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陸上防衛作戦部隊論(第三七回):装甲機動旅団編制案の概要 通信科部隊と装甲車及び無人機

2015-11-10 21:41:44 | 防衛・安全保障
■通信科部隊と装甲車及び無人機
 装甲機動旅団編制案の通信について搬送と伝送の面で前回は小型装甲車を多用する必要性を示しました。

 通信部隊は電波を発信する関係上必ず標定を受け、通信基盤への各種妨害、航空や砲迫攻撃は勿論電子戦により攻撃を受ける事となります、この為可能な限り小型化し、搬送装置を小型化、装甲車両により輸送すると共に必要であれば伝送装置中継器を小型無人車両に搭載し、装甲車両から管制する必要も生じるでしょう。

 その上で無人機による空中伝送能力構築は真剣に検討されるべきです、通信基盤の応急補正に用いる視点で、第一線付近においては活用を模索すべきです、もちろん前線航空統制調整所を構築し無人偵察機との航空管制が必要ですし、部隊集結など攻撃徴候を秘匿しなければならない状況下に無人機を暴露させることがあってはならないため、あくまで補完的要素となりますが、無人機空中通信伝送体系の構築は旅団通信大隊にとり必要です。特に航空機動旅団の様に航空機を通信伝送に使えない装甲機動旅団には必須です。

 さて、通信への需要は、10式戦車がC4I能力を付与し、90式戦車や74式戦車へも基幹連隊指揮統制システムへの加入により従来、特科情報装置のみが果たしていた部隊間情報連携が全ての部隊に普及する兆しがあり、遠からず個々人の近接戦闘要員へも広域多用途無線機の簡易版、個人用小型情報端末の普及も進むでしょうから、大容量の伝送線確保が急務となるでしょう。ニュートリノ素粒子のような透過性の高い素粒子を用いた通信などは潜水艦用に研究があるとのことですが、陸上車両用には実現しておらず、現在の技術延長線上で対応するとなりますと無人機と無人車両に装甲車となる。

 ただ、基地局受信感度を抜本的に向上させることで、送信体系の装備簡略化と共に基地局数の増大を圧縮する可能性があり、単純に通信量増大へ基地局の実の増大で対応する以外の選択肢は残ります、しかし必然的に増大する通信量に対応する基地局機能と通信端末の持続的近代化は瞬時でも怠れば民間通信応力との通信能力格差が表面化し、勿論脆弱性により我が国が本土で想定するような有事には対応できない為利用は制限されるのですが、第一線部隊からの懸念が寄せられることは否定できません。

 実は通信科部隊はその装備更新を丹念に行えば、単一種類の正面装備よりも遥かに多くの費用を必要とする分野でもあります、他方で情報優位が戦域優位に直結するとは、遥か昔からの鉄則であり、ナポレオン戦争時にウェリントン将軍が、生涯最も悩んだのは戦場の丘の向こうがどうなっているかであり勝機は丘の向こうを知る事であったがその手段がなかった、と回顧している点にすべてが表れているといえます。

 他方、通信部隊の広範な戦域通信網整備へ確たる常続的施策への共通理解が全自衛隊規模で共有できれば、例えば偵察機材や無人航空機等の制御と情報伝送等の装備体系の独立性への固執から自衛隊通信基盤依拠を前提とした装備簡略化等が実現でき、これは指揮官の状況認識基盤の向上、遠距離火力投射能力効率化による基数弾薬の有効利用による戦闘能力向上などにも寄与するといえましょう。

北大路機関:はるな くらま
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