■レイテ沖海戦と戦艦武蔵
戦艦武蔵の満載排水量は72000tですが、護衛艦くらま満載排水量は7200t、単純に十倍の大型艦、考えれば考える程大きい。
戦艦武蔵自沈説件の第三分掌区第十一罐室伝令一等機関兵曹証言では第七罐室と第十一罐室中間付近に魚雷命中となった際に隔壁に緩みが生じ漏水が発生したとの事、ここで各国戦艦では破孔が生じていた可能性がありますが、漏水であり暫定復旧した旨示されています。しかしその後、四番高角砲付近命中弾が第二機械室を破壊し機関出力へ影響します。一発で重巡洋艦を航行不能に陥れる魚雷や空母を大破させる爆弾も武蔵には通じません。
第十一罐室側壁へ続いて魚雷命中、武蔵全体にも命中弾が重なり速力は4ノットまで低下します。戦艦には浸水に備え、注排水能力が付与されています、これは浸水により均衡を喪失し転覆という状況を阻止するための構造ですが、蟹白命中した数が想定外であり、魚雷が20発以上命中し至近弾が隔壁を歪ませる事は想定外であり、復旧能力も爆弾命中で低下したのは云うまでもありません。
栗田艦隊の任務はブルネイからフィリピンレイテ湾へ進出し、フィリピン反攻主力部隊である米軍へ海上から打撃を加えるものです。米軍は40万以上の地上部隊をフィリピン兌換へ投入しており、輸送船団を撃破出来れば相当な戦果を挙げられ、更に日本本土と東南アジアを結ぶシーレーンを維持する事も可能、この為速力低下の武蔵は艦隊から落伍します。
戦艦武蔵の猪口艦長は艦橋上部防空指揮所にて負傷、その後、復旧指揮を復調の加藤大佐へ委任し、浸水対処に当たりますが、浸水増大と共に遂に機関動力を喪失、自力航行が不可能となりました。こうして動力喪失は排水作業へも影響を意味し、この停止が徐々に船体の傾斜を強める事となります、注水し傾斜を留めなければ武蔵は転覆し、この際に各種機材や弾薬などが損傷し沈没してしまう。
猪口艦長は、武蔵を曳航し可能であればパラワン州コロン島へ回航したうえで修理を行う方針を示し、周辺を航行中の駆逐艦清霜と島風に警戒を命じました。その上で加藤大佐により命じられたのが、左舷へ浸水し傾斜を復原するべく、右舷と左舷の均衡へ第三罐室と第七罐室と第十一罐室へ注水を命じました、この際に使用されたのがキングストン弁です。
キングストン弁、これは戦艦が自沈する際に使用される底部の注水弁です、元々は冷却水などの取水やバラスト水の区画注水を行う際に用いる安全装置を備えた無動力海水注水装置で、船底に位置し開放する事で大量の海水を艦内に送水する事が可能ですが、水上戦闘艦等では防水扉を開放したうえでキングストン弁を開放すれば自沈に用いる事も可能です。
日本海軍におけるキングストン弁は専ら自沈用に用いられていたようで、万一戦艦が戦闘により航行不能となった場合、敵に鹵獲され自国攻撃へ転用されないよう、このキングストン弁を開放させ浸水、こうして自沈するための装置です。大和型戦艦の場合2m四方の鉄製で二重の安全装置により固定されていたといい、加藤大佐はこの開放を命じました。ここまでは多くの資料に記されているもの。
第十一罐室伝令一等機関兵曹はこのキングストン弁開放作業に他一名と共に志願、2m四方の鉄板を持ち上げると巨大な鉄の球状区画があり、この中に弁が設置されていたとのこと、留め金を取り除き、弁を固定するハンドルを操作すると開放が始まり、相当固着し硬かったようですが梃子により何とか回し全開する事で2mもの水柱が吹き上がったとのこと。
戦艦武蔵はこの時点で相当量浸水しており、キングストン弁開放動作により復原し転覆を回避しようとしたもので、これは沈没を回避するというよりは近傍の浅瀬まで曳航する間、転覆せず座礁させ、不沈砲台とする事を期したものです、不沈砲台となっても電気系統が破壊されれば主砲は射撃不能なるも、被害担当艦として艦隊を支援できることとなります。
北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
