◆ベルギーFNC,イスラエルタボール,フランスFAMAS
新春恒例エアソフトガン特集、御正月企画特集の〆を飾り、毎年正月連載を続け第四回目の今回も昨年に導入したエアソフトガンの紹介をいたしましょう。
イスラエル国防軍のタボールTAR-21小銃、21世紀の市街地戦闘と大規模戦闘を念頭に開発された小銃をS&T社がエアソフトガン化したもの。フランス軍のFAMAS小銃、曲床銃と短機関銃を一手に交代させた小銃を東京マルイがエアソフトガン化したもの。ベルギー軍FNC小銃、SS-109規格弾薬を用いつつ堅牢で手堅い設計の小銃をG&P社がエアソフトガン化したもの。
2013年に導入したのはこの3丁です。小銃ばかりで短機関銃も拳銃もありませんが、驚いたのは海外製のS&T社製が非常に安く国産ハンドガンよりも三割ほど安価であったこと、G&P社製が法律の範囲内で金属を多用し非常に重厚な質感を再現していること。
2013年に購入した装備品ですが、初めてブルパップ式小銃、即ち小銃を携帯性に配慮し短縮を実現するべく機関部を後部に配置した設計様式の小銃を導入しました。携帯性は高いものの弾倉交換の迅速性等の違和感が馴染めず、これまでエアソフトガンでも触れた事しかありませんでしたが、今回、初めて導入しました。
FNC小銃、ベルギー軍が1976年に制式化した小銃ですが、これを陸上自衛隊が1989年に制式化した89式小銃と並べてみました。何故かFNCと89式小銃は似ていると評されるのですが、並べてみますと共通点は、勿論小銃ですのでありますが、大半の違いにも気付く。
FNCと89式小銃の類似性は、この銃身周辺部の放熱口配置、それにハンドガード部分の配置、でしょうか。銃身の冷却を考慮しつつ射撃姿勢時への配慮の結果の形状、細部は二脚の有無や銃口部分の消炎制退器形状などは全く違うのですが、全体的な雰囲気を見てみれば、確かに似ている。
槓桿の配置も共通ではありますが、この部分は反対側に配置するわけにもいかず、この配置は致し方ありません。安全装置の配置ですが、89式小銃は賛否両論あるのですけれども、右手で引き金近くの用心金に人差し指を保持させつつ親指で操作すれば安全装置を即応で解除し射撃は可能です。
FNC小銃と言いますと、カービンモデルがアルパチーノとロバートデニーロの共演映画、HEATの劇中、強盗団と市警の大迫力の市街戦において使われていたもので、折畳式銃床を活かして覆面パトカー内で装填、セミオートで射撃する様子が印象的で、鑑賞当時当方は中学二年生、M-16系統とは違う形状と隠れていないと当たるという当然の描写を衝撃的に描き、物凄い印象を受けました。
FNCは金属部品が多用されており、実のところ非常に高価だったのですが、丈夫でして、実はこれまで万一自宅、北大路機関本部が襲撃された際には木刀やゴルフクラブでの自衛を考えていたのですが、此処まで頑丈ならばFNCの台尻で思い切り対抗したほうが強盗位何とかなるのでは、と思ったほど。
堅牢で精密、とは実銃のFNCに当てはまるものでして、ベルギー製の30口径小銃FNFALの後継装備として22口径小銃FNCALが開発されたものの軽量過ぎて試作銃が破損事故を発生させ開発中止、その反省から堅牢性を重視し設計されていますが、このため現用小銃としては4.05kgと比較的重いものとなりました。
驚かされたのは当初頑丈さだったのですが、なんと小銃擲弾用照準器が再現されていたことでしょうか、89式小銃と同じように銃口装填式小銃擲弾を投射するFNCですが、この部分が再現されているとは、最大限エアソフトガンであっても実銃の形状に忠実であろう、という企業努力です。
更にガスレギュレータ変換バルブも再現、これはFNCが現用の従来22口径弾よりも威力を増大させたSS-109規格5.56mmNATO弾使用を念頭に置いた最初の小銃であると共に、万一有事の際にSS-109規格の弾薬が入手できなかった場合に備え従来型のM-173規格5.56mm弾を使用できるようにしたもの、64式小銃の規制子と同じもので、此処まで再現されていると、もはや教材のよう。
FNC,この名称を聞くと近年では人気コミック“うぽって”のヒロイン、ふんこちゃんを髣髴させる方が多いかもしれませんが、まあ、それはさておき、G&P社製FNCは試料とを比較する限りでは非常に正確に実銃を再現しています、シアシ、難点は、重さが実銃と同じで、その、なんというか、重い。
IMI/IWIタボールTAR-21小銃、2002年にイスラエル軍へ制式化された新小銃で、部隊配備は2006年より空挺部隊を筆頭に配備開始、既に南レバノン紛争において実戦投入されているほか、約20か国で特殊部隊や空挺・両用戦部隊へ採用されています。外見は近未来的そのもの。
比較対象は米軍のM-4A1カービン、M-4と比較してもタボールは短いことが一目瞭然です。ただ、双方を比較してみますと、M-4A1に対してタボールは機関部が大きく、実際手に取って構えてみますと意外に大きく、感じます。感じますが、室内で振り回すと全長は短いということに気づかされ、興味深い。
構えますともう一つ、握把が前に或るため非常にバランスの悪い印象はあるのですが、構えてみるとこちらも銃床長が確保されているため保持しやすい。なお、タボールは全長が短いブルパップ方式を採用しているため照準と照星の距離、つまり照準長が短く正確な照準は難しいですが、レイルシステムを配置しており照準器具の装着を前提としています。
