◆機動力と打撃力を併せた機械化部隊
第三回を迎えた詳報福岡駐屯地祭第四師団・創設記念行事は、いよいよ観閲行進へと行事が進みます。
観閲行進の先頭は観閲部隊指揮官を務める第四師団副師団長福田築陸将補です。師団幕僚の乗車車両と共にゆっくりと観閲第正面へ行進し、観閲台にて観閲する師団長武内誠一陸将に対し敬礼、師団長も答礼で返します。こうして機械化部隊となった第四師団の観閲行進がいよいよはじまりました。
82式指揮通信車、師団司令部は副師団長、幕僚長、幕僚幹事、人事担当の第一部長、情報担当の第二部長、運用担当の第三部長、補給担当の第四部長を以て編制され、支援する部隊として司令部付隊が本部、車両小隊、管理小隊、司令部勤務班が充てられています。
徒歩行進で続くのは自衛隊候補生、所謂新隊員です。自衛官候補生は共通教育として前期課程を修め、その後に能力と適性に応じて職種を決定し、部隊において専門教育を行う後期課程を経て第一線部隊の隊員となります。こうして更新している彼らも今では各部隊に配属され、活躍していることでしょう。
第四偵察隊の観閲行進、福岡駐屯地祭では徒歩行進は異常の通りで早速車両行進となります。機甲科の偵察隊は師団に先んじ、情報収集を行う部隊で陸上自衛隊では創設当初から機械化されていました。偵察小隊三個と電子偵察小隊を基幹としています。車両化部隊の威容をご覧ください。
87式偵察警戒車は、偵察部隊の装甲装備で25mm機関砲を搭載し威力偵察に当たると共に、微光増倍暗視装置による監視や、必要に応じて地上レーダ装置を砲塔へ搭載します。また、斥候員が乗車しており、降車し斥候を行うと共に暗視装置などによる監視支援も行うことが出来ます。今日的には監視機材がやや不十分で、火力も十分とは言い難いですが、積極的な偵察には必要な装備です。
理想としては威力偵察を行うべく、105mm砲搭載の機動戦闘車が欲しいところで、もしくは装甲戦闘車を大隊規模で運用する海兵隊の軽装甲偵察大隊のような一定の規模の部隊が必要、と思う一方、第一線での敵との接触は警備管区の連隊にあるのだから、この種の装備を普通科連隊の情報小隊に配備する必要もあるのかな、と思ったりもします。
第16普通科連隊長濱本博文1佐が敬礼します。第16普通科連隊は長崎県の大村駐屯地に駐屯し、連隊は本部管理中隊、四個普通科中隊、重迫撃砲中隊から編制されています。普通科連隊は独自の警備管区を有し、防衛任務や近年は特に災害に際し、第一に対処する基盤的防衛力を担っています。
第16普通科連隊の高機動車、陸上自衛隊には既に3000両以上が配備されている高機動車はトヨタ自動車が普通科部隊の機動と重迫撃砲の牽引用に開発したもので、水冷ディーゼルエンジンを採用し、米軍のハンヴィーなどと比べ加速力が良好であることが知られており、一台でも多く必要といわれる信頼性の高さ。
本車は全ての普通科連隊に配備され、小銃手に分隊機銃や対戦車火器を装備した一個小銃班の機動に活躍します。車体ロールバーには機関銃が配置可能で、路外機動力も一定水準あり、こんな悪路を進めるのか、と乗ってみますとかなり感心させられるもの。
軽装甲機動車、第四師団の普通科連隊について、一部中隊にはこの軽装甲機動車が配備されています。自衛隊自慢の小型装甲車で、日本の狭い道路が網の目の如く広がる市街地において分散運用に威力を発揮しますし、野戦での機動力も高いが、少々重心が上にあるため、これだけは注意が必要とのこと。
重迫撃砲中隊の120mm重迫撃砲RT、以前配備されていた107mm重迫撃砲を置き換えるフランス製の迫撃砲で射程が大きく、従来の普通科連隊を直掩火力として支援した特科連隊の105mmの任務を担う事も出来る装備です。ちなみに、これを牽引時の高機動車は迫撃砲の備品扱いになるのだとか。
第19普通科連隊長井手正1佐、第19普通科連隊は師団司令部の置かれる福岡駐屯地に駐屯しており、部隊は即応予備自衛官を基幹として編成されるコア化部隊です。連隊の編成は、16連隊と同じく、本部管理中隊、四個普通科中隊、重迫撃砲中隊という編制になっています。
コア化部隊となっていますが、軽装甲機動車を多数装備しています。01式軽対戦車誘導弾を装備していますが、軽装甲機動車の機動力を活かし、敵砲兵火力からの生存を図りつつ、対戦車ミサイルの機動運用を行う車両と、機関銃搭載車両が協同するというのが本車の運用です。
第二中隊にも軽装甲機動車が装備されていました。軽装甲機動車は上記のような木目細やかな普通科部隊の分散運用を期して装備されているのですが、一個班を二両に分散し火力構成を分散し制圧面積を増やせる半面、操縦手が二名必要となり、降車戦闘要員が少なくなるため、降車戦闘時は車両を放置して展開する、とのこと。
第19普通科連隊の高機動車をアップにしてみますと、鉄帽がマミをと共に耳のあたりの形状が特徴的な66式で、現用の88式鉄帽と形状が異なるのに気付きます、また、腕章には即応予備自衛官を示すものがあり、MINIMIを構えているこの隊員は即応予備自衛官であることが分かる。
重迫撃砲中隊、ちなみに、重迫撃砲は砲兵による優先制圧目標となってしまうため、この重迫撃砲中隊も装甲化する必要はないのか、と思うところ。不整地突破能力は間合いをいて運用する迫撃砲の特性上大きくないので、中型程度の装甲車で牽引、機動運用してもよいのではないかな、と。
120mm重迫撃砲は通常弾で最大射程8100m、射程延伸弾で13000mとのことで、フランス軍では四輪駆動のVAB装甲車できどうしています、軽装甲機動車では弾薬搭載量などの面で小さいため、軽装甲機動車をエンジン配置を改めキャブオーバー型とした重迫装甲牽引車、などあってもいいやも。
第40普通科連隊長中村祐亮1佐の敬礼、連隊は福岡県北九州市の小倉に駐屯しています。編成は本部管理中隊、四個普通科中隊、重迫撃砲中隊というもの。一部師団ではこの編制に加えて対戦車中隊が配置され、79式対舟艇対戦車誘導弾が配備されます。
一方、第4師団の普通科連隊はその中隊に対戦車火力として射程2000mの87式対戦車誘導弾を対戦車小隊に配備し、射程1600mの01式軽対戦車誘導弾を第一線の小銃班に配備しています、あたかも米海兵隊のジャベリンとプレデターミサイルを思い起こさせるものですが、将来的に対戦車小隊へは射程の大きい中距離多目的誘導弾が配備されてゆくことでしょう。
第41普通科連隊長岡本良樹1佐、大分県の別府駐屯地に駐屯する普通科連隊で、本部管理中隊、四個普通科中隊、重迫撃砲中隊が基幹部隊としています。基本的に普通科連隊の編成は同一で、軽装甲機動車については管理替えなどで柔軟に運用されている模様ですね。
なお、福岡駐屯地祭では各普通科連隊が隷下の普通科中隊から一両二両と抽出して式典に参加しています、中部方面隊の行事ですと中隊ごとに、高機動車の中隊を行進させる連隊、軽装甲機動車を行進させる連隊、対戦車中隊を出す連隊に重迫撃砲中隊を出してくる連隊、と車両を単一で多数そろえてくるところ。
同一車両が多数固まっている方が観閲行進としては見応えがあるのですが、何故か毎年同じ中隊ばかりとなってしまうこともありますので、この西部方面隊方式、と表現してみるべきでしょうか、東部方面隊も第12旅団がそうでしたが、一つの方式なのかもしれません。
対馬警備隊長谷村博志1佐、対馬警備隊は陸上自衛隊で唯一の警備隊となっており、離島である対馬の防衛警備に当たる部隊です。対馬警備隊は本部管理中隊と一個普通科中隊を以て編成しており、本部管理中隊を置いているのは自己完結能力を高くする運用上の想定の下で実施された、とのこと。
対馬警備隊は有事の際には西部方面隊から空中機動や佐世保地方隊の輸送支援を受け中隊を増強するため、対馬警備隊そのものに普通科連隊並みの指揮通信能力を付与する、という目的があるそうです。一個中隊と十分な指揮通信能力に支援能力、これこそ離島防衛の在るべき姿でしょう。
しかし、対馬警備隊は自衛隊でも有数の精鋭部隊と呼ばれており、この背景に多くのレンジャー資格保持者を揃えていると共に、島民との一体というほどの厚い信頼関係で結ばれ、島内での国有地や場合によっては民有地でも演習や訓練が行えるところにあり、軍隊の強さとは住民の支持と理解と支援にほかならない、ということ。
第四対舟艇対戦車隊、第四師団ならではの独自の部隊です。玖珠駐屯地に駐屯する師団直轄対戦車部隊です。装備しているのは96式多目的誘導弾で、射程10km以上の視程外戦闘を行う戦術ミサイルシステムです。システムは情報処理装置と射撃指揮装置に発射装置と地上誘導装置に観測器材と装填装置で一個分隊を組み、二個分隊で一個小隊を編成します。
最大射程が気になるところですが、一つの手がかりがあります、派米演習に本装備がおくられた背景として、国内最大の矢臼別演習場では最大射程で運用した場合に弾着地から数km以内に国道があるといわれるため射撃訓練に制限がある為、と言われていました。
矢臼別はFH-70であれば19km射撃が可能となっていますので逆算すれば15km程度の射程がある、と言えるでしょう。ただ、演習場は射場がわけられており、特科火砲の射撃区域にて多目的誘導弾の運用を行うのか、一方視程外誘導は一種の間接照準射撃なのであり得るのではないか、など、演習場の区域は分かりにくいものがあるのですけれども。
多目的誘導弾は光ファイバー赤外線画像誘導方式を採用しており、後方の安全な掩砲所からミサイルを投射可能ということになります。弾頭重量は60kg、命中すれば上陸用舟艇は勿論、潜水艦やフリゲイトも無事ではすみません。対舟艇対戦車隊は四個小隊基幹で8セットが装備されている。
96式多目的誘導弾の射程を仮に射程15kmとした場合、僅か一個分隊で700k㎡をその火力制圧圏内に置くことが出来ます。これは京都市の面積が827.9k㎡ですので、旧京北町を除くほぼ全域において侵攻する戦車や鴨川を遡上する上陸用舟艇(オイ)などを精密誘導により撃破できるという、かなり恐るべき装備です。しかし、取得費用が大きく、二個師団と一個旅団に一個方面直轄部隊にしか回らなかったのは残念なところ。こうして普通科部隊の観閲行進は完了し、観閲行進は次へ続きます。
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