北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

陸上自衛隊アフガニスタン人道支援任務派遣問題を考える⑥ 地雷・不発弾処理

2009-09-23 23:41:58 | 国際・政治

◆地雷処理任務という選択肢

 アフガニスタン派遣であるが、もともと水道が普及していない高山部に給水支援というのはナンセンスであるし、学校や病院の建設にしても自衛隊は工事が難しく、しかも戦闘が続いている。

Img_5679  自衛隊を派遣するのならば、もちろん自衛隊以外でもいいのだが、自衛隊以外では民間軍事会社でも創る以外は戦闘が続いている現状から無理だろうから、自衛隊のみしか派遣して任務を遂行できる能力は無いという前提の上での話なのだが、派遣する以上、何らかの任務を遂行する必要がある。行くことに意義があると考えて、宿営地を要塞化し立て籠もるという事も考えられるのだが、復興人道支援やISAFの任務の支援という観点から考えてみたい。

Img_2946  戦闘が続いている状況であるので、戦闘が終了しなければ復興人道支援もないだろう、という観点から、北部方面隊の装甲化された強力な連隊戦闘団とヘリボーン部隊を派遣して、一気に特定地域での戦闘を収束に向かわせる、という方法も、一つの考え方としてあるようには思うのだが、これは時期尚早か。一応、砲弾を含め弾薬の規格はNATO規格であるので、東西冷戦下、鍛えに鍛えた、・・・、やはり早い。

Img_07801   すると、考えられるのは、地雷除去、航空救難輸送、監視任務、この三つだろうか。もちろん、これまでに述べた道路補修任務も担う事が出来よう。ISAFの装備や任務における写真などを見ると、爆導索や除雷装置などの地雷処理の装備が必ずしも多くないのは気になるが、自衛隊が処理するレベルの地雷は処理されているのかも調査する必要はあるだろう。

Img_03_74   他方で、アフガニスタンは、カンボジアと並び地雷敷設の密度が多いことで知られ、同時に民生被害も考えられることから、地雷処理任務への需要は大きいだろう。今回は、先に列挙した地雷除去、航空救難輸送、監視任務という自衛隊が対応可能であろう任務のうち、地雷処理について、特に考えてみたい。

Img_3233 ただし、完全な地雷除去は復興の本格化の際に、つまり戦闘が基本的に終了したのちに民間団体とともに協同で行うのが望ましい。地雷処理には、戦闘に際して防御地雷として敷設された地雷原を処理する障害除去、これは概ね七割から八割程度の地雷を処理する方式なのだが、この方法。そして農作業や放牧、再開発などを行う際に被害が出ないようにする完全除去と並ぶが、自衛隊が想定するのは障害除去である。

Img_6781 具体的には92式地雷原処理車、70式地雷処理器、M-1破壊筒と梱包爆薬による地雷処理を行う事だ。障害除去であっても、特定通路の地雷は処理することが出来るので、この通路を拠点に復興時は地雷の完全除去を行う事が出来る。このほか、金属探知機による伝統的な地雷処理訓練も自衛隊では行われており、もちろん一歩一歩地雷を探すのだから人員が大量に必要となるのだが、対応能力はある。

Img_4415  92式地雷原処理車は、26個の大型爆薬を繋いだ爆導索をロケットにより投射するもので、このロケットを二発、処理車に搭載したもの。爆発力は極めて大きく、一発で200㍍の距離にわたって幅5.5㍍の通路にわたり地雷を爆破して処理することが出来る。ロケットは地雷原から500㍍以上離れた場所に投射することができ、自らは地雷原より距離を置いて地雷処理を行う事が出来る。

Img_0663  70式地雷処理器は、人員8名で分解輸送することができ、測量から発射までは最速で15分、ロケット弾により爆導索を投射し、着地後16秒で自動的に爆発、150㍍にわたり、幅0.5㍍の人員通過用経路を啓くことができる。92式と比べれば、92式は車両通過用の通路を啓くことができるのだが、70式は人員通過用の経路を啓くにとどまる。しかしその分人力で搬送することができ、小回りが利く点が利点といえよう。

Img_1521   M-1破壊筒による地雷処理、これはあまり先進国では行われていない方法で、理由は防御地雷原がそもそも阻止線として利用される特性から、そこに地雷処理のために人員が進入すると機銃などの火力の制圧下に入ってしまうためである。しかし、今回のように遺棄地雷の処理であれば、そこまで問題にならないかもしれない。

Img_1531 1.5㍍の破壊筒には爆薬が充填されており、これを何本も繋いで爆破し、敷設された地雷を誘爆させるのだ。これにより人員が通行可能な0.5㍍の通路が啓けるので、さらにここに梱包爆薬、正式にはM-1集団装薬連鎖爆破薬というのだが、これを設置、爆破して5㍍幅の車両通路を啓くのだ。

Img_4565  このほか。戦車に装着する92式地雷原処理ローラというものがあって、戦車の前に装着し、物凄い重量と磁気によって地雷を押しつぶして破壊するという方式があるのだが、この方式は、ソ連軍がアフガニスタンで実施したため、処理装置が地雷を爆発すると、その付近にある爆薬も誘爆して処理車を破壊するという方式がアフガニスタンで多く用いられ、少なくないソ連軍地雷処理車が破壊されているという。

Img_3082  このほか、全土に散らばる不発弾処理も一定の需要がある。陸上自衛隊は、第二次大戦中に日本に投下された膨大な不発弾を処理してきた実績があり、もちろん、処理よりも機関砲などで直接射撃し、処理する方が手っ取り早いかもしれないが、復興を阻む無数の不発弾の処理は、同じ境遇を経験した日本らしい復興支援と言えるかもしれない。

Img_5401_1  ちなみに、これはある意味当然のことだが、戦闘が続く地域での地雷処理は、戦闘工兵の任務の一つ、障害除去であり、攻撃前進に先んじて行われるものだ。もちろん、防御用地雷以外の遺棄地雷を処理するのだけれども、区別は難しい。したがって、妨害にあう可能性も高く、相応の準備は必要となろう。

Img_9772  一つ重要なのは、地雷処理には、どのような地雷がどのあたりに敷設されているのか、これに就いて住民から生の情報を得るとともに可能であれば戦闘に参加したゲリラ部隊や、ロシア軍資料などから調べる必要があり、この点でも任務担当地域での住民との関係は極めて重要になってくる。

Img_1718  イラク派遣の際には、自衛隊は復興人道支援のために展開するのであって、イラク人に危害を加えるものではない、とテレビコマーシャルを利用して訴えたが、何分、アフガニスタンのほとんどの地域ではテレビが普及していない、地雷処理には住民の理解と協力が必要であり、この点が重要であろう。現在のアフガニスタンは全土が戦闘地域、もしくは潜在的戦闘地域である。

 次回は、救難輸送などの面について、その可能性を検証してみたい。

HARUNA

[本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる]

コメント (8)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする