北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

トランプ新大統領の外交国防戦略【04】 紛争不介入路線明示と台湾海峡巡り対中政経強硬路線

2016-12-15 23:18:15 | 国際・政治
■北東アジア情勢と中東政策
 アメリカはオバマ政権下の軍事誇示回避路線を継承するのか、世界秩序への影響を再構築するのか、大きな関心事ですが、紛争不介入路線明示と対中政経強硬路線、という新しい路線がトランプ次期大統領のツイッター発言により示されています。

 アメリカがどう動くのかは日本の外交防衛政策に直結します。トランプ次期大統領、ISIL掃討作戦へは関与の度合いを強化する姿勢を示しました。他方で海外での紛争介入に対しては回避する姿勢を示しています。実のところ、オバマ大統領のイラク撤収完了とアフガニスタンでの大規模な作戦終了を受けアメリカの大規模な介入が現在行われている地域紛争は無いのですが、内向国防戦略の可能性が示唆されました。

 ただ、必要があれば即座に介入するという姿勢そのものが地域プレゼンスに影響します、この部分で引く姿勢を示した事はどのような影響を及ぼすのか。南スーダン支援等でアメリカの影響力は大きく、関与していないもののポテンシャルが地域的な安定化要素となっている事例は多いのです、カウンターバランスとなる新しい地域秩序の構築を待たず、関与の方針を放棄しますと、懸念すべき状況が発生しかねません。

 こうした中、アメリカが中東地域において例外的に主導するとしたISILの掃討任務ですが、その現状を視てみましょう。ISILに対する有志連合の作戦、アメリカ軍当局者の発言としまして、これまでの作戦により五万ものISIL戦闘員を無力化したとの事、更にこの戦果は控えめな数字だ、と付け加えました。もっとも、ISILへの戦果は長く強調されていたもので、今回はどうなのか見極めなければ、という先入観があります。

 ISILですが、実態を見ますとリビアでは崩壊寸前、シリアでは自由シリア軍へシリア軍が戦力を集中する中でパルミラ方面にて攻勢に出ましたが例外的です。その攻撃衝力が低下するまでに多くの時間を要していましたが、今回はISILへの包囲が進み、イラクではほぼ攻勢に出る事は無く、テロ攻撃程度しか対応できない状況、中東地域やアフリカ北部でのISILへの戦果は大きなものがあるといえるでしょう。

 アジアではトランプ次期大統領、台湾の蔡英文総統と電話会談を行い、その内容は今に至るも発表されていないながら、アメリカ政府が台湾に対する強い関心の大きさを示した事が端的に示される事となりました、一方この姿勢は、台湾政策への変更をアメリカは目指さないものの、中国政府が変更を目指す事もやはり許さない事を示唆したとも解釈される。

 一方、中国政府に対して今後アメリカに対する敵対的な政策を行う場合、アメリカ政府が台湾の独立承認を行う可能性を示唆する事で、中国へ圧力をかける目的があるのかもしれません。その点でトランプ次期大統領は中国への様々なアプローチを試みています、台湾問題はその一環であるかについては様々な解釈の余地がありますが、現段階で不明です。

 中国政府に対しては、現在のところツイッターでの発言に限られるものの、様々な政策への不満と批判を掲げつつ、一方でアメリカにとり公平な形での関係の強化も模索している旨を示しています。これは現在の関係には改善の余地があるが、一元論で臨むのではなく、経済を門戸開放せねば台湾国家承認、という異次元論理にて台湾問題と中国の民主化と経済問題を包括させ相互に考えるとの意思表示なのでしょうか。

 米台首脳と次期首脳の電話会談について、沈黙を守っていました中国政府が改めて反発を示し、折れに対して現在のオバマ政権下アメリカ政府が現在は一つの中国という基本方針を支持している旨を改めて伝達しました。アメリカの基本行進は態度を不明確とし、中国は一つであるが北京の中国政府領土に台湾は含まれない、という台湾と中国が別の国であるのかについては回答を避ける事を基本としています。

北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする