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北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

陸上自衛隊大久保駐屯地創設50周年記念行事 装備品展示・試乗編

2008-03-19 00:04:37 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

■ようこそ大久保駐屯地祭2007へ

 大久保駐屯地祭07詳報、記念式典編、観閲行進編、訓練展示編、模擬戦編と続いた特集も今回で最終回である。最終回の今回は、装備品展示と、試乗の特集である。施設団駐屯地ならではの大久保駐屯地祭特集を最後までお楽しみ下さい。

Img_2165_1  大久保駐屯地には、海外派遣任務を無事遂行し帰る、という縁起で、“蛙”の像が置かれている。1992年6月に国会で自衛隊のカンボジアPKO派遣が決定したが、その第一次派遣隊600名は、ここ大久保の第4施設団を中心に編成された(大隊長以下370名が4施設団、中方第3師団より57名、同第10師団より43名、同13師団より42名、中部方面直轄部隊より64名、施設学校・陸幕から24名)。以後、自衛隊の海外での活動は恒常化したが、一名の戦死者も出さず今日に至ることは、一つの誇りとしてみたい。

Img_2245_1  さて、訓練展示終了後、大久保駐屯地祭は装備品展示という流れで推移していったのだが、なにぶん、物凄く広い駐屯地である。装備品展示会場と式典会場が異なるので、混雑する装備品展示会場をあえて避け、訓練展示参加車輌の撤収を撮ろうと待機していると、94式水際地雷敷設車が会場に入ってくるではないか。なるほど、この車輌は水際地雷を収容する大きな後部区画を利用して試乗を実施するようだ。

Img_2239_1  水際地雷を敷設する為に水上航行が可能な装備であるが、製作は日立造船となっており、確か制式化当時は世界の艦船誌に“これもフネ!”ということで写真が掲載されていたように記憶する。全長11.8㍍というから船舶としては小型かもしれないが、車輌としては、かなりの大きさである。

Img_2249_1  この種の水際地雷は、CH-47JAのような輸送ヘリコプターで一気に空中から敷設した方が早いのではないか、と思ったりもするが、まあ、敵早期警戒機などにより察知される可能性が否定できないヘリコプターで敷設するよりも、車輌で敷設した方が、水際防御体制を暴露しにくく、抑止効果が期待できるのだろうか、ヘリ数に余裕が無いからであろうか。なお、個人的には沿岸の津波災害のときに大きな威力を発揮するのではないか、と思ったりする。

Img_2583  体験乗車の準備が進む中、先ほどの訓練展示にて架橋を展示した81式自走架橋柱装置が撤収を開始している。ところで、この自走架橋柱装置、作業に必要な油圧装置などが露出している部分があり、敵前渡河の際には砲弾片により機能を喪失する可能性があるのではないかという指摘を聞いたことがある。新自走架橋柱装置の開発が進められているというが、個人的には、前述の部分はもちろん一部の施設科装備はキャビンの装甲化を図ってもいいのでは、と考えたりする。

Img_2555  反対側を見渡すと、観閲行進や訓練展示における大型車輌移動により生じた轍や起伏を整地し、散水している。散水しているということは、ここにヘリコプターが着陸するのだろう。つまり、それまでの間、擬爆筒の破片などを回収したり、作業が続くのだとみえる。邪魔してはいけないと思い、撮影位置の移動を決意する。

Img_2626  途上、第7施設群のモータープールなどの隣を通る。最大積載量20000kgとあるので、タンクトランスポーターではなくトレーラのようだ。かなりの数の車輌が並べられている。この種の車輌は、観閲行進でも速度的に自走できない車輌を展示する際などに使われる為、注目されない装備ではあるが、一台一台入念に整備されており、隅々まで行き届いた備えが、自衛隊の精強さを物語っているようにみえる。

Img_2175_1  装備品展示会場。92式浮橋の車輌展示。きくところではつい第4施設団へは最近配備された装備のようだ。この種の装備は、護岸工事された日本の河川では使いにくいといわれていたが、92式は本体・動力ボートともに水面まで護岸工事部分を乗り越えて展開させる伸縮式レールが装備されている。他方、護岸工事って、浮航性能を有する装甲車の渡河には妨げとなるらしい。結果的に意図せずして国土の要塞化してたような印象も。

Img_2182_1  92式浮橋、後ろから一枚。ところで、米軍演習の映像をみていると、このタイプの浮橋を大型ヘリコプターで次々と河川に展開させ、迅速に架橋を行う様子が収録されていた。この装備も、基本的に74式特大トラックに搭載されているので、第1ヘリコプター団のCH-47J/JAでも輸送は可能な筈。大規模災害において迅速に橋梁を回復する為に、運用試験など、実施してみてはどうかな、と考える。

Img_2180_1  道路障害作業車。観閲行進では良く見えなかった角度から掲載。この車輌を用いれば、中央分離帯を対戦車バリケートに変えたり、アスファルトの底に対戦車地雷を巧みに秘匿敷設したり、様々な運用が可能である。この種の障害構築装備は、米軍装備やNATO軍装備などの中にも見られないものがあり、注目したい。他方、地雷除去装備などは、爆導索に重点を置いており、耐爆圧型の地雷を充分に除去できない可能性がある。チェーン方式(高速回転軸に錘の装着されたチェーンを無数に配して地雷を叩き潰す装備)などの装備化も検討しては、どうだろうか。

Img_2179_1  道路障害作業車について、一つだけおもうのは、部隊撤収の際に時間を稼ぐ殿としての運用が為されるわけで、装甲化を検討しても良かったのでは?と思ったりする。必然的に価格は上昇するが、普通科は高機動車よりも高価な軽装甲機動車の装備を行っている。施設科もトラックよりも高価であっても生き残れそうな車輌が広範に必要では、と思ったりする。例えば米軍がイラク軍のIED(仕掛爆弾)対処用に導入した南ア製キャスパーシリーズの派生型のような車輌などのように。

Img_2259_1  という感じで、装備品展示について色々なことを書いてみたが、お気付きだろうか、92式にしても、回りに人が少なすぎないか?ということ。スマン、実は上の四枚は早朝、大久保駐屯地に入った直後に撮影したもの。装備品展示の会場は、式典と並行して開いているので、訓練展示終了後は火砲や車輌も加わり、大変な盛況だった。

Img_2636  大久保駐屯地名物、渡河ボートによる体験乗船。2007年の大津駐屯地祭でも、琵琶湖を利用して渡河ボートによる体験乗船が行われていたが、大久保駐屯地には渡河訓練、架橋訓練を行う為に大きな池があり、ここに渡河ボートを浮かべて体験乗船を行っている。ダンプ中隊の観閲行進とならんで、この駐屯地ならではのものである(施設学校でもこうしたことが行われてるというはなしで、すると他の施設団の駐屯地にもボート試乗は出来るのかな?)。

Img_2231_1  体験試乗の池はかなり大きい。一周するには思いのほか距離があり、ライフジャケットを着込んで乗船した皆さんも、充分楽しめたようだ。二艘の渡河ボートが試乗に参加していた。この渡河ボート、複数を横に繋いで導板を渡せば、高機動車などの車輌も輸送可能である。2006年の大津駐屯地祭では、琵琶湖上からこの方法で増援部隊を送るという離れ業をやってみせた。

Img_2257_1  一周すると艀(はしけ)からボートへ交代。施設科隊員は、架橋作業などのために櫓や櫂の操作にも習熟しているとのこと。体験乗船では、モーター動力で前進しているが、夜間渡河などではエンジン音を立てるわけには行かず、手動で動かすという。更に、夜間における架橋作業でも殆ど照明を用いず、作業をこなしてしまうという。

Img_2254_1  で、まあ、皆さん、渡河ボートスゲー!っていう印象で写真を撮っていたようだが、実はボートへの乗り換えに使う艀、実は最新の92式浮橋だったりする。最新鋭の渡河装備と知ってか知らずか、あまりこの艀には注意を払っていなかった。ううむ、訓練展示では81式自走架橋柱装置に美味しいところをもっていかれたので(浮橋は水上に浮かせて使うので地上での展示には使えないのだ)、こんなところで大活躍。

Img_2169_1  渡河ボートの撮影を終えて、そろそろヘリコプターが着陸する時間帯となってきたのだが、その途中には、パネル橋が分解した状態で置かれてたりした。このパネル橋、さすがに駐屯地祭では組み立てに時間が掛かるので見ることは出来ないが、例えば富士総合火力演習では、道路の立体交差に、さりげなく使われてたりもする。

Img_2605  砂塵を巻き上げて着陸する観測ヘリコプターOH-6D、あれだけ散水したのだが、この日は五月末という割には既に日差しは初夏で、水は地面に吸い込まれ、乾ききった大地は容赦なく砂塵を周囲に吹き付ける。しかし、砂塵を透かしてヘリを撮ってみると、着陸寸前の航空機という迫力が伝わる。ほぼ同時にUH-1Jの方も着陸していた。

Img_2590  対戦車ヘリコプターAH-1Sが着陸する。この時点では、まだAH-64Dが生産中止になるという決定は無く、数年後には明野のAH-64Dがここで見られるようになるのでは、と期待していたりした。AH-64Dは単なる空中打撃の手段ではなく、索敵情報のデジタル化による全部隊への共有、無人機の管制などにも使える新世代機で、イージス艦が海上自衛隊に、AWACSが航空自衛隊にもたらした躍進と同等のものを得られるはずだったのだが。

Img_2593  AH-1Sがグラウンドの中央に着陸すると、残った砂塵が一気に飛沫と化してグラウンドを覆った。訓練展示の際にUH-1Jが、木立の向こう側に着陸したのは、この砂塵が訓練展示の状況を覆ってしまうことを避けるためであろうか。砂塵はデジタル一眼のCCDには天敵となるため、望遠レンズで撮影するとともに一時後退(転進)である。

Img_2645  ちょうどこの期間、小生は多忙であり、ヘリの見学や車輌の試乗を諦めて撤収を開始する。そのとなりをデコレーションで飾った試乗の高機動車が目の前を通り過ぎる。普通科部隊小銃班の機動力向上を目指し高機動車の配備が開始されたのが1992年。今日では、高機動車は普通科部隊以外にも広範に配備されている。更に進んだ軽装甲機動車が、普通科連隊から偵察隊にまで配備されている。

Img_2634  さて、五回に分けて掲載した大久保駐屯地祭創設50周年記念行事、いかがだったろうか。戦車部隊や特科部隊に比べれば、一見地味そうな印象があるが、そういったステレオタイプなイメージは、一転したのではないだろうか。施設科は全部隊の先頭に立って困難に立ち向かう為、必然的に機械化されている観閲行進、敵前で後方で責務に向かう施設科部隊ならではの模擬戦。2008年大久保駐屯地祭は5月末に予定されている。大久保駐屯地までは、京都駅から近鉄奈良線で、京阪からは京都市営地下鉄東西線から烏丸線に乗り換えて直接大久保駅へ、阪急線も烏丸駅から近鉄線乗り入れ電車ですぐ行くことができる。皆さんも興味をもたれた方は、大久保駐屯地祭へ足を運ばれてみては如何だろうか。

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