戦艦武蔵の満載排水量は72000tですが、護衛艦くらま満載排水量は7200t、単純に十倍の大型艦、考えれば考える程大きい。
戦艦武蔵自沈説件の第三分掌区第十一罐室伝令一等機関兵曹証言では第七罐室と第十一罐室中間付近に魚雷命中となった際に隔壁に緩みが生じ漏水が発生したとの事、ここで各国戦艦では破孔が生じていた可能性がありますが、漏水であり暫定復旧した旨示されています。しかしその後、四番高角砲付近命中弾が第二機械室を破壊し機関出力へ影響します。一発で重巡洋艦を航行不能に陥れる魚雷や空母を大破させる爆弾も武蔵には通じません。
第十一罐室側壁へ続いて魚雷命中、武蔵全体にも命中弾が重なり速力は4ノットまで低下します。戦艦には浸水に備え、注排水能力が付与されています、これは浸水により均衡を喪失し転覆という状況を阻止するための構造ですが、蟹白命中した数が想定外であり、魚雷が20発以上命中し至近弾が隔壁を歪ませる事は想定外であり、復旧能力も爆弾命中で低下したのは云うまでもありません。
栗田艦隊の任務はブルネイからフィリピンレイテ湾へ進出し、フィリピン反攻主力部隊である米軍へ海上から打撃を加えるものです。米軍は40万以上の地上部隊をフィリピン兌換へ投入しており、輸送船団を撃破出来れば相当な戦果を挙げられ、更に日本本土と東南アジアを結ぶシーレーンを維持する事も可能、この為速力低下の武蔵は艦隊から落伍します。
戦艦武蔵の猪口艦長は艦橋上部防空指揮所にて負傷、その後、復旧指揮を復調の加藤大佐へ委任し、浸水対処に当たりますが、浸水増大と共に遂に機関動力を喪失、自力航行が不可能となりました。こうして動力喪失は排水作業へも影響を意味し、この停止が徐々に船体の傾斜を強める事となります、注水し傾斜を留めなければ武蔵は転覆し、この際に各種機材や弾薬などが損傷し沈没してしまう。
猪口艦長は、武蔵を曳航し可能であればパラワン州コロン島へ回航したうえで修理を行う方針を示し、周辺を航行中の駆逐艦清霜と島風に警戒を命じました。その上で加藤大佐により命じられたのが、左舷へ浸水し傾斜を復原するべく、右舷と左舷の均衡へ第三罐室と第七罐室と第十一罐室へ注水を命じました、この際に使用されたのがキングストン弁です。
キングストン弁、これは戦艦が自沈する際に使用される底部の注水弁です、元々は冷却水などの取水やバラスト水の区画注水を行う際に用いる安全装置を備えた無動力海水注水装置で、船底に位置し開放する事で大量の海水を艦内に送水する事が可能ですが、水上戦闘艦等では防水扉を開放したうえでキングストン弁を開放すれば自沈に用いる事も可能です。
日本海軍におけるキングストン弁は専ら自沈用に用いられていたようで、万一戦艦が戦闘により航行不能となった場合、敵に鹵獲され自国攻撃へ転用されないよう、このキングストン弁を開放させ浸水、こうして自沈するための装置です。大和型戦艦の場合2m四方の鉄製で二重の安全装置により固定されていたといい、加藤大佐はこの開放を命じました。ここまでは多くの資料に記されているもの。
第十一罐室伝令一等機関兵曹はこのキングストン弁開放作業に他一名と共に志願、2m四方の鉄板を持ち上げると巨大な鉄の球状区画があり、この中に弁が設置されていたとのこと、留め金を取り除き、弁を固定するハンドルを操作すると開放が始まり、相当固着し硬かったようですが梃子により何とか回し全開する事で2mもの水柱が吹き上がったとのこと。
戦艦武蔵はこの時点で相当量浸水しており、キングストン弁開放動作により復原し転覆を回避しようとしたもので、これは沈没を回避するというよりは近傍の浅瀬まで曳航する間、転覆せず座礁させ、不沈砲台とする事を期したものです、不沈砲台となっても電気系統が破壊されれば主砲は射撃不能なるも、被害担当艦として艦隊を支援できることとなります。
北大路機関:はるな くらま
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