◆中国国防省としては否定の立場
今年1月30日に発生した護衛艦ゆうだち、に対する中国艦の射撃レーダー使用事案ですが、一部で認める発言があったようです。
中国海軍の将官級幹部複数がこれまで曖昧としてきた中国当局の発言の中で実施を認める発言がありました。これは共同通信が行った取材により判明したもので、射撃管制レーダーの使用は現場指揮官である艦長の独断であり、中国の立場として領海侵犯と領空侵犯以上の緊張を高めるものではなかった、との発言でした。
今回の事案は、公海上を航行中の海上自衛隊護衛艦ゆうだち、に対し、中国海軍の江衛Ⅱ型フリゲイト連雲港が近距離から射撃動作の一環である射撃管制レーダを使用し護衛艦を照準、護衛艦が回避行動を行い、これが武力行使であるとして日本政府が厳重抗議したものです。
これに対し、中国外交当局は当初事案を把握しておらず、その後、射撃管制レーダ使用は日常的行動である、もしくは、日本側も捜索レーダを使用している等の反論があったのち、中国国防当局としては明確に日本側のねつ造であるとの意見を主張してきましたが、今回、将官級の複数幹部から実施を認める発言を引き出しました。
これは、対外的に大きな意味があり、米軍当局者と米国務省、更にホワイトハウス報道官が日本側の主張が証拠と照らし合わせ理にかなっている支持が表明、ロシア側も中国問題専門家が2000年の中国空軍Su-27による台湾空軍ミラージュ2000戦闘機への射撃管制レーダ使用などの事例と共に実施の可能性が濃厚であるとの意見など、包囲網が狭まり、認めさせた、という意味で我が国の外交面での大きな勝利と言えるでしょう。
射撃管制レーダは、通常目標の位置を把握し行動を監視する捜索レーダや周辺船舶の位置を航行上の必要から把握する対水上レーダと異なり、先頭動作の一環として使用するものであり、平時には使用することは敵対行為そのもの、もしくは我に戦闘開始の意図有り、という意思表明以外何物でもありません。
今回報じられた、第一線指揮官の独断行為、との主張は、事実であれば非常に近代軍事機構として指揮系統や指揮官の水準が稚拙であることを意味します。ただ、中国政府は共同通信の報道に対し、国防省の立場としてねつ造であるとの発表を行いました。
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)