北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

イージスアショア導入へ疑問(3):米イージス巡洋艦タイコンデロガ級緊急貸与要請の提案

2017-09-06 23:24:31 | 先端軍事テクノロジー
■イージスアショア建設年数
 イージスアショア導入へ疑問、その所用期間についての視点です、建設を来年度予算に盛り込み、いつから稼働できるか、ということ。

 イージスアショア、運用するスタンダードSM-3迎撃範囲は1100kmに達します。弾道ミサイルの中間段階を迎撃し、現在の終末段階を担うペトリオットミサイルPAC-3の射程が20kmしかなく迎撃範囲が非常に限られ、改良型のペトリオットPAC-3-MSEを導入した場合でも迎撃範囲は30kmとなり、とてもではありませんが日本全土の防空は不可能です。

 ミサイル防衛ですが、極めて切迫し、この能力を強化しなければなりません。そして弾道ミサイルを迎撃する事が自衛隊にできるかという認識、この能力が国民の一般的な理解として十分機能すると判断されるならば、北朝鮮核戦力による威嚇や恫喝を前にしての安易な日本核保有論や国家主権を核恫喝を前に捻じ曲げられる状況を回避する事が出来ます。

 北朝鮮が3日に実施した六度目の核実験は引き起こした核爆発は120ktとされ、落下した場合は爆心地から15km圏内に致命的被害が生じ、大都市中心部に布陣したペトリオットPAC-3の射程圏外に落下した場合でも、その被害は看過できないものとなるでしょう。そして北朝鮮は更なる強力な核戦力の実用化を目指しており、現状は脅威の最大値ではない。

 しかし、イージスアショアを来年度予算として事項要求が通った場合でも、新年度から用地選定を開始し、SPY-1レーダーの警戒範囲や配置周辺住民への協力要請、アメリカへのイージスシステム発注と建設は、どれだけ早くとも来年度着手では運用開始は2022年以降となってしまうでしょう。それまで、ミサイル脅威へ現行体制で対応できるのでしょうか。

 タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦やアーレイバーク級ミサイル駆逐艦の緊急貸与や、中古譲渡をアメリカ政府に対し緊急に検討する、その為の予算は来年度予算概算要求を待つのではなく補正予算を緊急に計上し、迅速に緊急調達する、とり急ぎミサイル防衛力を整備するには新装備調達よりも、中古品の緊急調達という選択肢を検討すべきかもしれません。

 アーレイバーク級であれタイコンデロガ級であれ、日本にはイージスシステムの運用基盤はあっても、アメリカ製艦船の運用基盤はありません。また、電子戦装置はじめ様々な米海軍仕様装備をそのまま自衛隊に譲渡する訳にはいかず、日本仕様へと換装する必要が生じる事は確かで、またイージスシステムの初期ベースラインはミサイル防衛に対応しない。

 それでも、イージスアショアを新規に建設するよりは中古艦艇を舞鶴沖と新潟港沖に遊弋させ、SM-3ミサイルによる警戒態勢を執る方が、迅速に実施出来る筈です。湾口付近に係留させるならば、航海要員を大幅に縮小する事が出来ますし、イージスアショアの代用として領海内に配置するならば、対水上戦闘や対潜戦闘への器材に関する要員教育は省ける。

 THAADミサイルシステムの緊急調達は、これに続く次善の選択肢です。米陸軍が運用するTHAADのうち、日本へ緊急供与する事が可能な射撃中隊があれば、この緊急有償譲渡を要請し、C-17輸送機により横田基地へ直接搬送し、航空自衛隊へ譲渡する、イージスアショアとは別系統のミサイルですが、中古品取得ならばこちらも迅速に装備化できましょう。

 勿論イージスアショアに絶対反対、という意味ではありません。海上自衛隊は1993年よりイージス艦の運用を継続している訳ですから、イージスシステムの運用に演練した要員は多数養成してきました。この為、建設期間中にイージス艦において要員増勢訓練教育を行えば迅速に戦力化もできましょう。しかしそれ以上に脅威は切迫しており、中古装備を迅速に取得する施策は検討されるべきと考えます。

北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする