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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

航空防衛作戦部隊論(第二三回):航空防衛力、戦時輸送能力確保と平時運用

2015-11-21 22:42:29 | 日記
■戦時輸送能力確保と平時運用
戦時輸送能力確保と平時運用、輸送力を拡充するという命題についてどうしても避けて通れない問題について。

業務輸送と作戦輸送を区分、これにより戦術輸送機ではなく通常の貨物輸送機でも対応できる任務と戦術輸送機の任務の区分を明確化する事で、一機あたりの空輸能力が大きく、また運用面で無理をしない前提での維持費用を低減する航空機の数的充実、特にこの部分では中古の貨物輸送機等を取得し運用することで全体の空輸能力を強化する事が可能となるでしょう。

平時における輸送能力の余剰は勿論発生します、戦時と有事の後方支援基盤の厚さの乖離は非常に大きいもので、この戦時需要を予め充分余裕を以て正面装備に伍して基盤を平時から維持している軍事機構が米軍位で、この他の諸国は財務当局からの指摘などを踏まえ、どうしても正面装備重視となりがちです、しかし余剰輸送機の発生などについては、我が国では別の任務等も考えられます。

特に国際平和維持活動における輸送支援任務等、自衛隊が国際貢献任務に筆頭にあげながらも空輸記事の不足により数的には全体として僅かな規模しか担っていない分野について、その任務拡充が可能でしょう。もちろん、予算規模からすれば多数の貨物輸送機を揃える事は中古機とはいえ現実的ではありませんが、数機から十機前後貨物輸送機を装備するだけでも一機当たりの輸送力、パレット輸送での能力を踏まえればかなり大きな意味を持つところ。

唐突に国際平和維持活動、との文言が出来ましたが、この国際平和維持活動への空輸支援は一種の分散運用として当てはまります、日本本土に航空機を置く場合、すべての基地は大陸側からの弾道ミサイル射程圏内に位置する事となります、この為、例えば平時に海外において国際平和維持活動に資するべく展開しておくことは、本土からの分散運用を以ての生存性向上にも繋がります。

中古機、海外運用、非常に難しい難題を提示しましたが、この部分については海上自衛隊が先鞭をつけています、海上自衛隊はアメリカより中古輸送機C-130Rを導入し中古航空機導入の実例を創りました、C-130Rは中古機ということで機体老朽度合いなどへの不安な点が当初指摘されていますが、作戦輸送ではなく業務輸送にあてることで機体強度を計測しているといわれています。

そもそも作戦輸送と業務輸送の区分は、海上自衛隊の輸送艦などを観ますと、かつての戦車揚陸艦型の輸送艦が、対空レーダーOPS-14と対水上レーダーOPS-18及びFCS-1/72式射撃指揮装置戦闘指揮所を有した作戦輸送重視の輸送艦みうら型、火器管制装置等を装備せずレーダーも航海用として業務輸送重視の輸送艦あつみ型、と早い時期から明確に分けていました。

海外拠点についても海上自衛隊はジブチ航空拠点の運用をソマリア沖海賊対処任務と共に継続中であり、その運用実績があります。もちろん、任務の種類が異なりますし、国連との国際平和維持活動協力輸送調整司令部、というようなものの在り方などについては、本論とはやや距離と論調が変わってきますので、こちらについては別稿にて検証したいと考えます。

また、業務輸送区分の明確化は、中古機を平時から大量に維持しなくとも、例えば機材のみ武力攻撃事態法に基づく指定協力企業から徴用し、自衛艦が運用する事が可能かもしれません。もちろん、貨物輸送機を用いる場合はパレット輸送となりますので、受け入れる空港としても相応の貨物取扱能力が必要とはなります、その問題点を差し引いても、業務輸送は少ない費用で確実な輸送能力を確保出来るでしょう。

即ち敵の脅威がある中ゲリラの攪乱射撃を掻い潜りぼろぼろの飛行場へ強行着陸、最前線へ物資を送り込み、攻撃の合間を縫って離陸、という運用以外の輸送の局面は多く、具体的には戦術輸送の極端な状況よりは、業務輸送の占める比率の方が圧倒的に多いのです、戦術輸送機が必要な任務と貨物輸送機で対応できる任務が、それぞれ別々に存在する、という視点の下で輸送機の必要装備数を考える必要があると考えます。

北大路機関:はるな くらま
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