■採算性と利便性の両立を期して
ブルートレインについての展望は、利用者やファンの視点と事業者の視点から共存共栄関係に依拠しなければ長期的な事業評価に耐えず、短命に終わってしまう。今回はこの観点から考えてみたい。
第一に、大阪と東京を結ぶ夜行の寝台急行『銀河』が廃止されるのに対し、同じく東海道本線を大垣から東京まで運行される夜行快速『ムーンライトながら』が維持されるという点をどうみるか、考えたい。Webなどで検索すれば、東京から大阪を結ぶ3000円台の夜行ツアーバスが設定されている点からも、この区間の安価な移動を求める旅客需要は少なからずあり、格安ツアーバスが東海道本線夜行列車の競合先と考えるのが妥当であろう。
夜間快速『ムーンライトながら』は、指定席券だけで乗車でき、東京まで大垣から7000円程度、青春18切符を利用すれば名古屋から3000円程度で首都圏に移動する事が可能となっている。乗車率と採算性のラインは手元に資料が無いため割愛するが(
いちばん重要でもある)、寝台券に相当する特別料金の設定が無くとも、運行の継続に必要な採算ラインを維持していることが背景にあると分析して差し支えないだろう。
『銀河』は、料金体系的には、新幹線との競合水準に位置するが、新幹線が特に東京~大阪間の東海道新幹線区間ではJR時代に導入された300系でも陳腐化する程の車体更新頻度があるのに対し、依然として1970年代設計の24系客車と開放型寝台を採用している。料金体系に見合わない車輌アコモであり、可能な範囲内での近代化が必要であったと考える。
料金体系では、過去にも本ブログに掲載したが、寝台急行『きたぐに』が有する自由席車のように、急行券のみで乗車することの出来る長距離夜行列車として設定することも可能であったはずだ。更に一歩進めば、長距離夜行バスとの競合を第一に想定し、大阪・名古屋を経て中央線経由で新宿、更に寝台特急『あけぼの』の経路を通り、青森まで直通急行を運行すれば、新幹線利用者と格安夜行バス利用者の中間線で選択を考える利用者を獲得することが可能となる。
自由席もしくはレガートシート車による安価な価格設定での長距離移動手段。後述するが、並行して開放型B寝台の最大限の格安化(ノビノビシートやゴロンとシートのように簡易寝台化する方向も検討するべき)、個室方式のソロB寝台やデュエットB寝台の充実(場合によっては開放型B寝台との料金差も想定)、そして運行地区見直しによる利用客掘出し、これが課題となる。
料金体系について、24系客車の開放型B寝台は定員が34名(32名の場合もある)、しかし、例えば寝台特急『あかつき』号に編成される寝台券不要のレガートシート車は定員が31名であることを考えれば寝台券そのものの価格低減も可能だったのではないだろうか。例えばブルートレインをレガートシート車中心の編成体系とすれば昼間特急としての転用も可能となり、夜行一辺倒の運行体系から開放される。
レガートシート車では採算性に限界があるのならば、先にも述べたが普通車を連結し、長距離運行を行う方法を模索するべきだ。客車方式は、交流、直流、電圧、非電化区間を関係なく電気機関車やディーゼル機関車の切替により極めて長い距離の運行が可能だ。新幹線より安価な急行料金で利用でき、長距離バスでは運行されないような長距離で『銀河』が運行されれば、利用者も増えたのではないか。
他方で、競合先の夜行バスに対抗するために、『ムーンライトあたみ』として、大阪~熱海間を夜間快速として設定することも検討してはどうかと思う。大阪~東京間の夜間快速設定は所要時間の関係から難しいだろうが、2310時頃に大阪を発車し、0000時に野洲駅に到着するダイヤで運行すれば、青春18切符に+1280円と指定席券で運行でき、東海道線普通に乗り継げば0700時頃に東京着、夜行バスに対抗することが可能となる。
帰省シーズンを中心に臨時列車として運行される夜間快速は多くあるが、減少するブルートレインの補完としてのダイヤ組み込みを行い、昼間のアーバンネットワークに対抗する全国規模でのミッドナイトネットワーク網を構築することで、利用客の固定化を図ることも可能となろう。少なくとも、格安夜行バスが展開する労働基準法ギリギリの運行人員と整備状況に対し、鉄道ならではの定時性と安全性をアピールすることで鉄道回帰の流れを生むことは可能となるように思う。
HARUNA
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)