今回も昨日に続き富士総合火力演習の特集。本日は普通科部隊の装備と運用に関する前段演習の模様を掲載。ヘリコプターの飛来とともに、状況は、まだまだ続く。
CH-47JA輸送ヘリコプター。J型とともに中央即応集団隷下の第1ヘリコプター団に32機が集中配備され、第12旅団や第1混成団、西部方面ヘリコプター隊や北部方面ヘリコプター隊などにも装備されている。55名の人員や装甲車、火砲などを空中機動させることが可能で、この輸送能力は防衛出動以外にも災害派遣などにも大きな威力を発揮する。
CH-47JAはレンジャー隊員を敵後方に送り込むという想定で展開。陸上自衛隊には、特殊作戦群を除き、いわゆるレンジャー部隊というものは無いが、レンジャー課程により遊撃戦能力の取得を実施しており、部隊での対遊撃戦訓練に活躍するとともに、必要に応じて臨時編成のレンジャー部隊を連隊独自に編成する場合はある。
空中機動により敵後方に潜入したレンジャー隊員は、偵察活動を行い、大まかな敵情を把握するとともに、携行した爆薬により橋梁を破壊、後方を攪乱する。体力に依拠し、自活能力と行動力を兼ね備え、忍耐力と技術力を有するレンジャー隊員は、ひとたび後方に潜入すると、侮りがたい戦力となる。
後方に侵入したレンジャー部隊は、携帯無反動砲を用いれば戦車の最も苦手とする部分を待ち伏せで攻撃でき、後方の補給拠点を叩くこともできるが、なによりも重要なのは敵の位置という情報を得、航空攻撃や野砲部隊の運用に資することだ。情報収集を行った後、レンジャー隊員はCH-47JAにより迅速に収容される。
着陸する時間もない際には、写真のようにロープを用いて一挙に回収する。空中からも、地上からの不意の攻撃に備え、89式小銃を手に警戒する。全ての隊員にとり、89式小銃や64式小銃は最も身近な装備であるとともに、最後の瞬間、自らの身を護り、それ以上のものを守るための重要な装備品だ。
さて、レンジャー隊員により橋梁を爆破された、という想定、突如後方との連絡線が絶たれたということで、敵は混乱をきたしている、という状況。そこで、敵指揮官が車両にて後方に逃走を図っているという状況となった。よくみると、標的は、自動車の形をしており、助手席に的が設置されている。
対人狙撃銃。車両により逃走を図る敵指揮官を狙撃するべく、対人狙撃銃の出番となった。陸上自衛隊が導入した対人狙撃銃は、米陸軍制式のM-24狙撃銃を輸入したもので、7.62ミリ弾をボルトアクションにより一発一発射撃するもの。M-24は、民間のレミントンM-700を軍用狙撃銃としたものである。
対人狙撃銃の射撃により、車両の助手席にみえていたプレートは粉砕された。狙撃銃は、普通科連隊の狙撃小隊などに配備されるが、高度な光学機器を有する狙撃手は情報収集にもあたることが出来る。なお、米軍ではセミオート式の狙撃銃を有する能力証明射手を第一線に配属させ、後方からの狙撃手に加え、第一線での重火器などの排除任務に充てている。
対人狙撃銃の射撃。安全員のみがみえるが、擬装を施した狙撃手が対人狙撃銃を構えて潜んでいる。基本、M-24も89式小銃と比べればそこまで大きな銃というわけではないので、見栄えとなると、こんなかたち。ちなみに、個人的には89式小銃に高倍率照準眼鏡を搭載した能力証明射手の方が、射手に名手の多い陸上自衛隊向きのような気がする。
普通科部隊の装備として、軽装甲機動車からの01式軽対戦車誘導弾の射撃展示。通称01軽MATと呼ばれるこの装備は、各国が実用化を急いでいる敵に欺瞞が難しい赤外線画像認識方式により目標を攻撃する最新の対戦車ミサイルで、射程は1500㍍。射撃後の誘導は不要な撃ち放し式を採用、射撃後すぐに退避することが出来る。
軽MATは、射撃時に後方爆風が少ないことも特色で、これにより射撃位置を選ばないという特色がある。84ミリ無反動砲の後継という位置づけで開発されたのだが、重量があるため、ミサイルの運搬の目的で、軽装甲機動車とともに配備が進められている。他方、携帯無反動砲にも手軽な火力支援という特性があり、併用の運用が模索されている。
06式小銃擲弾。今回初めて公開された新装備。普通科部隊が装備し、第一線で投射するもの。グリネイドランチャーとして、米軍は小銃に装着するM-203などを装備しているが、陸上自衛隊ではライフルグリネイド方式の06式を開発した。射撃は空包と似た擲弾薬筒により発射する。
06式は、軽装甲目標や対人用として効果のあるもので、射程は公表されていないが、恐らく500㍍前後と思われる。89式小銃に小銃用擲弾照準装置を取り付けて運用する。よくみると、弾体には距離を記した目盛が記されており、着弾後に炸裂させる方式で展示を行った。64式用の小銃擲弾は命中精度が低いという問題があったようだが、06式は、標的周辺で炸裂していた。
96式装輪装甲車と、降車普通科隊員による小銃射撃の展示。96式は、キャタピラーを装着した、装軌式ではなく、タイヤ式の装輪式を採用したことで高い路上機動力を有し、加えて、8輪方式を採用したことで、不整地においても一定の踏破能力を付与させた装甲車で、一個小銃班を装甲に防護したまま機動することが出来る。
96式装輪装甲車による12.7㍉重機関銃の射撃展示、曳光弾がみえる。96式40ミリ自動擲弾銃を装備した車両と、12.7㍉重機関銃を装備したものが配備され、当初は40ミリを搭載した車両が圧倒的に多かったが、不発弾の発生、特に活性化しやすい不発弾が問題となっており、その関係か、近年は12.7㍉重機関銃を装備したものが多いように見える。
つづく
HARUNA
[本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる]