ありませんと。そればかりですよ。

 片やちゃんと文書がきっちり残っていて、その真偽を聞いているのに、それは覚えていないとか、あるいは内容が正しいとは思えないとか、そういう発言しかないんですね。ファクトが大事なんですよ。ですから、国民の皆さんもよくわからないなとなるわけです。だって、いろいろな文書が出てきていますよね。それに対して、いやいや、違います、こういうことなんです、ここの、この文書を見てください、違うじゃないですかという説明を私は一度も受けたことがありません。

 もう一度お伺いします。

 お会いになった可能性はありますね。会っていないと断言はできないということですね」

 柳瀬唯夫「覚えてございませんので、ちょっと何とも言いようが。申しわけございません」

 浜田委員長「速記をとめてください。

    〔速記中止〕

 速記を起こしてください。それでは、柳瀬参考人、もう一度答弁願います」

 柳瀬唯夫「お答え申し上げます。私、当時、秘書官、おととしの、25年の前半までやっておりましたけれども、当時、TPP、地球環境、成長戦略、研究開発、相当広範なところを担当しておりまして、相当多くの方々とお会いをしていたと思います。その中で、ちょっと、具体的にこの方とお会いしたかどうかの記憶が定かでないということでございます」
 
 今井雅人「丁寧に説明を。記憶にないというのが一番よくないんですよ。

 私も、政治家になる前に、政治家の人って記憶にないとか、役所の人も記憶にないとよくおっしゃるなと思っていたから、ここをはっきりしないとやはり国民の疑念が消えないので申し上げているんです。

 これはいずれ公開されるかもしれませんので伺っているんです、ここに書いてあるかもしれないから。

 ですから、会っている可能性も否定できないですねということ、そこだけ確認してください。言えない話じゃないでしょう。こんなところでとまると思わなかった」

 柳瀬唯夫「覚えてございませんので、会っていたとも会っていないとも申し上げようがございません」

 今井雅人「そうしたら、午後までに当日の官邸の入館記録を提出していただきたいと委員長にお願いしたいと思います、平成二十七年の四月二日の官邸の入館記録」

 浜田委員長「理事会で協議します」

 2017年7月24日にあったこの質疑の日から遡って2年と3カ月余前の今治市職員の首相官邸訪問に対して官邸側の応対者と目されている当時安倍晋三の秘書官だった柳瀬唯夫は「記憶にない」、「覚えていない」の一点張りで押し通している。

 参議院予算委員会 加計学園閉会中審査(2017年7月25日)
 
 桜井充「柳瀬参考人にお伺いしたいと思いますが、柳瀬さん、久しぶりでございます。柳瀬さんとは、特に原発の事故のときには大変お世話になりまして、柳瀬さん、私、柳瀬さんと今日久しぶりにお会いするんですが、前にお会いしたの、いつだか覚えていますか。

 柳瀬唯夫「いつ頃でしたでしょうか、多分7、8年前でしょうか、ちょっと正確じゃございませんけれども」

 桜井充「そうなんですよ。7、8年ぐらい前に財務省の当時の主計局長さんが会合を開いてくださって、官僚のこの方々が優秀で、これから先は日本の将来を担っていく人だから、副大臣、お付き合いしてくださいと言われてお会いしたのが最初だったと思いますが、それでよろしいですよね」

 柳瀬唯夫「財務省の方が当時の櫻井副大臣にどう御説明されたか、ちょっと私は存じ上げませんので、申し訳ございません」

 桜井充「でも、まあそのときに宴席一緒にしましたよね」

 柳瀬唯夫「夜、お食事をさせていただいたのをよく覚えてございます」

 桜井充「さあ、7、8年前のことを覚えていらっしゃるんですから、去年、おととしのことは覚えていらっしゃると思うんですがね。

 そうなってくると、これは記事でしかありませんが、今治市と会ったのがその当時の柳瀬首相秘書官だと、そう言われているんですが、これは事実でしょうか」

 柳瀬唯夫「お答え申し上げます。当時、私は総理秘書官として国家戦略特区、成長戦略担当してございました。その関連で内閣府の担当部局と打合せもしておりました。私の記憶をたどる限り、今治市の方とお会いしたことはございません。

 私が秘書官をしていました平成27年の前半までは、そもそも50年余り認められてこなかった獣医学部の新設をどうするのかという制度論が議論されていまして、この後、先生の御指摘のあったよりも多少後に、今、石破四原則とおっしゃった、再興戦略2015というのをまとめて、いわゆる石破四原則というのをそこで書いたわけで、その過程でございまして、制度を具体的にどこに適用するかというふうな話は全く、当時の段階では全くございませんでした。

 したがいまして、この段階でどなたにお会いしても、今治市がいいとか悪いとか、そういうことを私が申し上げることはあり得ないと思ってございます」

 桜井充「そうすると、簡潔に答えてください、今治市の職員とは会っていますか、その日、会っていませんか」

 柳瀬唯夫「私の記憶をたどる限り、お会いしていないということでございます」

 桜井充「それは否定されたということでいいんですね」

 柳瀬唯夫「私の記憶する限りはお会いしていないということでございます」

 桜井充「済みませんが、それは事実としてもう否定したということでよろしいんですね」

 柳瀬唯夫「事実としまして、私の記憶のある限りはお会いしていないということでございます。(発言する者あり)

 山本一太委員長「速記を止めて。

   〔速記中止〕

 速記を起こしてください」

 柳瀬唯夫「記憶している限りはお会いしたことはございません。会った覚えがないということでございますので、それで御判断をいただくということだと思います。

 桜井充「それでは、和泉(首相)補佐官は今治市職員と会っていますか、その日に」

 和泉洋人「私は会ってございません」

 桜井充「今のように、会っていない方ははっきりと会っていないとおっしゃっているんです。

 改めて、柳瀬参考人、いかがですか」

 柳瀬唯夫「記憶たどっても会っていないということでございます」

 今井雅人に対しては「記憶にない」、「覚えていない」の一点張りが、「私の記憶のある限りはお会いしていない」、あるいは「記憶たどっても会っていない」に変わっている。

 と言うことは、「記憶のないところでは会った可能性はある」と言うことになる。だが、桜井充はそこまでは追及しなかった。

 以前ブログにこの遣り取りについて、〈経験したことは全てが脳レベルで痕跡として残っていると言われている。但し人間はその全てを覚えている記憶力は有しておらず、脳に痕跡として残っている経験に近い第三者の言葉や映像、行動などの何かのキッカケを与えられることで、脳の無数の経験の引き出しの中からキッカケによって刺激を受けた経験が記憶として引っ張り出されるのだと、フジテレビの「ホンマでっか」にコメンテーターとして出演している生物学者の池田清彦がかなり前にそんな趣旨のことを言っていた。〉と書いた。

 要するに「記憶にない」、「覚えていない」は記憶にないだけ、覚えていないだけのことで、会っていないことの証明とはならない。繰返しになるが、「記憶のないところでは会った可能性はある」と言うことになる

 「スクープ! 加計疑惑 官邸で今治市と密会した“真犯人”は安倍首相の懐刀 特区申請前になぜ?AERA/2017.7.23 12:14)   
 安倍晋三首相が出席し、7月24、25日に行われる国会の閉会中審査。

 これまでの審議では、加計学園問題について多くの疑惑が未解明のままになっている。その一つが、2015年4月2日、愛媛県今治市の企画課長と課長補佐が首相官邸を訪れていたことを示す今治市側の記録があることだ。

 市町村の課長クラスが首相官邸を直接訪問していること自体も目を引くが、その時期は今治市が国に国家戦略特区での獣医学部新設を提案する2カ月も前のこと。いったい、誰と何が話し合われたのか。「加計ありき」のレールが、この時期から敷かれていたのではないのか。

 だが、肝心の訪問相手は今治市側が公開した資料では黒塗り。7月10日の閉会中審査で自由党の森ゆうこ議員が質問したが、萩生田光一官房副長官は「訪問者の記録が保存されていないため確認できなかった」と煙に巻いた。たかだか2年前のことなのに、面会相手が誰だったかすらわからないというのだ。

 そんな中、本誌はこのときの面会者について重要な証言を得た。事情を知る今治市関係者がこう語る。

 「実は、このとき面会したのは経産省出身の柳瀬唯夫首相秘書官(当時)。柳瀬氏は今治市の担当者ら少なくとも3人と会い、『希望に沿えるような方向で進んでいます』という趣旨の話をしたと伝わっています」

 名前が挙がった柳瀬氏は、以前から経産省の次官候補と言われてきたエース。麻生太郎政権でも首相秘書官を務め、その仕事ぶりが評価されて安倍政権でも秘書官に起用されたという。経産省では原子力政策課長だった06年に原発の増設や輸出を進める「原子力立国計画」をまとめたことでも知られる。同じ経産省出身の今井尚哉首相秘書官とともに、安倍首相と経産省との“蜜月”関係を象徴する人物でもある。

 安倍首相の懐刀である柳瀬氏が直接、今治市の担当者を官邸に招いて面会していたとすれば、やはり“特別扱い”という疑念を抱かざるを得ない。前出の関係者もこう語る。

 「面会の後、今治市では『ついにやった』とお祝いムードでした。普通、陳情など相手にしてもらえず、下の担当者レベルに会えればいいほう。国会議員が同行しても、課長にすら会えない。それが『官邸に来てくれ』と言われ、安倍首相の名代である秘書官に会えた。びっくりですよ。『絶対に誘致できる』『さすがは加計さんだ、総理にも話ができるんだ』と盛り上がったというのは有名な話です」(以下略)(文/今西憲之、本誌・小泉耕平)

 8月10日付「asahi.com」記事が、〈加計(かけ)学園の獣医学部新設をめぐり、愛媛県今治市の担当者らが2015年4月に首相官邸を訪れた際、加計学園事務局長が同行し、当時の柳瀬唯夫・首相秘書官(現・経済産業審議官)が対応していたとの朝日新聞報道を受け、菅義偉官房長官は8月10日午前の記者会見で、「国会で柳瀬さんが答えた通りだ」と述べ、事実関係を改めて調査する必要はないとの考えを示した。〉と伝えている。    

 菅義偉は柳瀬唯夫の会っていないことの証明とはならない「記憶にない」、「覚えていない」だけの国会答弁で安倍政治関与疑惑がなかったことの証明にしようとしている。

 この門前払い同然の安易さは安倍晋三が言っていた「丁寧な説明」に対しても矛盾することになる。

 「通常国会終了を受けた記者会見」(2017年6月19日)    

 安倍晋三(質疑応答で)「国家戦略特区における獣医学部の新設につきましては、文書の問題をめぐって対応は二転三転し、国民の皆様の政府に対する不信を招いたことについては、率直に反省しなければならないと考えています。

 今後、何か指摘があれば、政府としてはその都度、真摯に説明責任を果たしてまいります。国会の開会・閉会にかかわらず、政府としては今後とも分かりやすく説明していく。その努力を積み重ねていく考えであります。

今国会の論戦の反省の上に立って、国民の皆様の信頼を得ることができるように、冷静に、そして分かりやすく、一つ一つ丁寧に説明していきたいと思います」

 「何か指摘があれば」、「冷静に、そして分かりやすく、一つ一つ丁寧に説明していく」

 例えマスコミ報道であったとしても、今治市の職員に加計学園事務局長が同行したという新しい事実と、「事情を知る今治市関係者」の新しい証言が出てきたのである。安倍晋三の疑惑払拭のための“分かりやすい丁寧な説明”の公約に忠実に添って改めて首相官邸での応対者が誰で、どのような内容の用事を承ったか調べ直すべきだろう。

 勿論、柳瀬唯夫に改めて聞き取りをしても、「記憶にない」、「覚えていない」の一点張りだろうから、時間のムダ・労力のムダは目に見えている。最善の方法は地方公共団体に対して強い影響力を持ち、国と地方公共団体及び地方公共団体相互間の連絡協調等を役目としていると「Wikipedia」が紹介している総務省に命じて今治市が黒塗りにしている記録の開示を求めれば、応対者が柳瀬唯夫なのか、そうでないのかのみの事実一つで安倍晋三の政治関与疑惑が事実であるか、事実でないかが判明することになり。事実でないということになれば、安倍晋三の疑惑が一気に晴れることになる

 安倍晋三自身が政治関与の首謀者と目されていながら、「言った言わなかったの水掛け論」程度の疑惑に貶めて、さも自身が関与していないかのように装うペテンも必要なくなるし、国会審議を正常に戻す一助にもなる。。

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安倍晋三とプーチンと“同床異夢”の平和条約締結と対北朝鮮政策

2017-09-07 11:29:29 | 政治

 安倍晋三がウラジオストクで20017年9月6日と7日の2日間の日程で開催される「東方経済フォーラム」出席前に9月6日記者会見を行った。 

 「首相官邸」 

 安倍晋三「プーチン大統領とは今度のウラジオストクでの会談で19回目の会談となります。今までの会談の積み重ねの上に、平和条約問題の解決に向けてじっくりと話し合いたいと思います。昨年の長門会談の合意を契機として進んできた共同経済活動、そして元島民の自由な往来を更に具体化させ、平和条約の問題を進展させていきたいと考えています。

 北朝鮮は、今の政策を進めていく、今の道を進んでいくのであれば、明るい未来はないということを理解させ、現在の政策を変えさせなければなりません。そのためにも日露であるいは国際社会で連携していく、そのための会談をプーチン大統領、そして文在寅(ムン・ジェイン)大統領との間で行いたいと思います」

 安倍晋三自身がプーチンと何度も繰返し会談を開いてきて築き上げたとしている「信頼関係」というキーワードは今回は使っていない。「信頼関係」自体が“同床異夢”なのだが、「19回目の会談となります」と言って、回数に意義を置き、そのことが「平和条約問題解決」の推進力になり得るかのような文言を用いている。

 当たり前のことを言うことになるが、国益に優る信頼関係など存在しない。相互の国益を一致させる可能性を見い出すことができれば、信頼関係は生きてくる。国益一致推進に向けた有力な潤滑油となり得るだろう。

 いわば信頼関係が相互の国益を一致させるわけではなく、それぞれの国の政治利害が相互的な国益一致か不一致の決定権を握る。

 ロシアは北方四島を米の万が一の軍事攻撃に対する本土防衛の前線基地に見立てている。前線基地は本土から海を隔てて離れた距離に位置している程、本土防衛により効果的となる。首都モスクワを狙ったアメリカのミサイルを樺太で迎撃するよりも北方四島で迎撃して、もし失敗したら、樺太で迎撃する、そこでも失敗したら、より内陸で迎撃する何段構えの迎撃システムを安全保障上の必要事項としているはずだ。

 日ロ平和条約締結はそれぞれの国の政治利害が決めることになる相互の国益にかかっているのであって、極めて政治的な駆引きを要件とする。

 にも関わらず、安倍晋三は信頼関係を要件とし、信頼関係に縋っている。だから、何回も首脳会談を持たなければならないことになる。

 当然、北方四島に於ける共同経済活動の進展が日ロ平和条約締結を決めるわけではない。今回のプーチンとの首脳会談で観光振興、風力発電導入、海産物の養殖、温室野菜栽培、ゴミの減量対策の5項目を対象事業とすることで合意する見通しだとマスコミは伝えているが、本来は共同経済活動は“双方の法的立場を害さない「特別な制度」”を構築、その枠組み内で行うとしての取り決めであったはずだが、「特別な制度」を構築し得ないうちに対象事業の選定が先行し、その選定で合意する見通しとなっている。

 日本が提案した「特別な制度」だから、ロシア側が構築に抵抗しているとことになる。

 “双方の法的立場を害さない「特別な制度」”とは双方の主権を離れた制度と言うことであろう。それを北方四島全体に広げる。だが、ロシアが自国領土として実効支配して自らの主権を打ち立てている北方四島を自らの主権を離した状況に置くということはロシアの国益に極めて関係してくる譲ることのできない重大な政治的利害であろう。

 このことは共同経済活動の対象事業選定の協議を進めながら、ロシアのメドベージェフ首相が8月23日に北方領土をロシアの経済特区「先行発展地域」に指定する決定に署名したことに現れている。

 この特区指定は“双方の法的立場を害さない「特別な制度」”を拒絶するサイン以外の何ものでもない。

 確かにプーチンは平和条約の締結を口にしているが、プーチンの今までの言動は北方四島を返還させない形での日本との平和条約締結を視野に入れていて、安倍晋三が日本への帰属を前提としている締結とは同床異夢そのもので、双方が国益としている利害は真っ向から対立している。

 にも関わらず、安倍晋三はプーチンがどこに国益を置いているか考えずに共同経済活動の進展が日本側が望む平和条約締結への進展に繋がると信じている。

 対北朝鮮政策に関しても日ロは同床異夢の形を取っている。

 安倍晋三は「北朝鮮は、今の政策を進めていく、今の道を進んでいくのであれば、明るい未来はないということを理解させ、現在の政策を変えさせなければなりません。そのためにも日露であるいは国際社会で連携していく」対北朝鮮政策を口にした。

 だが、国連安全保障理事会が一層の厳しい制裁を科すことを目指し、軍事攻撃を散らつかせるアメリカに対してプーチンが「新たな制裁を課すことは効果的ではない」、あるいは「北朝鮮は雑草を食べることになったとしても、自国の安全が保障されない限り(核開発の)計画をやめないだろう」と牽制していることは北朝鮮の現状を容認する態度であって、ミサイルと核の開発阻止に向けた対北朝鮮に関わるアプローチにしても、日ロ連携どころか、本質的には同床異夢の関係にあると見なければならない。

 ロシアにしても中国にしても敵対関係に陥った場合のアメリカに対抗するとき、同じく敵対関係にある国を味方として一国でも必要とする。その国が核兵器を所有していたなら、より強力な味方となるだろう。ロシアが安全保障上の国益としているそのような政治利害は日本が北朝鮮に抱えている政治的利害とは本質的には相容れない。

 結局は形式的な連携の確認で終わるはずだ。

 安倍晋三は「北朝鮮は、今の政策を進めていく、今の道を進んでいくのであれば、明るい未来はないということを理解させる」と言っているが、圧力を以てして理解させるのか、話し合いを以てして理解させるのか、はっきりとは言っていないが、北朝鮮が8月29日に事前の通告なく弾道ミサイルを北海道上空を通過させて発射した際、「北朝鮮に対話の用意がないことは明らかであり、いまは圧力をさらに高めるときだ」と、これまでと同様に圧力一辺倒の政策を言い立てていたから、圧力を通して「理解させる」ということであるはずだ。

 だが、プーチンが圧力一辺倒なのは反対していたから、記者会見では今までは盛んに使ってきた「圧力」という言葉は使うことができなかったのだろう。

 一つの言葉を使うことができるか、できないかの点にさえ、双方の国益の違い、政治的利害の違いが見え隠れすることになるのだが、安倍晋三は拉致問題で同じようなことを言っている。

 2012年8月30日、フジテレビ「知りたがり」

 安倍晋三「ご両親が自身の手でめぐみさんを抱きしめるまで、私達の使命は終わらない。だが、10年経ってしまった。その使命を果たしていないというのは、申し訳ないと思う。

 (拉致解決対策として)金正恩氏にリーダーが代わりましたね。ですから、一つの可能性は生まれてきたと思います」

 伊藤利尋メインキャスター「体制が変わった。やはり圧力というのがキーワードになるでしょうか」

 安倍晋三「金正恩氏はですね、金正日と何が違うか。それは5人生存、8人死亡と、こういう判断ですね、こういう判断をしたのは金正日ですが、金正恩氏の判断ではないですね。

 あれは間違いです、ウソをついていましたと言っても、その判断をしたのは本人ではない。あるいは拉致作戦には金正恩氏は関わっていませんでした。

 しかしそうは言っても、お父さんがやっていたことを否定しなければいけない。普通であればですね、(日朝が)普通に対話していたって、これは(父親の拉致犯罪を間違っていたと)否定しない。

 ですから、今の現状を守ることはできません。こうやって日本が要求している拉致の問題について答を出さなければ、あなたの政権、あなたの国は崩壊しますよ。

 そこで思い切って大きな決断をしようという方向に促していく必要がありますね。そのためにはやっぱり圧力しかないんですね」――

 だが、5年経過した現在でも、安倍晋三は金正恩をして「思い切って大きな決断をしようという方向に促していく」ことができず、単なる言葉で終わっている。

 金正恩に「明るい未来はないということを理解させる」にはプーチンの力を借りようと、あるいは習近平の力を借りようと、偏に安倍晋三の同床異夢を乗り越えていく政治手腕にかかっている。

 単なる言葉で終わらないことだけを願う。

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民進代表前原誠司の幹事長人事に見る言葉の勇ましさに反した妥協=無難な選択は今後のリーダーシップを占う

2017-09-06 08:50:48 | Weblog

 前原誠司は民進党代表選が行われた党臨時大会で決意表明を行った。

 前原誠司「多くの国民が民進党に政権交代などでできっこないと考えている。決意を示せば、失笑、冷笑で迎えられる。私はそれを変えていく」。
 他の勢力との連携や協力の可能性は排除しない。しかし、私たちの理念、政策に賛同してくれることが第一だ。私たちの政策理念を高く掲げて、皆さんに強力をお願いする。

 大切なのはどのような社会をつくるのか、それを実現するためには具体策はどうなのか、そして未来をこじ開ける覚悟が我々にあるのか」(「産経ニュース」)    

 そのとおり、「多くの国民が民進党に政権交代などでできっこないと考えている」

 共同通信世論調査で「支持する政党はない」と答えた無党派層のうち、民進党の前原誠司新代表に「期待する」とした回答は33・1%、「期待しない」は56・1%。「政権交代などでできっこない」が多数を占めている。

 但し前原誠司は「未来をこじ開ける覚悟が我々にあるのか」の物言いで、自身は覚悟があることを表明している。

 「未来をこじ開ける覚悟」とは安倍一強国家主義政権を政権の座から引きずり下ろす覚悟を指す。

 8月21日告示日の共同記者会見では安倍一強について次のように述べている。    

 前原誠司「自民党のみ(しか)選択肢がない。そしてなおかつ先般の都議会議員選挙では50パーセント以上の方が支持政党がない、選ぶものがない。これは我々民進党の責任、責務だと思っています」

 前原誠司「今自民党しか選ぶ選択肢がないというそういう環境に置かれている国民は不幸だと思いますし、これは我々野党第一党の責任である、歴史的な責任であるとそう思っております」 

 安倍一強を突き破って「未来をこじ開ける覚悟」の達成を自らの責任としたことになる。相当の決意なのだろう。

 そして新代表として当選を果たした後の挨拶の最後に次のように述べている

 前原誠司「決意と覚悟を持って、皆さんと一緒に、この難しい局面を、われわれのためでなく国民のために切り開くことを心からお誓い申し上げて、代表という大変重い役割をいただいた決意の表明と、全ての皆さん方に対する御礼のご挨拶とさせていただく。ありがとうございます。よろしくお願いいたします」(「産経ニュース」)   

 「決意と覚悟を持って」安倍一強国家主義政権を打破し、「未来をこじ開る」プロセスに添ったリーダーシップ(指導者としての素養・力量・統率力)を発揮する責任を負ったことになるし、周囲からもそのようなリーダーシップの発揮を求められることになる。

 前原誠司は党運営の要となる幹事長に当選2回の山尾志桜里の就任を内定していた。党のイメージ刷新を考えてのことだとマスコミは伝えていたが、検察官上がりだとかで、そのことの影響か、元々の性格なのか、国会質疑での畳み掛けるような攻撃的な姿勢を持ち味としている。

 前原誠司はその持ち味を以ってして党のイメージ刷新を考えいたはずだ。何らかの持ち味なくして党のイメージ刷新を託すということはあり得ない。

 ところが、役員人事を決める9月5日の党本部での両院議員総会で前原は一旦内定した山尾志桜里を断念、大島敦元総務副大臣(60)を起用した。

 断念の理由は衆院当選2回という政治経験の不十分さに党内から懸念が噴出、撤回に追い込まれたのだという。

 要するに持ち味よりも年功序列が優先された。だから、当選6回で60歳という年齢を経た大島敦を年功序列的に政治経験十分ということで代打に起用したということなのだろう。

 この起用はまた、“無難さ”の選択を意味する。いわば持ち味よりも年功序列、“無難さ”を罷り通らせた。

 大体が政治経験の不十分さを言うことは政治家になる前の諸々の社会的経験を問題視していないことを示す。と言うことは、政治家にとって政治経験のみを絶対だとしていることになる。

 「Wikipedia」によると、山尾志桜里は2004年に検察官任官に就任、東京地方検察庁、千葉地方検察庁、名古屋地方検察庁岡崎支部に勤務し、2007年に退官している。3、4年間の検察官経験が加味されない政治経験とはどういう経験なのだろうか。

 政治経験だけを問題とする自分たちの非合理性に気づかない政治家という生き物はどういう生き物なのだろうか。

 前原誠司のこの人事のもたつきは「決意と覚悟を持って」安倍一強国家主義政権を打破し、「未来をこじ開る」、あるいは政権交代を果たす等々、並べ立ててきた勇ましい言葉に見合うリーダーシップを発揮したということができるのだろうか。

 民進党代表の任期は3年。3年持たせることなど考えない方がいい。前原誠司は上記両院議員総会で、「早ければ(3補選と同時に)10月22日に総選挙があるかもしれない。我々が新たな社会像、国民に選択肢を示すことは歴史的な使命、責務だ」と述べている。

 年内になくても、衆議院議員の任期は2018年12月13日に切れるから、来年は必ず行われる。前原の進退はその結果によって決まる。現有議席を守ることができなければ、政権の選択肢を示すことができなかった責任を取らなければならないだろう。

 蓮舫は民進党の支持率を挙げるどころか、下げる方に貢献し、都議選挙民進党の敗北を受けて任期1年に届くことができずに自ら責任を取る形で2017年9月1日に辞任している。

 要するに前原誠司は次期総選挙に焦点を合わせて、すべての政治行為をそこに収斂させて行かなければならない。そこに向けてリーダーシップを発揮するのも、その結果の責任を取るのも前原誠司自身である。

 政治経験が浅いだ、何だと言っている連中ではない。2018年12月13日以内に進退の節目を迎えることになるというのにその出発点で自ら決めたことに踏ん張ってリーダーシップを発揮できなくて、党運営の要となる幹事長人事で妥協し、無難を選択した。

 初っ端からそうであるということは、この先もこの歩みが続くことの予兆であり、今後を占うことになるはずだ。

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竹下亘の北朝鮮ミサイル「島根に落ちても意味ない」は自分の選挙区でなければどこでもいいと言う自己中心

2017-09-05 10:30:33 | 政治

 国連安保理は北朝鮮の7月の二度のミサイル発射実験に対して8月5日、一段と厳しい対北朝鮮制裁決議を全会一致で採択した。北朝鮮はこの決議に反発、北朝鮮の朝鮮人民軍戦略軍報道官は米戦略爆撃機による朝鮮半島周辺での訓練実施を非難し、米国に厳重な警告メッセージを送るため北太平洋の米領グアム島周辺30~40キロの水域に着弾する中距離弾道ミサイル「火星12」で「包囲射撃する作戦計画」を慎重に検討、近く最高司令部に報告され、金正恩朝鮮労働党委員長が決断すれば、任意の時間に同時多発的、連発的に実行されるとの8月8日付の声明を発表した。(「時事ドットコム」)  

 声明はグアム向けミサイルの飛行コースに島根県、広島県、高知県の上空を挙げていたと言う。

 政府は8月12日、北朝鮮ミサイル発射に備えて中国・四国の4カ所に地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)の配備を行った。

 自民党総務会長竹下亘(70歳)の9月3日(2017年)広島市で開かれた党の会合での発言。選挙区は島根県第2区。

 竹下亘「広島はまだ人口がいるけど、島根に落ちても、何の意味もない。あれだけ実験したので、多少、安心していた。東京や大阪、あるいは、アメリカ軍の基地を狙ったものが間違って島根に落ちることはないと思っていた。

 この上を通過するというから、もう一回考え直して、いろんな対応をしていかなければならない。国家というのは何のために存在するか。いちばんは国民の命と暮らしを守ることだ」(NHK NEWS WEB)  
 
 参考までに「時事ドットコム」記事から。  

 竹下亘「広島はまだ人口が(多く)いるが、島根に落ちても何の意味もない。(ミサイル技術の)精度が上がり、東京や大阪、米軍基地を狙ったのが間違って島根に落ちることはないと多少安心していた。

 (島根上空を)通過すると言うから、考え直していろいろ対応していかなければならない」

 帰京後、記者団に「島根には米軍基地があるわけでもなく、軍事戦略上意味がないという趣旨で言った」

 常に絶対ということはあり得ない。旅客機は目的地まで飛ぶように設計されている。だが、ときに墜落して、多くの乗客の命を奪う。だから政府は発射に失敗して日本に落下した場合に備えてPAC3を配備した。

 北朝鮮がミサイルを発射した場合、アメリカの早期警戒衛星が最初に発射をキャッチしておおまかな発射場所や発射の方向などを割り出し、この情報を元に日本近海に展開する海上自衛隊のイージス艦が追尾、日本国内落下の予測の場合は迎撃ミサイル「SM3」で撃墜、迎撃が失敗した場合は航空自衛隊の地上配備型の迎撃ミサイル「PAC3」が地上近くで迎撃する二段構えになっているそうだが、この二段構え自体が絶対はあり得ない証明となっている。

 いわば「PAC3」の迎撃自体が常に絶対ということはあり得ない。常にそういった危機管理の元、備えなければならない。

 こういったことを踏まえて竹下亘の発言を見なければならない。

 「広島はまだ人口がいるけど、島根に落ちても、何の意味もない」

 この言葉は広島の方が島根よりも人口が多いから、人口の少ない島根に落ちるよりも、人口の多い広島に落ちる方が自身にとって意味があると言っていることになる。

 但しこのことは北朝鮮にとっても意味があるとしていることになる。北朝鮮からしたらミサイル発射に失敗しても、結果的により大きい被害を与えた方が思わざる成果となるだろうからである。

 要するに自分の選挙区に落ちなければ構わないという自己中心の考え方からの発言となっていると言うだけではなく、本人はそのつもりはなくても、北朝鮮の立場に立ってより大きい被害を望んだことになる。

 北朝鮮は実施を現在のところとどまっているが、島根県、広島県、高知県の上空を通過させてグアム島周辺30~40キロの水域への着弾を目指したミサイル発射を予告した。

 日本に落下する場合は、発射が失敗し、失敗による日本落下を見越して海上自衛隊イージス艦の迎撃ミサイル「SM3」が海上での前以っての撃墜を試すも失敗し、尚且つ地上の「PAC3」による地上近くの迎撃も失敗した場合ということになる。

 となると、落下地点は島根県、広島県、高知県の飛行コース下に限らないケースも生じることになって、発射前から広島、島根の選択自体が意味が無いことになる。
 
 竹下亘は自己中心の性格をしているだけではなく、物事を論理的に思考する能力をも欠いているようだが、大体からして自己中心的な人間は論理的思考欠如を背中合わせとしている。

 「東京や大阪、あるいは、アメリカ軍の基地を狙ったものが間違って島根に落ちることはない」は発射が失敗した場合を前提とすると、危機管理の点から言って、少なくとも大阪を狙ったミサイルが島根に絶対に落ちない保証はないことになる。

 京都府や兵庫県、広島県にある米軍基地を狙って、それが失敗して飛行コースを外れた場合、島根に落下しない保証もないことになる。

 自身の選挙区のことしか頭にない自己中心の考えでいるから、論理的に把えることができずに、何でも単純化してしまう。 

 こういった思考能力からすると、「国家というのは何のために存在するか。いちばんは国民の命と暮らしを守ることだ」は取ってつけた言葉でしかないことになる。「国民の命と暮らしを守る」ことを心底考えていたなら、「広島はまだ人口がいるけど、島根に落ちても、何の意味もない」という言葉は出てこないだろう。

 広島の住人だろうが島根の住人だろうが、日本の国民に変わりはないからだ。広島はいいけど、島根はダメだという考えは国民として選別していることになる。

 要するに竹下亘にとっての「国民の命と暮らしを守る」は単なるスローガンとして身についている言葉に過ぎない。

 竹下亘は翌9月4日になって、自身の発言を記者団に対して釈明している。

 竹下亘「北朝鮮が戦略的に島根を狙ってくることはないだろうという思いを話した。離島であろうと、島根であろうと、ミサイルが落ちれば日本の安定に極めて重大な事態だ。

 昨日の挨拶の中では、『国家の存在は、国民の命と暮らしを守ることが第一義だ。あらゆる対応をしていかなければならない』とも話した」

 記者「発言は不適切と考え、撤回する考えはあるか」

 竹下亘「どこが不適切なのか教えてもらえれば考える」(NHK NEWS WEB)  

 竹下亘は自己中心的で論理的思考を欠いていると書いた。上の発言も当然、この範囲内の傾向にあることになる。

 「広島はまだ人口がいるけど、島根に落ちても、何の意味もない」が「北朝鮮が戦略的に島根を狙ってくることはないだろうという思いを話した」に変わっている。

 後者の思いが前者の言葉にどう繋がっていると言うのだろうか。確かに戦略的な意味で直接的な島根ミサイル照準は非現実的であり得ない話かもしれないが、その非現実性は前者の可能性としての現実性に繋がりようはないし、発言の前提そのものを誤魔化し、なかったことにしている。

 竹下亘の「広島はまだ人口がいるけど、島根に落ちても、何の意味もない」は北朝鮮が対米威嚇の意味で島根県、広島県、高知県の上空を通過させてグアム島周辺を目標地点にミサイル発射を予告したことから始まっていて、発射が失敗した場合の飛行コース下の落下を前提として、人口の多さから広島に落下した方が意味があると自身の選挙区に落ちなければいいという自己中心的な考えで言い、結果として北朝鮮の立場に立って被害の大きさを意図せずに意味あることとした。

 但しどう前提を変えようとも、「北朝鮮が戦略的に島根を狙ってくることはないだろうという思いを話した」は戦略的に狙う意味があるかないかを基準にして狙う意味が無いからとミサイル攻撃対象から島根を外した文意を取ることになる。

 と言うことは、「離島であろうと、島根であろうと、ミサイルが落ちれば日本の安定に極めて重大な事態だ」と言ってはいるものの、言葉とは裏腹に本人が気づいていないだけのことであって、戦略的に狙う意味がある他の場所はミサイル攻撃対象となり得ると示唆した意味を取ることになる。

 このことは、「広島はまだ人口がいるけど、島根に落ちても、何の意味もない」と言ったことと、「北朝鮮が戦略的に島根を狙ってくることはないだろうという思いを話した」と言っていることは、自身の選挙区である島根は困るが、他の場所は構わないという意味で本質的には殆ど変わらないことになる。

 後者の発言も前者の発言同様に自己中心的で論理的思考を欠いている点で同質の体裁を纏っていることになる。

 記者の「発言は不適切と考え、撤回する考えはあるか」の問いに竹下亘は「どこが不適切なのか教えてもらえれば考える」と答えているが、日本という国全体の生命の安全に関わる安全保障を選挙の地元の生命の安全のみをモノサシにするしか考えることができないのは明らかに不適切な発言以外の何ものでもなく、そのような政治家が国会議員を務め、自民党の役職に就いている。

 任命責任者である自民党総裁安倍晋三の安全保障観自体を疑うことになる。

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安倍晋三の対北朝鮮圧力一辺倒は金正恩の今更引けない“虚勢”を、引けないゆえに暴発させる危険性を孕む

2017-09-04 12:23:22 | Weblog

 北朝鮮が2017年8月29日早朝に事前の通告なく弾道ミサイルを発射し、ミサイルは北海道上空を通過して太平洋上に落下した。安倍晋三は発射を受けて午前7時過ぎから7時半過ぎまで国家安全保障会議(NSC)を開催、その後首相官邸のエントランスなのだろうか、ぶら下がり記者会見に応じている。

 安倍晋三「「我が国に北朝鮮が弾道ミサイルを発射し、我が国の上空を通過した模様でありますが、直ちに情報の収集、分析を行います。そして、国民の生命をしっかりと守っていくために、万全を期してまいります」(首相官邸)   

 「国民の生命をしっかりと守っていくために、万全を期してまいります」と国民の生命の保全を確約しているが、これまでも圧力を以てして北朝鮮のミサイル開発阻止・核開発阻止を訴えているから、保全の方法は圧力で変わりはないはずだ。

 安倍晋三はその後午前9時24分から約37分間、トランプと電話会談している。第1回電話会談と言うべきだろう。ミサイル発射に関しては合計3回、その後の核実験に関して1回、合計4回も行っているのだから。

 この電話会談の内容を2017年8月29日付「NHK NEWS WEB」記事が伝えている。   

 安倍晋三「「日本上空を飛び越える形で発射されるミサイルは、これまでとレベルの異なる深刻な脅威だ。安保理決議が出て、国際社会全体が圧力を強めている中での発射であり、これまでにない挑発だ。

 北朝鮮に対話の用意がないことは明らかであり、いまは圧力をさらに高めるときだ。『すべての選択肢がそ上にある』というアメリカの立場を支持している」――

 「北朝鮮に対話の用意がないことは明らかであり、いまは圧力をさらに高めるときだ」

 記事はトランプと北朝鮮に対する圧力強化で一致したと書いている。改めて“圧力の全面提示”を行ったことになる。

 北朝鮮のミサイル開発阻止は現在は「対話」といった生ぬるい方法は役に立たず、「圧力、圧力、圧力」のみ、ときにはトランプが選択肢の一つとしてテーブル上に置いている軍事攻撃という強硬策も圧力の一つとして支持しているということになる。

 トランプとの電話会談後、記者団のインタビューに応じている。

 安倍晋三「北朝鮮が発射した弾道ミサイルが我が国上空を通過し、太平洋に落下いたしました。

 政府としてはミサイル発射直後からミサイルの動きを完全に把握しており、国民の生命を守るために万全の態勢を取ってまいりました。

 我が国を飛び越えるミサイル発射という暴挙は、これまでにない深刻かつ重大な脅威であり、地域の平和と安全を著しく損なうものであり、断固たる抗議を北朝鮮に対して行いました。国連安保理に対して緊急会合の開催を要請します。国際社会と連携し、北朝鮮に対する更なる圧力の強化を日本は強く国連の場において求めてまいります。

 強固な日米同盟の下、いかなる状況にも対応できるよう緊張感を持って、国民の安全そして安心の確保に万全を期してまいります」(首相官邸)    

 「国民の生命を守る」、「国民の安全そして安心の確保に万全を期す」と二度、国民の生命の保全を確約している。そしてその方法たるや、北朝鮮に対する一層の圧力強化だと、その一辺倒の立場を取っている。

 安倍晋三はトランプとのこの電話会談に引き続いて翌日8月30日に第2回電話会談を行っている。時間は午後11時半過ぎから約30分間。

 トランプとだけではなく、この間に韓国大統領やオーストラリア首相とも電話会談を行い、訪日中のイギリスのメイ首相とも会談していて、トランプとの電話会談ではこの報告をした上で北朝鮮に対して更に強い圧力をかけることで政策を変えさせる必要があるとの認識で両者が一致したと8月31日付「NHK NEWS WEB」記事が伝えている。    
 
 安倍晋三は圧力こそ全てであるという考えに凝り固まっているようにさえ見える。
 
 このトランプとの電話会談後、記者団のインタビューに応じている。

 安倍晋三「日本の上空を飛び越えるミサイル発射の強行は極めて危険な行為であり、国際社会で圧力を高めていかなければならないということで、(韓国・豪州・英国の)それぞれの首脳と完全に一致した。今後とも、日米、日米韓、あるいは、イギリス、国際社会と連携しながら、北朝鮮が政策を変えるためにさらに緊密に連携していきたい」(同NHK NEWS WEB
 
 ここでも圧力こそが最強の政策だとばかりに「圧力」を持ち出し、圧力傾注で両者の認識を一致させている。

 トランプとの電話会談はこれだけで終わらなかった。首相官邸から第3回電話会談を9月3日午前9時頃から約20分間行っている。「産経ニュース」   

 安倍晋三「北朝鮮情勢を受けて、この1週間でトランプ大統領と3度、電話首脳会談を行いました。今日の電話首脳会談においては最新の情勢の分析、そして、それへの対応についてあらためて協議を行いました。

 北朝鮮が挑発行動を一方的にエスカレートさせている中において、韓国を含めた日米韓の緊密な連携が求められています。今後、日米韓と、しっかりと連携しながら、さらには国際社会とともに緊密に協力して北朝鮮に対する圧力を高め、北朝鮮の政策を変えさせていかなければならない、その点で完全に一致したところであります。

 さまざまな情報に接しているわけでありますが、われわれは冷静にしっかりと分析をしながら、対応策を各国と連携して協議をし、そして国民の命、財産を守るために万全を期していきたいと思います」

 「この1週間でトランプ大統領と3度、電話首脳会談を行いました」と、何カ国を回って、何人の首脳会談を行っただ、プーチンと何回首脳会談を繰返しただと回数を勲章としているようにここでも回数を誇っている。

 一体全体、電話会談が北朝鮮に対するミサイル開発阻止のどのようなオマジナイとなるというのだろう。ミサイル発射のたびに電話会談を繰返してきたが、何のオマジナイにもならなかった。

 ここでも「圧力」を言い立てているが、バカの一つ覚えの呪文のように「圧力」を唱えてきたにも関わらず、何のオマジナイにもならなかった。

 にも関わらず、電話会談を繰返し、「圧力」の呪文を唱え続けている。

 そして「圧力」こそが、北朝鮮ミサイル開発阻止→「国民の命、財産を守る」効果ある最善の方法であるかのように何度でも口にする。

 この9月3日午前9時頃からの約20分間のトランプとの第3回電話会談から約3時間後の9月3日午後0時29分頃、北朝鮮の核兵器研究所は国営の朝鮮中央テレビを通じ「大陸間弾道ミサイル(ICBM)に搭載するための水爆実験に成功した」とする声明を発表した。

 3回の電話会談は何の役にも立たなかった。「圧力」一辺倒の呪文も金正恩には通じなかった。

 逆に日本が北朝鮮に対する圧力ともなり得る対北朝鮮防衛の一環として計画している海上自衛隊のイージス艦搭載の改良型迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」と陸上自衛隊使用の地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の取得に関して「我々の戦略兵器を脅威だと騒ぎ立て、難癖をつけている。日本は先鋭化した地域情勢を煽っていると、危機に陥りかねない。弾道ミサイルはわが国を核で威嚇するアメリカを狙ったもので、アメリカの敵視政策に積極的に同調しない限り、我々の戦略兵器を恐れることはない」(NHK NEWS WEB)と、暗に日本を攻撃目標とする可能性を指摘さえしている。

 いわば日本の対北朝鮮「圧力」が却って日本の危機の誘い水になりかねない状況にある。誘い水となった場合、安倍晋三が「圧力」は「国民の生命を守る」との趣旨で言っている言葉をことごとく裏切ることになる。

 北朝鮮の今回の核実験は昨年2016年9月に続いて6回目の核実験である。気象庁が今回観測した地震の規模はマグニチュード6.1。前回はマグニチュード5.3。マグニチュードで0.8の差はエネルギーに換算して約16倍の大きさに相当すると「TBS ニュース」が伝えていた。

 9月3日の朝にトランプと3回目の電話会談をしたばかりなのに安倍晋三は北朝鮮の核実験を受けて同9月3日午後11時3分から同13分まで第4回目となるトランプとの電話会談を行っている。

 この電話会談の内容を「NHK NEWS WEB」(2017年9月4日 4時33分)が紹介している。  

 北朝鮮への圧力を強めるため日米で緊密に連携していくことを改めて確認した上で、安倍晋三は次のように発言したと伝えている。

 安倍晋三「核実験の規模は過去最大で、日米のみならず国際社会に対する正面からの挑戦であり、許されざる暴挙だ。わが国の安全に対するこれまでにない重大かつ差し迫った脅威であることから、日米同盟として団結して対応したい」

 何のことはない、例の如くの言葉の羅列となっている。要するに形式・儀式の類いから一歩も出ていない。こういった程度の電話会談を何回行おうと、北朝鮮のミサイル開発阻止、核開発阻止に何かの役に立つと言うのだろうか。

 安倍晋三はトランプとの電話会談後、首相官邸で3分間、恒例化している「記者会見」を行っている。     

 安倍晋三「国際社会の度重なる警告を無視して、北朝鮮が核実験を強行しました。我が国は断じて容認できません。北朝鮮の暴挙、世界の平和を脅かす行為を止めることができるかどうかは、国際社会の連携と連帯に懸かっています。

 米国、韓国に加えて中国、ロシアを始めとする国際社会と連携して、断固たる対応を取ってまいります。また、国連の場において、世界の平和を守るために国連の強い意志を示さなければならないと考えています。

 引き続き、強固な日米同盟の下、高度な警戒態勢を維持し、国民の安全を守るために万全を期してまいります」

 この記者会見では核実験を「我が国は断じて容認できません」と強い言葉で避難しているが、「圧力」という言葉は一言も使っていない。トランプとの4回目の電話会談で北朝鮮への圧力を強めるため日米で緊密に連携していくことを改めて確認したと言うことだから、単に言い忘れたのだろう。

 但し「国民の安全を守るために万全を期してまいります」は忘れずにきっちりと入れている。

 だが、電話会談そのものが形式・儀式の類いに堕している以上、電話会談にしてもその後の記者会見にしても、マスコミの報道を通して国民の前に露出することが狙いで、その際「国民の安全を守る」をダシにさも一生懸命取り組んでいるところを見せて、下落した内閣支持率の回復を図ろうと意図している疑いが濃い。

 北朝鮮が水爆の1発や2発実用化したとしても、アメリカ本土に届くICBMを1発や2発所有したとしても、アメリカの総合的な国力に対して北朝鮮の国力は戦前のアメリカ対日本の国力の差よりも大きいはずで、真に敵対できる力を所有することはできない。

 戦前の日本が日本民族優越主義から虚勢を張っていたように北朝鮮も敵対できないアメリカに対して虚勢を張り、無理に背伸びをしているに過ぎない。

 その虚勢が今や引くに引けない状況に達している。それがアメリカに対する様々な恫喝となって現れている。

 また、そうであるからこそ、現在の北朝鮮は戦前の日本のように虚勢を維持できない圧力を受けると牙を剥き、暴発することになる危険な存在となりかねない。

 戦前のアメリカが日本の戦争で勝利したものの、日本の暴発によって相当なキズを追ったように暴発して牙を剥いた北朝鮮によって相当にキズを負うことは否定出来ないことで、日本がその巻き添えを食わない保証はどこにもない。

 圧力一辺倒が虚勢だけが頼りの実力のより劣る者に対して却って暴発の呼び水となることに安倍晋三は気づいていない。


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前原誠司の新代表としての力量は次期総選挙の結果次第 ハードルは一定の勝利 共産党の協力なくして可能か

2017-09-03 10:53:34 | 政治
 
 8月21日(2017年)の民進党代表選前原・枝野両立候補者の共同記者会見。「ログミー」 
   
 前原誠司「今自民党しか選ぶ選択肢がないというそういう環境に置かれている国民は不幸だと思いますし、これは我々野党第一党の責任である、歴史的な責任であるとそう思っております」

 国民はその不幸に気づいていない。いや、大多数の国民が不幸だとは思っていない。それは政党支持率に現れている。NHK世論調査の画像を載せ、リンクをつけておいたが、内閣支持率が下がっても、自民党支持率はさして下がらず、内閣支持率下落に対応して野党第一党の民進党の支持率は相対的に上昇することはなく、逆に下がっている。   

 対自民党支持率が7月から8月にかけて逆に4%程度上昇し、民進党支持率がジリ貧状態の6%以下の下落状況にあるということは以前は大多数の国民の「やっぱり民主党には政権は任せることはできないな」の思いが現在もそのまま引き継がれて、「やっぱり民進党には政権を任せることはできないな」で何も変わっていないことの表れと見なければならない。

 要するに安倍晋三が信用できなくなれば、自民党からそれに代わる首相を見つければいいと思っている。だから、安倍内閣の支持率が下がっても、それに連動することなく、自民党の支持率はさして下がらないという状況が生じることになる。

 この状況は今度は首相は民進党からと考える国民が極くごく少数派に過ぎないことを示していることにもなる。

 となると、前原誠司が最初にやることは、政党選択肢のない国民は不幸だと気づかせなければならない。だが、鳩山由紀夫、菅無能、野田佳彦民主党歴代首相によって「やっぱり民主党には政権を任せることはできないな」を国民の固定観念とさせ、民進党に政党名を変えてからも、歴代代表がその固定観念を氷解させることができないままに「やっぱり民進党には政権を任せることはできないな」と思い直させているとすると、不幸だと気づかせることは至難の技ということになる。

 だが、前原誠司の決意は高い。9月1日民主党代表選投開票日の前原誠司の決意表明。「産経ニュース」                  

 前原誠司「多くの国民が民進党に政権交代などでできっこないと考えている。決意を示せば、失笑、冷笑で迎えられる。私はそれを変えていく。

 他の勢力との連携や協力の可能性は排除しない。しかし、私たちの理念、政策に賛同してくれることが第一だ。私たちの政策理念を高く掲げて、皆さんに強力をお願いする」

  新代表当選後のスピーチ。「産経ニュース」               

 前原誠司「今この場で政権交代を言っても、国民の皆さま方は『何を言っているんだ』、こういう状況になろうかと思います。しかし、自民党しか選ぶものがない、あるいはまだ形の分からない何かに対する期待が集まっている。こんな危うい政治状況は、我々の力で変えていかなくてはなりません」

 一歩ずつ前に進まなければならない。最初の試金石は10月投開票の衆議院青森4区、新潟5区、愛媛3区の補欠選挙であろう。自民党政党支持率が下がらなくても、安倍内閣自体にダメージを与えなければならない。

 安倍自民党に3戦全勝を与えて、安倍晋三に下手に自信を回復させたのでは、自民一強がなお強まることになる。となると民進党3戦全勝が最善ということになるが、民進党+共産党抜き野党共闘でそれが可能なのか、例え3戦全勝でなくても、いわば安倍晋三の自信を決定的に打ち砕くことにならなくても、共産党の力を借りずに戦うつもりなのか、早い段階で決めなければならない。

