北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

榛名防衛備忘録:五個方面隊へ方面空中機動混成団新編は大きな抑止力となり得るだろう

2014-01-22 23:43:34 | 防衛・安全保障

◆奇襲対処能力強化自体がその脅威を減退させる
 ここまで二日間に渡り、方面空中機動混成団の提案について掲載してまいりました。
Img_09_84 普通科連隊と対舟艇対戦車隊を方面航空隊と統合運用し、空中機動による迅速な機動展開を行う。札幌の丘珠、仙台の霞目、東京の立川、大阪の八尾、熊本の健軍、以上に司令部を置く実質五個の空中機動旅団は、我が国の防衛力にこれまでにない大きな機動力を付与することとなります。航空機の即応稼働率は一定以上とする事は出来ませんが、多用途ヘリコプター20機を有する東北方面航空隊は東日本大震災において文字通り緊急の状況においても8機を即応対処させ情報収集に当たりました。
Img_1716a これは常設普通科連隊と航空隊を運用することで、この割合が維持されれば完全な奇襲を受けた場合であっても携帯対戦車兵器と機関銃を含む二個小隊を8機の多用途ヘリコプターで起動させ、護衛と火力支援に6機の対戦車ヘリコプターを点けることが出来る、というもの。我が国へ着上陸を企てる勢力に対しては、これほど邪魔な部隊は考えられません。日本列島は広大ですので、海洋を経て上陸する障壁そのものは大きいですが、それを越えて渡洋作戦を実施する勢力にはここまで準備出来た以上、我が国の防衛上の弱点を叩くことも可能です。しかし、その弱点が空中機動部隊によりすべて盤石な守りを固めるのですから。
Img_6986 方面空中機動混成団は、航空機編成で現状のまま移行する場合、AH-1S対戦車ヘリコプター16機、OH-6観測ヘリコプター10機、UH-1J多用途ヘリコプター20機、CH-47JA輸送ヘリコプター2機という編成です。現状のまま、輸送ヘリコプターは少々不足していますが、概ね機数では各国の空中機動旅団に匹敵するもの。理想としてはAH-64D戦闘ヘリコプター12機、OH-1観測ヘリコプター4機、EC-225多用途ヘリコプター16機、CH-47JA輸送ヘリコプター8機という編成でしょうか。EC-225多用途ヘリコプター16機に代えてAW-101多用途ヘリコプター12機かNH-90多用途ヘリコプターかS-92多用途ヘリコプター18機もあり得ると考えます。
Img_0008 財政面の問題が大きいことからの非現実的案としては、AH-64D戦闘ヘリコプター10機、MV-22可動翼機12機、UH-1Y多用途ヘリコプター4機、CH-47JA輸送ヘリコプター6機、というものがあってもいいでしょう。海兵遠征群MEUの航空支援部隊編制を参考にした編成で、戦闘ヘリコプターの数が米海兵隊でゃAH-1Z攻撃ヘリコプター4機に対して当方案では10機としていますが、これはAV-8攻撃機6機分の火力支援能力を含めたためのもので、仮に陸上自衛隊が中古のAV-8B攻撃機か限定的な攻撃力を有するMQ-9無人攻撃機を導入する場合、それにより代替されてもよいでしょう。
Img_1923 方面空中機動混成団は方面航空隊に常設普通科連隊を置いて機動力を高める、という視点ですが、この部分で問題として無視できないのは人員をいかに確保するか、という部分でしょう。他方で航空機に関しては、UH-X選定を如何に行うのか、AH-1S後継機を如何に調達するのか、という部分が課題となります。実のところ、この部分は財政的な面が大きな課題であり、特に防衛力に機動力をという政治の要求に対し、肝心の航空機の調達が政治的問題から遅々として進まない、という状況は喜劇的であり悲劇的です。このあたりは機動力重視の防衛大綱を放棄するか、航空機を調達するか、二者択一に他なりません。
Nimg_2367 空中機動混成団は独自の警備管区を持たないことが望ましい。これは災害や着上陸といった有事の際には留守部隊を残さず、そのまま全部隊が駐屯地を業務隊に委ね、出動する為です。従って、現在の師団や旅団に配置されている普通科連隊を改編する形で方面航空混成団に編入する、という方策はあってはなりません。こうした上で考えますと、現時点で警備管区という縛りから最大限自由度を持っている部隊、考えられるのは即応予備自衛官主体の方面混成団に所属する普通科連隊、そう考えます。
Fimg_6166 方面混成団隷下の普通科連隊、第19普通科連隊、第31普通科連隊、第47普通科連隊、第48普通科連隊、第52普通科連隊が現在置かれており、第24普通科連隊、第49普通科連隊が将来的に編成に組み込まれるとされています。この中で方面航空隊駐屯地に近い、ヘリコプター部隊に近い駐屯部隊を三個普通科中隊と本部管理中隊を基幹とする編成に戻し、編入することが考えられる最善の方法です。即応予備自衛官主体の編成では現役要員は二割程度とされますが、想定する三個中隊編制の普通科連隊は旅団普通科連隊編成であり、師団普通科連隊の半分強という規模ですので、実定員増強はある程度現実的な範囲内です。
Aimg_2875 北部方面隊には第52普通科連隊は唯一の方面混成団隷下部隊であるため抽出できず、第9普通科連隊を再編成し丘珠駐屯地へ配置。東北方面混成団より多賀城第38普通科連隊を現役基幹編成に改編し霞目駐屯地へ移駐。東部方面混成団より第31普通科連隊を現役基幹編成に改編し編入。中部方面混成団より海田市第47普通科連隊を抽出し現役基幹編成に改編した上で大久保駐屯地に移駐。西部方面混成団より福岡第19普通科連隊を現役基幹編成に改編し編入。こんなところでしょうか。
Img_6132 ヘリコプターは離陸から一時間で200kmを進出します、我が国が空挺強襲を受けたとしても空挺堡が確保され敵対空レーダ装置や地対空誘導弾などが稼動状態に展開する前に、最初の二個小隊を、展開させ、近傍駐屯地から管区普通科連隊が初動部隊を展開させるため、この初動部隊同士の共同により相手の機動展開を封じ込める事が可能です。更に敵部隊が着上陸や降下を開始して三時間以内に我が方は二個中隊と対戦車小隊が方面航空混成団の空中機動能力展開可能で、ここに第1ヘリコプター団の装備する32機のCH-47J/JA輸送ヘリコプターが第1空挺団の一個大隊基幹の戦闘部隊を展開、六時間以内に管区普通科連隊が装甲車を含む普通科中隊を展開させます。十二時間以内に火砲と戦車を以て連隊戦闘団が展開を開始しますので、相手の着上陸を失敗に追い込むことが可能です。
Timg_0372 島嶼部防衛では、もちろんヘリコプターの航続距離と進出速度にもよりますが、無人島への着上陸脅威が生じた場合でも、着上陸に至る前に一定の部隊を展開させ、相手に無血上陸ではなく着上陸には当然の高い代償を払う必要性を痛感させることとなり、軽武装部隊だけでの夜盗的な着上陸という選択肢はもはや通用しないことを痛感するでしょう。また、これは必然的に我が方に離島防衛の準備アリという事を強調するわけですので、仮想敵が渡洋作戦を準備する際には必然的にその物量や部隊集積がこれまで以上に大きくなり、つまり作戦準備が大袈裟になるため、逆にその兆候を我が方が感知することにもつながるでしょう。
Img_0099 方面空中機動混成団は、構想の着眼点こそ、今ある方面航空隊と、新編が続く方面対舟艇対戦車隊、更に既存の方面隊隷下の普通科連隊という、一つ一つの独立した部隊に普通科連隊を直轄部隊として配置することで大きな能力を発揮できる可能性を示してみました。文字通りスクラップアンドビルドであり、陸上自衛隊全体として新しいものを付与したわけではないのですけれども、運用方式を変えるだけで、空中機動旅団ならば五個編成できる、そんなことを考えてみました次第です。

北大路機関:はるな

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コメント (6)
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