◆和平でなく停戦、内戦勃発の危惧を回避成るか
自衛隊が活動中の南スーダンは昨年末より元副大統領派の反乱軍が行動を開始、内戦の危惧がありましたが、停戦が合意されました。
南スーダンはスーダンより独立を果たし、その新国家建設へ国連平和維持部隊が部隊を派遣していますが、内戦を経て独立を果たした南スーダンには油田があり、スーダンとの国境の緊張を孕むと共に民族分布が必ずしも境界線と合致せず、もとより内戦や国境紛争の危険性が懸念されています。
この根年賀現実となったのが昨年末からの反乱事案で北部二州の正規軍が反乱軍へ転向し、大規模な内戦になる危惧があり、北部ではPKO部隊が攻撃を受け戦死者が出ると共に韓国隊が包囲され孤立、政府は特例として自衛隊の備蓄弾薬を緊急提供するという一幕もありました。
この状況に対し、西アフリカ共同体などが軍事介入の姿勢を見せ、国連もPKO部隊派遣各国へ増援を養成しており、この中で自衛隊へ空輸支援の要請がありましたが、残念ながら現行法の限界により輸送支援をできなかった、という実情もありました。同時に中央アフリカでの内戦の危惧もあり各国が部隊を派遣しています。
南スーダンへは周辺国が政府間開発協力機構GADが停戦へ仲介を行い、特に以下の点で合意に至っています。非戦闘員への攻撃中止、人道援助物資の供給妨害中止、以上の点で、更に双方の勢力の軍事行動の停止を一両日中に実施する、というものです。
これは双方の勢力がエチオピアの首都アジスアベバにおいて実施された停戦交渉において合意されたもので、部隊の公道に部隊の移動や勢力拡大は禁止事項に含まれていることから、これは事実上の双方の戦闘停止に当たります。そして現時点では違反の報告が無いため、沈静化に向かった、と考えて間違いなさそうです。
ただ、戦闘停止の状態であり、双方の武装した部隊は展開したままである事に加え、部隊の移動を禁じているため、反乱軍の武装解除を行うのか当該地域の確保を求めるのか、武装解除を行うとすればその主体は国連か南スーダン国軍か、この点が明確ではありません。
今回、自衛隊のPKO派遣部隊は、万一を想定した十分な物資を蓄積し、安全な首都ジュバを活動地域としていたため、おおきな影響はありませんでしたが、今回の騒乱を受け人道支援活動を一時中止しています、これが今回の停戦を受け再開されるに至っています。
停戦合意で重要なのは戦闘を停止しただけであり、反乱部隊となった元副大統領派は拘束されている関係者の釈放を求めており、政府軍は反乱軍の責任者へ騒乱による死傷者の発生に対する責任を求めているため、実のところ停戦であっても和平ではない、という実情を無視してはならないでしょう。
仮に、反乱軍の武装解除などの面でPKO部隊が矢面に立つ可能性が出れば、平和執行任務に転換し、大きな戦闘の主体にPKO部隊が立たされる可能性があります。我が国としては、現在の後方支援と民生支援を主体とし、戦闘支援や治安任務を度外視している態勢を維持することが難しくなるため、戦闘部隊の派遣について、厳しい法的判断を行わなければならなくなるのかもしれません。
北大路機関:はるな
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