北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

防衛省、本日新哨戒機P-1の開発完了を発表、厚木航空基地へ部隊配備も発表

2013-03-12 23:42:46 | 先端軍事テクノロジー

◆平成13年度より開発計画を推進

 防衛省によれば、本日までに新哨戒機P-1の開発が完了したとのことです。国産の子の新しい航空機は年度内に厚木基地へ配備されます。

Pimg_7813 P-1哨戒機は、対潜哨戒や洋上哨戒に情報伝送といった任務に当たる現有のP-3C哨戒機を置き換える次期哨戒機P-X計画として2001年より開発を開始し、主契約企業として川崎重工が機体製造を担当、主なものでエンジンを石川島播磨重工が、胴体中央から後部を三菱重工が、レーダ装置を東芝が、主翼と垂直尾翼を富士重工が、情報処理装置を日本電気が、脚部を住友精密工業が、それぞれ担当し、日本国内の防衛産業及び航空産業が結集してオールジャパン体制にて開発に当たり、2007年に試作初号機が初飛行を達成しています。

Pimg_7274 このP-X計画は、同時に航空自衛隊の旧式化したC-1輸送機を置き換える新輸送機C-Xと同時開発し、可能な限りの部品を共通化することで開発費と製造費用を抑える野心的な試みとともに進められました。全く仕様も形状も要求性能も異なる機体ですが、重量の25%と部品品目で75%の共通化が図られ、特に風防や主翼外翼に水平尾翼、フライバイライト飛行制御装置、慣性航法システム、補助動力装置などは同一のものが採用されており、これにより数百億円の開発予算縮減に成功したようです。

Pimg_9978 厚木航空基地へは今年度中に2機が配備されることとなっていて、2008年度予算で4機分が、2010年度予算で1機分が、2011年度予算で3機分がそれぞれ計上され、数年内に一個航空隊所要が調達されることとなるでしょう。しかし、開発中にアメリカ製P-8A哨戒機の導入案が台頭、併せてアメリカ製リベットの強度不足や機体の強度不足が判明するなど、幾度か険しい道のりがありましたが、旅客機を無理に改造したP-8A哨戒機が対潜哨戒機としての能力を充分有さない現状を見ますと、国産が正解でした。

Pimg_28160 P-1哨戒機は、世界初のフライバイライト飛行制御実用航空機ですが、加えて現用のP-3C哨戒機、現時点で世界最高性能の対潜哨戒機であるP-3Cと比較した場合、戦闘行動半径や巡航高度、速度等の面で優れており、例えば那覇航空基地を拠点とした場合、インドネシア周辺海域までをその哨戒圏内に含めることが出来ます。国産AESAレーダーHPS-106を搭載するほか、アメリカと共同研究を行った対潜用電子機器によりP-8Aとの情報連携が可能、統合戦術通信システムにより水上戦闘艦や航空機と情報連携が可能です。

Pimg_2046 2013年に完成したP-1哨戒機ですが、1973年のヘリコプター搭載護衛艦はるな就役に伴う艦隊航空運用の再建、1993年のイージス艦こんごう就役に伴う艦隊防空体制の抜本的向上と、海上自衛隊史に並び記録される大きな出来事で、特に世界の哨戒機が大西洋正面等において対潜脅威の減退に伴い、洋上哨戒能力と情報優位に重点を置く中、隣国の潜水艦戦力近代化と増強により逆に潜水艦脅威が増大している太平洋正面において、日本は独自の対潜重視の装備体系を構築する必要に迫られたという事情が開発背景にありました。

Pimg_6332 他方、必要性に迫られての開発ではありますが、対潜哨戒においては、今世紀において本格的な対潜戦闘が展開される最も可能性が高い海域が太平洋となっていますので、この潜水艦脅威に対応するという恐らく世界で最も厳しい要求水準が求められ、海上自衛隊が創設以来、アメリカ海軍の供与航空機とそのライセンス生産や独自改良と共に、太平洋での対潜哨戒の実任務と潜水艦を目標として蓄積された多くの情報等に基づき、一応性能面では最高性能と出来たことは評価されるべきでしょう。

Pimg_0124 P-1哨戒機の開発完了に対し、P-8Aはボーイング737旅客機を母体としたことで、高高度定速巡航を行う旅客機と、対潜捜索を行う哨戒機の運用が乖離しすぎており、加えて頻繁な高度変更や低空捜索能力にも難があるため、低空捜索を別の無人機により担当し、P-8Aは高高度から官制を行うという難解な運用方式となっています。この為、調達費用は現時点でP-1哨戒機の倍程度、無人機の調達費などを含めればより大きくなり、米海軍でも108機を調達する方針に留めています。対して、P-1は70機程度の調達が見込まれ、我が国周辺の航路安全と海洋の自由を維持する重要な航空機として活躍することでしょう。関係者の皆様、お疲れ様でした。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする