北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

自衛隊観艦式2006 相模湾の観閲艦隊

2006-11-08 14:20:18 | 海上自衛隊 催事

■観艦式

浦賀水道を越えたところで核武装特集へ記事が脱線した。近接戦闘車や次期護衛艦の話などアクセス解析によりかなり関心が寄せられているようであるが、19年度防衛予算概算要求にて進展があり、遠からず特集したい。

Photo_38  本題。観艦式である。観艦式は1347年に普仏戦争の海戦に向かうイギリス艦隊を、指揮官として臨場したエドワード3世が自ら艦隊を観閲したことに始まると、海上自衛隊作成の観艦式パンフレットに掲載されていた、多くのサイトでも引用されている文言である。写真は観閲艦“くらま”。旧海軍の巨大な戦艦に比べれば小さいことは否めないが、基本哲学に基づく艦艇設計、即ち“日本型”の艦容は、見るものに力強い印象を与える。

Photo_39  観艦式の観閲艦は1973年の護衛艦“はるな”が就役して以来ヘリコプター護衛艦である“はるな”“ひえい”“しらね”“くらま”がその大任を任されており、これは1993年のイージスシステム搭載ミサイル護衛艦“こんごう”型が就役した後も観閲艦はヘリコプター護衛艦が務めている。イージスシステムは乾舷を高くする必要上、大きな上部構造物を必要とし、またガスタービン推進ならではの煙突部分の大きさがヘリコプター護衛艦とはまた異なる力強い印象を与える。

Photo_40  観閲指揮官のヘリコプターによる着艦。

 SH-60系統の機体が飛行甲板に着艦しようとしている。観艦式当日は、安倍内閣総理大臣と久間防衛庁長官が搭乗する機体である。観閲艦にヘリコプター護衛艦が用いられるのは、ヘリコプター格納庫という指揮官訓示を行うのに適当な空間があり、またベアトラップ着艦支援装置によりある程度荒天であっても発着艦が可能である。

Photo_41  受閲部隊が反航する。写真は先頭をいく護衛艦隊旗艦“たちかぜ”。今年度退役が見込まれる日本が建造した二隻目のミサイル護衛艦で、“たちかぜ”型の一番艦、満載排水量は5200㌧でセミアクティヴ誘導方式で射程18kmのスタンダードSM-1MRを発射するMk13発射機を後部に搭載しており、内部には40発のミサイルが内臓されている。また、現在では後部の5インチ砲を撤去し、ここに艦隊司令部施設を設けている。司令部は二層(二階)からなり、所属は直轄艦である。

Photo_42  第一群の三隻が反航する。

 第一群は護衛艦“たかなみ”、“おおなみ”、“むらさめ”の三隻よりなり、その先頭のDD110“たかなみ”が写っている。これは五隻が就役した“たかなみ”型の一番艦で、“むらさめ”型の拡大改良型である。向かうのは観閲部隊先導艦の“いかづち”と観閲艦“くらま”である。蒸気タービン方式の“くらま”とガスタービン方式の“たかなみ”の煙突の大きさの相違がよくわかる一枚だ。

Photo_43  第二群はミサイル護衛艦“さわかぜ”“あさかぜ”“しまかぜ”よりなり、写真には“あさかぜ”と“しまかぜ”が写っている。“あさかぜ”は“たちかぜ”型二番艦で、“しまかぜ”は“はたかぜ”型の二番艦、本型は満載排水量5900㌧、ガスタービンエンジンを搭載し、ヘリコプターの発着艦を可能とする為にミサイル発射機を艦橋前に移動した。しかし、イージス艦への過渡的な艦であり、ポテンシャルの低下は否めない。当初はミサイル誘導のSPG51イルミネータを前に備える“はたかぜ”型が前衛、後部に備える“たちかぜ”型が後衛を担う構想であった。

Photo_44  第三群の大湊地方隊第27護衛隊の“ゆうばり”“ゆうべつ”“いしかり”三隻が揃って反航する。1983年と翌年に二隻就役した“ゆうばり”型は1981年に就役に就役した“いしかり”の拡大型で、満載排水量が1600㌧から1750㌧に大型化している。北方警備用で自衛隊初のガスタービン推進艦でハープーン対艦ミサイルを搭載するなど新基軸を盛り込んでいるが、波浪の高い北方では小さすぎ、動揺が激しいときく。

Photo_45  同時期に就役した護衛艦“くらま”と最小の護衛艦“ゆうべつ”(最小は“いしかり”だが)。ボフォース対潜ロケットと短魚雷発射管を備え対潜装備を充実させているのが日本らしい。なお、本型に乗っていたという隊員に聞くと、時化の時は凄いという。食事などは殆ど中腰で食器は抱えて肘を机の淵に引っ掛けながら食べるという。ちなみに“ゆうばり”型と大きさも船型も本当に良く似た艦にデンマークのニエルスジュエル級があるが、北海バルト海の警備には恐らく似た苦労があるに違いない。

