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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

パリ同時多発テロ、伊勢志摩サミットと東京五輪を前に我が国テロ対策への視点

2015-11-17 23:40:54 | 国際・政治
■テロ対策 サミットと五輪
 パリ同時多発テロを受け伊勢志摩サミットと東京五輪を前に我が国のテロ対策は強化の方針が警察庁により示されました。

 ただし、近年のテロが重武装により実施される現状に鑑み、我が国法執行機関の準備体制を考える必要があるでしょう、例えば今回のパリ同時多発テロとともに今年一月のフランス新聞社襲撃事件ではAK-47突撃銃が使用されています、フランスは銃所持は可能ですがアメリカほどの武装への自由はありません、しかし軍用突撃銃が持ち込まれていた訳です。我が国でも九州と大阪で暴力団武器庫からRPG-26対戦車ロケットが押収されていますので、持ち込めない訳ではない実例を残しました。

この点で、例えば警察への現行の防爆警備車を補完する、一定以上の打撃を想定した装甲車両の特別車両機動隊や管区機動隊への配備が真剣に考えられるべきではないでしょうか、例えばアメリカではメキシコからの麻薬密輸組織との激しい抵抗に備えMRAPを中心に440両以上の装甲車両を装備しています。現行で警察へ装甲車両を拡充できないならば、街頭警備へ自衛隊の支援を受ける事は出来るのか、自衛隊法上の治安出動と防衛出動に至らない状況下での省庁間協力措置としての、海上警備行動命令の陸上版に当たる法整備を行う事は出来ないのかという視点も必要となります。

 一方で、制服警察官への重武装化という視点についてですが、こちらは不要と考えます、警察官は短銃を携行していますし、それよりは警察官職務執行法での拳銃使用要件緩和を受け、照準補助具やホルスターの向上に留意し、それ以上に個人用防護装備の強化と、FN303のような鎮圧銃とネットランチャーに代表される非致死性装備を強化し、即座に投射する事が出来る装備の拡充の方が課題として先でしょう。テロ対策として、今回のフランスでの同時多発テロを受け、短機関銃を携行する警察官やアメリカではカービン銃を携行する警察官の姿が報道映像に映りますが、制服警察官の職務と警備に当たる専門の警察官の違いに留意すべきです。しかし、その一方でわが国は、警察の警備能力を超える事案に対しても自衛隊の治安出動を行うまでの手続きは煩雑であり、事態発生の初期対応に即座に治安出動を掛ける事は現行法では難しく、初動で抑え込むだけの装備と能力が警察に求められる点は留意せねばなりません。

 しかし、機動隊銃器対策部隊については、相手がAK-47程度の装備を有し、立てこもりではなく射撃しつつ移動する、即ち市街地での近接戦闘を展開した場合に対応できる装備は必要と考えます、現在警察は特殊銃として2000丁以上のドイツ製H&K-MP-5Jを装備していますが、銃器対策部隊にはHK-416,M-4A1,89式小銃等を装備させる事で自動火器を携行し市街戦を展開するテロへの対処能力が求められます、この点で先ほど明示しました装甲車両の必要性ですが、テロリストの武装にRPGが含まれることがありますし、大型の手製爆弾から防護能力を有し、かつ執行能力を喪失しない車両が必要となるのです。もちろん、警視庁が空港警備用などに導入したF-7警備車を再生産し広範に配備するのであっても、かまいません。

 もう一つ、警察庁が重点支持したのがテロリストと武器の水際阻止で、空港と港湾からの入国等への対策です。ハイジャック防止のために重装備化が為され、関西国際空港などでは特型警備車なども稀に移動しているのを見かけますが、検査体制の強化と出入国管理機能を強化すると共に、万一の際には、空港と港湾を即座に閉鎖し入国阻止、そして後手の対応ではあっても抑止機能を期待する上で、事態発生後、逃亡阻止のための国境完全封鎖を、全空港と全港湾の閉鎖というかたちで実施する枠組みと法改正が必要でしょう。

 本論は、非常に強権的な施策を提示しましたが、伊勢志摩サミットと東京五輪が近づく中、世界から注目を集める行事は、暴力を手段として世界から注目を集めようと企図する集団へは標的となり得、これは我が国対外政策や防衛政策如何とは無関係に、世界から注目される行事、平和や繁栄の享受が目的であっても、標的となり得ます。また、テロ行動を世界規模で企図する集団にとり、国家と標的は、テロ支援国家という味方かその他の国か、として二元論で見た場合、我が国は後者に位置し標的となり得ます、その上で、攻撃する価値と攻撃する事で生じるリスクと実行の可否から標的を選定するという攻撃側の視点から見た場合、実行できない、若しくは実行しても成功しない国とテロ対策を行う必要があります。

北大路機関:はるな くらま
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