■銀河と共に駆け華の如く暁に消える
ブルートレイン総力特集。3月3日にWeblog北大路機関アクセス解析開始より35万アクセスを突破したことは既報の通り。35万アクセス突破に備え、これまで蓄積を重ねてきた秘蔵写真を一気に公開したい。
寝台特急『なはあかつき』号が鉄路を高らかなモーター音とともに眼前を通過する。ブルートレイン特集ということで、一枚目はやや大きな写真。山崎駅にて撮影。いよいよ近付く廃止を前に、ブルートレイン撮影の名所では連日、人だかりが出来ている。この日も例外ではなく、創意工夫、譲り合いの精神でカメラの砲列を並べていた。
寝台特急、寝台急行。これらはブルーの客車が電気機関車、ディーゼル機関車により牽引されることからブルートレインと呼ばれるが、寝台車という、いわゆる優等列車により運行される夜行特急や夜行急行の総称としても、ブルートレインという言葉が充てられることも多い。かつてブルートレインといえば、長距離列車の代名詞的存在であった。
ブルートレインの座は新幹線の登場により大きく変わった。1975年に大阪から九州へ新幹線が開通したことで九州方面への最終新幹線の補完という位置づけや、北海道、東北や北陸など新幹線の未整備区画における長距離特急という位置づけとなった。今日では東北新幹線は函館への延伸工事を続け、整備新幹線というかたちで地方へ新幹線整備は続いている。
国鉄からJRとなり、新幹線は世代交代を続け、500系新幹線からは300km/h運転が実現、最新鋭のN700系では1000kmもの距離で隔てる九州博多から首都東京までを、わずか五時間少々で結ぶに至った。こうして、新幹線の発達は、寝台特急の運行時間を跨がずとも目的地への移動を可能とし、整備新幹線として北陸、北海道に延びようとしている。
廃止を免れても、ダイヤ改正とともに『日本海』『北斗星』の減便が行われる。こうして、新幹線特急電車網の延伸により、ブルートレインはその歴史的役割を終えようとしている訳だ。今回は『なは・あかつき』『銀河』廃止への花を手向けるべく企画した特集でもある。
■寝台特急『なは・あかつき』号
寝台特急『なは・あかつき』号は、京都と熊本を結ぶ寝台特急『なは』号と、京都と長崎を結ぶ寝台特急『あかつき』を連結した特急。
3月15日のダイヤ改正を以て廃止される予定の寝台特急で、荷物車と一号車から五号車までが『なは』号、六号車から十号車までが『あかつき』号。六号車がA寝台、一・二・五・九号車がB寝台車、三・八号車がB寝台料金で個室が利用できるソロB寝台。七号車が二人用個室デュエットB寝台とソロB寝台の混成、十号車は指定席特急料金で利用できるレガートシート車である。
■寝台急行『銀河』号
東京と大阪を結ぶ寝台急行『銀河』号。寝台急行として唯一のブルートレイン運行が行われている列車で、3月15日のダイヤ改正を以て廃止される列車。
24系客車で統一された『銀河』号は電源車と八両の客車より成る。ただし、七号車と八号車は連結しない日があるとのこと。全車B寝台で、運行が夜間となる為、新幹線最終の補完として運行される。ソロB寝台やシャワー室、自販機、電話、食堂車の設定は無い。また、ヘッドマークを掲げていないことでも知られる寝台急行だ。
■寝台特急トワイライトエクスプレス
大阪と札幌を結ぶ日本で最も長距離を運行する寝台特急が、この『トワイライトエクスプレス』号。不定期運行だが、最も豪華な寝台特急のひとつ。
一号車・二号車は一人用・二人用のA個室、三号車は食堂車、四号車はサロンカー、六号車・七号車はソロ/デュエットB寝台、八号車と九号車がB寝台で四人利用の場合はコンパートメントとして利用も可、七号車にはミニサロン、四号車には有料のシャワー室がある。単なる移動手段から、車窓を楽しむ寝台特急へと昇華を果たしたのが本列車である。
■寝台特急『日本海』号
『日本海』号は、大阪と青森を結ぶ寝台特急で、往復二本が運行されているが、これが新ダイヤでは一本となり運行される。
寝台特急『日本海』は、24系客車により構成され、開放型寝台のA寝台車を一号車、そして二号車から十二号車までをB寝台車として運行する(九~十二号車が連結されない場合がある)。夜行バスでは到達できない距離を運行することから需要はあり、食堂車やサロンカーなどは無いが、大阪から福井まで、若しくは東能代から青森までの区間で車内販売が行われる。
■寝台急行『きたぐに』号
『きたぐに』は583系電車により。大阪と新潟を結ぶ寝台急行で、自由席も設定されている。
一号車から四号車までが自由席急行券で利用できる自由席車で対面式シートが採用されている、六号車がリクライニングシートを用いたグリーン車、五号車と八号車九号車十号車がB寝台車、七号車がA寝台車となっている。ビジネスホテル並の寝台券が必要な寝台車とともに、安価な急行券だけで利用できる自由席車もあり、一部には好評である。なお、B寝台は三段式寝台を採用している。
■寝台特急『富士・はやぶさ』号
東京と大分を結ぶ『富士』号と東京と熊本を結ぶ『はやぶさ』号の連結、廃止が決定しており、最後の九州ブルートレインとなる。
一号車から五号車までが『はやぶさ』号、六号車から十二号車までが『富士』号という編成。一号車と四号車から七号車、十号車から十二号車がB寝台、八号車がA個室、九号車がソロB寝台となっている。シャワーや食堂車などの設定は無いが、徳山と博多間、名古屋と東京間で車内販売を実施しており、新幹線終電後の区間から乗車し、始発新幹線に途中駅で乗り継ぐという方法での利用もあるようだ。
■寝台特急『サンライズ瀬戸・出雲』
東京と四国高松を結ぶ『サンライズ瀬戸』、東京と出雲市を結ぶ『サンライズ出雲』の連結特急。寝台特急電車という珍しい方式を採用している。
七両編成の二編成十四両で、B寝台は全てソロB寝台、A寝台もも室であり、更に、開放型B寝台に匹敵する指定席“ノビノビ座席”を採用している。指定席は指定席特急料金で利用でき、各編成とも、ミニサロンや有料シャワー室が設定されている。新世代の寝台特急ということで注目を集めたが、残念ながら、普及には至らなかった。一度乗ってみたい特急の一つ。
■夜行急行『能登』号
金沢駅と上野駅を結ぶ夜行急行『能登』、489系国鉄塗装という意味でも貴重な急行として、今回掲載した。
九両編成で、一号車から三号車までが指定席車、四号車がグリーン車、五号車から九号車までが自由席車という設定。一号車は女性専用車輌で、六号車にラウンジが設定されている。485系ボンネット車の特別仕様車で、新幹線が届かない金沢から、昼間の『サンダーバード』『雷鳥』『しらさぎ』とともに優等列車網を展開している。
■寝台特急『北陸』号
金沢と上野を結ぶ寝台特急で、14系客車により運行され、前述の『能登』号と同じ経路で運用される。
一号車と五号車、七号車八号車がB寝台、二号車、四号車、六号車がソロB寝台、三号車がA個室となっている。二号車には有料シャワー室が設定されており、割引券なども多く出されており、観光での利用はもちろん、遅くまで用事のあるビジネスマンにも愛用される寝台特急である。なによりも『能登』『北陸』の二本体制が需要と営業努力の賜物であることを示している。
■寝台特急『北斗星』
青函トンネル開通以来、上野と札幌を結びブルートレインを代表する名特急として知られる北斗星。
A寝台一人用個室『ロイヤル』、A寝台二人用個室『ツインデラックス』、デュエットB寝台、ソロB寝台、B寝台とともにロビーカー、食堂車『グランシャリオ』などから編成され、現在の一日二往復体制が一往復に減便されるが、豪華を希求した『北斗星』は、スキー旅行などを含め、北海道と首都東京を結ぶ寝台特急としての地位は不変である。
■ブルートレイン『夢空間』
寝台特急『北斗星・夢空間』編成として、弾体列車運行が行われるブルートレイン。次世代寝台特急の研究を目的として開発された経緯がある。
次世代寝台特急として、『カシオペア』の設計にも大きな影響をあたえたのが、この『夢空間』である。撮影時に現地の方から聞いた話では、残念ながら、三月に廃止されるとのことで、団体列車という不定期運用列車を撮影する機会に恵まれたのは、やはりこれも上賀茂神社の御利益だろうか。日本のオリエント急行を目指して最上級の車内構成を行ったのが最大の特色である。
『夢空間』に連結されていた24系客車、そこには『特急 あさかぜ 東京行』と方向幕が出されていた。いつしかブルートレインは絶滅し、新幹線に取って代わられるのか、もしくは団体専用列車として、更に転じて定期運行として新しい活路を見出すのかは不明ながら、20世紀と21世紀を越えて、日本鉄道史に確たる足跡を残し、今後も思い出されることだけは確かであろう。ひとときの華が如く銀河が暁に消えるとも、再び想われ。記憶での存在は永遠である(『カシオペア』『あけぼの』は今後撮影次第掲載予定)。
HARUNA
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