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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

3000隻以上が護衛申請、ソマリア沖海賊対処事案海上自衛隊派遣

2009-09-16 22:37:16 | 防衛・安全保障

◆海上自衛隊創設以来最大規模の実任務に発展

 海賊対処法制定以来、第二次派遣部隊として、在原政夫1佐指揮下の護衛艦はるさめ、あまぎり、は粛々と任務にあたっており、八月いっぱいまでに81隻を護衛したとのことだ。

Img_7202  朝雲新聞などによれば海上自衛隊が護衛した81隻のうち、日本船籍の船舶は1隻のみで、一回当たりの護衛対象は6~7隻、外国船舶からの護衛要請がかなり増加しており、ここ数ヶ月間、増加傾向が続いているアフリカ東海岸での海賊被害に対する海運業者の危機感がみてとれる状況である。

Img_7847  ジプチを拠点として任務にあたっているP-3C部隊も、哨戒飛行を続けており、八月いっぱいまでに51回の哨戒飛行を実施、既に250回の情報提供を実施しており、8月19日には、海上自衛隊のP-3Cにより誘導されたドイツ海軍、オランダ海軍、ノルウェー海軍部隊が海賊の拘束に成功している。

Img_2546 海賊対処法により日本に関係ない船舶であっても護衛対象となっているのだが、海上自衛隊による護衛の申請は、国土交通省が一括して受け付けている。ここで、国土交通省海事局に護衛を申請し、登録された海運事業者は158社に上り、登録船舶数は実に3335隻にも上ることが判明した。

Img_7451 国土交通省海事局への申請は、事業者158社中、88社が外国の海運業者であり、登録船舶数3335隻のうち、892隻は外国の海運業者により運行されている船舶とのこと。もちろん、三千隻全てを一度に護衛するわけではないのだが、登録だけで三選を越える護衛というのは第二次大戦後最大規模となる。

Img_1613  私見だが、現時点では、海上警備行動として開始され、海賊対処法に基づく行動として海上自衛隊が護衛任務にあたっているが、護衛対象の拡大などを踏まえれば、護衛以外の、近海での検挙活動などには、今後海上自衛隊とともに、海上保安庁の警備救難任務での支援も必要になるのではないかと考える次第。

Img_7187  14日付の東京新聞によれば、ソマリアの隣国ジプチが、海上治安組織として沿岸警備隊を発足させることとなり、東南アジア地域での海賊対処や海上治安組織訓練などで実績のある日本の海上保安庁に対して支援を要請したとのことだ。ジプチ沿岸警備隊は今年二月に創設されたばかり。

Img_1670 沿岸警備隊は、ジプチ国家憲兵隊に所属していたが、日本の海上保安庁に習いジプチ運輸省所管となっており、四か所を拠点とし、密輸や密漁、密航の検挙など司法警察業務にあたるとのこと。海上保安庁のアフリカ方面への関与が深まれば、海上自衛隊の補完としても活動に期待がもたれる。

Img_9867 他方で、海上自衛隊のインド洋海上阻止行動給油支援について、民主党政権は来年一月には任務終了となる可能性が現時点では高い給油支援任務であるが、このままアラビア海に遊弋させて各国の海賊対処部隊への補給支援に切り替えた方が、国際社会での需要には合致するのではないかと考える。

Img_6684  今年三月十四日、海上自衛隊は土曜日ということで家族の見送りが容易で、海賊対処部隊第二次派遣部隊を横須賀基地から出航させている。この時点で、同じくソマリア沖海賊対処のために韓国海軍もイスンシン級ミサイル駆逐艦を派遣することとなっていたのだが、海上自衛隊のインド洋での補給艦からの支援は法的問題があるとして断られ、仕方なく万が一故障した際でも隣国であるという事で救助をあてにし、前日に韓国海軍は駆逐艦を派遣した。

Img_1929 韓国はキリスト教国であるというのに前日は13日、しかも金曜日に派遣することとなったのだ。過去にも同様のあてをもとに派遣した際、日本が大安吉日を選んで派遣したために、韓国海軍は前日の仏滅ばかりを選んで派遣を強いられたという事もあるのだが、こういう状況を防ぐためにも、海賊対処任務にインド洋派遣部隊を振り向けるべきでは、と考える。

Img_7222  海上自衛隊の艦艇ローテーションは、補給艦を中心に、インド洋とアデン湾での任務の長期化により厳しい状況を迎えている。しかしながら、既に三千を超える船舶が護衛の申請を出し、且つ受理している以上、船会社は自民党に申請したのではなく日本国に申請したわけであるので、手のひらを返すのは公序に反することとなる。

Img_1612  他方で、任務の長期化が海上自衛隊に負担を強いていることも事実であり、海賊対処の根本的な処方箋がいつから無い、出口戦略に問題のある状況下では、海上保安庁との協同も含め、柔軟に対応する必要があるようにも思う次第。3000隻以上が現時点で申請、今後もこの数は増大する可能性もあり、それを強いる程にソマリア沖の状況は問題を抱えていることだけは事実として動かない事は確かである。

HARUNA

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