 確かに世論は民進党と共産党の選挙協力に否定的だが、3選挙区共、共産党が候補を立てた場合、他の野党の協力を得たとしても、民進党が自民党+公明党の票を上回ることは難しくなる。

 土壇場になって形勢不利だからと共産党の力を借りるようでは余りにも現金過ぎることになって、逆に前原誠司の評価を下げることになるだろう。

 NHKの2017年8月4日から3日間の世論調査は新代表の民進党に対する期待度を尋ねている。

 「代表が代わることになった民進党に期待するか」

 「大いに期待する」3%+「ある程度期待する」20%=23%
 「あまり期待しない」41%+「全く期待しない」29%=70%

 「大いに期待する」3%:「全く期待しない」29%≒1:9
 「ある程度期待する」20%:「あまり期待しない」41%≒1:2
 
 「大いに期待する」のパーセントを上げて、「全く期待しない」のパーセントを下げることができれば、「ある程度期待する」のパーセントが相対的に上がり、「あまり期待しない」のパーセントが下がることになるのだが、そうなるには程遠い状況にある。

 政策はさして問題とはならない。安倍晋三のアベノミクスは明らかに失敗だが、少なくとも満足に機能していないはずで、その結果、景気が実感できていないという声も多くあるのだが、安倍内閣の支持率が下がった原因は森友問題と加計学園問題であって、もしこの両問題がなかったなら、これ程には内閣支持率を下げることはなかったろう。

 このことも政策はさして問題にならない証拠となる。

 政権を担当していな民進党新代表の政策は成果の具体性は見えにくい不利な状況にあるから、余程の宣伝性を持ち得ない限り、国民の期待を煽ることにはならない。

 となると、新代表の民進党に対する期待度が低く、政党支持率がジリ貧状態にある以上、やはり10月の衆議院補選を重要なターニングポイントとしなければならない。

 補選は政権選択肢がない環境は国民にとって不幸だと気づかせる以上に難しい選択に迫られるだろうが、新代表にとっての力量を見せることができるか、できないかの重要な試金石となることは間違いない。

 次に重要なのは今年の暮になるのか、来年になるのか分からないが、次期総選挙であろう。結果次第では国民の政権交代への期待度を占うことができる。

 民進党新代表の力量はその期待度を高めるところに持っていけるかどうかにかかっていることになる。

 「Wikipedia」から2017年年8月23日現在の衆議院自民党と民進党の議席数を見てみる。

 自由民主党 285
 民進党92 

 与党のうち公明党と新党大地と無所属は議席を維持すると仮定して、自民党から民進党が50議席奪うとすると、285-50=235+公明党35+新党大地1+無所属2=273議席の与党となる。

 民進党92+50=142

 過半数は238議席だから、与党を過半数に85議席から35議席にまで追い詰めることができて、民進党は過半数までに146議席から96議席に迫ることになる。

 これが完全な捕らぬ狸の皮算用であったなら、前原誠司は政権交代の選択肢がない環境は国民にとって不幸であることを国民自身に気づかせるだけの力量がなかった証明を自ら示すことになる。

 逆にこれぐらいの議席奪還の勝利でなければ、国民に対して政権交代への期待度を高めたと言うことはできない。

 前原誠司は新代表に選ばれたことでこの程度のハードルを背負った。このハードルを民進党+共産党抜き野党共闘で跳び超えるのか、共産党も入れて飛び越えるのか、やはり本人の力量が答を出すことになる。

 総選挙に今以上に議席を減らして、代表辞任、再度代表選挙とならないことだけを祈る。そうなった場合は、民進党は分裂しているかもしれない。

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安倍晋三「国を守ろうとする人がいない限り」と国民を問題 Nスペ「インパール作戦」は国が問題だと教える

2017-09-02 13:39:12 | 政治

 安倍晋三と元外交官、安倍晋三と同様の右翼国家主義者岡崎久彦(2014年10月26日死亡)との2004年1月27日発売対談集『この国を守る決意』で安倍晋三が次のように発言しているとネット上に流布している。

 「命を投げ打ってでも(国を)守ろうとする人がいない限り、国家は成り立ちません。その人の歩みを顕彰することを国家が放棄したら、誰が国のために汗や血を流すかということです」

 国家の在り様よりも国民の在り様を問題にしている。国家権力の在り様を問題にするよりも、国民が如何に国を守ろうとするか、国民の姿を問題にしている。

 国家、あるいは国家権力がすることは国を守ろうとした国民を「顕彰」で報いることであって、そのような報いによって国民は「国のために汗や血を流す」と、あくまでも国民の在り様、生き様を問題にしている。

 安倍晋三と歴史認識で色濃い近親性関係にある稲田朋美も国家(権力)の在り様よりも国民の在り様を重要視している。

 2016年8月2日付「LITERA」記事が次のようなことを書いている。  

 〈2006年9月4日付の産経新聞で、『国家の品格』(新潮新書)で知られる藤原正彦氏の「真のエリートが1万人いれば日本は救われる」という主張に同意を示しながら、こんなことを訴えと、その発言を伝えている。

 稲田朋美〈真のエリートの条件は2つあって、ひとつは芸術や文学など幅広い教養を身に付けて大局観で物事を判断することができる。もうひとつは、いざというときに祖国のために命をささげる覚悟があることと言っている。そういう真のエリートを育てる教育をしなければならない」

 藤原正彦氏が「真のエリートが1万人いれば日本は救われる」と言っていることも、稲田朋美が「いざというときに祖国のために命をささげる覚悟がある」エリート教育の必要性を主張していることも、国民の姿をのみを問題にしていて、国家、あるいは国家権力の姿は、それがどうあるべきかは忘失させている。

 8月15日(2017年)の終戦記念日、実質的には敗戦記念日にNHKが報道スペシャルとして「戦慄の記録 インパール作戦」を放送していた。

 放送内容は「インパール作戦 NHKスペシャル」テレビのまとめ/2017/08/15)を参考にして、簡単に纏めてみる。   

 番組はナレーションで「インパール作戦は極めて曖昧な意思決定の基に進められた計画でした」と伝えている。いわば戦略なき作戦であったことになる。確固たる戦略の上にしっかりと両足を立たせた作戦ではなかった。

 1942年1月、日本軍はイギリス領ビルマに侵攻して全土を制圧。イギリス軍はインドに敗走。勝利の余勢をかって大本営はインド侵攻を検討するも、すぐに保留。

 1943年に入ると、太平洋でアメリカ軍に連敗し、戦線は急速に後退していく。イギリス軍が態勢を立て直してビルマ奪還の作戦に出る。

 1943年3月、大本営はビルマ防衛を固めるためにビルマ方面軍を新設。河辺正三(かわべまさかず)中将が司令官に就任。河辺は陸軍大学校で同期だった当時の首相東条英機と着任前に面会。

 片倉衷ビルマ方面軍高級参謀「今ガ島(ガダルカナル)その他みんな落ち目になっているから、せめてビルマで一旗揚げてくれというようなことを言われたんですよ。それでそのことが頭に来ていて(インパール作戦を)出来たらやりたいと」

 陸軍大将であり、陸将も務めた東条英機のこの安易さは計り知れなく、河辺正三のインパール作戦を「出来たらやりたい」という安易さ共々、国家権力の体(てい)を成していない。

 「今ガ島(ガダルカナル)その他みんな落ち目になっている」ということは日本軍が全体的に兵力の損耗を招いている、あるいは戦闘能力の衰退を招いていて、その補強がままならない状況にあるということであって、そのような状況を踏まえてイギリス軍の反撃をインド領に近いビルマ側の守りやすい場所に陣地を敷いて食い止め、ビルマを死守して、その死守を通して逆にイギリス軍の兵力を徐々に消耗させていくのか、逆にイギリス軍の反撃態勢が整わないうちに日本側から反撃に出て、インド領内に日本軍の陣地を設けるところまでいくのか(太平洋上で米軍に反撃を受けて、後退を余儀なくされている日本軍がインドという広大な土地を占領することは不可能だろう)、その前者の場合・後者の場合に於ける双方の兵力の活用度の有利性・不利性の違い、兵站運用の有利性・不利性の違い、志気の違い等を計算して勝算を導き出していずれを選択するのか、前者が不利でも、敢えて前者を選択するのか、その場合の戦術はどうするのかといった全体的な戦略を描き切ってから決める、軍事面で国家権力を担い、揮(ふる)う者としての責任意識はどこからも窺うことができない。

 同じ時期、牟田口中将がビルマ方面軍第15軍司令官に昇進。インパールへの侵攻を強硬に主張。

 後勝ビルマ方面軍参謀「これは大本営の希望だったということを牟田口さんは耳にしたわけですね。何としてでも大本営のご希望に沿うようにやってみようと。それがもう牟田口さんが何としてもやりたいと」

 大本営の希望だから、その希望に添う。大本営が以前、これこれの戦略を基にインパール侵攻を計画した。現在保留中だが、その戦略を検討した場合、有利に戦いを進めることができ、勝算の可能性があるという心づもりがあってのことではない。

 軍上層部がインパール侵攻作戦に傾いていく中で前線の部隊に食糧や弾薬を補給する兵站の専門家である小畑信良(おばたのぶよし)参謀長が牟田口司令官に「兵站の観点から作戦は実施すべきではない」と進言。

 小畑信良参謀長は牟田口司令官から消極的だと叱責され、就任から1カ月半で更迭されることになった。

 どこに兵站の観点で問題があるのか、その問題を克服できないのか等々を検討し尽くして戦略上の整合性を得るという努力を見受けることはできない。

 結果、反対意見は「消極的」という批判の元、退けられることになったという。反対意見があっても、「消極的」と言われるのを恐れて、口を噤んでいる者もいたはずだ。ここに論理で詰めていくのではない、それとは無縁の大勢順応、あるいは付和雷同の状況が生じることになる。

 牟田口司令官は東条英機の意を受け、インなパール作戦を「出来たらやりたい」と言っていたビルマ方面軍の河辺司令官が盧溝橋事件の際に上司と部下の間柄であった関係から頼る。河辺司令官は作戦を認可。

 南方軍の寺内総司令官も同調、但し大本営はビルマ防衛に徹するべきだとして作戦実行に消極的な声が占めていたというが、大本営の杉山元参謀総長が作戦を最終的に認可する。

 眞田穣一郎少将手記「杉山総長が『寺内さんの最初の所望なので、なんとかしてやってくれ』と切に私に翻意を促された。結局、杉山総長の人情論に負けたのだ」

 「Wikipedia」によると、眞田穣一郎は1943年から1944年にかけて杉山参謀総長のもとで大本営陸軍部参謀本部作戦課(第2課)・防衛課(第4課)の二課を統括する参謀本部第一部長に就任していて、参謀総長を長として、作戦計画の立案等を職務としていた。

 要するに眞田穣一郎は大本営内の陸軍部で実質的な陸軍の作戦の一部を担当していたということなのだろう。当初はインなパール作戦に反対、もしくは消極的であったが、杉山陸軍参謀総長の「寺内さんの最初の所望」だからとの「人情論に負け」て、「いいでしょう」と同調、その同調を受けて、杉山陸軍参謀総長がインパール作戦を最終的に認可した。

 眞田穣一郎が例え参謀本部第一部長としてインパール作戦を実行した場合のインドに於けるイギリス軍に対してビルマ駐留の日本軍の兵力をどのくらい投入したらいいのか、その場合の食料や弾薬補給等の兵站運用の効率性等を含めて戦略をどう描いていたとしても、「人情論に負け」て投げ出してしまう程だから、大したことのない戦略だったのだろう。

 1944年1月7日、インパール作戦は認可された。番組は「冷静な分析よりも組織内の人間関係が優先されたのです」とナレーションしている。

 齋藤博圀少尉回想録「牟田口中将は平生、盧溝橋は私が始めた。大東亜戦争は私が結末をつけるのが私の責任だ。と将校官舎の昼食時によく訓示されました。

      ・・・・・・・・

 経理部長さえも『補給はまったく不可能』と明言しましたが、全員が大声で『卑怯者、大和魂はあるのか』と怒鳴りつけ、従うしかない状況だった」

 論理、あるいは合理性に基づいた戦略よりも人情論・精神論が優先した。

 インパール作戦は雨期の到来を避けるために3週間の短期決戦を想定した。

 ここで思い出すのが昭和16年(1941年)9月5日、杉山陸軍参謀総長が昭和天皇に拝謁、次の会話を遣り取りしている。

 昭和天皇「アメリカとの戦闘になったならば、陸軍としてはどのくらいの期限で片づける確信があるのか」 

 杉山元「南洋方面だけで3カ月くらいで片づけるつもりであります」

 昭和天皇「杉山は支那事変勃発当時の陸相である。あの時、事変は1カ月くらいにて片づくと申したが、4カ年の長きにわたってもまだ片づかんではないか」

 杉山元「支那は奥地が広いものですから」

 昭和天皇「ナニ、支那の奥地が広いというなら、太平洋はもっと広いではないか。如何なる確信があって3カ月と申すのか」

 杉山元はただ頭を垂れたままでいたという。

 要するに陸軍参謀総長として海軍も交えて自らの部下たちと共に描いた戦略を以って答えることができなかった。「これこれこのような戦略を用いれば、3カ月で決着を着けることができます」と。
   
 アメリカとの戦争は「南洋方面だけで3カ月くらいで片づけるつもり」が最終的には1941年12月8日に始まって1945年8月15日の4年8カ月もかかることになった。

 日本軍の戦略は想定で成り立っていた疑いが出てくる。

 第15軍に編成された3師団を中心に9万の将兵によって実行された。大河と高山越え、最大470キロ踏破の前例のない作戦に対して3週間の短期決戦の想定に合わせて各兵士に3週間分の食糧持たせて、荷物の運搬と食用のために牛を近隣の村から軍票で買い占めさせて、尚且つ敵から食糧や武器を奪えと命令した。

 牟田口司令官の戦後の音声テープが残っていて、番組はインパール作戦がどのような作戦であったのか検証のために活用している。

 牟田口司令官音声テープ「食糧そのものが歩いてくれるのが欲しいと思いまして、私、各師団に一万頭ずつ羊とヤギと牛を携行させてやったのでございます。

 補給が至難なる作戦においては特に糧秣、弾薬、兵器等いわゆる敵の糧によるが絶対に必要である。放胆なる作戦であればあるほど危険はつきものである」

 糧秣、弾薬、兵器等を敵から奪うことができるものと、そのことを絶対前提としている。奪うことができなかった場合の危機管理は頭に入れていない。

 イギリス軍から攻撃を受けたとき牛が驚いて制御不能となると言ったことは考えなかったのだろうか。牛が暴走して逃げたなら、荷物は奪われる、食用にもならない泣きっ面に蜂がオチであろうに。
 
 1944年3月8日、インパール作戦は開始された。イギリス軍の空襲を避けるために夜間に行った川幅最長600メートルのチンドウィン河を渡河中、集めた牛の半数が流され、河を渡った兵士たちを待ち構えていたのはアラカン山系の高い山々で、車が走れる道は殆どないためトラックや大砲は解体して持ち運ぶことになり、戦いを前に体力を消耗させていったという。

 偵察隊を派遣して、どのような山道を行軍することになるのか、途中の場所場所でイギリス軍の攻撃を受けた場合、どう対処したらいいのか、前以って調査した上で戦略なり戦術なりを練ると言ったことをしなかったのだろうか。

 牟田口司令官音声テープ「私の作戦発起の動機は『大東亜戦争に勝ちたい』という一念にほかなりません。戦争全般の形勢が各方面とも不振である当時の形勢に鑑み、作戦指導如何によっては戦争全局面を好転させたいとの念願をもっていたからである」

 作戦の動機が「『大東亜戦争に勝ちたい』という一念」、「作戦指導如何によっては」、「戦争全局面を好転させたいとの念願」等々、自身の願望が支配的で、確固とした戦略に基づいて決行することによって計算できるインパール作戦の成功が「戦争全局面を好転」させる契機となり得る戦略に発展し得る可能性を示唆すべき論理的な発言はどこにも見当たらない。

 行軍自体で体力を消耗した日本軍は「コイマ」なる地点に到着したもののイギリス軍の反撃に合い、戦闘を継続するのが難しい状態にまでダメージを受ける。

 齋藤博圀少尉回想録「牟田口司令官から作戦参謀に『どのくらいの損害が出るか』と質問があり、『ハイ5000人殺せばえれると思います』と返事。最初は敵を5000人殺すのかと思った。それは味方の師団で5000人の損害が出るということだった。

 まるで虫けらでも殺すみたいに隷下部隊の損害を表現する。参謀部の将校から『何千人殺せばどこがとれる』という言葉をよく耳にした」

 味方の損害の上に敵の損害を手に入れる。それも威勢のいいことを言うだけの安易な想定に過ぎない。理詰めの戦術は最初からなかったのか、捨ててしまっている。

 連合国による佐藤幸徳師団長に対する調書「コヒマに到着するまでに補給された食糧はほとんど消費していた。後方から補給物資が届くことはなく、コヒマの周辺の食糧情勢は絶望的になった」

 齋藤博圀少尉回想録「私たちの朝は道路上の兵隊の死体仕分けから始まります。司令部では毎朝牟田口司令官の戦勝祈願の祝詞から始まります。『インパールを落とさせ賜え』の神がかりでした」

 日本軍が神風が吹くことを願ったように神頼みによる当てにもならない僥倖に縋ることになった。最後の最後まで戦闘に応じて刻々と変えていく自らが判断した戦略・戦術に従うことをしなかった。

 イギリス軍ウィリアム・スリム司令官証言「我々は日本軍の補給線が脆弱になったところで叩くと決めていた。敵が雨期までにインパールを占拠できなければ補給物資を一切得られなくなることは計算し尽くしていた」

 戦略・戦術に忠実に基づいた戦闘を見ることができる。

 武器、弾薬が不足する中で兵士は爆薬を抱えたまま敵の戦車に飛び込む肉薄攻撃を命じられる。日本軍得意の奥の手である。

 第31師団元上等兵山田直夫「肉薄攻撃隊というのは行けというたら死ぬのが分かっとって行くんですけんな。もう9.9分まで死ぬのが分かっとって行けと言ったら、もうこれは行かないかんわけです」

 大本営での報告。

 西浦進大佐証言「報告を開始した秦中将は『インパール作戦が成功する公算は極めて低い』と語った。東條大将は即座に彼の発言を制止し、話題を変えた。わずかにしらけた空気が会議室内に流れた。秦中将は報告を半分程で終えた」

 東条英機によって「成功する公算は極めて低い」インパール作戦は暗黙のうちに継続が決定されることになった。

 この勝算無き作戦に兵士たちも薄々気づいていた。

 連合軍の調書「私は作戦が成功するかどうかは疑わしいと包み隠さず報告したいという突然の衝動を覚えたが、私の良識がそのような重大な報告をしようとする私自身を制止した」

 連合軍の調書「私たちは互いに胸の内を伝えず作戦の成功へ向かうために必死に努力するよう励まし合った。なぜならば任務の遂行が軍の絶対原理だったからである」

 強い立場の者に対する下の者の付和雷同・大勢順応の血は簡単には解けない。いわば上が撤退を命じない限り、負けると分かっていて、自分も命を落とすかもしれない戦闘に立ち向かわなければならない。

 1944年(昭和19年)7月1日、大本営が作戦中止を決定。敵の攻撃に曝されながら撤退開始。攻撃による死と体力を消耗した身体を長雨に曝すことになる嫌悪・無気力化とマラリアによる高熱で倒れる者が続出、戦死者の6割が作戦中止後に命を落としたという。

 齋藤博圀少尉回想録「7月26日、死ねば往来する兵がすぐ裸にして一切の装具を褌にしたるまで剥いで持っていってしまう。修羅場である。

 生きんがためには行軍同士もない。死体さえも食えば腹がはるんだと兵が言う。野戦患者収容所では足手まといとなる患者全員に最後の乾パン一食分と小銃弾、手りゅう弾を与え七百余名を自決せしめ、死ねぬ将兵は勤務員にて殺したりきという。私も恥ずかしくない死に方をしよう。」

