北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

米予算均衡法発動、国防大打撃!1兆2000億ドルの強制歳出大幅削減実施へ

2013-03-02 22:21:55 | 国際・政治

◆米連邦議会とオバマ大統領合意至らず

 アメリカ最大のリスクであった財政管理法に基づく財政赤字対策歳出強制削減政策が、回避へのオバマ大統領と議会の妥協案が実現せず、歳出の最規模削減へと進むこととなりました。

Gimg_8935 これは米財政赤字において国の借金である国債発行に上限を造ることで一定以上の財政赤字による国庫破綻を防ぐ制度ですが、オバマ政権は民主党政権の共和党時代のような歳出削減を念頭に安い政府やちいさな政府を求める政策ではなく、歳出を大きくし経済の活性化に積極的に国が関与しようとする政策の結果、国債発行の上限に達してしまった、ということです。しかし、単なる努力目標ではなく、明確な歳出削減が明示されているため、影響は小さくはありません。

Gimg_3063 2013会計年度からは850億ドルの歳出削減が行われます。連邦予算の一割削減に当たるこの削減で国防費では460億ドルが削減され、削減額は日本の防衛費に匹敵するものです。このため国防総省は文民職員80万に無給の週休を一日増やし人件費を削減すると共に、陸軍はアフガニスタン派遣部隊を除く8割の部隊で訓練の縮小を決定、海軍では海外派遣艦艇の縮小を実施し空母航空団四個の段階的な活動停止を、空軍は訓練の大幅縮小を、それぞれ念頭に縮小を行います。

Img_2861 この緊縮予算は2021年までの期間に1兆2000億ドルの歳出削減を行う事となっており、必要な改善策で米国内合意が図られない場合には、実に9年間に渡り緊縮予算が続けられることとなります。必要な改善策とは、オバマ政権が見合わせている富裕層への課税強化など増税による歳出増加を行うことで、併せて共和党が求める社会保障についての本来のアメリカ、市場原理への回帰の要求に応じる必要があります。オバマ大統領は、緊縮財政が支持率にも影響しますが、税率も支持率に影響し、難しい決断を強いられることとなるでしょう。

Aimg_8552 国防費の緊縮は世界の安定にも大きな影響を与えます。陸軍のアフガニスタン派遣部隊を除く訓練費の削減は同盟国との訓練の鈍化を通じてアメリカの世界秩序を守る立場にも影響がありますし、海軍空母航空団の段階的縮小は、緊急時の第一手となる空母機動部隊の作戦能力を削いでしまうことも意味します。加えて、航空自衛隊が導入を計画しているF-35戦闘機の開発費も一部見送られるか延期されることとなり、そういう意味でも我が国への安全保障上の影響はかなり大きい。

Gimg_2674 こうした緊縮財政に伴う国防費の急激な縮減は、2009年のイギリス国防費削減などが影響として大きく、あの際にはタイフーン戦闘機一部廃止と段階近代化改修予算捻出延期、F-35戦闘機調達計画の縮小、新空母クイーンエリザベス級建造の半減、空軍飛行隊複数の廃止、空軍基地の整理縮小、陸軍戦車の全廃検討、将来装甲車計画の中断など、かなりの影響があり、一方でアフガニスタン派遣費用は縮小出来ないことから、アフガニスタン予算偏重の、極めて歪な予算体制となってしまいました。

Simg_2549 アメリカの国防費の緊縮がどの程度長期化するのか、我が国周辺情勢への短期的及び長期的な影響はどういったものが考えられるのか、日本としても考えなければなりません。こういいますのも、日本の防衛費はGDP比率で0.7%から0.8%とアメリカを含めた先進国の中では大きくはなく、一方で周辺に緊張地域があることから、相応の負担を求められる、任される、要求される、等などの可能性があるためです。太平洋を越えた対岸の火事ではありますが、日本海と東シナ海を越えた対岸の大火災を誘発する危険性がある、こうした認識が必要でしょう。

北大路機関:はるな

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コメント (9)
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