タボールの中でも銃身を短縮したMTAR-21型、マイクロタボールを導入しましたので短さが際立っていますが、タボールとM-4A1で銃身長を比較しますと同程度であることが分かります。この短い様式は、イスラエル国防軍の伝統的な機甲部隊重視編制での装甲車への携行性を高める必要性がありました。
そして中東戦争型の正規軍同士の戦闘よりも違い地での治安作戦が増大していることから室内での携帯性を重視し、このブルパップ方式が採用された、とのこと。もちろん銃身長は確保してあるため、火薬の燃焼効率は確保され、射程は充分あります。そして機関部の長さ分は意外と保持した分の銃床長が大きい。
ただし、コンパクトで携帯性に優れる、とは言いましてもイスラエル軍は1956年に制式化した傑作短機関銃UZIと比較しますと、流石に大きいですね。そして銃床部分が大きいことから閉所からの射撃、例えば戦車や装甲車のハッチからの身を乗り出しての自衛戦闘には難があるやもしれません。
ただし、UZIとタボールですが、短機関銃であるUZIも銃床を伸ばしてみますと、あら不思議、なんとタボールとほとんど同じ長さになります。もっとも、このタボールは前述の通りマイクロタボール、短縮型なのですけれども、ね。そして、短縮状態で射撃が可能なUZIは装甲車両の乗員にとり有用な装備に他なりません。
UZIはチェコスロバキア製Vz-61短機関銃のL字型再装填機構と握把内部に弾倉を装填する小型化設計に影響を受けてイスラエルが開発した装備ですが、タボールは東欧出身技師が設計に加わった、とのことで、直接的な関係はありませんが、なにか中東欧へ親近感が涌いてくる。
射撃姿勢を取った際の保持の容易性は前述しましたが、このほかに二つ、グリップ形状が近接戦闘時にはフォアグリップの役目を果たし即座の射界転換に寄与するとともに、万一に転倒した際に小銃が脱落しないという非常な利点があります。そして弾倉着脱釦の位置がMP-5短機関銃のような位置にあり、非常に迅速に再装填が可能、構えやすく、狙いやすく、落としにくく、素早い。
エアソフトガンで図ることなどこの程度ですが、実銃の重量は2.8gと軽量で、エアソフトガンと同じように実銃はM-16系統と同じSTANAG弾倉を採用しているため、世界中で使いやすい、ということ。一見奇抜ですが、実力を備えた形状、という印象でした。
FAMAS,フランス軍が1979年に制式化した小銃で当時は画期的とされたブルパップ方式を採用し全長を短縮した小銃です。これは時代的な外見の曲床小銃であるMAS-49半自動小銃とMAT-49短機関銃を一種類の小銃で置き換えるべく半自動小銃と短機関銃の利点を統合した装備として開発されました。
FAMASとMASADAを並べてみました、全長の短さはさすが、と思うと共に開発時期が25年は違う小銃でありながら、並べてみますと未来的な形状で引けを取らない、という、あまり性能には大きな影響がありませんが、外見の新鮮さではなかなかの印象です。
FAMASは、フランス外人部隊に在籍していた毛利元貞氏の著書で絶賛されたものの、元自衛官で傭兵の高部正樹氏は元外人部隊兵の評判が芳しくなかったとされ、元武器科隊員かのうよしのり氏に誌上で照準性や交戦距離で実戦性を欠く小銃、と散々に評価されています。
FAMASの評価の違いについてですが、まず絶賛の背景には64式小銃が比較対象であり、同氏は89式小銃の原型であるAR-18を高く評価しており、この点に背景はあるのではないか、という事です。たいして、実戦性については後述しますが、交戦距離についてはMAT-49と比べれば格段に長いですし、MAS-49よりは近接戦闘に高い威力を発揮します。また、安全装置の形状と位置も賛否両論あるでしょうが、64式小銃の引っ張らなければならない安全装置よりは、と思う。
フランス軍は自動車化を重視しており、そこでAMX-10P装甲戦闘車や大量配備されているVAB装甲車にMAS-49を持ち込むには大きすぎますし、比較対象が違うのではないでしょうか。ただし、使ってみると確かにエアソフトガンとしてはこの形状が使いにくい、再装填は弾倉装填方向が限られ時間を要し安全装置の位置が悪く、切り替えの特性は悪い。
慣れを要するものなのか、また実銃ではなくエアソフトガンですので、言いきれないのは樹脂を軽量化のために多用しているため堅牢さは充分であるのか、大きさも中途半端であり、FAMASとMAS-49&MAT-49の間にもう一種類挟んで開発すれば、洗練された小銃となったのではないか、と。
MP-7,ダットサイトのマウントを新型にしました。そこでUZIと比較、UZIはドイツ連邦軍へMP-2短機関銃として制式採用されています。実はMP-7の開発に際し、連邦軍は既存装備との共通性向上によりH&K社へ互換性強化を要求しています。こうしてみますと弾倉配置はMP-7とUZI/MP-2と共通、引き金や着脱装置はUSP/P-8拳銃と共通です。
こうして比較してみますと、単に客観的に装備を比較するのではなく、運用環境と配備部隊の既存装備との比較も併せて行わなければ、正確に比較する事さえ難しいのだな、と思いつつ、昨年導入のエアソフトガンを眺め、FNCは重厚で高級感、タボールは使いやすい形状、FAMASは成程わかったわ、という感想を抱きました次第です。
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