自衛隊記念日における公式行事を三自衛隊が持ちまわりにより開催するにあたり、海上自衛隊観艦式から自衛隊観艦式と改められ、本年は観艦式にあたる。
観艦式予行の招待券をいただき、小生と富士総合火力演習展開の“愉快な仲間たち”三名は早朝、横浜新港へ向かうべく桜木町駅へ向かった。桜木町は小生大学院近傍の地名でもあるが、電柱以上高いもののない桜木町とはことなり、横浜の桜木町には300㍍のランドマークタワーが聳え、ベイブリッジの方向には今回、一行を相模湾へと誘ってくれる護衛艦“あぶくま”が停泊していた。この停泊位置は、同行のTさんが前日偶然見ており、迷うことなく到着できた。
観艦式ということもあり、手荷物検査は厳重を極めた。国防の中枢の何処とはいわないが金属バットでも持ってないと鳴らない金属探知機とは異なり、メガネフレームでも鳴る空港並みのものが置かれ、期待通り(?)小生に反応、裏ポケットの十円玉数枚が反応したようだ。数枚の硬貨を見合わせ警備の自衛官とお互い苦笑いしつつ、“さわぎり”“あぶくま”が停泊する埠頭へ向かうと薄雲を追い払うように朝日がさしはじめた。
“あぶくま”(右)より“さわぎり”(左)を望む。“あぶくま”は、1989年から1993年にかけ6隻が就役した“あぶくま”型護衛艦の一番艦で地方隊用の小型護衛艦として建造された。満載排水量2900㌧、ガスタービン・ディーゼル推進方式で出力は27000馬力。76㍉砲、対潜ロケットアスロック発射機やハープーン対艦ミサイルや20㍉高性能機関砲CIWSを搭載しており、ヘリを搭載していない点を除けば護衛艦隊用の護衛艦に匹敵するが、戦闘指揮能力や射撃官制の能力は若干下回るようだ。
SM1Aガスタービンエンジンが金属音とともに回転数を増し、いよいよ横浜を出港する。タグボート越に高層ビル群が我々を見下ろしている。ちなみにこのタグボートは“ちょうかい”といい、“ちょうかいだ!”との声にイージス艦“ちょうかい”と勘違いした人々が続々と右舷に押し寄せる一幕があった。この“あぶくま”は舞鶴地方隊の第24護衛隊に所属しており、日本海側の舞鶴から関門海峡を越えて三日をかけ横浜に入港したという。
米軍再編においても度々話題に上る横浜ノースドックには、音響測定艦“ヴィクトリアス”が停泊していた。この他同型艦“ローヤル”が停泊していた。満載排水量3396㌧の本級はSURTASS曳航ソーナーにより潜水艦の音響情報を収集するもので、海上自衛隊の“ひびき”型と同じ双胴のSWATH船体を採用している。米海軍では本級4隻と拡大改良型の“インペカブル”の他音響測定任務に“ストルワート”級3隻を当てており、沿海域における対潜情報の収集に当たっている。
DD106“さみだれ”と“はつゆき”型護衛艦二隻がノースドックに停泊している。先頭の“さみだれ”は“むらさめ”型の六番艦であり、9隻が護衛艦隊において運用されている。亜音速対艦ミサイルに対する耐性を高めた国産火器管制装置FCS-2を搭載し、高い航洋性能を担保する満載排水量6200㌧の本型は、その拡大改良型の“たかなみ”型5隻とともに護衛艦隊の主力DDの地位を占めている。なお、この横浜ノースドックの米軍戦時備蓄は、横田基地、横須賀基地とともに世界戦略の一翼を担っている。
試験艦“あすか”が煙突より白煙を上げ回転を増しつつ出港する。1995年に就役した本艦は海上自衛隊第二代の試験艦で、6200㌧という大型の船体を利用し、各種新装備の評価試験を行う艦である。マストとともに旧海軍のパコダ型マストのように見えるのが国産の射撃指揮装置三型(FCS-3)で、この他船体底部には超大型ソーナーを有する。FCS-3は次期ヘリコプター護衛艦や次期汎用護衛艦からいよいよ装備が開始される見込みである。
巡視船“しきしま”。横浜港を母港とする世界最大の巡視船で、プルトニウム再処理核燃料輸送の護衛用に1992年就役しており、無給油航続距離は20000浬以上、総トン数は6500㌧に達し、大型ヘリコプター2機と特殊部隊SSTの母艦機能も有している。更に35㍉連装機関砲と20㍉多銃身機銃を共に2基搭載するほか、護衛艦並のダメージコントロール能力を有している。マストには“はつゆき”型や“あぶくま”型が装備するOPS-14系列の対空レーダーが装備されている。
横浜ベイブリッジを潜る護衛艦“あぶくま”。約20㍍の余裕があると頭で判ってはいてもマストの先が橋に当たるのではないかと冷や冷やする瞬間である。
このベイブリッジは港湾地区と工業地帯の連絡用に建設され、都市部を走行していたトラックがこの橋を利用するようになった為、大型トラックと歩行者の交通事故が激減したという。ちなみに押井守の映画「機動警察パトレイバー2」では米軍機の誤爆により落ちている。
ベイブリッジを護衛艦“やまゆき”が潜る。満載排水量4200㌧という“あぶくま”よりも大型の“やまゆき”が潜る様子を見ると、案外橋との間に余裕があることが判る。
この他、写真を良く見ると橋脚の左側に“あさぎり”型(恐らく“さわゆき”)、そして右側に“むらさめ”型(恐らく“さみだれ”)が後続している。図らずも“ゆき”“きり”“あめ”のDD三代が勢ぞろいすることとなった。
こうして横浜を出港した“あぶくま”は、威風堂々単列を組み東京湾を一路南下、浦賀水道へ向かいつつあった。艦隊はこの後、木更津、横須賀からの艦艇と合流し、自衛隊観艦式が執り行われる相模湾へ集結することとなる。
HARUNA
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