Photo_46  第四群の潜水艦“やえしお”(多分)、今年三月に就役したばかりの最新艦。対潜戦闘に重点を置いたヘリコプター護衛艦と潜水艦の反航、まさに天敵同士の対面というべき一枚である。観艦式には“やえしお”“わかしお”“なつしお”“ゆきしお”の四隻の潜水艦が参加している。従来はセイルに潜水艦の艦番号を記載していたが、機密保持の観点から消されている。ディーゼル推進方式の潜水艦は潜航能力に限界があり、平時でも他国の哨戒機二監視されており、どの艦がどのあたりにいるかを確認されるのを防ぐ必要がある。

Photo_47  潜水艦“わかしお”。“はるしお”型の五番艦で横須賀の第二潜水隊群第六潜水隊に所属する。水中排水量は3200㌧と大型であるが、“やえしお”の艦型である“おやしお”型は水中排水量3500㌧であり、ディーゼルエレクトリック推進方式の潜水艦ではロシアのキロ級やオーストラリアのコリンズ級潜水艦と並び世界でも最大の規模に属する。ちなみに、2009年に就役する新型潜水艦はAir Independent Propulsion方式で、水中排水量は4200㌧に達する。

Photo_48  第五群の掃海部隊が近づく。先頭は掃海母艦“ぶんご”、“うらが”型の二番艦で満載排水量は6900㌧、MH-53掃海ヘリコプターの着艦可能な飛行甲板と、航空掃海器具を収める格納庫を船体内部と上部構造物に備えている。掃海艇要員の休養や航空掃海の支援、また機雷敷設能力も有している。米海軍を除き、掃海母艦を保有している国は少ないように感じるが、イギリス海軍はフォークランド紛争に際して航洋型タグボートを応急掃海艦に仕立てて任務に当てており、この種の艦艇の必要性を示した端的な事例といえる。

Photo_49  掃海艦“つしま”。満載排水量1200㌧で現役艦としては世界最大の木造艦である。艦橋前部のリール式可変深度ソーナーSQQ32を有しており、潜水艦を狙う深深度機雷への対処能力を有している。機雷による損害に対しては、構造上浮力のある木製掃海艇が最近のFRP製掃海艇よりも優れており、2008年に就役する新型掃海艇も木製であるが、将来的にFRP製の掃海艇の建造を、防衛庁は検討していると見られる。この他、掃海艇“すがしま”が観艦式に参加していた。

Photo_50  第六群のインド洋津波災害への国際緊急人道支援任務に派遣し脚光を浴びた輸送艦“しもきた”。三隻ある“おおすみ”型の二番艦で満載排水量は14000㌧、エアクッション揚陸艇(LCAC)二隻により迅速な揚陸が可能で、場合によっては上陸用舟艇型の50トン型交通船も搭載可能である。またLCACもこの第六群に参加していた。災害派遣にも大きな能力を有し、陸上自衛隊の災害派遣装備を甲板に並べている。なお、本艦は映画“日本沈没”にも出演している。

Photo_51  LCACの航行。速力を相当落としている為、変わったエンジン音を出して航行していた。60㌧の車輌や装備を搭載して40ノットの航行が可能、最大で75㌧まで搭載が可能である。六隻が就役しており“おおすみ”型にて運用している。満載排水量180㌧ではあるが出力は16000馬力あり、退役した4000㌧の“みうら”型が4400馬力、“おおすみ”型でも26000馬力であるから、その出力の高さを見ることが出来よう。

Photo_52  第七群はミサイル艇三隻である。“はやぶさ”型ミサイル艇の“おおたか”“くまたか”“しらたか”は、1999年の能登半島沖不審船侵入事案を受けて設計変更されたもので、満載排水量240㌧、ステルス性が重視されている他、16200馬力の出力は44ノットの速力を出す。リンク11により各部隊とのデータリンクが可能で、76㍉砲、90式SSmと工作船対処用の12.7㍉機銃を搭載しており、舞鶴地方隊・佐世保地方隊に3隻づつが配備されている。

Photo_53  最後に当たる第八群は、海上保安庁の巡視船“やしま”である。新海洋秩序とSAR条約批准に伴う任務海域の50倍への増加に対応する為、広域海洋哨戒体制の整備を目的とし1988年に“みずほ”型巡視船二番船として就役した本船は総トン数5259㌧、中型ヘリ二機と35㍉単装機銃、20㍉多銃身機銃各一基を搭載しており、高い航洋性能と警備救難能力を有している。上空を通過するのはSH-60J哨戒ヘリ。

 観艦式はこの後、観閲飛行・訓練展示へと進む。

HARUNA

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