◆一機1億1000万ドル15機、インド海軍配備へ
ロイター通信によれば日印で交渉が続いていた救難飛行艇US-2が輸出でほぼ合意に至った、とのことです。報道によれば15機が輸出されるとのことで、巨大な防衛装備輸出契約となりました。
US-2は昨年、太平洋上に沖合1200kmへ風速19mと波高4mという極めて厳しい環境下で救難任務を達成し、改めてその能力の高さを示しましたが、国産飛行艇開発は第二次大戦中の二式大型飛行艇依然と戦後のPS-1対潜飛行艇やUS-1/US-1A救難飛行艇と能力を積み重ねており、救難飛行艇としては世界最高の離着水能力と行動半径を有しています。
その能力から以前より各国の注目を集めていましたが、一機1億ドル以上というF-35戦闘機に匹敵する高い取得費用から実現しませんでした。ただ、インド海軍はインド洋を任務海域とする海洋法執行活動や警備救難任務にその必要性を長く認識しており、今回、この高価な救難飛行艇の導入を決意することとなりました。
インド海軍のUS-2救難飛行艇導入計画は、現段階で少なくとも15機の導入を計画しています。一機1億1000万ドル相当であり、15機で16億ドルに達する巨大契約となり、今後インド国内での維持部品や機体一部の生産とインド海軍仕様への改修に関する協議が行われます。
インド海軍はTu-95哨戒機の後継機としてアメリカ製P-8A多目的哨戒機の対潜強化仕様を導入することとしており、US-2はこの行動半径における緊急時に備える運用も行われ、特に遂に就役と引渡成った中古改修空母ヴィクラマディーチャや国産空母ヴィクラント建造など旧式化した航空母艦の更新というように海軍力を強化しており、インド洋海洋安全保障への積極的な関与の意志が見えるようです。
我が国としては初の防衛省機の輸出となります。過去にはV-107ヘリコプターをライセンス生産していた川崎重工がバートル社で生産終了後にスウェーデン海軍やサウジアラビア政府の要望に応じ輸出した事例や、三菱重工製F-104戦闘機が退役した際に米軍事援助費用相当の機数分をアメリカに移管し、これが台湾に譲渡されたことがありますが、例外的な事例でした。
今回のUS-2輸出は、文字通り完成機で防衛省用に開発された航空機が初めて輸出されたことになります。我が国としては武器輸出三原則の拡大運用を続け、結果輸出を拒否することで費用面で増大する単価を防衛費の増額で補う武器輸出三原則堅持の姿勢が、防衛費よりも他の支出が大きくなり、一種平和主義の一手段とされていた武器輸出三原則拡大運用が維持できなくなりました。
防衛装備品の輸出、最初が16億ドルの契約とは大きなことです、正直驚きました。他方で、日本側の展開は、過剰な平和主義よりも福祉が重視された、というところでしょうか。ただ、これは民主国家として、福祉重視の声を無視できないことも事実であり、合理的です。今後の我が国防衛産業の展開を見てゆきましょう。
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