 「勤務員にて殺したりき」と言っている言葉の意味はよく分からないが、要するに仲間の兵士でありながら、役に立たなくなって足手纏だからと命を奪うことまでしたということなのだろう。

 だが、全ての兵士はアメリカという軍事的・経済的巨人を相手に満足な戦略・戦術を描かぬままに日本民族優越主義に基づいた精神論だけで戦いを挑んだ当時の国家権力の愚かしさの犠牲者に過ぎない。

 いわばこの番組は国家の質、国家権力の質を問題にしている。安倍晋三が言うように「命を投げ打ってでも(国を)守ろうとする人」が何百万人いようと、稲田朋美が言っているように「いざというときに祖国のために命をささげる覚悟がある」エリートが何百万人いようと、そのような有意・才能は愚かな国家・愚かな国家権力によって一瞬のうちに剥ぎ取られることになる。

 だが、安倍晋三と稲田朋美は常に国民の在り様を問題とし、国家の、あるいは国家権力の在り様を問題にしない。二人がもし戦争を起こしたら、兵士たちはたちまち戦前の地獄を再び味わわされることになるだろう。

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ホリエモンの北ミサイル発射「こんなんで一々出すシステムを入れるクソ政府」から考えるJアラートの効果

2017-09-01 11:11:44 | 政治

 2017年8月29日早朝、北朝鮮が弾道ミサイルを発射、作動したJアラート(全国瞬時警報システム)がスマホか携帯電話の呼び出し音を自動的に鳴らしたのか、電源を切っていたが、同じくJアラートが自動起動させた各地域の防災行政無線(屋外スピーカー)を通じて慌ただしい声で警報を伝えられたのか、自身の私的な用事でもないのに朝の目覚めを邪魔されたのでたちまちご機嫌斜めになったらしいホリエモンこと実業家の堀江貴文(44)がJアラートの配信を伝えるニュース記事をツイッターで引用して6時30分、「マジでこんなんで起こすなクソ。こんなんで一々出すシステムを入れるクソ政府」と投稿したところ、「賛否の声があがっている」と、「J-CAST」記事が伝えていた。    

 「残念ながら必要だと思ってる人間もいるのです」
 「こんなこと?本当にミサイルが落ちたらそんなふうに言えませんよ。システムは国民の命を守るためでしょう?」
 「命を守るためのシステムです それをクソ扱いですか?」
 「なんでこんなに叩かれてんのかね?」

 記事は批判の声ばかりで、賛同の声は伝えていないが、批判者はJアラートを国民の命を守るのに役立つシステムだと信じている。言ってみれば、「Jアラート」性善説に立っている。

 果たして国民の命を守るのに役立つばかりのシステムだと簡単に決めていいのだろうか。

 安倍晋三は8月29日の北朝鮮のミサイル発射を受けて首相官邸で同日、3度記者会見を開いている。その一つで次のように発言している。

 安倍晋三「政府としては、ミサイル発射直後からミサイルの動きを完全に把握しており、国民の生命を守るために万全の態勢を取ってまいりました」(首相官邸)     

 この発言を見ると、 Jアラートに全幅の信頼を置くことができるようにみえる。

 次に弾道ミサイル発射に対する政府(総務省消防庁)の対応を見てみる。

 「北朝鮮による弾道ミサイルとみられる飛翔体発射に伴う消防庁の対応について」

(最終報)平成29年8月31日(木)16:00現在

消防庁第1次情報連絡室

1 事案の概要
エムネットによる情報によると、8月29日5時58分頃、北朝鮮からミサイルが 東北地方に向けて発射されたとのこと。

2 消防庁の対応等

8月29日
6:00 消防庁長官を長とする消防庁緊急事態調整本部を設置
6:02 発射情報をJアラートで伝達(北海道等 12道県)
6:14 通過情報をJアラートで伝達(北海道等 12道県)

 発射情報が伝えられた地域は北海道以下、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、新潟県、長野県となっている。

 纏めてみる。

 8月29日5時58分頃:北朝鮮弾道ミサイル発射
 8月29日6時02分: 発射情報をJアラートで伝達
 8月29日6時14分: 通過情報をJアラートで伝達 

 次に「NHK NEWS WEB」記事から借用した画像で北朝鮮の今回の弾道ミサイル発射時間、襟裳岬に到達時した時間、そして東北沖に着弾した時間、各地点までの要した時間、それぞれの飛行距離を見てみる。

 弾道ミサイルが北海道に達した地点は松前郡辺り。松前郡から襟裳岬のあるえりも町までの距離は約270キロ前後。襟裳岬から着水地点まで1180キロ。松前郡から着水地点まで1450キロ。

 弾道ミサイル発射地点から松前郡までは2700キロ-1450キロ=1250キロ

 飛行距離2700キロを発射の5時58分頃から着水の6時12分頃までの14分間飛行した。

 分速を計算すると、2700キロ÷14分≒193キロ/分

 発射地点は北朝鮮首都平壌中心部から北に約24km地点の平壌国際空港滑走路だそうだ。

 発射地点から松前郡までの到達時間は、1250キロ÷193キロ/分≒6分30秒

 松前郡から襟裳岬までの到達時間は270キロ÷193キロ/分≒1分24秒

 いわば1分24秒間、北海道上空を画像にある軌道を描いて飛行したことになる。

 Jアラートはミサイル発射の5時58分頃から4分後の6時02分に発射情報を伝達。その2分30秒後の6時4分30秒に松前郡に到達。そして6時4分30秒から襟裳岬に到達する6時5分54秒までの1分24秒の間に、Jアラート情報伝達から4分近い間に安全な場所に避難しなければならない。

 北海道西岸の住民は今回の弾道ミサイル発射の場合は万が一の北海道落下に備えて、Jアラート警告後の2分30秒の間に避難を完了していなければならないことになる。

 それ以外の住民は2分30秒から4分までの間に避難完了ということになる。

 「内閣官房 国民保護ポータルサイト」はJアラートの避難の呼びかけに関わるメッセージの内容を伝えている。

 弾道ミサイルが日本に飛来する可能性があると判断した場合

 〈屋外にいる場合は、近くの頑丈な建物や地下(地下街や地下駅舎などの地下施設)に避難して下さい。〉

 弾道ミサイルが日本の領土・領海に落下する可能性があると判断した場合の続報

 〈屋外にいる場合には、直ちに近くの頑丈な建物や地下に避難してください。また、近くに適当な建物等がない場合は、物陰に身を隠すか地面に伏せ頭部を守って下さい。 なお、屋内にいる場合には、できるだけ窓から離れ、できれば窓のない部屋へ移動して下さい。〉

 前者は予想外の落下、後者は予想内の落下への備えとなっている。 

 いずれの場合であっても、Jアラート警報後の2分30秒から4分までという時間は避難を完了させるには十分な時間のように思える。

 但し頑丈な建物や地下(地下街や地下駅舎などの地下施設)以外の避難に対してはミサイルが直撃しない場合の保障としかなっていない。頑丈な建物や地下以外の物陰に身を隠す、あるいは地面に伏せて頭部を守ることで身の安全が保障されるのはミサイルが直撃せずに上空を通過する場合のみであろう。

 あるいは屋内にいる場合は窓から離れて、できれば窓のない部屋へ移動することによって身の安全が保障されるのは、同じくミサイルが直撃せずに上空を通過する場合のみであろう。

 日本の迎撃ミサイルが飛来してくる弾道ミサイルを撃墜したとしても、破壊したミサイルの破片が直撃しない場合のみの身の安全の保障ということになる。

 いわば北朝鮮が日本を攻撃する意図で特定の場所を狙ってミサイルを発射し、直撃を受けたとしても、身の安全を保障されるのは頑丈な建物や地下を避難場所とすることができた住民ぐらいに限定されることになり、そういった住民に限ってJアラートは国民の生命を守るシステムと言うことができることになる。

 政府は今回のミサイル発射に対して「我が国の安全、安心を総合的に考えて破壊措置命令を出さなかった」としているが、例え破壊措置命令を出しても、迎撃ミサイルで完全に撃墜できる保証はない。100発100中のミサイルなど存在しないからだ。

 2017年8月29日付「NHK NEWS WEB」記事はアメリカの早期警戒衛星が最初に発射をキャッチしておおまかな発射場所や発射の方向などを割り出して、この情報を元に日本近海に展開する海上自衛隊のイージス艦が追尾、日本国内落下の予測の場合は迎撃ミサイル「SM3」で撃墜、迎撃が失敗した場合は航空自衛隊の地上配備型の迎撃ミサイル「PAC3」が地上近くで迎撃すると、二段構えの備えでをあることを解説している。

 だが、この二段構えそのものが100発100中のミサイルなど存在しないことの証明そのものとなっている。「PAC3」にしても、100発100中ではないということである。

 撃墜できなければ問題外だが、撃墜できたとしても、破壊されたミサイルの破片が直撃しない保証はない。直撃から生命の安全を守ることができるのは頑丈な建物や地下に避難できた住民にほぼ限られることになる。

 100発100中のミサイルなど存在しないと同じようにJアラートとて、完璧ではないということになる。

 と言うことは、安倍晋三が言っているように政府が「ミサイル発射直後からミサイルの動きを完全に把握し」、Jアラートを適切に駆使して避難を呼びかけようとも、そのことが「国民の生命を守るため」の最善の方法であったとしても、全ての生命を守ることができる「万全の態勢」とまでは言えないことになる。

 「万全」とは「全く完全で、少しも手落ちがないこと」を言う。

 安倍晋三は保障にもならないことをさも保障できるかのようにカッコーのいいとこを見せたに過ぎない。

 ホリエモンがツイッターで「マジでこんなんで起こすなクソ。こんなんで一々出すシステムを入れるクソ政府」と悪態をついたのは北朝鮮が現段階では日本を攻撃する意図で特定の場所を狙ってミサイルを発射する緊迫した状況にはなっていないと見ているからだろう。

 現実問題として実際に北朝鮮が日本に向けてミサイルを発射した場合、Jアラートの情報伝達によってその恩恵を受ける形で助かる住民も、恩恵という形にならずに助からない住民も出てくる。

 過大評価もいけないし、過小評価もいけない。結果が全てを判定することになる。

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